シングルマザーの人の中には、お金の心配で頭を悩ませている人も多いことでしょう。「家事や仕事、子育てなど、自分1人で何とかしなければならない…」と、不安で押しつぶされそうな気持ちになることがあるかもしれません。

そんなシングルマザーの人たちに知っていただきたいのが、国や自治体が支給する手当や支援制度です。知っているか知らないかで、経済的にも精神的にも大きく違いが出てくるはずです。

この記事では、手当や支援制度を一覧でご紹介しながら受給条件や支給額の目安を、自身もシングルマザーである女性のお金の専門家・山﨑かづ偀が解説します。

この記事を読むことで、手当や制度への理解を深めていただき、少しでもシングルマザーの人の生活が楽になれば幸いです。

※この記事は、2022年8月8日に公開した内容を最新情報に更新しています。

この記事の著者

山﨑 かづ偀(やまさき かづえ)

ファイナンシャルプランナー、マイライフエフピー ®認定ライター、女性のお金の専門家。
証券会社や銀行のコールセンターで、通算8年半で延べ7万件以上の顧客対応を行う。自身の離婚後、保険の見直しや節約術で赤字家計を改善し貯金を増やす。「明るい未来のお手伝い」をモットーに、家計の見直しに悩む方へ 講座・執筆、相談業務を行っている。

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【TOPICS】母子家庭が受給できる給付型奨学金とは?

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シングルマザーの人の切実な悩みのひとつが教育費でしょう。中でも子どもが高校や大学へ進学するためにはまとまった金額が必要となります。家計状況によっては、経済的な理由で進学を諦めかねません。

そこで様々な手当や制度を解説する前に、特に注目してほしい「高等教育の修学支援新制度」1)2)をご紹介します。

これは、2020年4月から始まった大学・専門学校などへの進学者を対象とした支援制度です。入学金・授業料の免除・減額に加え、給付型奨学金が受けられるという、かなり手厚いものとなっています。給付型奨学金なので返還の必要がありません。手続き方法や支給額などの詳しい内容については後述しています。ぜひ確認してみてください。

シングルマザーが受給できる、代表的な4つの手当

画像: 画像:iStock.com/Devenorr

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母子家庭は、収入が多くない傾向にあることから、手当や支援制度を有効活用することが重要です。そこで、受給することができる代表的な手当について、受給条件や支給額、手続き方法などを見ていきましょう。

なお、母子家庭の平均収入や収入アップのコツなどは、以下の記事でご紹介しています。こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。

【関連記事】シングルマザーの収入について、詳しくはコチラ

国の制度①児童扶養手当

画像1: 画像:iStock.com/ferrantraite

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児童扶養手当3)とは、ひとり親家庭などの生活の安定と自立の促進を目的として支給される手当です。2024年11月1日から児童扶養手当法等の一部が改正され、所得限度額と第3子以降の加算額が引き上げられました。

●受給条件
手当の対象は、原則として高校修了(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの子ども)までの子どもを育てているひとり親です。支給額は世帯収入によって変わります。

●支給額の目安
支給額は、物価の動きに合わせて毎年見直されています。また、支給額は一律ではなく、子どもの数や世帯収入によって変わり、全部支給と一部支給という2段階の構造となっています。

しくみについて、詳しく見ていきましょう。

まず、児童扶養手当には所得制限があります。制度上、「所得制限限度額」と表記され、この限度額によって、支給額が全部支給と一部支給のどちらかに分けられます。全部支給のほうが、より収入が低い人が受けられる区分です。

前年の所得が全部支給か一部支給のどちらかの限度額より少なければ、児童扶養手当を受け取ることができます。しかし、一部支給の限度額を超えてしまうと、手当を受給することはできません。

〈表〉所得制限限度額について(2024年11月から)4)

