コロナ禍により、就職・転職活動の在り方が変化しています。人が密集する合同会社説明会などのイベントの中止やオンライン開催への変更など、様々な変化がありますが、中でも「オンライン面接」はコロナ禍の就職活動の変化を象徴するトピックスのひとつです。

そんなオンライン面接について、株式会社キャリエーラ代表取締役でキャリアカウンセラーの藤井佐和子(ふじい さわこ)さんに、概要から印象アップのコツまでを教えてもらいました。転職活動中の方はもちろん、新卒採用に挑む方も是非参考にしてみてください。

オンライン面接とは? コロナ禍で導入が進む新しい面接手法

画像: 画像:iStock.com/Satoshi-K

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外出自粛要請やイベントの規制などが緩和された現在(2020年10月)も、新型コロナウイルスによって私たちの生活は“変化の波”にさらされています。

採用現場にもその波は訪れていますが、「就職難なのでは?」「働きたい業種の募集は少なくなっているのでは?」とむやみに恐れる必要はありません。まずは、コロナ禍の中での、新しい就職・転職市場の潮流をみていきましょう。

コロナ禍で増えた求人・減った求人

新型コロナウイルスの影響による解雇や業績悪化による採用中止などのニュースを見て、漠然とした不安を抱いている人も多いのではないでしょうか。しかし実際は、求人が減った業界と増えた業界には、開きがある状況です。

たとえば、サービス業は全体的に求人が減っています。中でも、アパレルや外食関連など“不要不急ではないもの”を扱う業種では、雇い止めが行われている企業もあります。一方で、同じ食に関する事業者でも「中食(買ったものを家で食べること)」や「内食(食材を購入し、家で調理して食べること)」に関わるビジネスは、変わらず求人がある傾向です。

画像: 画像:iStock.com/AzmanL

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また、会社によっては教育関係事業でも採用がストップしています。一方で、同じサービス業でも、介護ビジネスに関してはコロナ禍とは関係なく求人が増えている状態です。

他にも求人が増えている企業が多いのはIT関係やITコンサル関連事業です。コロナ禍以前から、ITを駆使した業務の効率化・生産性向上を行う「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」を推進する企業が増えるなど、IT分野の需要は高まり続けています。コロナ禍をきっかけにRPA推進に取り組み始める企業も増えており、サービスを提供するIT関係や、そのような相談に乗っているITコンサル関係の企業では求人が増えています。

〈表〉コロナ禍で採用が増えている業界・減っている業界

採用が減っている業界採用が増えている業界
・飲食
・ファッション、ショッピング
・教育関係の一部 など
・介護
・IT関連
・ITコンサル など

新卒採用でも中途採用でも、グループ面接は減少している

画像: 画像:iStock.com/TAGSTOCK1

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それでは、就職活動自体の変化を見ていきましょう。新卒採用では、これまでは3次・4次面接まであり、さらにグループディスカッションも行っている企業が多い状況でした。しかし、今はオンライン面接のみで終わるパターンが増えています。

中途採用でも応募者が多い企業では集団面接がありましたが、今は個別での面接のみの企業が多くなっています。そのため、集団面接で採用現場の雰囲気を確かめたり、採用担当者とある程度の関係値を築いて下地づくりをしたりしてから個人面接に挑むことができないのが、今の就職・転職活動の難しさになっています。

各企業が導入する「オンライン面接」とは?

画像: 画像:iStock.com/takasuu

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コロナ禍での面接はなるべく接触を減らすため、ウェブ上で行うことが増えており、これが「オンライン面接」と呼ばれています。ライブ形式の面接と、動画を投稿する形式の面接の2種類が、これに当てはまります。

①ライブ形式のオンライン面接

主流なのは、ライブ形式で個別面接を行うもの。ビデオ・ウェブ会議アプリなどを使う方法で、質問内容などは対面の面接とほぼ同じです。

②動画投稿形式のオンライン面接

動画投稿形式は、決められた時間内で自己アピールする動画を制作し、動画ファイルを企業に送るタイプのものです。面接というよりは、履歴書などを送る感覚に近いかもしれません。途中で間違えたり、噛んでしまったりして失敗しても、編集して修正することができるのがメリットです。また、スキルがあるなら動画編集で工夫を加えることもできます。応募者の印象を見たいという狙いで導入されることが多いので、新卒採用で使われることがほとんどです。

ここからは、主流であるライブ形式のオンライン面接について、準備から面接中の印象アップのコツまで、詳しく見ていきましょう。

オンライン面接前の準備①【デバイス&アプリ編】動作確認が肝!

