一般的に、30代は民間の保険への加⼊率が⾼いと言われています。結婚・出産などのライフステージの変化に伴い周囲で保険の話も出てくるようになり、加入していない人の中には不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、ファイナンシャルプランナー・冨士野喜子(ふじの よしこ)さん監修の元、統計情報をもとにした30代の保険の加入率などを解説。さらに、これから加入する方におすすめの保険と、保険を選ぶ時に気を付けるべきポイントについても紹介します。


30代の保険加入率はどのくらい?

画像: 画像:iStock.com/kyonntra

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まず最初に、30代の保険の加入率から見ていきましょう。

30代で保険に入っていない人は約1割

30代の保険加入率については、生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」1)で統計結果が出ています。

統計によると、個人年金保険を含む生命保険の世帯の加入率(単身の場合は単身、既婚の場合は世帯主の年齢を採用)は、30~34歳が86.7%、35~39歳で88.7%ほど。30代全体では、平均87.7%が保険に加入しているという結果でした。つまり逆を言えば、30代で保険に加入していないのはわずか1割だけということになります。

〈表〉生命保険・個人年金保険の世帯加入率(全生保)[世帯主年齢別]

年代加入率
30〜34歳86.7%
35〜39歳88.7%
30代平均87.7%

30代~50代の前半までは子育て世代にあたるので、保険の加入率についても高い数値が出ていると予想されます。ちなみに、50代をピークとして年齢を重ねるごとに加入率が低下しているのは、高齢になると、年金収入から保険料を支払うことが難しくなることが理由の1つとして考えられています。

30代の保険加入率が高い理由

先ほど紹介した生命保険文化センターのデータ1)によると、29歳以下の保険加入率は79.2%に留まる一方、30代になると保険の加入率が急激に高まる傾向があることがわかります。

その大きな理由としては、30代になると結婚をしたり、子どもが誕生したりする人が増えることが関係していると考えられます。自分だけでなく守らなければならない家族も増えるので、万が一に備えて保険の必要性が高まるのです。

そして、30代になると健康への不安も徐々に出てくるため、加入を検討する人が増えるとも考えられています。

他にも、周囲に結婚や出産などのライフイベントを迎える人が増えると保険の話題が出やすくなるために、周囲からの影響をきっかけとして加入が増えるのも30代の保険に対する意識の特徴と言えるでしょう。

30代で保険に加入するべき2つの理由

画像: 画像:iStock.com/scyther5

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以上のように、30代で保険に加入していない人は、むしろ珍しい存在と言えます。しかし、結婚などをしていない人からすると、やはり30代になってもまだ保険に入る必要はないのではないか、と思うことでしょう。そんな方に、30代のうちに保険に加入するべき2つの理由をお伝えします。

(1)30代は健康である可能性が高く、保険に加入しやすい

30代が保険に加入するべき1つ目の理由としては、30代であれば健康に問題がない人が多く、保険に加入しやすいからです。保険に加入するためには保険会社への健康状態の告知が必要になるのですが、この条件が意外と厳しいのです。

例えば、定期的に病院に通っている持病があり、7日以上の処方を受けていたとしたら、告知書で病状と処方されている薬などを告知しなければいけません。喘息や子宮筋腫など、亡くなる人がほとんどいないような病気であっても、保険会社でリスクが高いと判断されてしまったら、保険に加入できないこともありますし、できたとしても保険料割増などの条件がつくことがあります。

風邪などの数日で完治するような病気は問題ありませんが、持病をお持ちの方は、持病を持つ人向けの保険にせざるを得ないなど、加入できる保険が限られてしまうのが現状です。だからこそ、比較的健康に問題が少ないであろう30代で保険に加入しておくことをおすすめしています。

(2)30代のうちに加入しておけば、保険料が安く済む

2つ目の理由は、30代で終身タイプの保険に加入しておけば、月々の保険料が安く済むからです。終身タイプの保険は加入した時から保険料が一律で変化しません。基本的に保険料は年齢が若いほど安いので、加入のタイミングが早ければ早いほど、家計に対する負担が少なくなります。年金生活でも保険料が支払いやすくなるので、終身タイプの保険を検討している方は、若いうちに加入しておいた方がよいでしょう。

