がん検診の料金相場は? 種類ごとの平均をチェック
まずがん検診は、どこが実施しているかにより大きく3つの種類に分類することができます。「市町村などの自治体で実施するタイプ」「職域において実施するタイプ」「病院(医療機関)が独自に用意しているタイプ」です。
自治体のがん検診は、対象集団全体の死亡率を下げることを目的に公共的な医療サービスとして提供される「対策型検診」にあたり、職域や医療機関のがん検診は、個人の死亡リスクを下げるため任意で提供する医療サービス「任意型検診」にあたります。
料金は自治体や医療機関などによってバラつきがありますが、この記事では目安として、特に受けることの多い自治体のがん検診の料金相場を紹介します。
〈表〉自治体におけるがん検診の費用平均1)
検診単価 | 自己負担単価 | |
---|---|---|
胃がん検診(胃部エックス線検査) | 7,103円 | 1,505円 |
胃がん検診(胃内視鏡検査) | 14,005円 | 3,116円 |
肺がん検診(胸部エックス線検査) | 2,483円 | 527円 |
肺がん検診(胸部エックス線検査+喀痰細胞診) | 5,129円 | 975円 |
大腸がん検診 | 2,366円 | 584円 |
乳がん検診(乳房のエックス線検査のみ) | 5,111円 | 1,291円 |
乳がん検診(視触診+乳房エックス線検査) | 7,471円 | 1,619円 |
子宮頸がん検診 | 6,752円 | 1,396円 |
自治体で実施する検診の場合、どの種類のがん検診についても、自治体が費用を一部負担してくれる分、純粋な検診単価よりも大幅に安い自己負担額となっています。料金相場は500円〜3,000円程度です。
もし、病院(医療機関)でこれらと同じ検査受ける場合には、「検診単価」の費用がそのままかかり、また自由診療であるため病院によってはさらに高い料金設定であることも多いです。そのため、自治体で受けられるものについては積極的に利用するようにしましょう。
料金や検診内容は自治体により少し異なります。たとえば、胃がん検診であれば、バリウム検査(胃透視検査)と胃カメラ検査(内視鏡検査)からどちらかを選べる場合もあり、さらに追加料金を支払うことで胃カメラ検査に変更することができることもあります。
詳しい内容は、自分が住んでいる自治体のホームページや窓口などで確認してみましょう。
そもそも、なぜがん検診は必要なの?
国のがん対策への取り組み
がん検診は、がんを早期発見し、適切な医療につなげて死亡率を下げるために実施されます。
過去30年以上にわたり、日本人の死因の第1位はがんです2)。この状況に国も本腰を入れて対策を続けており、2006年には「がん対策基本法」も誕生しました。この法律をもとに国が掲げている「第3期がん対策推進基本計画」3)の全体目標には、次の3つが掲げられています。
(1)科学的根拠に基づくがん予防・がん検診の充実
(2)患者本位のがん医療の実現
(3)尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築
すなわち、この計画に基づいて全国の自治体でがん検診が行われているのです。なお、日本ではがん検診について次のような指針を示しています。自治体や職域実施の検診はこの内容に従って、検査内容などを決めています。
〈表〉がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針4)
種類 | 検査項目 | 対象者 | 受信間隔 |
---|---|---|---|
胃がん検診 | 問診に加え、胃部エックス線検査または胃内視鏡検査のいずれか | 50歳以上 ※当分の間、胃部エックス線検査については40歳以上に対し実施可 | 2年に1回 ※当分の間、胃部エックス線検査については年1回実施可 |
肺がん検診 | 問診、胸部エックス線検査および喀痰細胞診 | 40歳以上 | 年1回 |
大腸がん検診 | 問診および便潜血検査 | 40歳以上 | 年1回 |
乳がん検診 | 問診および乳房エックス線検査(マンモグラフィ) ※視診、触診は推奨しない | 40歳以上 | 2年に1回 |
子宮頸がん検診 | 問診、視診、子宮頸部の細胞診および内診 | 40歳以上 | 2年に1回 |
なぜこれらの種類のがんのみ、指針が定められているかというと、これらのがんはほかの種類と比べて、「検診をしてがんを早期発見することにより、病気の回復が見込める」という科学的根拠があるためです。また、がん検診の目的が「死亡率を下げること」であるため、おもに進行が早い種類のがんについて検診が行われています。
たとえば胃がんは、早期から3~4年かけて進行がんになり、進行がんになると1~2年で生命に関わります。一方、上記に該当しない前立腺がんは、進行スピードがゆるやかで、がんの発生から何も治療をしなかったとすると、15~20年かけて死亡に至るケースが多く見られます。前立腺がんが発症しやすい50代以降に検診で見つけられたとしても、もとの寿命とそこまで差がないというのが現実なのです。
がん検診による早期発見の重要性
ほとんどのがんは、早期の段階では自覚症状があらわれないため、検診での発見が重要となります。
たとえば、子宮頸がんの早期ではほとんど自覚症状がありませんが、約6割が無症状の早期にあたる0期で発見されています5)。つまり、多くの場合が検診により見つかっていると考えられるのです。
子宮頸がんは0期で適切な治療をすれば、5年生存率(診断から5年後に生存が確認できた割合)は99.2%ですが、Ⅳ期(周辺臓器・遠隔への転移)まで進行してしまうと、24%にまで低下します。そのほかのがんも同じように、進行してしまってからの5年生存率は早期と比較すると大幅に低下する傾向があります。
〈図〉おもながんのステージ別5年生存率6)
前述しましたが、こうしたことを踏まえて、なるべくがんを早期発見できるように、自治体ではがん検診を公共的な医療サービスとして提供しています。
また、健康診断さえ受けていれば大丈夫と思う方もいるかもしれませんが、がん検診と健康診断とでは、検査内容が異なります。健康診断でも胸部のエックス線検査はありますが、そのおもな目的は結核を見つけることです。偶発的に結核以外の疾患を発見できる場合もありますが、基本的には稀なことだと思っておいたほうがいいでしょう。一方、がん検診はがんを見つけることに特化した検査を行うのです。
がん検診はいつ受けるべき? 20代・30代でも受けた方がいい?
