原則65歳以降の人に毎月支給される国民年金。老後の生活を支える重要な制度ですが、少子高齢化の影響で「老後に年金は支給されない」「だから払わなくてもいい」という意見を聞くこともあります。その結果、国民年金保険料を払いたくないと考えたり、払わないとどうなるか気になったりしている人もいるでしょう。

この記事では、社会保険労務士でありファイナンシャルプランナーでもある三藤桂子さん監修のもと、国民年金保険料を払わないとどうなるのか、そもそも払わないことは可能なのか、払えない場合の制度はあるのかなど、国民年金保険料の支払いにまつわる疑問を解説。払わなくてもいいと考えることのリスクについて説明します。

※この記事は、2023年6月8日に更新しています。

この記事の監修者

三藤 桂子(みふじ けいこ)

社会保険労務士法人エニシアFP代表。三角桂子の名前で社会保険労務士・ファイナンシャルプランナーとして活動している。筆名は三藤桂子。
会社員時代に年金のしくみに興味を持ち、社労士、FPの資格を取得。会社側と社員(個人)側、両方の立場を理解することで、社労士として労務・年金相談、FPとして家庭内のお金の悩み等をサポートしている。

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国民年金保険料を払わないリスク:財産が差し押さえられる(近い将来)

画像: 画像:iStock.com/malerapaso

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国民年金保険料を払わない場合、未納時のリスクは大きく分けて2つ考えられます。数カ月や1年といった「近い将来」に発生することと、老後の受給額が変わるなどの「遠い将来」に発生することです。

まずは近い将来に発生するリスクとその流れを確認しましょう。

〈図〉国民年金保険料を払わない場合に起こることの流れ

画像: 国民年金保険料を払わないリスク:財産が差し押さえられる(近い将来)

近い将来に起こることとしては、相談員の戸別訪問や督促状の送付、最悪の場合は財産の差し押さえがあります。具体的にはどのようなことが起こるのか詳しく見ていきましょう。

①納付督励

国民年金保険料の支払いに滞納があると、まずは年金制度を運営する日本年金機構から、電話や戸別訪問での納付督励が行われます。また、それと併せて「国民年金未納保険料納付推奨書(催告状)」や「特別催告状」という、未納期間や未納金額が記載された請求書のようなものが届きます。これらは複数回、場合によっては注意喚起の色(黄色やピンク)を使用した封筒で届きます。

②最終催告

度重なる納付督励を実施しても手続きや支払いをしない人には、最終催告状が送付されます。最終催告状とは強制徴収の対象者に対し、納付書とともに送付する催告文書で、記載した指定期限までに納付を求め、指定期限までに納付されない場合は滞納処分(財産差し押さえ)を開始することが明記されています。財産差し押さえがかなり近づいている状況なので、記載された指定期限までに必ず手続きを行いましょう。

③督促状

最終催告状の指定期限までに納付が確認できなかった場合、督促状が送付されます。督促にはペナルティ(延滞金)が発生します。仮に国民年金保険料を納付しても年間最大14.6%1)の延滞金が発生します。ただし督促状の指定期限までに完納した場合などは延滞金が徴収されません。

④財産差し押さえ

督促状の指定期限までに国民年金保険料を納付しない場合、国税徴収法により、滞納者だけでなく連帯納付義務者(滞納者の世帯主や配偶者)の財産差し押さえが実施されます。年間所得が300万円以上、未納期間が7カ月以上の人は強制徴収の対象です。財務調査も行われ、給与・金融資産・有価証券・不動産・自動車といった換金可能な資産が全て調査されます。

財務調査の結果、財産差し押さえが必要であると判断されると、「財産差し押さえ予告通知書」が送付されます。その後は裁判所も関与し、実際に財産が差し押さえられてしまいます。

強制徴収の対象は2014年度から段階的に拡大しており、2013年度の財産差し押さえ件数は10,476件2)であるのに対し、2019年度には20,590件3)と大幅に増加しています。2020年と2021年は、それぞれ41件と46件と減少しているものの、こちらは新型コロナウイルス感染症の影響をふまえ、強制徴収に関する手続きを一部停止したためです。国民年金保険料の滞納がある人は「自分は大丈夫」と高を括らず、すぐに手続きを行いましょう。