扶養親族などの人数全部支給の所得制限限度額(年収)一部支給の所得制限限度額(年収)
0人69万円(142万円)208万円(334万3,000円)
1人107万円(190万円)246万円(385万円)
2人145万円(244万3,000円)284万円(432万5,000円)
3人183万円(298万6,000円)322万円(480万円)
4人221万円(352万9,000円)360万円(527万5,000円)
5人259万円(401万3,000円)398万円(575万円)

一例ですが、筆者の場合は、離婚する前年まではフルタイム勤務をしていて、娘(1人)は元夫の扶養に入っていました。そのため、限度額を超えてしまい、離婚して仕事が変わった1年目は所得が減ったものの、手当を受給できませんでした。

なお、児童扶養手当は子どもが2人、3人と増えたからといって、2倍、3倍と支給されるわけではありません。2人目以降は加算される形で金額が増えることになります。一部支給の場合は、前年の所得金額によって、手当の支給額が10円刻みで決定されます。

〈表〉児童扶養手当の月額(2025年度3)4)

扶養親族などの人数全部支給一部支給(年収)
1人4万6,690円1万1,010~4万6,680円
2人の加算額1万1,030円5,520~1万1,020円
3人以降の加算額児童2人目と同額5,520~1万1,020円

〈図〉児童扶養手当の支給額のイメージ(月額)

画像: ※:千葉県市川市「児童扶養手当について」をもとに執筆者作成。 ※:子ども2人(扶養)で、一部支給①所得200万円②所得250万円③所得265万円のそれぞれのケースで試算。

※:千葉県市川市「児童扶養手当について」をもとに執筆者作成。
※:子ども2人(扶養)で、一部支給①所得200万円②所得250万円③所得265万円のそれぞれのケースで試算。

●手続き方法
手続きは、お住まいの市区町村の窓口に行き、必要書類を提出して行います。郵送での手続きを受け付けている自治体もあるため、希望する場合は必要書類⑤の確認とあわせて、事前に市区町村へ問い合わせましょう。

【必要書類】

①児童扶養手当認定請求書
②請求者と該当する子どもの戸籍謄本
③マイナンバー確認書類
④本人確認書類(免許証や健康保険証など)
なお、マイナンバーカードがあれば、③と④両方を兼ねて手続きできます。
⑤そのほかの必要書類(請求者本人名義の預金通帳や、養育費についての書類など、詳しくは市区町村の窓口で事前に確認しましょう)

また、児童扶養手当を継続して受け取るためには、認定されたあとも毎年8月に現況届を提出する必要があります。

●支給タイミング
手当は、奇数月(1、3、5、7、9、11月)の11日にその前月までの2カ月分が支給されます。支給タイミングは、原則、申請した月の翌月分からの支給となります。支給日が土曜日、日曜日、祝日にあたる場合は、その直前の金融機関の営業日に支給されます。

国の制度②児童手当

画像2: 画像:iStock.com/ferrantraite

画像:iStock.com/ferrantraite

児童手当5)は、生活の安定を図ること、そして、子どもの健やかな成長を応援することを目的としている制度です。子どものいる家庭なら、ひとり親に限らず受給することができます。児童扶養手当と名称は似ていますが、全く別の手当です。

●受給条件
手当を受けられる人は、0歳から高校修了(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの子ども)までの子どもを育てている養育者です。

●支給額の目安
支給額は、子どもの人数や年齢によって変わります。2024年10月分(12月支給)から制度改正となり、支給対象が拡大され支給要件も緩和されています。

〈表〉児童手当の支給額(月額)

子どもの年齢支給額
3歳未満一律1万5,000円
3歳以上
高校生年代まで
1万円
(第3子以降は3万円)

●手続き方法
児童手当を受給するためには、認定請求の手続きが必要です。子どもが生まれた時、またはほかの市区町村から転入した時、今のお住まいの市区町村の窓口に認定請求書などの必要書類を提出して手続きをしましょう。