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30代で保険に加入する際の3つの注意点

画像1: 画像:iStock.com/kokouu

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ただ、30代で保険への加入を検討する際、注意していただきたい点が3つあります。次で見ていきましょう。

(1)保障してくれる期間を確認する

保険に加入する際に必ず見ておいた方が良いポイントは、保障期間です。加入した保険が、何年間保障してくれるのかは、必ず把握しておきましょう。

終身タイプではない更新タイプの保険は、更新を迎えるたびに保険料が上がっていきます。35歳に加入して、5年ごとに更新されていくような商品の場合、40歳・45歳・50歳と保険料が上がりますが、多くの場合50代に突入した時に、死亡率・入院する確率が高くなるために、保険料が急激に高くなることが多いのです。「とりあえず安いから入っておこう」と軽い気持ちで加入をしてしまうと、いつの間にか続けられないくらいに保険料が高くなってしまうケースがあるので、注意しましょう。

(2)自分の状況に合う保険を見極める

2つ目の注意点としては、保険加入前に、自分の状況に合う保険を見極める必要があります。

例えば、公的な社会保険・健康保険・年金などにも保険的な役割があるにも関わらず、場合によっては必要のない保険を契約してしまうことがあるからです。

年金制度の一環として、国民年金または厚生年金保険に加入していた人が亡くなった時、その人によって生計を維持されていた遺族が受け取れる“遺族年金”という制度があります。ここで注目すべきは、自分が亡くなった時に誰にどれだけ支払われるのかという点です。残された人が遺族年金のみで生活費を賄うことができるのであれば、わざわざ保険にたくさん加入する必要はありません。

ほかにも会社員が病気やケガで会社を休んだ際には、有給休暇や、社会保険の中には生活を保障するための“傷病手当金”という制度がありますが、フリーランスで働いている方には保障はありません。そのためフリーランスの方であれば、日給分の保障を保険で確保しておく必要があるのです。

このように、勤務形態や勤め先の会社の制度によっても、加入するべき保険・金額は変化します。加入を検討する前には自身の状況をチェックしておきましょう。

(3)保険選びを手伝ってくれる相談相手を見つける

3つ目の注意点は、1人で保険を決めるのではなく、必ず誰かに相談するようにしましょう。

30代で初めて保険に加入する場合、これまで加入していた保険がないために、検討している保険が果たして高いのか、安いのかという判断がつきません。

また、保険はかなり細かいところまでの設計が必要であり、初心者の方が自身の知識だけで設計をするのは難しいというのも理由のひとつです。

例えば、保険料を払い込む期間についてだけでも、一生涯なのか、60歳まで支払って以降は保険料を支払わずに保障を受けられるようにするのかなど、細かく決められます。詳細部分まで見ていくと、各商品には大きな違いが出てくるため、初心者の方がベストな保険選びをするのは相当難しいと言えるでしょう。

最近では保険の代理店・保険ショップなど、無料で相談ができるような窓口では、収入と支出のバランスから適切な保険料についてアドバイスを受けることもできるので、相談をしてみるのも手です。ただし、1カ所だけに行くと、どうしても情報に偏りが出てしまう可能性があります。

保険は、おすすめする人の考え方が深く影響するものです。自分に合う保険を探す意味でも、最低2カ所以上で話を聞き、相性の良さそうなところで契約をすると良いでしょう。もちろん、友人・親などの身近な人に相談するのもありですよ。

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30代における保険の「考え方」「選び方」

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それでは、30代の方が保険への加入を検討する際、どういった「考え方」と「選び方」をすればいいのでしょうか。

30代の「死亡保険」の考え方

独身の方であれば、お葬式代程度の300万円を死亡保険でかけておくというのが、よく採用される方法です。ただし、お葬式代程度の預貯金はすでにあり、自分にもし何かあった時でも誰にも迷惑をかけないという場合には、必ずしも加入する必要はありません。

