そこで、この記事では、奨学金を返済しながら無理のない暮らしを送るための3つのポイントをご紹介します。今後のライフプランの参考に、ぜひチェックしてみてください。
※1)労働者福祉中央協議会「奨学金や教育負担に関するアンケート調査より
奨学金の返済は家計の重要な課題! 早いうちから計画を立てよう
まずは前提として、奨学金の返済が家計にとってどれほどの負担になるのか、データをもとにチェックしてみましょう。
労働者福祉中央協議会が2019年に実施した「奨学金や教育負担に関するアンケート調査」1)によると、奨学金を借りている人の毎月の平均返済額は1万6,880円となっています。厚生労働省の「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況(2019年)」2)によれば、大学新卒の平均手取り初任給は約17万円なので、返済額は手取り収入の1割に相当することになります。
ちなみに手取り収入の1割といえば、多くのファイナンシャルプランナーがすすめる、1人暮らしの目標貯金額に相当します。単純に考えれば、奨学金を返済している間は貯金をすることが難しいとも言えるでしょう。
また、結婚後も奨学金の返済が続いていれば家計の負担になりますから、子どもの教育費や夫婦の老後資金にも影響が出るおそれがあります。つまり奨学金の返済は、ライフプランを考えるうえでも重要な課題となるのです。奨学金を利用した人は、早いうちから無理なく返済をするための、家計のやりくりを考えておくといいでしょう。
▼奨学金の返済に困った時は…以下の記事もご覧ください。
ポイント① 奨学金返済を「固定費」に組み込んで家計をやりくりしよう
奨学金の返済を抱えながら家計を管理する際に、まず押さえておきたいのは、奨学金の返済は長期間にわたるという点です。
そこでポイントとなるのが、奨学金の返済額を、光熱費や通信費などと同じ暮らしの固定費の一部と考えることです。奨学金の返済額を固定費に組み込んで家計をやりくりすれば、将来に備えた貯金や自分のお小遣いなどに回すお金も確保しながら、無理の少ない生活を心がけられるからです。
そして、毎月の固定費はきちんと金額を設定しておくことが重要です。
貯金や自分のお小遣いなどに回すお金までを考えて、ある程度余裕のある暮らしをするためには、固定費を手取り収入の約半分に設定することが、1つの目安となります。
たとえば手取り収入が17万円ならば、その半分程度の9万円を固定費としてみましょう。その9万円の中に、奨学金の返済額(ここでは1万7,000円とする)を組み込んで考えればいいわけです。言い換えれば、9万円から奨学金の返済額を引いた残りの金額が、光熱費や通信費などに充てられる固定費となります。
〈手取り収入が17万円だった場合の固定費の目安(月額)〉
9万円(手取りの半分程度)− 1万7,000円(奨学金の返済額)
= 7万3,000円(光熱費や通信費、家賃など)
無理のない奨学金返済には固定費の削減が重要! 通信費やサブスクサービスを見直そう
とはいえ収入が少ないうちは、奨学金の返済額を差し引いた金額の固定費で家計のやりくりをするのは、なかなか難しいと思います。特に1人暮らしの場合なら、家賃や電気代を切り詰めるのは困難でしょう。
そこで、注目したいのが通信費です。MVNO※や大手携帯会社が提供する格安の料金プランに変更することで、通信費を大幅に抑えることができる可能性があります。
※MVNOとは…
Mobile Virtual Network Operatorの略。大手携帯会社から通信回線を借りて、「格安SIM」などのサービスを提供する会社。
また、音楽や映像などのサブスクリプションサービスへの支出も、見直しの重要なポイントとなります。気軽に加入しているうちに、内容が重複していたり、それほど利用していないサービスに加入し続けていたりするケースも多いからです。特に結婚後は、家族用のアカウントに移行することで支出を減らすことができるでしょう。