初めてオンライン面接に挑む前に、必要なものを準備しておきましょう。どんなものが必要か、事前にチェックしておくべき点などをまとめてご紹介します。

使用するデバイスはスマホでOK?

画像: 画像:iStock.com/KEN226

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オンライン面接には、カメラが付いていてインターネットに接続できるデバイスが必要になります。スマートフォンでも自分を映すことは問題なくできますが、注意すべきは相手の顔がしっかり見えるかどうかです。

面接官が複数いる場合、画面が小さいスマートフォンだと面接官の表情が見えなくなってしまいます。そのため、持っているのなら画面の大きなパソコンやタブレットで挑むのが良いでしょう。

また、当日になって通信環境が悪いなどのトラブルが起こる可能性もあるので、デバイスを複数持っていれば、予備のものも繋げられるように準備しておくと良いでしょう。事前に準備をしっかりしていたり、トラブルにも臨機応変に対応できたりすることは、面接官からの印象アップにもつながります。

使用アプリは企業次第。事前確認がマスト

画像: 画像:iStock.com/chee gin tan

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ZoomやMicrosoft Teamsなど、企業によって使用するサービスは様々です。企業側がミーティングURLを発行して送ってくるはずなので、それに合わせるしかありません。企業から連絡がきたら、そのアプリやツールが使えるか、事前に試しておくことをおすすめします。家族や友達に協力してもらい、自分のデバイスで問題なく使えるかチェックしておきましょう。

動作が遅いなどの不具合があると、印象がマイナスになってしまう恐れもあります。スマートフォンの速度制限やWi-Fi環境の不具合には注意しておきたいですね。

カメラにマイク、イヤホンなどは環境に合わせて準備

画像: iStock.com/arinahabich

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今はPCやスマホ自体のカメラやマイクの性能が良いため、環境を整えるために新たに機器をそろえる必要は無い場合がほとんどでしょう。ただ、周りが騒がしい環境でしかオンライン面接が受けられないのなら、自分の声をピンポイントで拾えるようにマイクがあったほうが良いかもしれません。

イヤホンは、面接官に使っていることが伝わってしまうことから、使っても良いのか悩んでしまう人も多いでしょう。「失礼になってしまうかな?」と不安に思うかもしれませんが、全く問題ありません。

イヤホンをつけないことで相手の言うことを聞き取れず何度も聞き返してしまう方が、印象を損ねる可能性が高くなります。相手の声が聞こえやすくなるなら、ぜひ使いましょう。

オンライン面接前の準備②【服装編】基本は“通常の面接”と同じ

通常の面接では、スーツを用意する方が多いのではないでしょうか。しかし、新卒採用などでスーツを指定される場合を除いて、必ずしもスーツを着る必要はないでしょう。モニター越しのオンライン面接の場合、背景の部屋の様子とスーツ姿の対比が不自然に見えてしまう場合があるからです。それでは、服装やメイクなどの身だしなみは、何を意識したら良いのかを解説します。

通常と同様に企業の指定に合わせて

画像: 画像:iStock.com/kohei_hara

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服装は、対面形式の採用面接と同様に、企業の指定に合わせて選ぶのが基本です。企業サイドが「自由な服装で」と指定している場合は、清潔感があり、常識的であればどんな服装でも大丈夫。身構える必要はありません。

スーツスタイルが定番だと思いますが、家の中でジャケットを着ているのは少々不自然です。スーツのインナーに着るような、清潔感があるシャツやブラウスが良いでしょう。色は、輪郭がはっきりと見えたり顔色が良く見えたりする、自分に似合う色味をセレクトすることを心がけるようにしてください。迷ったら、“レフ板効果”で顔を明るく見せられる白を選ぶのが良いでしょう。

常識の範囲内で少し濃いめにメイク

画像: 画像:iStock.com/ Lana_M

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髪の毛は、表情がよく見えるように留めたりまとめたりします。これは、通常の面接と同じです。女性でメイクをする場合、少し濃いめにするのがポイントです。画面越しだとぼやけた印象になりがちなので、アイブロウやチークなどをいつもより少し濃くして、輪郭をはっきりと見せましょう。バストアップ(胸から上)の画角でしか映らないため、印象に残るように、常識の範囲で個性を出したほうが良いと思います。

また、おしゃれなパーマがボサボサの寝癖に見えるなど、全身で見ると印象が良くても、バストアップだけだと不潔感があるように見えてしまうこともあります。あくまでもバストアップしか見えないことを意識して、家族や友人に事前にオンラインで確認してもらうと良いかもしれません。