少しでも遺族に残しておきたいという方であれば最低300万円、家族がいる場合は、300万円にプラスして、遺された家族の生活費や子どもの教育費などに必要になる金額を残せるような形で考えると良いでしょう。

30代の「医療保険」の考え方

医療保険の主な保障内容としては、ケガや病気などで入院した際に1日ごとにお金が支払われる「入院給付金」と、手術を受けた時に支払われる「手術給付金」の2種類があります。

基本的には、入院1日の最低給付金額が、5,000円~1万円までの間で金額を選ぶような設定をされるのが良いでしょう。基本の保障に「特約」と言われるオプションを追加して保障を手厚くすることもできます。特約には、通院・入院が1日だけでも5日分の入院給付金が出るようなオプションなどがありますが、オプションをたくさんつけると、そのぶん保険料は高額になってしまいます。そもそも、医療保険については入院にかかった費用を預貯金で賄えそうな方であれば、そこまで不安に思って金額を高く設定する必要はありません。

また、医療保険を選ぶ時には、どのような手術・病気時に給付金が支払われるのか、必ずチェックしておきましょう。

昔の保険では保障されていなかったものの、今では保障されるようになった手術・病気も実はかなりあります。例えば、昔の医療保険は宿泊が必要な入院・手術のみでしか給付金が出ませんでしたが、最近の医療保険では、日帰り手術で給付金が出るものも増えてきました。おそらくこれから保険に加入される方の商品は後者の可能性が高いですが、念のための確認は必須です。

特に30代の場合には病気になってしまったとしても、重篤ではなく、日帰りの手術で完了するようなものが多いため、日帰り手術で給付金が支払われるような商品を選ぶことをおすすめします。

30代の「貯蓄型」「掛け捨て型」の選び方

掛け捨て型の保険とは、支払った保険料が戻ってこない商品で、貯蓄型(積立型)の保険は、貯蓄機能のついた商品のことです。

貯蓄型の保険のなかには、2つの種類があります。1つ目は、老後のために貯蓄をしていくような「個人年金タイプ」のもの。2つ目は、保険期間内に亡くなった場合には死亡保険金が支払われる一方で、無事に満期を迎えた場合には、満期保険が支払われる「死亡保障セットタイプ(養老タイプ)」です。

「掛け捨てはもったいない」という声も多いですが、そもそも、保険は続けないことが1番の損になります。貯蓄型の保険を契約していたとしても、途中で解約をした場合、解約金は支払った保険料の半額程度、加入後初期であればほとんど戻らないということもあります。「掛け捨てはもったいないから」と全ての保険を積立にするのではなく、きちんと最後まで支払える保険料で設定するようにしましょう。

貯蓄型と掛け捨て型のどちらかを選ぶのではなく、組み合わせての加入もおすすめです。先程お伝えした通り、貯蓄型の保険は、死亡保障と同等の機能が設けられているものもあります。

死亡保障で高い金額が必要になる代表例としては、小さな子どもがいる場合です。一般的に子ども1人あたりの教育費は、1,500万円ほどかかるといわれています。子どものために自身の死亡リスクに備えたいというのであれば、基本的な生活費の保障額に加え、子ども1人あたりに対して、プラス1,500万円が必要になるというイメージをしておきましょう。

しかし、1,500万円を全て貯蓄型の保険で賄おうと思っても困難なもの。そのため、500万円は貯蓄型保険、1,000万円は掛け捨て型の保険で賄う、というような組み合わせをする人も多いです。

30代の「終身保険」「定期保険」の選び方

終身保険と定期保険の選び方についてですが、日本では平均寿命も長くなっていますし、そもそも保険を使う可能性が高いのは圧倒的に60代以降です。

終身保険のような“一生涯の保障”はあるに越したことはありません。ただ、保険は「子育て期だけは死亡保険金を厚く確保する」「子どもが幼い期間は、ガンになった時の保障もプラスしたい」というように、ライフプランに沿って設定していくものです。

