この記事では、家事アドバイザーの矢野きくのさん監修のもと、今すぐできるガス代の節約テクニックを解説します。支払いや契約の見直しからガスを大きく消費するお風呂やキッチンでの節約術まで、幅広くご紹介。この記事をきっかけに、日々のガスの使い方を見直してみてください。
この記事の監修者
矢野 きくの(やの きくの)
家事アドバイザー・節約アドバイザー。家事の効率化、家庭でできるSDGsを中心に、テレビ、講演、コラム連載などで活動。働く人向けの時短家事術、50代からシニア層への家事改革などをアドバイス。「食育指導士」「食生活アドバイザー」の資格も持ち、食品ロス削減をテーマにした講演も行う。100円ショップや業務用スーパーでの買い物術や、便利グッズの開発にも携わる。著書に『シンプルライフの節約リスト』(講談社)など。
【基本編】毎月の支払いや契約の見直しをする
はじめに、月々のガス代を抑えるには、支払い方法や契約の見直しが有効です。押さえておきたい基本は以下の3つになります。
それぞれ詳しく解説します。
①料金プランやガス会社を見直す
ガスの使用量を抑えなくても、料金プランを見直したり、ガス会社を変えたりすることでガス代を抑えられる可能性があります。特に、長らくガス会社や料金プランを変えていない場合は、今の生活スタイルに料金プランが合っていない可能性があります。
電気と同様に、ガスも小売自由化が開始され、価格競争が起きています。そのためこれまで契約していたガス会社よりもおトクな料金プランを打ち出している企業があるかもしれません。
また、電力会社がガス事業を始めたり、ガス会社が電力事業に参入したりすることも増えてきました。この動きに伴い、これまで別々に契約することが主流だった電気とガスをセットにしたおトクな料金プランも多く登場しています。
なお、家庭で使用されるガスにはプロパンガスと都市ガスがありますが、どちらのガスを使っていても会社の変更は可能です。プロパンガスの場合、切り替えに費用はかからず簡単に変更できますが、最低契約年数に注意が必要です。都市ガスも小売全面自由化が行われたため、私たち消費者側がガス会社を選択できます。
②プロパンガスから都市ガスに切り替える
現在プロパンガスを使っているなら、都市ガスに変更するだけでガス代を抑えられるケースもあります。一般的に、プロパンガスのほうが都市ガスよりも基本料金が高く設定されています。その理由は、「料金制度の違い」と「配送コストの有無」が大きいとされています。
都市ガスは公共料金に含まれるため、総括原価方式(※1)と呼ばれる方法で料金設定を行うよう、ガス事業法1)という法律で義務付けられています。一方、プロパンガスの料金は、小売業者がすべて自由に決定できる自由料金制(※2)が採用されています。
また、都市ガスは地下に設置されたガス導管を通じて各家庭に供給されるため配送料がかかりませんが、プロパンガスはガスボンベの配送に費用がかかります。
両者の料金を比較した調査によると、平均額はプロパンガスのほうが都市ガスより1.8~2倍にもなるとされています2)。
ただし、都市ガスは供給地域が限られているためお住まいの地域によっては利用できない場合もあります。そのため、新規でガス導管を敷地に引き込む工事をする場合はかなりのコストがかかる可能性があります。また、マンションなど集合住宅の場合は工事自体が難しいため、入居の際に確認するようにしましょう。
※1:供給原価に基づき料金が決められるものであり、安定した供給が求められる公共性の高いサービスに適用される方式のこと。
※2:価格を規制する法律がなく、独自の料金システムにのっとって、自由に価格を決定できる制度のこと。
③オール電化住宅に切り替える
給湯や調理、暖房といった住宅で用いるエネルギーをすべて電気でまかなうオール電化住宅では、ガスを使用しないためガス代がかかりません。ガスコンロはIHクッキングヒーターに、ガス給湯器はエコキュートに置き換えることで、住宅設備の熱源を電気だけでまかなうことができます。
オール電化住宅に切り替えると電気の使用量が大きく増えるため、電気代が上がります。しかし、深夜の電気代が安くなる電気料金プランを契約するなどで、光熱費全体で見た時には節約になる可能性もあります。光熱費の削減以外にも、調理時の安全性が高いなどのメリットがあります。