申請しなければ受給することができないため、手続きをすることを忘れないようにしてください。

【必要書類】

①認定請求書
②健康保険被保険者証の写しなど
③請求者名義の金融機関の口座番号がわかるものなど
※:転居してきた人は、前住所地の市区町村長が発行する前年度分の児童手当用所得証明書が必要

認定後継続して受給するためには、毎年6月に現況届の提出が必要でしたが、2022年6月より、現況届が原則廃止5)されています。

●支給タイミング
市区町村の認定を受ければ、原則として、申請した月の翌月分の手当から支給されます。毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月(偶数月)に指定の金融機関口座に2カ月分がまとめて振込まれます。出生日や転入した日(異動日)が月末に近い場合には、その日から15日以内であれば、申請月分から支給される15日特例5)があります。

自治体(東京都)独自の制度:児童育成手当

画像: 画像:iStock.com/Mlenny

画像:iStock.com/Mlenny

児童育成手当7)は、東京都独自の制度です。東京都に住んでいる人が受給でき、育成手当と障害手当という2種類に分かれています。順番に見ていきましょう。

【育成手当の概要・支給額・受給条件】

育成手当8)は、ひとり親家庭などの子どもの福祉の増進を図ることを目的とした手当です。手当を受けられるのは、原則として高校修了(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの子ども)までの子どもを育てているひとり親です。支給額は、児童1人につき月額1万3,500円です。

【障害手当の概要・支給額・受給条件】

障害手当9)は、精神または身体に障がいを有する子どもの福祉の増進を図ることを目的とした手当です。手当を受給できる人は、子どもが20歳未満でつぎのいずれかの障がいに当てはまる場合の父母または養育者です。支給額は、児童1人につき月額1万5,500円です。

【対象となる障がい】

  • 知的発達障害で愛の手帳1、2、3度程度
  • 身体障害で身体障害者手帳1、2級程度
  • 脳性まひ、または進行性筋萎縮症

●手続き方法
育成手当・障害手当の手続き方法はどちらも同じです。受給するためには、申請が必要です。下記の必要書類を市区町村の窓口へ提出しましょう。ただし、申請者の所得額が下記の制限額を超えてしまうと、いずれの手当も受給することができません。

〈表〉所得制限について

扶養親族の人数所得制限限度額
0人36万4,000円未満
1人398万4,000円未満
2人436万4,000円未満
3人436万4,000円+3人目以降1人増えるごとに38万円を加算した額未満
※:扶養親族が0人とは、たとえば離婚後も子どもは父親の扶養のまま、母親と一緒に暮らしている場合を指します。

【育成手当の必要書類】

①申請者と該当する子どもの戸籍謄本
②手当を受ける本人名義の通帳
③請求者と該当する子どものマイナンバー確認書類
④親が重度の障がいを有する場合は、医師の診断書(所定の診断書)または身体障害者手帳(1、2級及び3級の一部)
⑤申請者の本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証など)
そのほかにも要件によって必要書類がある場合。

【障害手当の必要書類】

・戸籍謄本(受給対象者・対象児童のもの)
・障がいを証明する書類
・通帳
・手当を受ける人と子どものマイナンバー確認書類
・窓口に来られる人の本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証など)
※:要件によっては、ほかに書類が必要な場合もありますので、詳しくは、事前にお問い合わせください。

●支給タイミング
手当は原則として申請した月の翌月分から支給されます。支給タイミングは、10月・2月・6月の年3回9)です。それぞれの前月分までの4カ月分が指定の金融機関口座へ振り込まれます。

自治体独自の制度:ひとり親家庭の家賃補助手当

画像: 画像:iStock.com Nuthawut Somsuk

画像:iStock.com Nuthawut Somsuk

お住まいの地域によっては自治体が独自に設けている手当を利用することができます。その代表的なものが、よりよい住環境への転居を促すための制度であるひとり親家庭の家賃補助手当です。