年金の支払い状況がわからない場合は、「ねんきん定期便」などで確認します。以下の記事でくわしく解説しているので、併せてご覧ください。

【関連記事】「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」などで年金の支払い状況を確認する方法はコチラ

国民年金保険料を払わないリスク:年金額が減る(遠い将来)

画像: 画像:iStock.com/deeepblue

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つぎに、国民年金保険料を払わない場合の遠い将来に起こるリスクも見ていきましょう。といっても、これはシンプルに「年金が受け取れない」というものです。各種年金の受給額とそのしくみを確認しながら、年金の受け取りにどのようなデメリットが発生するのかを解説します。

【国民年金】まずは老齢基礎年金のしくみを理解しよう

画像: 画像:iStock.com/Koji_Ishii

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65歳から受け取れる国民年金の老齢基礎年金は、20歳から60歳になるまでの40年間、漏れなく納め続けた場合に満額で支給されます。その金額は令和5年度を基準にすると月額6万6,250円、年間で79万5,000円(新規裁定者の場合)です。加入年数や受給開始年齢によって年間の受給額は変わります。それを割り出す計算式は以下のとおりです。

老齢基礎年金満額×加入月数÷480

※老齢基礎年金満額…毎年変動。令和5年度は79万5,000円

【国民年金】受給額が0円?国民年金保険料を払った場合と払わなかった場合の受給額を知っておこう

画像: 画像:iStock.com/gtlv

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前述のように加入月数が短いほど受給額も少なくなるため、未納になっている人は注意しないといけません。

では、国民年金保険料を払った場合と払わなかった場合では、老齢基礎年金の受給額にどれだけの差が発生するのでしょうか。3つのパターンを例に、それぞれの納付額・受給額をシミュレーションしてみました。

払った期間払った金額
(総額)
もらえる金額
(総額)
Aさん40年間792万9,600円1,590万円
(満額時の年間受給額79万5,000円×20年間)
Bさん10年間198万2,400円397万5,000円
(納付期間10年間の場合の年間受給額19万8,750円×20年間)
Cさん0年間0円0円
※それぞれ国民年金の加入者を想定
年間の納付額:1万6,520円×12カ月=19万8,240円(令和5年度の保険料をもとに計算)
受給期間:65~85歳として計算
満額時の受給額:79万5,000円(新規裁定者/令和5年度)で計算

このように、40年分の国民年金保険料を払って85歳まで生きた場合、納めた金額の約2倍に当たる1,500万円以上を受給できることになります。10年分しか払っていない場合でも、納めた金額の約2倍は受給できますが、金額の大きさは全く違います。年金の受給金額は毎年の物価や賃金の状況によって変わりますが、生活基盤を支える大きな収入源になることは間違いありません。

また、国民年金に通算10年以上加入していない場合、年金の受給資格がなくなってしまうことも頭に入れておきましょう。

【厚生年金】老齢厚生年金の受給額への影響

画像: 画像:iStock.com/metamorworks

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一方、厚生年金保険(以下「厚生年金」と表記)の老齢厚生年金は会社で払われた給料と加入年数によって受給額が変わります。正確な受給額を知りたい場合は、以下の計算式で計算してみましょう。

〈2003年3月31日までの加入期間分〉

平均標準報酬月額×7.125÷1,000×加入月数

〈2003年4月1日以降の加入期間分〉

平均標準報酬月額×5.481÷1,000×加入月数

平均標準報酬月額とは、「被保険者だった期間の標準報酬月額の合計」を「被保険者だった期間の月数」で割った額のことです。ただし、正確な平均標準報酬月額がわからなくても、受給額をざっくりと把握することもできます。以下のように計算してみるとよいでしょう。

