大学生の2人に1人が利用しているといわれる奨学金。社会人になって返済を続けていく中で、景気の悪化や手取り収入の減少を受け、奨学金の返済がきついと思うこともあるかもしれません。そんな時には救済制度を活用することができるのをご存じでしょうか。

無理のない返済プランを立てるためにも、改めて知っておきたい奨学金の基本と、返済に困った時に使える制度を、奨学金アドバイザーの久米忠史さん監修のもとご紹介します。

まずはおさらい、奨学金の基本

画像: 画像:iStock.com/Waradom Changyencham

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奨学金は大きく分けて、返済不要の「給付型」と、卒業後に返済が必要な「貸与型」の2種類があります。独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)のほか、大学や地方自治体、民間団体など様々な団体が実施しており、給付額や給付の方法もそれぞれで異なります。

一般的に奨学金の受給には、家庭の収入状況や本人の成績などの制限があります。申し込みは高校や大学、専門学校等を通じて行うケースがほとんどです。

貸与型の奨学金と教育ローンとの大きな違いは、「誰が借りているのか」という部分です。教育ローンの場合、親が親の名義で借りて、親が返済していくことになりますが、貸与型の奨学金は子ども自身が自分の名義で借り、卒業後は基本的に自分で返済していくことになります。

奨学金のことを、社会人になってから改めて「自分で借りた」ものだと意識する人もいるのではないでしょうか。

ここからは、もっとも受給者の多い日本学生支援機構(JASSO)の奨学金について、詳しく見ていきましょう。

注:日本学生支援機構の奨学金は「返還」としていますが、本記事では「返済」と記載します。日本学生支援機構の奨学金に関する情報は、記事の公開日時点のものとなります。最新情報は、公式ウェブサイトをご確認ください。

奨学金の種類

日本学生支援機構の奨学金には次の種類があります。

【A-1】貸与型/第一種奨学金(無利息)

学校種別や国公立・私立の違い、入学年度、通学形態によって借りられる上限額が決まる奨学金で、利息はありません。「特に優れた学生及び生徒で経済的理由により著しく修学困難な人」といった貸与基準があります。

【A-2】貸与型/第二種奨学金(利息あり)

年3%を上限とする利息つきの奨学金で、在学中は無利息です。進学先や通学形態にかかわらず、希望金額を選択できます。たとえば大学の場合は、月額2万円〜12万円の中から、1万円単位で選択可能です(※1)。貸与基準は第一種奨学金と比べると、ゆるやかに設定されています。

※1 私立大学の医・歯学の課程の場合は12万円に4万円の増額が、 私立大学の薬・獣医学の課程の場合は12万円に2万円の増額が可能です。

【解説】第二種奨学金の貸与利率について

貸与利率は2種類の算定方法があり、第二種奨学金を申し込む際に、いずれか一方を選択します。選んだ利率の算定方法は、貸与期間が終了する年度の一定時期まで変更できます。

〈2種類の算定方式〉

(1)利率固定方式

貸与終了時に決定した利率が返還完了まで適用される方式。将来、市場金利が上昇や下降した場合も、返還利率は変動しません。

(2)利率見直し方式

返還期間中、おおむね5年ごとに見直された利率が適用される方式。将来、市場金利が上昇した場合は貸与終了時の利率より高い利率が適用され、市場金利が下降した場合は貸与終了時の利率より低い利率が適用されます。

【B】給付型

大学・短期大学・高等専門学校(4年、5年)・専門学校に進学する人を対象とした返済不要の奨学金です。2020年4月に進学・進級する学生から、給付奨学金の対象者が広がりました。

対象は、高校を卒業して2年以内に大学などに進学した人です。そのため、浪人生でも条件を満たせば対象となります。収入要件は住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯で、世帯収入に応じた3段階の基準で支給額が決まります。支給額は大学生で住民税非課税世帯の場合、年額約35万円~約91万円です1)。住民税非課税世帯に準じる世帯では、この金額の3分の1または3分の2が支給されます。

それぞれの奨学金は併用が可能なため、「給付型と貸与型」「第一種と第二種」など、組み合わせて利用する人もいます。

奨学金の返済はいつまで続き、いくら返すの?