たとえば、兵庫県神戸市10)では、月額最高1万5,000円の補助が受けられ、神奈川県厚木市14)では、家賃月額に応じて月額最高1万円の補助が受けられます。

〈表〉家賃補助の金額例(神奈川県厚木市の場合)

家賃月額補助される月額
1万円以上1万3,000円未満1,300円
1万3,000円以上1万6,000円未満2,600円
1万6,000円以上1万9,000円未満3,900円
1万9,000円以上2万2,000円未満5,200円
2万2,000円以上3万円未満6,500円
3万円以上4万6,000円未満7,800円
4万6,000円以上5万円未満9,100円
5万円以上6万円以下1万円
※:家賃月額が1万円未満または6万円を超える場合は家賃補助を受けられません。
※:家賃には敷金、権利金、共益費、駐車場料金、電気料金、ガス料金、水道料金などは含まれません。

自治体によって受給条件が異なり、所得制限や転居前の住居が公営住宅でないことなどの申込要件があります。お住まいの自治体に制度があるかどうかも含めて、問い合わせてみることをおすすめします。自治体によって、ひとり親世帯家賃補助や母子家庭等家賃助成など、名称が異なる場合がありますので、お問い合わせの際はご注意ください。

●手続き方法
ここでは神奈川県厚木市11)を例として説明しますが、各自治体で、手続き方法が異なる可能性がありますので、事前にお住まいの市区町村の窓口に問い合わせてみましょう。

神奈川県厚木市の場合、条件にすべて当てはまる必要があります。条件に当てはまる人は、下記の必要書類を準備して市区町村の窓口で手続きを行います。

【受給条件(神奈川県厚木市の場合)】

・原則として18歳に達する日以後の最初の3月31日までの子ども(つまり、高校卒業までの子ども)と同居し、育てているひとり親。
・市内に住所を有している。
・家賃月額が1万円以上6万円以下。
・前年(1月から3月申請の場合は前々年)の所得が一定額以下である。
・生活保護法の住宅扶助を受けていない人。

【必要書類】

①母子家庭等家賃助成申請書
②戸籍謄本(新規申請のみ、児童扶養手当の受給者は省略可)
③建物賃貸借契約書の写し
④申請月分の家賃領収書等
⑤個人番号利用に関する同意書(必要な人のみ)
⑥所得証明書(必要な人のみ)
⑦預金通帳など

●支給タイミング
8月、12月、4月の末日(金融機関が休みの場合は、その直前の金融機関営業日)にそれぞれ前月分までが指定の口座に振込まれます14)。支給のタイミングは、たとえば、4月に申請して支給が決定した場合、4〜7月までの4カ月分が8月末日に振り込まれます。

覚えておきたい! 9つの減免制度・補助制度

ここまでは現金支給を受けられる主な手当の制度をご紹介しました。しかし、母子家庭が利用できるのは、現金支給だけではありません。経済的な負担を減らすことができる減免制度・支援制度はいくつもあるのです。安定した生活を送るために、これらの制度もうまく活用しましょう。

(1)国民年金保険料免除・納付猶予制度

画像: 画像:iStock.com/Scacciamosche

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日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人は、国民年金に加入することになります。国民年金の保険料は毎月1万7,510円(2025年度)12)であり、母子家庭としては決して負担は軽くありません。

経済的に納付が難しい場合は、保険料が減免されたり、納付が猶予されたりする制度があります13)。手続きは、お住まいの市区町村の窓口(保険年金課など)あるいは年金事務所に、個人番号または基礎年金番号の確認ができるもの、本人確認書類などを持参して行います。

手続きせずに未納のままにしてしまうと、いざという時に障害基礎年金や遺族基礎年金が受けられない場合があります14)。また、未納の期間は年金の受給資格期間とはなりませんので、将来の年金が少なくなってしまう可能性もあります。

(2)国民健康保険料の軽減

画像: 画像:iStock.com/tadamichi

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国民健康保険15)は、勤め先の社会保険に加入していない人が加入する公的医療保険制度です。保険料の計算方法16)は各市区町村の条例によって定められており、つぎの4種類に分けられます。

