この記事では、ファイナンシャルプランナーの黒川一美さん監修のもと、社会保険に加入している人に向けて、マイナンバーカードの保険証を持つ必要があるのかについて解説します。また、マイナンバーカードと保険証を紐付けた場合に、加入している社会保険に何か影響があるのかなども説明します。
※本記事は2023年10月20日時点の情報を基に執筆しています。
この記事の監修者
黒川一美(くろかわかずみ)
FPサテライト株式会社所属、ファイナンシャルプランナー。大学院修了後、IT企業や通信事業者でセールスエンジニア兼企画職として働く。出産を機に退職し、お金を稼ぐ側から家計を守る側に立場が変わり、お金の守り方を知らなかったことを痛感。自分に合ったお金との向かい合い方を見つけるため、FP資格を取得する。資格取得後は、FPの勉強を通じて得られた知識をもとに、よりよい家計管理を求め試行錯誤の日々を過ごす。現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。
マイナンバーカードの保険証(マイナ保険証)とは?
マイナンバーカードの保険証は、マイナンバーカードの機能の1つで、2021年10月から本格運用がスタートしました。「マイナ保険証」とも呼ばれています。政府はマイナンバーカードを普及させる取り組みとして、マイナンバーカードと健康保険証の一体化を推進しています。これにより、国民の利便性向上と医療サービスの品質向上を目指すとのことです。
マイナンバーカードを保険証として利用するには、マイナンバーカードと健康保険証を紐付ける必要があります。これは、加入している健康保険が社会保険であっても、国民健康保険であっても同じです。詳しくは後述しますが、スマートフォンやコンビニエンスストアなどで簡単に紐付けることができます。
マイナ保険証の詳しい情報は、以下の記事で解説しています。気になる人は併せてご覧ください。
【関連記事】マイナンバーカードと保険証の紐付け方は? メリット・デメリットも解説
そもそもマイナンバーカードとは?
マイナンバーカードとは、マイナンバー(※)が記載された顔写真付きのカードのことです。マイナンバーのほかに、氏名、住所、生年月日、性別などが記載されています。
マイナンバーカードは、本人確認書類として利用できるほか、コンビニで公的な証明書を取得したり、政府が運営するオンラインサービス「マイナポータル」を通じて各種行政手続きを申請できたりなど、様々な行政サービスにも利用できます。また、証券口座の開設、住宅ローンの契約などの民間取引にも、マイナンバーカードの活用が進んでいます。
マイナンバーカードの取得はあくまでも任意ですが、マイナポイント付与による普及促進の効果もあり、2023年10月15日現在、全国の交付枚数は9,648万3,405枚に達し、人口に対する交付率は約77%となっています1)。
※:2016年に日本国内で導入された国民識別番号制度。日本の住民票を持つ全住民に付番される12桁の番号のことで、番号正式名称は「個人番号制度」といいます。
社会保険の場合でもマイナンバーカード保険証への切り替えは必要?
社会保険に加入している場合、マイナンバーカードと保険証を紐付ける必要はあるのでしょうか。
現在、マイナンバーカードと保険証の紐付けや保険証としての利用は任意です。またマイナンバーカードの発行自体も任意とされています。ただしマイナンバーの登録は義務付けられています。
ちなみに、2023年10月15日現在、マイナンバーカードと保険証の紐付け数は7,145万1,552件で、交付枚数に占める割合は7割を超えています1)。
2024年秋には義務化される予定
政府は2024年秋を目途に現行の健康保険証を廃止してマイナンバーカードの保険証に移行する方針を示しています2)。
現行の健康保険証の廃止後は、マイナンバーカードを保有していない人や、健康保険証との紐付けを行っていない人に対しては、当分の間「資格確認書」が発行される予定です3)。これにより保険診療を受けることができます。ただし、まだ議論の最中であり、今後どうなっていくか注意して見ていく必要があります。
社会保険の場合、マイナンバーカードと保険証を紐付けたらどうなる?