オンライン面接前の準備③【環境編】“邪魔が入らない部屋の壁の前”が一番

画像1: 画像:iStock.com/monzenmachi

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場所もまた、オンライン面接では気を使うポイントです。リモート飲み会やオンライン会議などが盛んに行われるようになり、度々話題にのぼるのが“背景”です。採用面接ではどんなものが良いのか、確認しておきましょう。

自宅がベスト。音に気をつけて選ぼう

事前の準備や環境の確認のことを考えると、オンライン面接はやはり自宅で受けるのがベストです。小さいお子さんやペットがいたり、近所の工事の音が入ったりといった騒がしい環境の場合は、貸し会議室やカラオケボックスなどの静かな場所で挑むのも良いでしょう。

「静かだと思って行ったら、その日は賑やかだった」ということもあるので、カフェや屋外は避けるのがベターです。場所に関しては、背景に何が映るかよりも、周囲の音が邪魔しないかということに注意して選んでください。後述しますが、背景はバーチャル背景などで印象を変えることができますが、音声はダイレクトに相手に伝わってしまいます。相手に伝わらない場合でも、自分が聞き取れず何度も聞き返すのはマイナスポイントになってしまいます。

背景は生活感と余計なアピールを抑える

それでは、自宅でできる場合、どんな場所が良いのでしょうか。基本は余計な情報が入らない、壁やクローゼット、扉などをバックにするのがおすすめです。白い壁を背景にできるととても良いと思います。

反対にNGなのは、生活感が見えてしまうこと。片付いていないキッチンや干してある洗濯物が映ってしまうのは印象が良くありません。また、見落としがちなマイナスポイントが、窓を背景にすることです。やってしまう人は多いのですが、逆光になってしまうと相手から顔の表情が見えづらく、印象が悪くなる場合もあるので気をつけて下さい。

画像: 画像:iStock.com/ ahirao_photo

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部屋が狭く、どこを背景にしても生活感が出てしまう場合は、バーチャル背景を使うのもひとつの手です。部屋やオフィスをイメージしたものが無難です。あくまでも仕事の面接なので、ここでは個性やユニークさは出さなくて良いでしょう。

背景に楽器やスポーツのユニフォームなど、話のネタになるように何かを写り込ませることが就活生の間でも少し流行っています。家の中を見せるということで工夫してアピールしたいと思ってしまうかもしれませんが、あくまでビジネスの場であるという意識を持って挑みましょう。

また、さらにNGなのは、動画をオフにして音声だけで面接に臨むことです。わざわざオンライン面接にしているのは、表情や雰囲気、印象を見たいからであり、それが必要ないなら電話で良いはずなのです。「動画をONにする」という指定が無いからといってオフにするのは非常識ととらえられても仕方がない行動です。

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オンライン面接で印象アップのコツ!実践すべき5つのテクニック

対面式の面接ではないことに不安を感じる人は多いかと思いますが、オンラインだからこそ有効な印象アップのテクニックもあります。5つのコツを参考にしてみてください。

(1)入退出のタイミングをあらかじめ決めておく

画像2: 画像:iStock.com/monzenmachi

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オンライン面接で一番あたふたしてしまいがちな場面が、入退室時です。いつ入室するのが良いんだろう? いつ退室するのが良いんだろう? とまごまごしてしまわないように、自分でベストなタイミング、挨拶をあらかじめ決めておきましょう。

入室時は、5分前くらいに指定されたURLに入って待機するのが良いでしょう。時間に余裕ができるため接続できるかの確認もでき、もし不具合があっても企業側にメールや電話をして、相談する時間が確保できます。

また、面接を終えて退出するタイミングも重要です。「ありがとうございました」という言葉の応酬になってなかなか退出できず、タイミングを見失ってしまう…という状況に陥りがちです。

例えば「本日はありがとうございました。では、こちらで切らせていただきます」など、お礼と退出する旨を伝える言葉を決めておき、きっぱりと自分から退出してしまいましょう。「自分から切っていいの?」と不安に思うかもしれませんが、企業はそのまま、他の面接をしたり、打ち合わせをしたりする可能性もあるので大丈夫です。ここでまごつかないことが、スマートな印象にもつながります。

(2)表情はオーバーなくらいが丁度良い

通常の面接では全体的な印象も含めて総合的に判断してもらえますが、オンラインだと、限られた範囲しか見えないため、その見えている部分が重要になります。そのため、対面で話す時以上に表情を顔に出して、気持ちを表現するようにしましょう。

ポイントは、モニターに相手の顔だけでなく、自分の顔も映し出してチェックすることです。ただ、あからさまにモニターに映る自分を見てしまうのは印象が良くないので、ちらっと見る程度にとどめておきましょう。自分の顔だけを鏡のように見てしまうと、無意識に髪の毛や顔を触ってしまいがちなので注意が必要です。