〈表〉国民健康保険料の決定方法

種類計算方法
均等割被保険者の人数によって決まる
平等割世帯ごとに課される
所得割被保険者の所得によって決まる
資産割被保険者の固定資産税額に応じて決まる

上記の表の中で、所得割は、前年の所得をもとに計算されます。この所得が一定額を下回っている場合は、国民健康保険料の一定割合(7割、5割、2割)が減額されます。この減額は、保険料の計算時に自動的に適用されますので、ご自身で申請する必要はありません。

また、災害、そのほか特別な事情によって国民健康保険料を納めることが難しい場合は、減免や納付猶予を受けられる場合があります。そのほか特別の事情には、非自発的失業者(倒産、解雇などで離職した人)が該当します。

(3)ひとり親家庭等医療費助成制度

画像: 画像:iStock.com/oatawa

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ひとり親家庭等医療費助成制度17)は、母子家庭の医療費を助成してくれる制度です。医療機関の窓口で支払う自己負担を軽減してくれます。

自治体によって内容は異なりますが、たとえば北海道函館市の場合18)だと、住民税非課税世帯は、0~20歳未満の子どもは自己負担なしとなります。課税世帯でも自己負担額は1割となります(3歳未満の子どもは自己負担なし)。

この医療費助成を受けるためには、受給者証の交付申請手続きが必要です。制度内容や手続き方法などは自治体によって異なりますので、お住まいの市区町村の窓口で確認してみましょう。

(4)ひとり親控除(税金の優遇措置)

画像: 画像:iStock.com/sefa ozel

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ひとり親控除19)とは、2020年に新設された新しい所得控除です。シングルマザーの人やシングルファザーの人(男女や結婚歴は問いません)が所定の条件を満たした場合に35万円の所得控除を受けられる税制です。一定の金額(35万円)が所得から差し引かれるので、その分所得税や住民税が軽減されます。

対象条件は、下記の3つです。

  • 事実婚の相手がいないこと。
  • 生計をともにする子どもがいること。
  • 年間の合計所得金額が500万円以下であること。

(5)幼児教育・保育の無償化(対象:未就学児)

画像: 画像:iStock.com/recep-bg

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2015年より子ども・子育て支援制度20)がスタートしました。この制度のもと、2019年10月から幼児教育・保育の無償化21)が始まり、シングルマザーの人の経済的負担は大幅に軽減されています。

この制度では、母子家庭が幼稚園、保育所、認定こども園等を利用する場合、利用料が無料になります。ただし、無料といってもすべての子どもが対象なわけではありません。場合によっては、保育費の一部を負担しなければならないケースも存在します。

〈表〉母子家庭が受けられる支援内容

子どもの年齢内容
0~2歳児クラス住民税非課税世帯は無料
3~5歳児クラス課税世帯でも原則無料

なお、認可外保育所などは、一部無料となる場合があります。詳しくは、お近くの市区町村でご確認ください。

(6)就学援助制度(対象:小・中学生)

画像: 画像:iStock.com/maroke

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就学援助制度22)とは、経済的に困窮している家庭に学校でかかる様々な費用を支援してくれる制度です。ひとり親家庭などで児童扶養手当を受給している人などが対象となります。援助を受けられるのは、学用品費や新入学児童生徒学用品費、校外活動費、オンライン学習通信費など、様々です。手続き方法は、学校から配布される申請書に必要事項を記入して申し込みます。

(7)高等学校等就学支援金制度(対象:高校生)

画像: 画像:iStock.com/urbancow

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公立・国立・私立に関係なく、高校生の子どもがいる世帯年収910万円以下(目安)の人なら、授業料の援助を受けることができます23)