【実践編】お風呂でできるガス代を節約する方法
ここからは、家の中の場所ごとにガス代の節約ポイントを確認していきましょう。まずは、最も家庭の中でガスの使用量が多い「お風呂」です。
お風呂はお湯を大量に使用するため、ガス代が多くかかる場所です。お風呂の使い方を見直せば、ガス代を節約できる可能性があります。お風呂でできるガス代の節約方法は、以下の3つです。
それぞれ詳しく解説します。
①お湯の使用量を減らす
まずは、普段使うお湯の使用量を少しでも減らすように心がけてみましょう。ガス給湯器を使っている場合、お風呂のお湯を出すのにかかる費用が、ガス代の大半を占めている可能性があります。
経済産業省のデータによると、1日1分シャワーを使う時間を短縮すれば年間で約2,070円の節約になるといいます3)。1日1分なら無理なくできるはずです。小さな積み重ねが、大きな節約を生みます。
②節水シャワーヘッドなどの節約グッズを使う
ガス代を少しでも抑えたいという人は、節約グッズを使うことをおすすめします。お風呂で簡単に導入できるグッズは、節水シャワーヘッドです。
そもそも節水シャワーヘッドとは、水道代やお湯を沸かすためのガス代の節約を目的として作られたものです。散水板(お湯が出る面)の穴を小さくして吐水量を少なくするしくみで、ガス代や水道代の節約が期待できます。
メーカーにもよりますが、多いものでは約50%の節水も可能だとされています。この場合、お湯を出している時間が半分になるのと同じなので、大きな節約が期待できます。前述した1日1分のシャワーの節約と併せて行うと、より効果を感じられることでしょう。
③家族で入浴の時間を揃える
ガスの使用量が特に多いのがお風呂での追い焚きです。冷めたお湯を温め直すのには大きなエネルギーが必要です。
家族で入浴時間を合わせれば、追い焚き回数の削減と保温時間短縮につながるため、ガス代を節約できます。経済産業省のデータによると、追い焚きを1日あたり1回減らせば、年間で約6,190円削減できるといいます4)。
また、保温機能がオンになっていると、お風呂が一定以下の温度を下回った時に自動追い焚きをします。温かいお風呂に入れることはメリットですが、その分ガス代がかかってしまいます。
入浴していない時間は保温機能をオフにし、余計なガスの消費を減らすようにしましょう。
【実践編】キッチンでできるガス代を節約する方法
キッチンも多くのガス代がかかってしまう場所です。キッチンでできるガス代の節約方法は、以下の3つです。
それぞれ詳しく解説します。
①熱伝導率が高い調理器具を使う
熱の通りやすい調理器具を使えば、コンロの使用時間を減らしガス代を節約できます。熱の通りやすい調理器具を選ぶ際のポイントは「熱伝導率」と「熱容量」です。
熱伝導率は食材を早く温める力で、熱容量は保温性のことです。炒めものなどで使用するフライパンは熱伝導率、煮物などで多く使う鍋は熱容量の高いものを意識して選びましょう。また、コンロのサイズに合った大きさのフライパンを選ぶことも大切です。
②電子レンジを調理に使う
作る料理にもよりますが、ガスコンロで調理するよりも、電子レンジを使ったほうが光熱費は安く済む場合があります。たとえば、根菜などの固い野菜はあらかじめ電子レンジで加熱しておくと、すぐに火が通るので下処理に利用するとガス代の節約になります。
また、おかずやスープを再加熱する時は鍋に火をかけるよりも1人分を取り分けて電子レンジで加熱するのも節約術となります。
このように、電子レンジは加熱から下処理まで様々な用途で使用できます。電子レンジだけで調理できるメニューも多く存在するので、うまく使い分けてガス代を節約しましょう。
③落とし蓋や圧力鍋などを活用する
落とし蓋や圧力鍋などをうまく活用すれば、コンロを使用する時間を短くでき、ガス代の節約につながります。
落とし蓋は、短時間で効率よく食材に味を染み込ませられる便利な調理器具です。一方、圧力鍋のメリットは、煮込み時間を大幅に減らせることです。どちらも加熱する時間を減らせるので、その分ガスの使用量を抑えられます。圧力鍋がない場合は、保温性の高い鍋でも代用できます。
ガス代の平均額はいくら?