月収(額面)×5.5÷1,000×加入月数

厚生年金は基本的に1カ月以上の加入期間があれば受給できる(前提として、10年以上の受給資格期間が必要)ほか、未納もほとんど発生しないため、会社員でいる場合には受け取れないことを心配する必要はないでしょう。

遺族基礎年金、障害基礎年金の受給額への影響

画像: 画像:iStock.com/ljubaphoto

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国民年金保険料の未納の場合にもうひとつ注意したいのが、遺族年金と障害年金の受け取りにも支障が出ることです。年金というと老後に支給される老齢基礎年金に目が向きがちですが、遺族年金と障害年金も万が一の際、非常に心強い制度です。払わないことで起こるリスクを把握しておきましょう。

遺族基礎年金・障害基礎年金は国民年金、遺族厚生年金・障害厚生年金は厚生年金に加入中、もしくは加入していて条件を満たす場合に受給できます。遺族基礎年金と障害基礎年金について詳しく見ていきましょう。

遺族基礎年金

画像: 画像:iStock.com/bee32

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国民年金加入者が亡くなった際、遺族に支給されるのが遺族基礎年金です。受け取るための条件は、被保険者が25年間にわたって国民年金保険料を支払い続けていること。それがクリアできなかった場合は、以下のいずれかの要件を満たしていることが求められます。

※遺族年金の受給対象者は、亡くなった人に生計を維持されていた遺族が受け取れます。配偶者または子(年齢要件等あり)など。

  1. 亡くなった月の前々月までを対象とした公的年金の加入期間において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が加入期間の2/3以上あること
  2. 死亡日が2026年3月31日までであり、亡くなった人が65歳未満の場合、亡くなった月の前々月までの直近1年間で国民年金保険料の未納(免除・猶予は未納に含まれない)が存在しないこと

障害基礎年金

画像: 画像:iStock.com/Peter Horrox

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障害を有する人に支給される障害基礎年金も、未納によって受け取れなくなるケースがあります。受給のための条件は、初診日の前日に以下のいずれかの条件を満たしていることです。

  1. 初診日(初診日とは、障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のこと)のある月の前々月までを対象とした公的年金の加入期間において、2/3以上の期間について、国民年金保険料が納付または免除されていること
  2. 初診日の時点で65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの直近1年間で国民年金保険料の未納(免除・猶予は未納に含まれない)が存在しないこと

これらの条件からもわかるとおり、国民年金保険料を払っていない場合、遺族年金・障害年金ともに受け取りはできません。しかし、家計を支える人が亡くなったり働けなくなったりした時、遺族年金や障害年金は遺された家族を支える貴重な収入源になります。遠い将来とはいえ、緊急を要する事態はいつ起こるかわかりません。様々なリスクに備えるためにも、国民年金保険料は滞納すべきではないのです。

そもそも国民年金保険料は払わないといけない?

画像: 画像:iStock.com/miya227

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なぜ国民年金保険料を払う必要があるのか、その理由を見ていきましょう。まず把握しておきたいのが、日本の年金制度のしくみです。そもそも年金制度とは、日本に住む20〜60歳の働く世代の人たち全員が加入し、その保険料を高齢者や保障を必要としている人に給付するしくみです。いわゆる「老後に国から支給されるお金」以外にも、様々な種類があります。

公的年金は支払いの義務がある

年金制度は大別すると、法律によって加入が義務付けられている「公的年金」と、企業や個人が任意で加入できる「私的年金」に分けられます。
さらに、公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2種類があります。全ての人が対象になる「国民年金」に、会社員や公務員が対象になる「厚生年金」が上乗せされる2階建ての構造になっています。

〈図〉公的年金制度の構造

画像: 公的年金は支払いの義務がある

公的年金は、対象者や納付額が以下のように決まっています。

対象者納付額受給額
国民年金日本に居住する20歳以上60歳未満の人一律で決まっている
(令和5年度の場合、1万6,520円/月)
満額の場合、月額6万6,250円、年間79万5,000円
(新規裁定者/令和5年度の場合)
厚生年金会社員や公務員
(適用事業所でない従業員数が4名以下の個人事業主などは対象外)
所得によって異なる
(会社と被保険者が半分ずつ負担)
前述

公的年金によって受け取れる年金は3種類。老後に支給される「老齢年金」、ケガや病気によって生活や仕事などが制限されるようになった際に支給される「障害年金」、家計を支える人が亡くなった時、遺族へ支給される「遺族年金」です。

国民年金保険料を納めていない人はどのくらいいる?