在学中の3年間受け取ることができ、支給額は公立高校では授業料を限度として、最大月9,900円です。私立高校の場合は、さらに最大2万3,100円が加算されます。

手続きは、原則として入学時の4月に必要な書類を学校などに提出して行います。詳細は各都道府県や進学先の学校に事前に確認しましょう。

なお、公立高校については2025年度から所得制限をなくし、一律11万8,800円の支援が始まりました。今後も制度の改正が見込まれますので、ニュースなどを確認するようにしましょう。

(8)高等教育の修学支援新制度(対象:大学生など)

画像: 画像:iStock.com/shih-wei

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記事の冒頭でご紹介した制度です。高等教育の修学支援新制度は、2020年4月に文部科学省によって開始されました24)。進路への意識や進学意欲があれば、世帯の経済状況にかかわらず、大学や短期大学、高等専門学校、専門学校に進学できるチャンスを確保できるようにすることを目的としています。

支援対象者の要件をクリアすれば、授業料と入学金の減免が受けられるほか、給付型の奨学金も受給できるという制度です。大きなお金が必要な大学などへの進学時の助けとなってくれるでしょう。

支援対象者の要件として、世帯年収の基準が設けられています。基準は4段階となっており、第1区分(住民税非課税世帯)から第4区分まで分類され、どの区分に該当するかによって、授業料の減免の金額や奨学金の支給額が変わります。

〈図〉4つの区分における支給額のイメージ

画像: ※1:4人家族(本人(18歳)、父(給与取得者)、母(無収入)・中学生)、本人がアパートなど自宅以外から私立大学に通う場合の支援額(年額)。 ※2:多子世帯とは、扶養する子どもが3人以上いる世帯。5人家族(本人(18歳)、父(給与取得者)、母(無収入)・高校生、中学生)、本人がアパートなど自宅以外から私立大学に通う場合の支援額(年額)。

※1:4人家族(本人(18歳)、父(給与取得者)、母(無収入)・中学生)、本人がアパートなど自宅以外から私立大学に通う場合の支援額(年額)。
※2:多子世帯とは、扶養する子どもが3人以上いる世帯。5人家族(本人(18歳)、父(給与取得者)、母(無収入)・高校生、中学生)、本人がアパートなど自宅以外から私立大学に通う場合の支援額(年額)。

なお、独立行政法人日本学生支援機構のウェブページにある進学資金シミュレーター25)で、どの基準に該当するか、おおよその確認ができます。ご自身の収入が要件に当てはまるかどうか、ぜひ確認してみてください。

奨学金の支給額26)は、先ほどの3つの区分と、進学先(国公立or私立)、そして、通学手段(自宅からor自宅外から)によって増減します。

〈表〉奨学金の月額支給額(進学先が国公立のケース)

区分自宅通学自宅外通学
大学
短期大学
専修学校(専門課程)
第1区分2万9,200円6万6,700円
第2区分1万9,500円4万4,500円
第3区分9,800円2万2,300円
第4区分7,300円1万6,700円
高等専門学校
(第4学年以上)
第1区分1万7,500円3万4,200円
第2区分1万1,700円2万2,800円
第3区分5,900円1万1,400円
第4区分4,400円8,600円

〈表〉奨学金の月額支給額(進学先が私立のケース)

区分自宅通学自宅外通学
大学
短期大学
専修学校(専門課程)
第1区分3万8,300円7万5,800円
第2区分2万5,600円5万600円
第3区分1万2,800円2万5,300円
第4区分9,600円1万9,000円
高等専門学校
(第4学年以上)
第1区分2万6,700円4万3,300円
第2区分1万7,800円2万8,900円
第3区分8,900円1万4,500円
第4区分6,700円1万900円

(9)2025年から開始「多子世帯向け大学授業料無償化制度」(対象:大学生など)

2025年度から、扶養する子どもが3人以上いる世帯を対象に、大学等の授業料無償化27)が拡充されます。この制度は「高等教育の修学支援新制度」の一環として実施され、所得制限なく支援を受けられるのが特徴です。

