シングルマザーになる理由は、夫との死別や離婚など様々です。1人で子どもを育てていくとなると、収入や生活費など大きな不安を抱えるものでしょう。

「今の自分の収入だと少なすぎるかな?」「ほかのシングルマザーの人はどれくらい稼いでいるんだろう?」このように考える人も少なくないと思います。はたして、子どもとの安定した生活を送るために必要な収入の目安はどれくらいなのでしょうか。この記事では、3児を育てるシングルマザーである矢野舞美が、シングルマザーの平均年収などの実態を踏まえながら、活用できる制度や理想の働き方についてご紹介します。

この記事を読むことで、母子家庭の平均収入だけでなく、収入が低い方が受けられる税金優遇や免除制度についても知ることができます。無理なく生活するための一助となれば幸いです。

この記事の著者

矢野 舞美(やの まいみ)

ファイナンシャルプランナー/働く女性のためのお金と暮らしのアドバイザー。

大分県在住、3人の子どもを育てるシングルマザー。
自身の経験を活かし、子育てと両立しながら自分らしく働きたい女性に向けて、インスタグラムを活用した起業・副業支援などを行っている。
「家計も夢も大切にしたい」——そんな想いに寄り添いながら、女性が自分らしい働き方を選び、お金に振り回されない暮らしをつくるサポートをしている。

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シングルマザーの平均年収はどれくらい?

画像: 画像:iStock.com/Yusuke Ide

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はじめに、シングルマザーの人の年収はどれくらいなのでしょうか。年収は、正社員で働いているかパートやアルバイトで働いているかによっても変わってきます。シングルマザーの人の平均年収を雇用形態ごとに見ていきましょう。

シングルマザーの平均年収は328万2,000円

厚生労働省の「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」1)によると母子家庭の平均年収は、児童手当なども含めて328万2,000円です。一方、児童のいる世帯全体では、平均年収が約785万円となっています。つまり、児童のいる世帯全体と比べると、母子家庭の平均年収は半分以下です。

なお、上記金額に養育費は含まれていません。養育費の平均額や目安に関しては以下の記事で詳しく解説しています。興味のある方はぜひ読んでみてください。

【関連記事】シングルマザーの養育費の相場について、詳しくはコチラ

就労年収の平均は、正社員が344万円、パートなどは150万円

つぎに、児童手当などを除いたシングルマザーの人の“就労”における平均年間収入を見ていきましょう。「ひとり親家庭等の支援について」2)によると、母子世帯の平均年間就労収入は236万円です。一方、父子世帯の平均年間就労収入は496万円です。金額の違いには雇用形態が関係しているといえそうです。

〈表〉母子世帯と父子世帯の就業状況

母子世帯父子世帯
就業状況就業している86.3%88.1%
うち正規の職員・従業員48.8%69.9%
うち自営業5.0%14.8%
うちパート・アルバイト38.8%4.9%

上図のように、母子世帯ではパート・アルバイトとして働いている人が38.8%いるのに対し、父子世帯でパート・アルバイトは4.9%にとどまります。

母子世帯の平均年間就労収入を雇用形態別に見ると、正規の職員・従業員として働いている人は344万円、パート・アルバイトなどの人は平均150万円です。以下の表は、雇用形態別の年収の割合を示したものです。

〈表〉現在就業している母の地位別年間就労収入の構成割合

正規の職員・従業員パート・アルバイトなど
100万円未満2.5%25.4%
100〜200万円未満12.8%49.5%
200〜300万円未満30.5% 20.5%
300〜400万円未満24.4%3.1%
400万円以上29.9%1.4%

正社員で働いている人の年間就労収入は、200〜300万円未満が30.5%と最も多くなっており、400万円以上が僅差(29.9%)で迫ります。一方、パート・アルバイトなどで働いている人の年間就労収入は、200万円未満の人が全体の74.9%を占めています。このことから、パート・アルバイトなどで働いている人は、比較的年収が低いといえるでしょう。

シングルマザーの人の平均収入を見てきましたが、苦しい収入状況であることが見てとれるかと思います。読者のみなさんの中にも収入が低いことに悩んでいる人も少なくないでしょう。

シングルマザーに必要な生活費はどれくらい?