がん検診は、がんの種類によって対象年齢や受診間隔が異なります。まず、なぜ対象年齢が異なるかというと、年齢によってがんに罹患するリスクが異なるからです。
〈図〉年齢別のがんの罹患割合7)
たとえば、胃がんのがん検診は、国の指針に従うと50歳以上が対象です。上のグラフで実際の数字を見てみても、胃がんを罹患している方の割合は50代以上が90%以上を占めます。また、40歳以上が対象とされている乳がんの罹患割合も40代以上が90%以上を占めています。このように、実際のデータに基づいて対象となる年齢が決められているのがわかるでしょう。
受診間隔については、がんの進行スピードなどの科学的根拠に基づいて「この間隔で受診すれば、がんを早期発見でき、死亡率を下げられる」という観点で決められています。まとめて受けられないことで面倒に感じてしまうかもしれませんが、ぜひ規定の間隔に従って受けるようにしましょう。
ただし、20代・30代でも遺伝や生活習慣などの要因で、がんが発生する場合もあります。
特に大腸がんや乳がん、子宮頸がんなどの一部には遺伝性のがんがあります。過剰検査はお金や時間がかかるのでやみくもにおすすめはできませんが、家族に罹患暦があるなど思い当たる節がある方は、20代・30代の若い年齢であっても、病院が実施している検診などを利用してみてもいいでしょう。
最近では、自由診療でがん遺伝子検査を実施している病院もあるので、こうした検査を利用してみるのもひとつの手です。
がん検診はどうやって受けるの?
がん検診は、おもに「自治体」「職域」「病院(医療機関)」の3つで受けることができます。一般的な受け方は次のとおりです。
(1)自治体(市区町村)のがん検診
住民票のある自治体が実施しているがん検診に申し込みをして、受けることができます。検診に該当する年齢と間隔に応じて、自治体から郵送などで案内が届くので、案内を受け取ったら、電話や郵送、WEBなどから担当している医療機関などに予約を入れます。
自治体によっては、個別に案内せずに広報誌やホームページでお知らせしているケースもありますので、その場合は自分でチェックする必要があります。
以下のサイトでは、各自治体のがん検診窓口リストを公開しているので、参考にしてみてください。
▶︎知っておきたいがん検診「各自治体のがん検診窓口/都道府県」
(2)職域のがん検診
企業のなかには年1回の定期健康診断とは別に、がん検診も行っているところもあります。しかし、これは福利厚生の一環で、すべての企業に従業員のがん検診が義務づけられているわけではありません。企業によって、検査項目や対象年齢等実施方法は様々です。
(3)病院(医療機関)のがん検診
医療機関が独自の項目で実施しているがん検診で、自覚症状がない場合には自由診療になるため、公的医療保険の適用外です。そのため、全額自己負担となり、自治体や職域で受けられるものと比べて費用が高くなることがほとんどです。医療機関の窓口や電話で予約を取り、検診を受ける流れとなります。
もし精密検査が必要だと診断されたら?
がん検診の結果、「要精密検査」の診断が出た場合には、どうすればいいのでしょうか。結果を聞いて不安になってしまうかと思いますが、要精密検査となったからといって、がんが確定したわけではありません。あくまで、「がんの疑いがある」という状態であることは覚えておくといいでしょう。
いずれにしても、医療機関でより詳しい検査を受けるようにしましょう。一般的には、がん検診を受けた医療機関から次のステップについて説明があります。流れは次のとおりです。
(1)口頭や書面で「要精密検査」の診断がある
(2)説明に従って医療機関に精密検査の予約を入れる
基本は、大学病院やがん専門病院など、検査設備の整った大きい病院で精密検査をすることになります。このような病院では、紹介状が必要なこともあるため、その場合は検査を担当した医療機関から書面で紹介状をもらわなければいけません。紹介状の作成には別途費用がかかる場合もあります。
また結果が出たあとに、一度クリニック等のかかかりつけ医を受診して指示を仰ぐ方針もあります。かかりつけ医からも精密検査が必要だと判断された際には、その医療機関で紹介状を作成してもらうこともできます。
ちなみに、病院名などの宛名は必須ではないので、空欄の状態で発行してもらい、自分で精密検査の病院を選ぶことも可能です。
もしがんと診断された場合には、精密検査を受けた病院でそのまま治療することが望ましいため、検査だけでなく治療についての評判やクチコミを調べてから病院を選んでもいいでしょう。
健康長寿のためにも、がん検診は必ず受けよう
日本のがん検診受診率は4〜5割程度で、約半分の方が未受診だと言われています8)。繰り返しになりますが、がんは早期発見・早期治療が鉄則です。自分の健康のために、対象の年齢になったなら必ずがん検診を受けるようにしましょう。
また、もしがんになってしまった時には治療が長期にわたる場合もあり、少なからずお金が必要になります。貯蓄に不安がある方は民間の医療保険が扱っている「がん保険」などの備えもしっかりしておくことをおすすめします。