〈図〉多子世帯における授業料と入学金減免のイメージ

画像: ※1:4人家族(本人(18歳)、父(給与取得者)、母(無収入)・中学生)、本人がアパートなど自宅以外から私立大学に通う場合の支援額(年額)。 ※2: 5人家族(本人(18歳)、父(給与取得者)、母(無収入)・高校生、中学生)、本人がアパートなど自宅以外から私立大学に通う場合の支援額(年額)。

※1:4人家族(本人(18歳)、父(給与取得者)、母(無収入)・中学生)、本人がアパートなど自宅以外から私立大学に通う場合の支援額(年額)。
※2: 5人家族(本人(18歳)、父(給与取得者)、母(無収入)・高校生、中学生)、本人がアパートなど自宅以外から私立大学に通う場合の支援額(年額)。

【支援の対象者】

・扶養する子どもが3人以上いる世帯
・大学・短期大学・高等専門学校(4・5年生)・専門学校に通う学生
・2025年度以降の新入生および在学生

【多子世帯の要件】

・ 12月31日時点で 3人以上の子どもを扶養していること
・日本学生支援機構(JASSO)がマイナンバーで扶養状況を確認
・第1子が就職などで扶養を外れると、支援対象外になる場合あり

【申込手続き】

・2025年度入学者:入学後、学校を通じて「在学採用」として申し込み
・2026年度以降の高校3年生:「予約採用」が可能(進学前に申請)

【学業要件】

・進学前:「学修意欲」を確認(評定平均3.5以上、または面談・レポート提出)
・進学後:単位取得や出席率の基準を満たすことが必要

〈表〉支援内容(授業料・入学金の減免額)

学校種別授業料(年間上限)入学金(上限)
国公立大学最大 54万円28万円
私立大学最大 70万円26万円
短期大学・専門学校各学校の平均額に基づき支援
※:支援額は、学校を通じて直接減免される形式(現金給付ではありません)。

ただし、海外大学は対象外です。また対象となる学生のアルバイトは可能ですが、一定の収入を超えると扶養から外れるため注意が必要です。そのほか、マイナンバーを用いた税情報確認が必要になります。

この制度により、多子世帯の経済的負担が軽減され、より多くの学生が高等教育を受けやすくなります。詳細な要件や申し込み方法については、文部科学省や日本学生支援機構(JASSO)の公式サイトで確認しましょう。

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(10)職業訓練受講給付金

画像: 画像:iStock.com/tdub303

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職業訓練受講給付金28)は、正社員になって、収入アップを目指したいという人には、ぜひ知っていただきたい制度です。この制度は、再就職や転職、スキルアップを目指す人が月10万円の生活支援の給付金を受給しながら、無料の職業訓練を受講できる制度です。

【支給要件】

・本人収入が月8万円以下。(シフト制で働く人などは月12万円以下)
・世帯全体の収入が月30万円以下、世帯全体の金融資産が300万円以下。
・訓練(授業)の8割以上に出席する。
・世帯の中で同時にこの給付金を受給して訓練を受けている者がいない。
・過去3年以内に、偽りそのほか不正の行為により、特定の給付金の支給を受けていない。

職業訓練には様々なコースがあり、中には託児サービス付きのものもあります。シングルマザーの人は採用の優遇枠もありますので、気になる人は、お近くのハローワーク(マザーズハローワーク)で相談してみましょう。

〈表〉主な訓練コース

訓練コース内容
基礎ビジネスパソコン科、オフィスワーク科など
ITWEBアプリ開発科、Android/JAVAプログラマ育成科など
営業・販売・事務OA経理事務科、営業販売科など
医療事務医療・介護事務科、調剤事務科など
介護福祉介護職員実務者研修科、保育スタッフ養成科など
デザイン広告・DTPクリエーター科、WEBデザイナー科など
そのほか3次元CAD活用科、ネイリスト養成科など