終身保険と定期保険、どちらかが悪いということではありません。一生涯を通して必要な保険のみを終身タイプに設定し、その他のものはその都度、必要なものを必要な期間だけ、とバランスよく組み込んでいくのがおすすめです。

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30代の「女性」「既婚者」が保険に加入する時に重視すべきポイント

画像: 画像:iStock.com/Satoshi-K

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30代の女性が医療保険を検討する時のポイント

30代は出産をする女性が多く、帝王切開などで保険が役立つ可能性も高いため、医療保険は特に早めに検討しておいた方が良いでしょう。

妊娠中も保険には加入できますが、「出産に伴う事由には、給付金が支払われない」という条件がついてしまうこともあります。「そのうち加入すればいいや」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、特に医療保険に関しては、女性は早めの検討がおすすめです。

医療保険に加入する際、女性疾病の特約をつけるかどうか悩む人が多いですが、女性疾病だからといって医療費が高くなるわけではありません。「母が乳がんを患った経験があり、私も心配」といった事情がある人は検討するのもいいでしょうが、必ずしも加入する必要はないでしょう。

保険は取捨選択が大切です。30代の年間保険料の平均金額は33万円ほど2)。そこから20年、30年と支払い続けると、合計で1,000万円近くを保険料として支払うことになります。大きな金額だからこそ、細かい部分もしっかりと検討し、必要最低限のものにすることをおすすめします。

30代の既婚者が保険を検討する時のポイント

これまでは時代の風潮として、どちらかというと妻の保障を少なくして、夫の保障を多めに考えるという夫婦が一般的でした。しかし最近は女性も働く人が増えているので、それぞれの収入に応じて保障の内容をコントロールする必要があります。夫婦で収入があまり変わらないのであれば、妻にもしっかり多めの保障をつけておきましょう。

また、夫婦別々ではなく、2人できちんと話し合いをして、「自分になにかあった時にはこれくらいの保険金が支払われる」ということを、お互いに情報共有しておきましょう。また、いざという時に備えて、保険証券の保管場所をパートナーに伝えておくことも重要です。

独身、既婚などのケース別、どんな保険に加入すべき?

ここまで30代の保険の現状と加入の注意ポイントを紹介しましたが、商品選びのために、より具体的な案が欲しいという方も多いでしょう。そこでここからは、独身・既婚、実家暮らし・一人暮らしなどのケース別に、おすすめの保険と注意すべきポイントを紹介します。

【ケース1】独身・実家暮らしの女性会社員Aさん

画像: 画像:iStock.com/TAGSTOCK1

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●プロフィール

基本情報30歳女性、会社員
家族構成・生活スタイル独身・実家暮らし
年収(額面)400万円

生活費が比較的少なく済む実家暮らしでは、貯蓄をメインとしたプランで保険を組むのがおすすめです。

月々の保険料は商品や保障金額によっても異なりますが、貯蓄型の保険であれば、月1万円~1万5,000円ほどを目安にしましょう。保険料の支払いというよりも、貯金をしている感覚で貯めていくのが良いでしょう。

医療保険に関しては、どの年代、ライフステージの人でも、会社員の方であれば入院した時の1日の給付金が5,000円~1万円、日帰り手術でも給付金が出るような商品がおすすめです。がん保険に関しては、保険料の支払いの余力があれば、加入しておくと安心です。男女で比べると、30代は女性の方ががん患者数は多くなっています3)

就業不能保険は、病気やけがで働けなくなった時の生活費を保障する商品で、入院の有無に関わらず、自宅療養でも保険金が支払われることが特徴です。掛け捨ての死亡保障にセット、またはオプションでつけられるような構成になっていることもあります。自分が病気などで働けなくなった時に収入の補填としてあると便利ですが、実家暮らしであれば家賃もかからず、生活が困窮する可能性も低いため、必ずしも必要ではありません。