厚生労働省の発表によると、令和3年度の最終納付率(令和元年度分保険料)の国民年金保険料の納付率は78.0%、未納率は約22.0%です。この数字を見ると、国民年金保険料を払っていない人が多くいるように感じますが、じつは違います。国民年金保険料の納付率は、納付義務がどれだけ果たされているかという納付状況を確認するための指標のことで、納付対象月数に対する納付月数の割合として算出されています。つまり、納付率=納付者率ということではないのです。

また、国民年金保険料は過去2年分の納付が可能なため、最終納付率には過年度分の保険料として納付されたものも含まれています。

では、実際に国民年金保険料を納めていない人はどのくらいいるのでしょうか。令和3年度末の未納者数は、公的年金加入者数6,725 万人のうち106万人(約 1.6%)4)でした。近年は未納者数が減少傾向にあり、国民年金第1号被保険者が減少している、もしくは国民年金第2号被保険者(厚生年金加入者)が増えているためとも考えられます。

〈表〉年齢階級別最終納付率4)

年齢階級令和3年度の最終納付率(令和元年度分保険料)
20~24歳77.91%
25~29歳68.98%
30~34歳71.58%
35~39歳75.68%
40~44歳77.22%
45~49歳78.50%
50~54歳77.98%
55~59歳84.44%

国民年金保険料を払えない場合の対処方法5つ

画像: 画像:iStock.com/chachamal

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とはいえ、どうしても経済状況が苦しく、国民年金保険料を納められない場合もあるでしょう。そういった人に向けて、国民年金には免除制度や猶予制度が設けられています。ここでは各制度の特徴について解説します。

①保険料免除制度

国民年金の保険料免除制度とは、20歳以上60歳未満の人で、本人・配偶者の前年所得が一定以下の場合、年金保険料の一部または全額が免除される制度です。具体的には「全額免除」「4分の3免除」「半額免除」「4分の1免除」という4種類があり、免除の割合に応じて一定の受給額が保証されます。

なお、免除期間は全額免除であっても未納期間ではなく受給資格期間としてカウントされるため、障害基礎年金や遺族基礎年金の受け取りが可能です。

免除の割合条件支給額
全額免除前年所得が「(扶養家族の数×1)×35万円+32万円」に収まる場合満額の半分
4分の3免除前年所得が扶養家族控除と社会保険控除等を足して88万円以下の場合満額の5/8
半額免除前年所得が扶養家族控除と社会保険控除等を足して128万円以下の場合満額の6/8
4分の1免除前年所得が扶養家族控除と社会保険控除等を足して168万円以下の場合満額の7/8

②特例免除(失業、コロナの影響を受けた収入の減少も対象)

画像1: 画像:iStock.com/recep-bg

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失業や新型コロナウイルスの影響による収入減の際に申請できる「特例免除」というしくみもあります。

1.失業時の特例免除

保険料免除制度の申請時、失業した人の前年の所得をゼロとして審査できます5)。年金保険料の納付が免除される期間は、失業などのあった月の前月から翌々年の6月までです。

2.新型コロナウイルスの特例免除

新型コロナウイルスの影響を受けて設けられた臨時特例です5)。適用されるための条件は、2020年2月以降、新型コロナウイルス感染症の影響により収入が減少していることと、当年中の所得見込額が現行の保険料免除制度の基準に該当すること。所得見込額は、2020年2月以降の任意の月における所得額を12カ月分に換算して割り出します。

国民年金保険料の納付が免除される期間は、令和2年度分としては「令和2年7月~令和3年6月」、令和3年度分としては「令和3年7月~令和4年6月」、令和4年度分としては「令和4年7月~令和5年6月」が該当します。