画像: 画像:画像:iStock.com /takasuu

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奨学金の月々の返済額と返済期間の目安

奨学金の返済は振替口座(リレー口座〈※2〉)に加入し、卒業後に基本的には月賦で返済します。「定額返還方式」のため、借りた総額で月々の返済額が決まります。貸与総額に対する「返還月額」と「返還回数(年数)」の例は以下の通りです。

※2 リレー口座とは、奨学金返還を行う振替口座の愛称です。『あなたの返還金が後輩奨学生の奨学金としてリレーされる』(出典:日本学生支援機構)という意味で用いられています。

〈図〉第一種奨学金の返済例

画像1: 奨学金の月々の返済額と返済期間の目安

〈図〉第二種奨学金の返済例

画像2: 奨学金の月々の返済額と返済期間の目安
画像3: 奨学金の月々の返済額と返済期間の目安

2019年3月に労働者福祉中央協議会が発表した「奨学金や教育負担に関するアンケート調査」2)によれば、日本学生支援機構の奨学金を借りた人の借入総額の平均は3,243,000円、毎月の平均返済額は16,880円でした。返済期間は借入総額により異なりますが、多くの人が、大学卒業後13年〜20年という長期間にわたって返済を続けているということになります。

自分の奨学金の返済状況を確認するには

返済している人の中には、毎月なんとなく引き落としされていて、自分の返済状況がどのようになっているか、しっかりと把握できていない人もいるのではないでしょうか。

奨学金の返済の口座振替日や貸与利率、返済中の住所変更や振替口座の変更などの届出は、日本学生支援機構のサイトから行うことができます。また、「スカラネット・パーソナル(呼称:スカラネットPS)」に登録すると、各種変更手続きを行えるほか、自分の返済残高なども確認できます。登録は、スカラネット・パーソナルのアドレスにアクセスし、奨学生番号や奨学金振込口座番号、氏名、生年月日を入力して行います。

〈表〉スカラネットパーソナルでできること

手続き関連
・転居・改姓・勤務先変更等の届出
・繰上返還の申込
・在学猶予願・在学猶予期間短縮願の提出
・あなたの奨学金情報の閲覧・確認
・奨学金減額返還願・奨学金返還期限猶予願の作成・印刷
・各種証明書の発行申請
・最低返還月額申請(所得連動返還方式選択者)
奨学金を返済中の人が確認できる内容
・返還情報:奨学生番号、返還総額(元金)、返還残回数、返還残額(元金)、現在請求額
・金融機関情報:金融機関名、名義人氏名
・保証情報:保証制度(「機関保証」または「人的保証」のいずれかが表示されます)
・申請用紙ダウンロード(減額返還願・返還期限猶予願)
日本学生支援機構「概要(スカラネット・パーソナルでできること)」3)より

【解説】2017年から始まった「所得連動返還型奨学金制度」とは

奨学金は基本的に月々同じ金額を返済していくことになりますが、2017年4月から新たに「所得連動返還型奨学金制度」が始まりました。

この制度は、2017年度以降の第一種奨学金採用者で機関保証制度を選択している人が対象です。「所得連動返還方式」での支払いが選択できて、この方式では所得に応じて月々の返済額が決まります。

所得が一定程度となるまでの間は、定額返還方式よりも返還月額が少なくなりますが、所得が一定程度を超えると定額返還方式よりも返還月額が多くなります。

ただし、この制度を利用するための機関保証制度の利用には保証料がかかります(※3)。また、所得が一定以下であれば月々の返済の負担は軽減されますが、返済すべき総額は変わらないため、返済期間が大幅に長くなる可能性があります。

※3 貸与月額、貸与月数、貸与利率、返還期間等により異なります。

奨学金の返済がきつい…と思った時に利用できる制度は?