死亡保険に関してですが、貯蓄型の保険であれば、最低限の保障はついてきます。死亡保障が付いている貯蓄型の保険に加入されるなら、ローンなどの借入金がない限りは、別途死亡保険に加入する必要はないでしょう。

●Aさんにおすすめする保険情報

保険全体の考え方月1万円~1万5,000円の貯蓄型をメインとした保険と医療保険を検討。
医療保険会社員の方であれば1日の入院給付金が5,000円~1万円の商品を選ぶ。家計に余裕があれば、がん保険にも加入。
就業不能保険実家暮らしであれば必ずしも必要ではない。
死亡保険貯蓄型の保険で死亡保障つきのものを選べば、単体では不要。

【ケース2】独身・一人暮らしの男性会社員Bさん

画像: 画像:iStock.com/whyframestudio

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●プロフィール

基本情報33歳男性、会社員
家族構成・生活スタイル独身・一人暮らし
年収(額面)500万円

民間の保険料は、1人暮らしなど住宅費がかかる家計で考えると、収入の5%程度であれば、家計に負担のない設計と言えます。Bさんは年収500万円なので、無理のない金額は月々2万円以内を目安に考えましょう。基本的にはAさんと同様の貯蓄型で、医療保険・がん保険・就業不能保険に加入しておけば良いでしょう。

今後ご結婚の予定がある方については、死亡保険にも加入しておくと安心です。

医療保険については、Aさんと同様に1日の入院給付金が5,000円~1万円を準備しておくと良いでしょう。終身タイプの医療保険の保険料を払い込む期間は、一生涯支払う「終身払い」と60歳や65歳までなど、払込みの期間を選ぶことができる「有期払い」のどちらかを選択します。

終身払いの場合は、月々の保険料負担が少ないことがメリットですが、保険を続ける限りは一生涯支払わなければなりません。一方、有期払いの場合は、老後に保険料を支払うことなく保障が得られることがメリットとなります。30代であれば、医療保険にがんの保障などをオプションとして付けても、終身タイプ(終身払い)の保険料は月々5,000円程度で収まることがほとんどです。

また、1人暮らしで家賃が発生しているため、万が一の際でも治療に専念できるように保障を厚くしておくことをオススメします。働けなくなった時のことを考えて、生活費の1年分程度の保障を確保できるよう、がん保険や就業不能保険の加入も検討しておきましょう。もちろん、預貯金で対応できる方は、無理に保険に加入する必要はありませんよ。

年収がBさんよりも高く、もう少し保険料にお金を割いても問題ないという方は、保険料の支払いが早く終わるような設計にしたり、病気やケガに備えて保障をより手厚くしたりしてもOKです。

●Bさんにおすすめする保険情報

保険全体の考え方保険料が月々2万円程度に収まることを目安に。月々1万円~1万5,000円の貯蓄型保険と医療保険を検討。
結婚の予定がある場合には死亡保障を厚めにする。
医療保険会社員の方であれば1日の入院給付金が5,000円~1万円の商品を選ぶ。がん保険も要検討。
就業不能保険プランにもよるが、月々2,000~3,000円で加入できる。働けない状態になった際に、家賃の支払いを保険で賄える設計にしておくと良い。
死亡保険貯蓄型の保険で死亡保障つきのものを選べば、単体では不要。

【ケース3】独身・一人暮らしの女性フリーランスCさん

画像: 画像:iStock.com/maruco

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●プロフィール

基本情報33歳女性、フリーランス
家族構成・生活スタイル既婚・二人暮らし
年収(額面)500万円

フリーランスの方は国民健康保険の被保険者となるため、たとえば、業務外の病気やケガで会社を休んだ場合に支給される傷病手当金や、出産のために会社を休んだ場合に支給される出産手当金といった、社会保険で適用される保障が受けられません。以上を踏まえて、ケガや病気になった場合のことを考えて保険に加入しておくことをおすすめします。

