健康診断の結果をよくしようと、前日や数日前から対策(悪あがき)をしてしまう人が多くいますが、この悪あがきには効果があるのでしょうか? じつは、悪影響を与えることがあるのです。この記事では、産業医で精神科医の井上智介さん監修のもと、健康診断前の悪あがきの影響に関して解説します。

この記事の監修者

井上智介(いのうえ ともすけ)

産業医・精神科医。島根大学医学部を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急科・皮膚科などのプライマリケアを学ぶ。その後は、産業医・精神科医・健診医の3つの役割を中心に活動。産業医として毎月約30社を訪問しているほか、精神科医・健診医としての経験も活かし、健康障害や労災を未然に防ぐべく活動中。精神科医として大阪府内のクリニックにも勤務している。

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健康診断前日の過ごし方。7つのNG行動とは?

画像: 画像:iStock.com/ Ca-ssis

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健康診断前の悪あがきに関する影響を見る前に、健康診断前日の正しい過ごし方について確認しましょう。基本的なルールを守っていないと、誤った診断結果や悪い診断結果が出てしまいかねません。以下で紹介するNG行動とともにチェックしましょう。

健康診断前日の食事が与える結果への影響とは?

健康診断では「前日の夜9時まで(検診12時間前まで)に食事を済ませるように」という注意のみされることがほとんどです。食事は、胃の検査と血液の検査に影響を与えやすいからです。

バリウム検査や胃カメラによる胃の検査を行う際、胃の中に食べ物が残っていると、見えない部分が増えてしまいます。そうすると、胃の状態を正しく把握することができなくなってしまうのです。食事をすると萎む動きのある胆のう、ガスが発生したり動いたりする腸にも影響が出て、腹部エコー検査などが正しくできなくなる可能性もあります。

血液の検査では、食事をすることで血糖値や中性脂肪の数値が悪く出てしまうことがあります。その結果、実際は糖尿病ではないのに、「糖尿病の可能性がある」と診断され、再検査を余儀なくされることもあるのです。

健康診断前日の7つのNG行動

健康診断を受ける前日や当日に控えるべきこと(基本ルール)は、基本的には病院などから指示されます。上記で述べた飲食の時間に関する制限に加えて、さらに詳しい指示をされることもあるでしょう。

また、基本ルールの中でも見落としがちな行動や、基本ルールを守っていても数値に影響が出やすい行動もあります。そういった行動は、病院などによっては事前に注意事項として示している場合もありますが、何もいわれないこともあります。

知っておくだけで検査や数値への影響を抑えられるので、ぜひおさえておきたいところ。ついやってしまいがちな7つのNG行動は以下のとおりです。

〈表〉健康診断前日の7つのNG行動

NG行動1:飴、ガムなど固形ではないものを検診12時間前以降~直前まで食べる
NG行動2:脂質の多いものを大量に食べる
NG行動3:お酒やコーヒーを大量に飲む
NG行動4:ビタミン剤やサプリメントを飲む
NG行動5:夜更かしをする
NG行動6:激しい運動をする
NG行動7:性交渉や自慰によって射精をする

それぞれのNG行動の詳細や影響については、下記の記事で紹介しています。ぜひチェックしてみてください。

【関連記事】「健康診断前日の7つのNG行動」について詳しくはコチラ

やりがちな健康診断数日前~前日の悪あがき。結果への影響は?

健康診断前日の過ごし方も重要ですが、数日前からの“悪あがき”は健康診断の結果に影響があるのでしょうか。受ける直前になると、少しでも数値をよくしたい…と考えてしまいがちですが、よかれと思ってやった悪あがきが、かえって数値に悪い影響を及ぼすこともあるのです。

やってしまいがちな“悪あがき”について、効果の有無や悪影響をチェックしていきましょう。

食事に関する悪あがきの影響は?(食べる量を減らす、身体によいものを食べる)

画像: 画像:iStock.com/ opolja

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体重を気にしている人は、やってしまいがちではないでしょうか。2〜3日食べる量を減らせば、食事に含まれる水分の摂取が減り、体重が少し落ちるかもしれません。しかし、脱水傾向になり、尿酸値や腎臓の数値が悪く出てしまう可能性があります

また、体によいとされるものを食べることが、健康診断にはよくない影響があることもあります。

たとえば、急にタンパク質の摂取量を増やすことで「尿タンパク」の数値に影響が出たり、食物繊維を摂りすぎることで消化しきれず胃の検査に影響が出たりということがあり得ます。

お酒・タバコに関する悪あがきの影響は?(一時的に禁酒、禁煙する)

画像: 画像:iStock.com/Sezeryadigar

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まず飲酒ですが、前日にアルコールを摂ると血糖値や中性脂肪の値が高くなりがちなので、控えるのがベターです。ただ、数日間の禁酒をしたところで、もともと肝機能の数値が高い人には効果がありません。効果が出始めるのは、禁酒をはじめて1カ月後程度からになります。

禁煙は、短期間でも数値に影響が出やすいでしょう。ニコチンには血圧を上げる作用がありますが、3日間ほど禁煙することで血圧の上昇を抑えることが可能です。しかし、同様にニコチンが作用するコレステロール値は、数日の禁煙では改善されません

数日では影響がない禁酒と禁煙ですが、それぞれ長期的に止めたり減らしたりすることは健康診断の結果を改善することに効果的です。ひいては健康につながるので、健康診断前の悪あがきをきっかけに、禁酒・禁煙を継続してみるとよいかもしれません。

運動に関する悪あがきの影響は?(一時的にランニング、筋トレをする)

画像: 画像:iStock.com/west

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運動による健康改善は長期間やってこそ効果が出るものです。そのため、数日前から少し走ってみたり、筋トレをしてみたりしたところで変化はないでしょう。逆に、激しい運動が数値に悪い影響を及ぼすこともあります。

悪あがきはせず、ありのままの診断結果を受けとめよう

画像: 画像:iStock.com/miya227a

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健康診断の結果をよくしようと、“悪あがき”をしようとする人は少なくありません。しかし、健康診断はその人の状態を正確に把握することが目的です。また、この記事で述べてきたように、直前の“悪あがき”はよい結果を出せないだけでなく、悪い結果になってしまうこともあるのです。

ぜひありのままの健康状態で健康診断を受け、自分の体調を正確にチェックするよい機会にしてください。

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