画像: 画像:iStock.com/takasuu

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母子家庭の平均生活費は約20万円/月

子どもとの生活を維持するために、シングルマザーの人は月にいくら生活費が必要なのでしょうか。生活費の目安がわかれば、働き方も考えることができるでしょう。

総務省統計局が公表している「2019年全国家計構造調査」3)によると、母子家庭の1カ月当たりの生活費は約20万円となっています。

ただし、生活費は子どもの数や年齢によって変わります。さらに、子どもが高校から大学へ進学するにつれて、必要な教育費は増えていきます。ここで、子どもが公立の学校へ進学した場合、1年間の子ども1人当たりの学習費の総額を見てみましょう。

文部科学省のデータ4)によると、公立小学校の学習費総額は6年間で約201万6,000円、公立中学校は3年間で約162万6,000円、公立高校は3年間で約179万4,000円となっています。大学などへ進学を考えている場合は、塾に通わせるなど出費が増えると考えられます。さらに、入学金の支払いなど入学前に求められることもあります。

このように、子どものライフステージごとに必要な支出額は異なります。日々の生活を安定させながら、子どもの教育費は早めに準備しておきたいものです。

なお、母子家庭の生活費の詳細や、子どもの数に応じた生活費のシミュレーション、月々の食費の平均などについて、以下の記事でご紹介しています。ぜひ参考として読んでみましょう。

【関連記事】シングルマザーの生活費について、詳しくはコチラ

※1:学習費総額とは、子どもの学校教育及び学校外活動のために支出した経費の総額のことです。

母子家庭や収入が低い世帯が受けられる、5つの優遇制度・免除制度

画像: 画像:iStock.com/kohei_hara

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前述のとおり、シングルマザーの人の中には収入が低い人も多いため、所得税・住民税といった税金や、健康保険や国民年金の保険料の支払いが負担に感じる場合もあるでしょう。

そんな時に頼りにしたいのが、ひとり親家庭であったり、一定以下の収入だったりする時に受けられる優遇制度や免除制度です。これらの制度を利用すると、実収入は変わりませんが、手元に残るお金は増えることになります。制度が難しく感じられるかもしれませんが、とても効果がありますのでぜひ活用してください。

それぞれの制度はどのような場合に活用できるか条件を見ていきましょう。

(1)所得税に関する優遇制度

母子家庭などのひとり親家庭には、「ひとり親控除」という税制上の優遇措置があります。これは、一定の要件を満たすことで所得から35万円を控除できる制度です。控除によって課税対象となる所得が減るため、所得税や住民税の負担が軽くなります。

控除を受けるには、つぎの3つの条件すべてを満たす必要があります。

〈表〉ひとり親控除の要件

控除額対象者
35万円(1)事実上婚姻関係にあると認められる一定の人がいないこと。
(2)生計を同じくする子どもがいること。
(3)合計所得金額が500万円以下であること。

なお、(2)の子どもについては、これまで所得金額が年間48万円を超えると、控除対象から外れることになっていました。しかし、令和7年度税制改正によって、所得金額の要件は58万円に引き上げられました6)

ひとり親控除を適用するには申請が必要です。申請方法は2つあります。年末調整でひとり親控除の申請をする方法と確定申告でひとり親控除の項目に記入して申請する方法です。

(2)住民税に関する免除制度

住民税には所得割と均等割の2種類があります7)。所得割は前年の所得に対して一律10%が課税されます。一方、均等割は所得に関係なく定額で課税されます。ただし、下記の条件にあてはまる場合は、所得割も均等割も課税されず、住民税は非課税になります。住民税が非課税になる人の条件8)は、下記の2つが挙げられます。なお、非課税になるための申告は必要ありません。