③保険料納付猶予制度

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国民年金保険料の納付猶予制度とは、条件はありますが、国民年金保険料を後払いできる制度です。国民年金保険料の納付期限から2年を経過していない期間まで遡って申請できます。利用できる条件は以下のとおりです。

納付猶予制度を利用できる人

・20~50歳未満

・前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円

猶予期間は免除期間と同様、受給資格期間としてカウントされるため、万が一の時にも障害基礎年金や遺族基礎年金の受け取りが可能です。ただし、猶予期間分の老齢基礎年金に関しては、追納を行わない限り受給できません。猶予制度はあくまでも追納を前提としたしくみになっているため、注意が必要です。

④学生納付特例制度

学生納付特例制度とは、学校に在学している期間の年金保険料の納付が猶予される制度です。対象となるのは大学や短大、専門学校はもちろんのこと、高等学校や高等専門学校、一部の海外大学の日本分校、その他各種学校に在学する人で、夜間・定時制課程や通信制課程も含まれます。

学生なら誰でも受けられるわけではなく、前年所得が「128万円+扶養家族の数×38万円+社会保険料控除」に収まることが条件です。通常の保険料猶予制度と同様、猶予期間は受給資格期間としてカウントされる一方で、老齢基礎年金に関しては追納を行わない限り年金額に反映されません。

免除と猶予の違いは? 猶予はあくまでも“後払い”

画像: 画像:iStock.com/takasuu

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このように様々な種類のある免除制度と猶予制度ですが、そもそも免除と猶予はどう違うのか、ピンとこなかった人もいるかもしれません。免除と猶予の最大の違いは、その期間が年金額の計算に反映されるかどうかです。

免除は国民年金保険料を全額ではないものの納付した扱いになりますが、猶予はあくまでも納付を待ってもらうための“後払い”システムです。そのため、免除の場合は仮に40年間全額免除を受けたとしても、満額の1/2にあたる年金は支給されます。つまり、令和5年度であれば、79万5,000円の半額である39万7,500円を年間で受け取ることが可能です。一方で猶予の場合、仮に30年間猶予期間、10年間未納という形で国民年金保険料を納付しないままにしていたとすると、支給される金額はゼロとなります。

免除・猶予を受けた場合も、10年間の追納が可能

また、免除や猶予を受けた期間の年金は、10年以内であれば追納が可能です。老後に満額の年金を受け取りたい人は、生活が厳しい期間は免除や猶予で乗り切り、経済的に余裕ができたタイミングで追納するのもひとつの手でしょう。

ただし、追納していない期間が2年を超えた国民年金保険料には、経過期間に応じた加算額が上乗せされるので注意が必要です。そのため、可能な限り2年以内に納付を済ませたいところですが、若い世代は結婚や出産、子育てといった出費が重なり、難しいこともあるかもしれません。

たとえば、学生納付特例制度で猶予を受けた2年分の国民年金保険料を一挙に払おうとすれば、40万円弱が必要となり、家計に大きな痛手を与えます。このような場合、追納しないまま60歳を迎えてしまうのもひとつの手です。その後、60歳から国民年金に任意加入すれば、満額に届かなかった分の年金保険料を納められます。

〈図〉60歳からの追納支払いイメージ

画像: 免除と猶予の違いは? 猶予はあくまでも“後払い”

特に猶予制度の場合、免除制度と違って年金保険料の一部を払っているわけではないため、追納に必要な金額は大きくなりがち。焦らずに目の前の生活を優先することも大切です。

⑤妊娠中なら利用したい産前産後免除期間(厚生年金も対象)

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妊娠中の人なら誰でも利用できる制度がこちら。次世代育成支援のために、2019年からは産前産後の国民年金保険料の免除も始まりました。出産予定日または出産日が属する月の前月から4カ月間(厚生年金の場合、産前産後休業開始月から終了予定日の翌日の月の前月まで)、年金保険料の支払いが全額免除されます。