画像: 画像:iStock.com/chachamal

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様々な理由から、奨学金の返済が難しくなってしまうことがあるかもしれません。そんな時は、滞納してしまったり、焦って他の金融機関などからお金を借りたりせず、救済制度を活用しましょう。

日本学生支援機構の奨学金には、災害や傷病、家計の急変、失業などによって奨学金の返済が困難なときのために、2つの救済制度があります。

(1)毎月の返済額を減らせば返済できそうな時【減額返還制度】

一定期間、月の返済額を2分の1または3分の1に減額することができます。返済期間は返済額を2分の1にした場合は2倍、3分の1にした場合は3倍になります。適用期間は最長15年間で、1年ごとに願出が必要です。

〈図〉減額返還制度を利用した時のイメージ

適用収入条件は、給与所得の人は年間収入金額が325万円以下、給与所得以外の所得がある人は年間所得金額が225万円以下です。ただし、奨学金の返済を延滞している場合は原則願出できないので、必ず延滞する前に利用しましょう。

(2)一定期間、返済を待ってもらいたい時【返還期限猶予制度】

返済を一定期間猶予してもらって先送りにし、家計状況が整ったら返済を再開することができます。適用期間は最長10年間で、1年ごとに願出が必要です。適用収入条件は、給与所得の人は年間収入金額が300万円以下、給与所得以外の所得がある人は年間所得金額が200万円以下です。

〈図〉返還期限猶予制を利用した時のイメージ

救済制度に申し込む前に確認するべきこと

どちらの制度も、猶予期間中は利息や延滞金は免除されます。しかし、本来返済すべき元金や利息は免除されないので、利息を含む返済予定総額は変わりません。また、適用収入条件を超える場合でも以下の支出は収入から控除されるので、自分のケースに当てはまるかどうか確認しましょう。

〈表〉控除される要件と、控除の対象となる支出

控除される要件
・被扶養者がいる場合
・親や親族へ生活費援助をしている場合 等
控除の対象となる支出
・本人の医療費
・被扶養者の医療費
・災害等に罹災した時の住居費 等
日本学生支援機構「収入基準を超える場合に認められる控除」4)より

救済制度は、スカラネットパーソナルや日本学生支援機構のサイトから所定の願出用紙を入手し、マイナンバー関係書類(初回のみ)と返済が難しい理由を添付して、郵送して申請します。

滞納する前に申告しよう

前述したように、奨学金の返済には救済制度が設けられています。ただし、救済制度は自己申告制であることに注意しましょう。たとえ経済的に厳しい状況にあったとしても、申請をせずに滞納をしてしまうと、延滞金(※4)が発生し、延滞が3カ月以上続いた場合には個人信用情報機関(いわゆるブラックリスト)に登録されます。

個人信用情報機関に延滞者として登録されると、金融機関などに「経済的信用が低い」と判断され、クレジットカードの発行ができなくなったり、利用を止められたりすることがあります。また、自動車ローンや住宅ローンなどの各種ローンが組めなくなる場合もあります。

一度登録された情報は延滞中だけでなく、延滞を解消しても登録され続け、返済完了の5年後まで残ります。そのため、将来自分の子どもの教育費などの資金計画にまで悪影響を及ぼしてしまうかもしれないのです。

9カ月以上の滞納は法的措置によって給与や財産の差し押さえにもなるので、奨学金も一般の金融商品と同じリスクがあることを意識しましょう。

※4 年(365日あたり)3%の割合で返還期日の翌日から延滞している日数に応じて延滞金が賦課されます。

返済がきつくても、他の金融機関から借りて返済しない

奨学金は利息のある第二種奨学金でも、その上限は年3%です。実際の貸与利率は、利率固定方式、利率見直し方式ともに、上限よりも圧倒的に低い水準で推移しています。

〈表〉令和元年度の基本月額の貸与利率(年利%)