〈表〉住民税が非課税になる人の条件

・ひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下(給与所得者の場合は、年収204万4,000円未満)。
・前年の合計所得金額が市区町村の条例で定める額以下。

なお、労災保険の給付(休業補償給付など)・失業手当(基本手当)・傷病手当金・児童手当・児童扶養手当・遺族年金・障害年金などは非課税所得なので所得には含まれません9)

(3)国民年金に関する免除制度

経済的に国民年金の保険料の支払いが困難な場合は、申請することで保険料の納付を免除してもらえる制度があります10)。たとえば、前年の所得が一定額以下の場合や、失業した場合などが対象となります。免除される額は、全額、3/4、半額、1/4の4種類です。

申請せずに未納のままにしておくと、万が一の事故や病気で障害を負ったり、死亡したりした場合に、障害年金や遺族年金を受け取れないおそれがあります。保険料の支払いが難しいからと放置せず、お住まいの市区町村の窓口や年金事務所へ相談するといいでしょう。

また、免除を受けた場合は、その分、将来受け取れる年金額が減ってしまいますが、10年以内であれば追納(あとから支払う)することで、受け取れる年金額を本来の水準に近づけることができます。余裕ができたタイミングで、なるべく早めに追納を検討するといいでしょう。

(4)国民健康保険に関する減免制度

勤務先で社会保険に加入していない人は、国民健康保険に加入することになります。前年の所得が一定額以下の家庭は、所得に応じて国民健康保険料が減額されます11)。この場合申請は不要です(※)。また、やむを得ない理由で失業し国民健康保険に加入する場合や、所得の減少があった場合、保険料が軽減されます。ご自身が対象になるかなど、お住まいの市区町村の窓口へ相談しましょう。

※:保険料の軽減は原則として自動で適用されますが、軽減の判定には前年の所得が必要となります。そのため、収入がある場合は確定申告を、収入がない場合でも「収入がなかった旨の申告」をお住まいの市区町村に行う必要があります。

(5)保育料に関する軽減制度

子育て家庭の場合、幼稚園、保育所、認定こども園などを利用する3歳から5歳までの子どもは利用料が無料になります12)。また、子どもが0歳から2歳までの場合は、住民税非課税世帯を対象として利用料が無料になります。幼稚園や保育所、認定こども園に加え、地域型保育も同様に無料です。なお、住民税非課税世帯とは、前述の「住民税が非課税になる人の条件」にあてはまる世帯を指します。

未就学児の子どもを預けて働くシングルマザーの人の経済的な負担軽減になるでしょう。

ちなみに、無償化の対象となる幼稚園や認可外保育園は、お住まいの市区町村から認定を受けている必要があります。条件が異なる場合がありますので、お住まいの市区町村で確認しましょう

シングルマザーが受けられる手当とは?

画像: 画像:iStock.com/Kazuma seki

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前述したように、シングルマザーの人が就労で得られる収入は多くないのが現状です。優遇制度や免除制度を利用できたとしても、経済的に余裕がある状態にはなかなかならないこともあるでしょう。

そこで忘れてはいけないのが、シングルマザーの人が受けられる様々な手当です。手当は現金での受け取りができる場合が多いため、家計の助けとして実感を得ることができるでしょう。代表的な手当には以下のようなものが挙げられます。

〈表〉シングルマザーが受けられる代表的な手当

・児童扶養手当
・児童手当
・ひとり親家庭の家賃補助手当
・ひとり親家庭等医療費助成制度
・就学援助制度
・高等学校等就学支援金制度
・高等教育の修学支援新制度

手当を受けるために申請が必要なものもあります。これらの存在を知らないと、受けられるはずの手当を受けられないままになってしまいます。手当はいくらもらえるのか、申請は必要なのかどうかを把握して漏れがないようにしましょう。