基本的な家計管理のテクニックとして、家計簿アプリを利用することもおすすめです。支出を「見える化」することで、どこに無駄遣いをしているかがわかりやすくなるからです。特に、日常の買い物に電子決済を利用している人なら、データ連携をすることで手入力しなくても支出が細かく把握できるようになります。
ポイント② ボーナス時は「繰り上げ返済」で総額を減らそう
奨学金返済を固定費の1つと考えた場合、当然ながら完済するまでは、返済が固定費を圧迫し続けることになります。暮らしに余裕を持たせたいなら、完済までの期間を短くすることも検討すべきでしょう。
そこで活用したいのが、奨学金の繰り上げ返済制度です。例として、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の利息がつく奨学金(第2種奨学金)の場合なら、繰り上げ返済をすることで、返済期日が来ていない繰り上げ分については、その期間に払う予定だった利息を払う必要がなくなるため、返済総額が少なくなるというメリットもあります。
▼「繰り上げ返済」について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
奨学金返済用口座の登録が必要になりますが、繰り上げ返済の申し込みはインターネットから、いつでも簡単に行うことができます。繰り上げ返済の金額は「返済回数」または「一度に支払える上限額」の2つから選択可能です。後者の場合は、希望金額に近くなる返済回数が機構側で計算され、口座から引き落とされます。
なお、繰り上げ返済をした分だけ返済期間は短くなりますが、繰り上げ返済したからといって返済を休むことができない点には注意が必要です。そのため繰り上げ返済は、手持ちのお金に余裕ができるボーナス時に行うのが基本と言えるでしょう。
また、返済期間が短くなるからといって、貯金に余裕がないのに無理やり繰り上げ返済をするのは、あまりおすすめできません。たとえば1人暮らしの場合なら、まずは緊急時に備え50万円程度の貯金をしてから、繰り上げ返済を検討するのがいいでしょう。
ポイント③ 苦しい時は躊躇せず「返済猶予」制度を利用しよう
奨学金の返済を滞納した場合には、返済期日の翌日から年3%(令和2年3月28日以降)の延滞金が賦課されます3)。また、延滞が3カ月以上続くと、いわゆる「ブラックリスト」に登録されるおそれもあります。
病気やケガのほか、失業やコロナ禍による収入減など、奨学金の返済が困難になる状況に陥った場合には、延滞する前に躊躇せず「返済猶予」制度を利用しましょう。奨学金返済の猶予には、2つの種類があります。
奨学金返済猶予制度その1:「返還期限猶予」
「返還期限猶予」は、返済を一定期間猶予してもらって先送りにし、家計状況が整った時点で返済を再開することができる制度です。基本的には、給与所得のある人は年間収入金額が300万円以下、給与所得以外の所得がある人は年間所得金額が200万円以下である場合に限り利用できます。適用期間は最長10年間で、1年ごとに願出が必要になります。
奨学金返済猶予制度その2:「減額返還」
「減額返還」は、一定期間、月の返済額を2分の1または3分の1に減額できる制度です。ただし、その分返済期間が延びる点には注意しましょう。当然ですが、月の返済額を2分の1にした場合は2倍、3分の1にした場合は3倍、返済期間が長くなります。適用期間は最長15年間で、1年ごとに願出が必要になります。
なお、これらの制度は、「スカラネット・パーソナル」4)や日本学生支援機構のサイトから所定の願出用紙を入手し、郵送して申請することになります。マイナンバー関連など、必要な書類がある点にも注意してください。
参考資料
奨学金の返済計画を立てることで、将来のライフプランを考える機会にもなる
奨学金の返済は、多くの場合は結婚後の暮らしにも影響を与えます。それだけに、無理なく上手に返済をするためのプランを立てることは、自分自身の将来のライフプランを考えるきっかけにもなるでしょう。
とはいえ、奨学金の返済を続けながら、家計に余裕を持たせるプランを立てることは、なかなか難しいものです。
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