利率固定方式利率見直し方式
4月0.1530.002
5月0.1460.001
6月0.0570.002
7月0.0490.002
8月0.0150.002
9月0.0420.002
10月0.0670.002
11月0.1430.003
12月0.1560.004
1月0.0770.002
2月0.0700.002
3月0.0700.002
日本学生支援機構「平成19年4月以降に奨学生に採用された方の利率」5)より

大手銀行のカードローンの金利は、三井住友銀行が年4%〜14.5%、みずほ銀行が年1.5%〜14%三菱UFJ銀行が1.8%〜14.6%です(※5)。これらと比較すると、奨学金の貸与利率が圧倒的に低く設定されていることがわかります。

そのため、他の金融機関からお金を借りて奨学金を返済しようとすると、かえって余計な利息分の金額まで支払うことになってしまいます。そのため、困ったらまず救済制度を利用する、ということを覚えておきましょう。

※5 各銀行の金利は2020年6月26日現在。

奨学金の繰り上げ返済はしたほうがいいの?

画像: 画像:iStock.com/bankrx

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一般のローンと同じように、日本学生支援機構の奨学金も、全額もしくは一部の繰り上げ返済が可能です。繰り上げ返済の手数料は無料なので、半年程度生活ができる貯金があり、かつ家計に余裕がある状況であれば、検討するのもおすすめです。

なお、日本学生支援機構の奨学金の繰り上げ返済は「期間短縮型」です。

そのため、「当月分+〇回分を返済希望」「上限〇万円を返済希望」と、奨学金の一部を繰り上げ返済した場合、その後に支払う毎月の返済額は変わらず、返済期間が短くなります。

特に第二種奨学金の場合は、ぜひ繰り上げ返済を検討したいところ。繰り上げ返済した回数分にかかっている利息を支払わずに済むので、返済総額が少なくなるのです。

例えば、第二種奨学金を年利率1.93333333%で120万円借りていた場合(月賦返還・返還回数144回)の返済額の例を見てみましょう。

〈表〉通常返還と繰り上げ返還をした場合の例

34回目~43回目の10回分を通常返還した場合
94,230円
34回目~43回目の10回分を繰り上げ返還した場合
81,043円
日本学生支援機構「繰上返還例」6)より

繰り上げ期間の利息分である13,187円を支払わなくても良いということになります。月々の返済金額を見ていると利息はそれほど大きいものには感じませんが、こうして比べてみると、繰り上げ返済がお得であることがわかります。

繰り上げ返済の手続きはスカラネットパーソナル、郵送・FAX、電話の3つの方法から行えます。

奨学金の返還は、無理せず計画的に

画像: 画像:iStock.com/marchmeena29

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住宅や車などのローンと違い、奨学金は目に見えるモノがないため、返済に徒労感が募り、早く返したいと不安を覚える人は少なくないといいます。

大切なのは、ライフプランと貯金とのバランスです。返済が厳しい時は救済制度を活用し、余裕があれば繰り上げ返済をするなど、その時々の自分の状況にあった手段を知っておくだけでも、返済に対する不安は小さくなるのではないでしょうか。自分にとって無理のない形で奨学金と付き合うことを考えていきましょう。

この記事を書いた著者

南澤悠佳

編集者。企業の”伝わらない”を伝えたい人に”伝える”ため、コンテンツを通じたコミュニケーション支援を行う。主な業務内容は企画、編集、執筆。IT企業、雑誌の編集、編集プロダクションのノオト、ECサイト「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムを経て独立。
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この記事の監修者

久米 忠史

株式会社まなびシード 代表取締役。2005年頃から沖縄県の高校で始めた保護者・高校生向けの奨学金ガイダンスが「わかりやすい」との評判を呼び、現在では高校だけでなく全国各地で開催される進学相談会や大学のオープンキャンパスなどで毎年150回以上の講演を行うほか、奨学金関連本をこれまで4冊上梓。2009年には進学費用対策ホームページ「奨学金なるほど!相談所」を開設。
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