ガス代を節約する方法を理解したところで、続いてガス代の平均額がいくらかを見ていきましょう。ガス代の平均額は、世帯人数や地域、季節ごとに異なります。自分と状況の近いデータを参考にしてみてください。
世帯人数別:ガス代の平均額
総務省の「2021年度 家計調査」をもとに、世帯人数別のガス代の平均額を以下の表にまとめました5)6)。
〈表〉世帯人数別ガス代の平均額/月
世帯人数 | ガス代 |
---|---|
1人世帯 | 3,001円 |
2人世帯 | 4,330円 |
3人世帯 | 4,930円 |
4人世帯 | 4,882円 |
ガス代は1人世帯が最も低く、1カ月の平均額は約3,000円です。2人世帯になるとガス代は大きく上がり、1人世帯と比べて1,300円ほど高くなります。その理由として、1人世帯より2人世帯のほうが料理をする機会が多いことが考えられます。学生の1人世帯の場合は、毎日キッチンを使わない人もいるでしょう。
一方、世帯人数が3人以上となると、人数と比例してガス代が増えるようなことはありません。これは料理などをまとめて行うことで、ガスを効率的に使用できているためだと考えられます。
なお、以下の記事では、1人世帯や2人世帯のガス代の平均や節約方法について詳しく解説しています。気になる人は確認してみてください。
地域別:ガス代の平均額
総務省の「2021年度 家計調査」をもとに、地域ごとのガス代の平均額を以下の表にまとめました5)。
〈表〉地域別一人暮らし世帯のガス代平均額/月
地域 | ガス代 |
---|---|
北海道・東北地方 | 3,297円 |
関東地方 | 3,136円 |
北陸・東海地方 | 2,831円 |
近畿地方 | 2,818円 |
中国・四国地方 | 2,824円 |
九州・沖縄地方 | 2,842円 |
北海道・東北地方のガス代が高いのは、給湯器や暖房機具を多く使用するためだと考えられます。自分の住んでいる地域の平均額よりも、ガス代がかかっている場合は、節約を心がけてもいいでしょう。
季節別:ガス代の平均額
季節によってガス代がどのように変動するかを、世帯人数別に見ていきましょう。総務省の「2021年度 家計調査」をもとに、以下の表にまとめました7)8)9)10)。
〈表〉世帯人数・時期別のガス代の平均額/月
世帯人数/時期 | 1~3月 | 4~6月 | 7~9月 | 10~12月 |
---|---|---|---|---|
1人世帯 | 3,562円 | 3,313円 | 2,275円 | 2,642円 |
2人世帯 | 6,049円 | 5,083円 | 3,448円 | 4,013円 |
3人世帯 | 6,225円 | 5,373円 | 3,773円 | 4,347円 |
4人世帯 | 6,542円 | 5,287円 | 3,578円 | 4,121円 |
季節別のガス代の平均額は、世帯人数にかかわらず、1~3月が最も高く、7~9月が最も低くなっています。これは、気温が低い1〜3月は、お風呂のお湯を溜めたり、追い焚きを使用したりするなど、ガスを使う機会が増えるためです。また、水温が低い1〜3月は7〜9月に比べて、お湯を沸かすのにガスの消費量が増えるのも理由の1つといえます。
なお、ガス代の平均額に関して以下の記事で詳しく説明しています。気になる人は併せて確認してみてください。
固定費であるガス代を節約して賢く暮らそう
節約の方法を知っているだけで、日々の生活でガスの使い方を意識できるようになります。また、節水シャワーヘッドや調理の際に電子レンジを活用することなどは、すぐにでも生活に取り入れやすいでしょう。
今回ご紹介した節約の方法を、すべて実践することは難しいかもしれませんが、できる範囲で行えばガス代を少しでも節約できます。ぜひ生活に取り入れてみてください。