シングルマザーの人がもらえる手当については、概要・条件・手続きまで、以下の記事で詳しくご紹介しています。ぜひ読んでみましょう。

【関連記事】シングルマザーが受けられる手当について、 詳しくはコチラ

シングルマザーが収入を増やす方法は? おすすめ2つを紹介

画像: 画像:iStock.com/MicroStockHub

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1人で子どもを育てていくシングルマザーの人にとって、支援制度や手当があることは、とても心強いものです。一方で、これらのサポートは所得制限のあるものが多く、低収入のシングルマザーの人を支えるものとなっています。

低収入から抜け出して自立し、ゆとりある生活を送るために、収入を増やしていきたいと考えている人もいるかもしれません。子育てと仕事を両立しながら収入を増やす方法を2つご紹介します。

パート掛け持ちよりも、正社員になることを目指す

前述のとおり、正社員として働くシングルマザーの人の場合、年間就労収入は平均344万円、パート・アルバイトなどとして働く場合は平均150万円です。収入が少ないからといってパートを複数掛け持ちすると、子どもとの時間を確保できず、精神的にも体力的にも疲れてしまいます。

パート・アルバイトなどで働く場合、1週間の所定労働時間が正社員の人と比べて短くなる、もしくは、雇用期間を定めて雇用契約を結ぶことになります13)

労働時間が短くなると、あまり多い収入は期待できず、パートを掛け持ちして収入を増やすことを考えるようになってしまいます。

また、雇用期間の定めがある場合は、契約更新されない可能性もあり、雇用契約が終了してしまうと、再度、就職活動をしなければなりません。それだと就職活動のたびに、生活への不安を感じることでしょう。

一方で、正社員は、無期雇用契約であるため最長で定年まで働くことができます。長期的に安定した収入を得られ、生活の見込みも立てやすくなります。また、退職金制度のある企業へ就職していれば、定年退職後の退職金を老後資金に充てることもできます。正社員で働くシングルマザーの人にとっては大きなメリットといえます。

長期的に安定した収入を得ながら、計画的に教育費を貯め、資産形成することを考えると、パート・アルバイトなどで働くよりも正社員で働くほうが安心感を得られるでしょう。

特技を活かして副業を始める

さらに収入アップを目指したい人は、副業を始めることをおすすめします。シングルマザーの人は、子育ても仕事も1人でしなくてはなりません。できれば収入を増やしつつ、子どもとの時間も確保したいのが本音ではないでしょうか。自宅でできる副業であれば、時間の使い方次第で子どもとの時間も確保しながら、効率よく収入を増やしていけるでしょう。

在宅でできる仕事では、ウェブライターやウェブデザイナー、動画編集、事務代行などが挙げられます。たとえば、経理の経験やスキルがあれば、代行で経理業務を請け負うこともできます。特に個人起業家の人は1人ですべての業務を行っており、手が回らないと感じているようです。このような時に、経理業務を代行することができます。役に立つ仕事で感謝されながら、副収入を得られます。

収入を増やすためにも、これまでの経験やスキルなど、特技を活かして副業を始めてみるといいでしょう。副業で安定的に収入を得られるようになれば、将来的に起業も夢ではありません。

「起業は何から始めればいいの?」という人でも、各自治体で様々な女性の起業支援があるので情報収集をしてみてもいいでしょう。経済産業省では、女性の起業を後押しするために、全国のネットワークで女性起業支援をしています14)。創業・起業支援に関する民間団体や地方自治体などが参加しており、起業のためのセミナーなども開催されているので、参考にしてみましょう。

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経済的にも精神的にもバランスの取れた働き方を目指しましょう

画像: 画像:iStock.com/artisteer

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1人で家庭を守るシングルマザーの人が働いて得られる収入は十分とはいえない場合がほとんどでしょう。しかし、様々な優遇制度や免除制度があります。これらを利用しながら生活を安定させていくことが大事です。

また、現代では家にいながらインターネットを活用した副業や収入アップの方法もたくさんあります。自身がやりがいを感じられる仕事で、経済的にも精神的にもバランスの取れた働き方を目指しましょう。

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