社会保険に加入している人が、マイナンバーカードに保険証を紐付けした場合について解説していきます。現行の健康保険証の取り扱いや、保険料はどうなるのか確認していきましょう。
マイナンバーカードと保険証を紐付けても現行の健康保険証も使える
マイナンバーカードに保険証を紐付けしても、現行の健康保険証を今までどおり使うこともできます。また、併用してマイナンバーカードを保険証として利用することもできます。
ただし、マイナンバーカードの保険証はマイナンバーカードの保険証に対応している医療機関・薬局でしか利用できません。
2023年4月より、すべての医療機関・薬局にマイナンバーカードの保険証への対応(オンライン資格確認の導入)が義務付けられました。厚生労働省によると、2023年10月15日現在、マイナンバーカードの保険証に対応している医療機関・薬局は全体の88%です。以下は、マイナンバーカードの保険証に対応している医療機関ごとの割合になります4)。
〈表〉マイナンバーカードの保険証に対応している医療機関の割合4)
病院 | 医科診療所 | 歯科診療所 | 薬局 |
---|---|---|---|
97.0% | 87.1% | 83.1% | 94.9% |
対応可能な医療機関・薬局が増えているとはいえ、まだ対応していない施設も一部ありますので注意しましょう。
マイナンバーカードと保険証を紐付けても保険料や保障内容は変わらない
社会保険に加入している人が、マイナンバーカードと保険証を紐付けても、保険料や保障内容は変わりません。繰り返しになりますが、マイナンバーカードの保険証は、マイナンバーカードに保険証の機能が付くだけなので、加入している社会保険には何の影響もありません。
退職や転職をした時はマイナンバーカードの保険証も変更手続きは必要?
転職や退職をすると、今までの健康保険の資格を喪失し、新たな健康保険へ加入をすることになります。その際、新しく加入する医療保険者(健康保険組合や国民健康保険など)への加入の届出は必要です。
ただし、マイナンバーカードと健康保険証の紐付けが完了している場合は、転職・退職に伴う再度の登録や変更手続きは不要です5)。
転職や退職時のマイナンバーカードの保険証の取り扱いについては、以下の記事で詳しく解説しています。気になる人はご覧ください。
【関連記事】マイナンバーカードの保険証は転職したら再登録が必要? 空白期間も解説
マイナンバーカードと保険証を紐付ける方法
社会保険に加入している場合でも、マイナンバーカードと保険証を紐付けることはできます。手続きは、スマートフォンやパソコン、コンビニでも可能です。ここでは、スマートフォンを使った紐付け方を紹介しますので、参考にしてみてください。
スマートフォンでマイナンバーカードと保険証を紐付ける手順
①スマートフォンに「マイナポータルAP」をインストールする
②アプリを起動後、「マイナンバーカードが健康保険証として利用できます」の画面から「申し込む」を押し、申し込みページを開く
③「マイナポータル利用規約」を確認し、「同意して次へ進む」を押す
④数字4桁の暗証番号を入力し、スマートフォンでマイナンバーカードを読み込む
⑤申込完了
医療機関や薬局の窓口に設置されている顔認証付きカードリーダーでも手続きが可能ですが、スムーズな受診のためにも、あらかじめ紐付けしておくことをおすすめします。
マイナンバーカードの保険証を使うメリット・デメリット
最後にマイナンバーカードの保険証を利用した場合のメリットとデメリットを紹介します。現行の健康保険証と比べて便利になったことや、不便になったことを確認してみましょう。
マイナンバーカードの保険証を利用するメリット
マイナンバーカードの保険証を利用すると、以下のようなメリットがあります。
- 医療費の窓口負担が軽くなる
- 過去の診療情報などが自動で連携される
- 高額医療費の「限度額適用認定証」が不要になる
- マイナポータルから医療情報を確認できる
- 確定申告の医療費控除手続きが簡単になる
- 健康保険証の切り替えが短縮される
上記のなかでも、医療費の窓口負担が軽くなるのは、大きなメリットです。以下の記事ではマイナンバーカードの保険証を利用した場合の医療費について、詳しく解説しています。気になる人は併せてご覧ください。
【関連記事】マイナ保険証で初診料や再診料が安くなる? 安くなる条件や金額を解説
マイナンバーカードの保険証を利用するデメリット
マイナンバーカードの保険証を利用する場合のデメリットは以下になります。
- マイナンバーの保険証に対応していない医療機関も一部ある
- 電子証明書の有効期限が切れると、保険証の利用ができない
- マイナンバーカードを紛失すると、再発行まで時間がかかる
特に気をつけたいのは、マイナンバーカードの紛失です。通常、再発行までは1~2カ月程度がかかり、その間、マイナンバーカードの保険証を利用できなくなります。
マイナンバーカードの保険証のデメリットは、以下の記事で詳しく解説しています。気になる人は併せてご覧ください。
【関連記事】 マイナンバーカードと保険証の紐付け方は? メリット・デメリットも解説
いずれはマイナンバーカードの保険証が必要になる可能性も
現在、社会保険に加入している人に限らず、マイナンバーカードと保険証の紐付けや利用は任意です。しかし政府としては、2024年秋を目途に現行の健康保険証からマイナンバーカードの保険証に移行する方針を示しています。遅かれ早かれ、マイナンバーカードの保険証への切り替えが必要になる可能性はあるということです。とはいえ、オンラインシステムで管理をしているマイナンバーカードの保険証は、通信トラブルなどの不具合に弱いという一面があります。システムが整うまでの間は、現行の健康保険証との併用が安全かもしれません。