通常の保険料免除制度では、全額免除期間の年金額は1/2になりますが、産前産後免除期間は納付したのと同じ扱いになるため、満額を受け取れるのは大きなメリットです。

前述した制度と違い、国民年金保険料の支払い可否に関係なく使えます。

入院についての詳しい内容は以下の記事もぜひご参照ください。

【関連記事】入院費はいくらかかる?入院日数や傷病別の金額相場から内訳まで詳しく解説

【Q&A】国民年金保険料のよくある質問

ここでは、年金に関するよくある質問をまとめました。

転職活動中の空白期間はどうなる?

画像: 画像:iStock.com/TAGSTOCK1

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年金制度への加入は法律によって定められており、「払わない」という選択肢は基本的にはありません。

会社員や公務員の場合、毎月の厚生年金保険料は会社との折半で負担します。個人の負担分は給料から天引きし、会社がまとめて納付するため、未納が発生してしまうことは基本的にないでしょう。

全ての法人で、代表者(役員)も含め従業員の厚生年金保険料を納めることが定められています。そのため、仮に従業員個人が「厚生年金保険料を払いたくない」と思っても、それはできないのです。もし会社が何らかの理由で年金保険料を納めていなかったり、厚生年金や健康保険などに加入するための「適用事務所」として登録されていなかったりした場合、納付督励(自主納付を促すこと)は個人ではなく会社へと行われます。

未納が起こりやすいのは、国民年金に加入する人の場合です。経済的な理由などで払えないというケースも考えられますが、うっかりミスで未納になってしまうパターンもいくつかあるようです。

中でも、20代や30代の若い世代で起こりやすいのが、働き方が変わるタイミングで未納が発生するパターンです。特に会社を退職してから転職するまでの“空白期間”には気をつけましょう。本来なら国民年金に加入して国民年金保険料を納付しないといけないにも関わらず、うっかりその手続きを忘れてしまうことが少なくありません。

その他よく見られるのが、年齢の離れた夫婦などで厚生年金保険料を払っていた夫(妻)が定年退職もしくは厚生年金に加入しながら65歳になった時、扶養でなくなった妻(夫)が国民年金への加入を怠ってしまうパターン。あるいは、学生で20歳を迎えて加入のお知らせが届いたものの、よくわからずに手続きを後回しにしてしまうパターンです。学生の場合は、前述した「学生納付特例制度」という猶予制度も利用できるので、しっかりと手続きを行いましょう。

「どうせ老後に年金は支給されない」は本当?

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年金は世代間扶養といって、現役世代の納付している年金保険料が今の高齢者への給付に充てられるしくみです(“賦課方式”と呼ばれます)。少子高齢化で現役世代が減少している昨今、年金に対して「どうせ自分たちには支給されない」というように諦念と思えるような意見を見かけることがよくあります。

しかし、年金の給付は一般的に長期にわたります。そのため、公的年金の財政の収支は、現在の状況と今後おおむね100年間の見通しについて、少なくとも5年ごとに検証が行われています。これを財政検証といいます。財政検証では、所得代替率が50%を上回る給付水準を確保するために給付額が調整されています。

「将来、年金をもらえない」という話を安易に受け取らず、将来の生活を支えてくれる制度であることを認識することが大切です。

※所得代替率…年金を受け取り始める時点における年金額が、現役世代の手取り収入額と比較してどのくらいの割合かを示す数値

未納状態はNG。国民年金保険料を払えない時は、免除や猶予の申請を行おう

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年金保険料が払えない場合に何よりも重要なのは、未納状態にしないことです。何の手続きもしないまま国民年金保険料を納めていない人は、日本年金機構や市区町村の年金課に相談し、必ず免除や猶予の申請を行いましょう。

もちろん、それらの制度を利用しても追納をしなければ、将来的に満額の年金を受け取れるわけではありません。ですが、未納状態が続くと度重なる催告状の送付や財産差し押さえなどのリスクが発生します。免除や猶予が認められれば、こういった心配は解消できます。

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