医療保険に関しては、会社員の方であれば入院1日あたり給付金が5,000円~1万円のものを選ぶのがおすすめですが、フリーランスの場合には入院1日あたりの給付金は1万円~1万5,000円で検討しましょう。

1日あたりの給付金を1万5,000円で備えておけば、1か月で45万円(1万5,000円×30日)の給付金を受け取ることができ、1カ月入院をして治療費・医療費などを支払っても、約20万円程度は手元に残るはずです。入院が長引き、仕事ができなくてもその後の生活がしやすくなるのが1万5,000円という日額設定です。

ただ、給付金の日額1万5,000円を全て終身タイプの保険で賄おうとすると、月々の保険料が高くなり、家計の負担になってしまいます。必要最低限の5,000円は終身タイプにして、残りの1万円は10年で更新がくるような定期タイプにしてバランスを取るのがおすすめです。終身タイプと定期タイプとを組み合わせれば、月々の支払いは5,000円程度で収まるでしょう。

また、入院せず自宅療養をするケースに備えて、就業不能保険も検討しておきましょう。就業不能保険の給付対象となる条件は、各保険会社で異なり、障害等級の認定を受けなければ支払いの対象とならないこともあります。内容をよく確認して加入するようにしましょう。

そして、年齢に限らず考えておきたいのが「がん」です。がんになってしまった時は治療費もかかりますが、投薬の治療などで働けないような状況になることも考えなければいけません。治療費とその後の生活費という2つを含めて保障を考えておく必要があります。

がん保険は、一時金+入院日額給付をつけるのが一般的です。会社員であれば一時金100万円の商品でも構いませんが、フリーランスの場合は、会社員の倍の保障で考えておくのが良いでしょう。そのため、一時金として200万円~300万円支払われる商品を選ぶのがおすすめです。

死亡保険については、事業を行う上での借入があれば、その金額を賄えるだけの保障が確保できる商品に加入することをおすすめします。借入がないのであれば、あまり必要性はないと言えます。もし念のため死亡保障を付けておきたいという場合には、保険期間が10年などの定期タイプで保険料を安く抑えるか、将来の資金準備と合わせて貯蓄型の商品で死亡保障付きのものを選ぶか、検討してみてください。

●Cさんにおすすめする保険情報

保険全体の考え方会社員と比べて公的保障が少なく、収入が安定しないこともあるため、保障は多めに考えておく。
結婚の予定がある場合には死亡保障を厚めにする。
医療保険終身タイプと定期タイプを組み合わせて、1日の入院給付金が1万円~1万5,000円となるように加入。がん保険も要検討。
就業不能保険自宅療養に備えて、生活費分の保障を備えておく。
死亡保険借入金がある場合は、借入残高分の保険に加入しておく。

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【ケース4】子どもと3人暮らしのDさん夫婦(共働き)

画像: 画像:iStock.com/chachamal

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●プロフィール

基本情報夫32歳、妻30歳(共働き)
家族構成・生活スタイル夫、妻、子どもの3人暮らし
年収(額面)700万円

夫婦で子どもがいる家庭で入念に考えなければいけないのは、死亡保険です。Dさん夫婦の場合には子どもが1人なので、教育費分として1,500万円を目安に死亡保障で賄う必要がありますが、この時、遺族基礎年金・遺族厚生年金の2つを加味して考える必要があるのです。

厚生年金に加入する会社員で子どもがいる場合には、遺族基礎年金・遺族厚生年金の2種類の年金が給付されるしくみになっています。遺族基礎年金の金額としては年間約78万円4)、月々に換算して6万6,000円ほどですが、子ども1人に対し約22万円が加算されるため、年間でおよそ100万円、月8万円ほどは遺族年金でもらえるようになっています。

さらに遺族厚生年金もプラスされ、年間約36万円5)、月3万円ほどの支給がされます。(標準報酬月額30万円、厚生年金の加入期間が10年の場合)遺族基礎年金と遺族厚生年金で、合わせて約13万円/月になるのです。