(3)モニターで見える自分の姿を事前チェック

実際の姿を見るのと、モニターに映った姿を見るのとでは印象が異なります。中でも印象を大きく左右するのが、カメラに映す範囲をどのくらいにするか、です。

きちんと顔が収まるようにしつつ、顔が画面いっぱいになってしまわないように、少し引いてバストアップまで入れるのがベストです。面接では、身振り手振りも印象を左右する重要な要素です。当日、面接が始まってからは調節しにくいので、デバイスを置く場所や自分との距離、角度などを事前に決めておくと良いです。

〈図〉適切な画面表示サイズの一例

画像: (3)モニターで見える自分の姿を事前チェック

身だしなみを整える際は、鏡ではなくモニターに映る姿を基準にバランスを考えていきましょう。前述したポイントを元に、あらかじめ、服装やメイクなど本番と同様に準備、どう映るか確認しておきます。ちょっとした髪の乱れなど、実際に目で見た時には気にならない部分が気になることもあると意識しておきましょう。

(4)照明で自分の印象をコントロール

白い壁の前であれば、家の電気をつけた状態で十分明るくなると思いますが、事前チェックの際に顔が暗く見えるようならライトを足すと良いでしょう。

また、光の色によって印象を変えることができるので、自分をどう見せたいかを意識して選んでみてください。白熱灯などのオレンジ色の光なら暖かく穏やかな印象、LEDなどの青白い光ならクールで聡明な印象を与えることができます。

オンライン面接では、“画面に映っている姿”が自分の印象を決める要素になります。ホームセンターなどで安価な取り付け型ライトを手に入れることもできるので、一度探してみても良いのではないでしょうか。

(5)カンペは避けて。大事なのはゆっくり丁寧に話すこと

画像: 画像:iStock.com/maroke

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オンライン面接だと、カメラに映らないものは面接官に見えないので「カンペが使えるのでは?」と思ってしまいがちです。確かに、面接官にはカンペの存在は見えませんが、カンペを見て発言すると棒読みになってしまい、結果的に「これは、カンペを読んでいるな」と面接官には分かります。モニターを通しての面接では、通常の面接よりも無機質な印象になりがちです。そこに棒読みが加わると、よりドライな雰囲気が出てしまいます。

企業側は、面接者の印象を見たいと思ってオンライン面接をしていますが、どうしても対面での面接よりも印象は伝わりにくいものです。それは、裏を返せば、対面での面接よりも全体の“なんとなくの雰囲気”に騙されにくいということでもあります。

そのため、話の内容を通常以上にきちんと聞いて、判断基準にしてもらえるというポジティブな面もあると言えるでしょう。だからこそ、簡潔にはっきりと丁寧に伝えることが重要になります。オンラインで話す場合、話の「間」が難しく、会話というよりも“発言”になってしまいがちです。その場で聞かれたことに合わせて臨機応変に答えること、対話することを大切にすれば、良い印象を持ってもらえるはずです。

最も重要なのは「事前の準備」。録画するなど、面接の練習をしよう

画像: 画像:iStock.com/taa22

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対面の面接でもオンライン面接でも重要なのは、事前の準備です。オンライン面接の場合、画面を通して自分がどう見えるかを意識して、確認しておくことが重要です。面接の練習もオンラインでやってみて、録画して見返すことで、面接官の目線に立つことができますよ。そういった意味では、対面の面接よりも対策をしやすいのがオンライン面接なのです。

まだどの企業もオンライン面接を導入し始めたばかりのため、就職活動をしている人たちはもちろん、企業の人事も「オンライン面接のスタンダード」が確立できていない状態です。むしろ、オンラインでの会話に関しては、若い就活生や転職する人の方が慣れている可能性もあります。そのため、オンライン面接だからといって気負い過ぎず、対面での面接と同様に自分の想いを“伝える”ことが、採用を獲得するための第一歩となるのです。

【この記事の著者】

藤井佐和子(ふじい さわこ)

株式会社キャリエーラ 代表取締役。
大学卒業後、カメラメーカー海外営業部のOL経験を経て、大手総合人材サービス企業にて、派遣事業部、人材紹介事業部の立上げに携わる。
主に女性を対象とした転職支援チームを立上げ、数多くの転職を支援。
その後、独立。延べ13,000人以上のキャリアカウンセリングを行う一方、数多くの企業に対し、研修やスキーム作りなど人材育成支援を行う。
その他、大学の非常勤講師、講演、キャリアセミナー、執筆など幅広く活動。
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