自治体によるそのほかの支援制度

画像: 画像:iStock.com/kazuma seki

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上記でご紹介した減免制度は、日本全国で受けられる制度です。しかし、これ以外にも自治体独自に制定している母子家庭の支援制度は数多く存在します。実際に制定しているか、お住まいの市区町村の窓口に問い合わせてみましょう。以下では、一例をご紹介します。

(1)水道料金の減免制度

毎日使用する水道の料金も、母子家庭にとっては負担となります。自治体によっては、水道料金の減免制度があります。たとえば神奈川県の減免制度29)では、個人向けの水道料金のうち基本料金(2カ月1,844円)を減額してくれます。

神奈川県の場合、本制度の対象は、児童扶養手当を受給している母子家庭です。この減免制度は申請をしないと受けられませんので、お気をつけください。

手続きは、水道営業所窓口へ行くか、郵送、または電子申請も利用できます。必要書類は「使用量のお知らせ」などのお客様番号がわかるものと児童扶養手当証書です。

内容や手続き方法が異なる場合もありますので、制度の有無も含めて詳しくは自治体や担当地区の水道営業所などに問い合わせてみましょう。

(2)通勤・通学費用の助成制度

通勤通学にかかる交通費も母子家庭にとっては大きな負担となります。こちらも自治体によって異なりますが、様々な制度があります。

たとえば神奈川県川崎市30)では、児童扶養手当を受給している世帯の親を対象として通勤交通費を月額上限8,000円まで助成してくれます。また、兵庫県神戸市31)では、ひとり親家庭高校生等通学定期券補助事業として、児童扶養手当受給世帯やひとり親家庭等医療費助成受給世帯の児童(高校生等)の通学定期券を全額補助してくれます。ほかにもJR通勤定期券の割引32)や自転車駐輪場の割引33)など自治体によって様々な制度があります。

いずれも対象要件や手続き方法等が異なる可能性がありますので、ご自身の家庭が対象となるかどうか自治体に問い合わせましょう。

(3)粗大ごみなどの収集手数料の免除

常にかかる費用ではありませんが、引っ越しの時などにかかる粗大ごみなどの収集手数料を免除してくれる自治体もあります。

たとえば東京都江東区34)では児童扶養手当等を受給している世帯を対象に収集費用を免除してくれますし、神奈川県横浜市35)ではひとり親家庭等医療費助成の対象世帯に年間で4個まで粗大ごみの処理手数料を免除してくれます。このような制度もいざという時のために覚えておくといいでしょう。

【コラム】自治体の窓口のワンストップ化が推進されている

画像: 画像:iStock.com/LukaTDB

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これまでにご紹介した様々な制度は便利な反面、「担当部署がどこだかわかりにくい」「手続き方法がわかりにくい」「自分に合った支援はどれなのかわからない」など、仕事や育児、家事に忙しいシングルマザーの人には、利用しづらいものでした。

そんな中、自治体によっては、より使い勝手のよいものにするため、担当窓口をワンストップ化させているところもあります36)

たとえば、大阪府枚方市ではひとり親家庭応援ガイド37)というシステムを設けています。スマートフォンやパソコンから質問に答えていくと、状況に応じた手続き内容や対象となる支援を洗い出し、手続きに必要な書類や持ち物などを案内してくれるというものです。こういったシステムなら、市区町村の窓口の時間を気にせずに手続き方法を確認できるでしょう。

手当や支援制度を賢く活用すれば、生活が今よりもっと楽になる!

画像: 画像:iStock.com/fizkes

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いかがでしたか。国や自治体によるシングルマザーの人たちを助けてくれる手当や支援制度は、想像していた以上にたくさんあったのではないでしょうか。これらをうまく活用できれば、経済的にも精神的にもゆとりが生まれ、安定・安心が得られるのではないでしょうか。この記事が参考になり、読者のみなさんの力になれば幸いです。

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