もし、残された人がこの13万円程度で生活ができるのであれば、この時点で保険は不要です。住宅ローンを組んでいる場合は、団体信用保険に加入しているケースがほとんどで、契約者が亡くなると住宅ローンを支払う必要がなくなります。共働きの夫婦で住宅ローンが無くなる(家賃がなくなる)と、残されたパートナーの収入にプラス13万円の収入で、意外とやりくりできてしまう場合もあります。もしそれでも不安なのであれば、最低でも生活費1年分+お葬式代の死亡保険をかけておくのがおすすめです。

生活費が20万円かかる場合には、遺族年金では賄えず、月7万円不足してしまいます。子どもが成人する20歳までに必要となる生活費を算出すると、月7万円×12カ月×20年間=1,680万円。つまり、教育費の1,500万円に生活費1,680万円を加えた、3,000万円程度の死亡保障を準備しておけば良いということになります。加入している公的年金・子どもの人数・住宅ローンの有無などで状況が大きく変わるのです。

子どもの保険については、必ずしも加入しなければいけないというわけではありません。ただ、産まれた時に異常はなかったのにその後疾患が見つかってしまった子などは、保険に加入できなくなってしまうことがあります。また、子どもの場合には入院・手術・通院など、フルセットの保障をつけても月2,000円程度で収まる、“保障が充実していて安い”商品もあるので、終身タイプの医療保険は子どもにこそおすすめです。

医療が進歩するに従い、医療保険の保障内容がニーズと乖離してくる可能性はあります。ただ、新しい保険に変えるかどうかの選択肢を持つことができます。将来的に選択幅を広げることができるので、家計に負担とならないのであれば、加入しておくことをオススメします。

就業不能保険に関しては、どちらかが働けなくなった時にもう片方の収入で暮らしていけるのであれば、特に必要ありません。妻・夫のどちらに保険をかけるのかは収入の割合によりますが、例えば妻がパートで夫が会社員という家庭の場合は、大黒柱である夫は加入しておいた方が良いでしょう。

就業不能保険を合わせたとしても、夫婦で各1万円ずつ、子ども1人で2,000円程度と、2万円ほどあれば家族3人にとって十分の保険に入れるはずです。保障を手厚くしたい方や不安な方は、がん保障をプラスして考えると良いですよ。

●Dさん夫婦におすすめする保険情報

保険全体の考え方死亡保障については、公的保障・子どもの人数・住宅ローンの有無などを考慮して考える必要がある。
医療保険会社員の方であれば1日の入院給付金が5,000円~1万円のもの。保険料の支払いに余力があれば、がん保険も検討。
就業不能保険夫婦どちらかの収入で生活できる場合には必ずしも必要ではない。
死亡保険子どもの人数・住宅ローンの有無などで細かく算出が必要。

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30代こそ保険に入るべき世代。1日でも早い検討を

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保険の相談に来られる方には、今日が人生で1番若いですよ、というお話をよくします。保険とは、将来起こるかもしれない不幸をイメージすることです。誰もが得意なことではないので、避けて通りたいと考えるのがほとんどでしょう。

また、多くの人は、「自分に限ってなにかが起こる」ということはあまり考えません。しかし、保険は万が一、1万に1回のことが起こった時に助けてくれるものなので、苦手意識はあると思いますが、真剣に向き合って欲しいです。

自分のお金の使い方や生き方、何を大事にしているかというようなことも、保険を検討することで見えてきます。検討した結果、保険に加入せず、預貯金で万が一の費用を賄う、という結論となっても良いと思います。まずは、保険についての情報収集をして「自分に必要な備え」を見つけるため、ぜひ1日でも早く検討していただければと思います。

この記事の監修者

冨士野 喜子(ふじの よしこ)

ふじのFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー
教育出版会社、外資系生命保険会社を経て、2012年にFPとして独立。自身の結婚、妊娠、出産、子育ての経験を活かし、20~30代のライフプランニングを中心に活動。最近はラジオ出演や子ども向けのマネー講座の講師をするなど幅広い年代に向けてお金に関する情報発信を行っている。
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