この記事では、ファイナンシャルプランナーの高山一恵さん監修のもと、結婚後のお金の管理方法について紹介します。また、なぜ結婚を機にお金について話し合うべきなのかをはじめ、夫婦でのお金の管理を円滑に行うためのポイントについても解説します。
この記事の監修者

高山一恵
ファイナンシャル・プランナー(CFP)/Money&You取締役。
中央大学商学部客員講師。一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを創業、10年間取締役を務め退任。その後現職へ。NHK「日曜討論」「クローズアップ現代」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「マンガと図解 はじめての資産運用」(宝島社)など書籍100冊、累計180万部超。1級FP技能士。住宅ローンアドバイザー。
結婚後のためにお金のことを考えるべき理由

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結婚が決まったら、新居探しや結婚式の準備などワクワクするイベントが盛りだくさんですが、お金について話し合うことも忘れないようにしましょう。ここでは、なぜ結婚が決まったらお金について話し合うべきなのか、その理由を紹介します。
パートナーとの良好な関係が築ける
いざ結婚生活が始まってから相手のお金の使い方が気になっても、指摘しづらいうえ、お金についての指摘は険悪になりやすいものです。実際、新婚生活では、お金に関するトラブルが少なくないようです。
それを回避するためにも、結婚後ではなく、結婚前に話し合いが必要です。もし結婚前にお金について十分に話し合えなかった結果、管理が不十分な状態にあるのであれば、妊娠・出産や転職などライフスタイルが変わるタイミングで話し合いを始めるのがよいでしょう。ただし、できるだけ早い段階で話し合うことが望ましいです。
そもそも、パートナーはもちろん、自分も“お金遣いの癖”を直すのは難しいものです。しかし、貯蓄の目的など具体的な目標を明確にすると、改善しやすくなります。また、我慢のしどころだけでなく、お金のかけどころも夫婦2人で共通認識を持つことで、モチベーションに繋がります。
話し合う時に念頭に置いておきたいのが、1、2度の話し合いではまとまらないということ。最初はライフプランについての雑談からはじめ、徐々にすり合わせていけるといいでしょう。お互いが納得できる着地点を目指さないと、いつか不満が爆発してしまうので、じっくり進めることが大切です。
この先の人生のリスクに備えられる
病気やケガ、リストラ、災害など、誰にでも将来の“もしも”があります。そんなリスクに備えるために、何かあった際に使える緊急予備資金の準備や、保険があると安心です。夫婦で話し合い、リスクへの備えをするためにも、お金についての話し合いは重要になります。
2人の理想のライフプランを実現しやすくなる
出産や家の購入など、どんな人生を求めているかによって必要なお金は変わります。楽観的に考えすぎて、いざという時にお金がないのはもちろん困りますが、闇雲に貯蓄を頑張りすぎて日々の生活に楽しみが少ないと、破綻してしまうことも。どんな結婚生活を送っていきたいかを明確にし、必要な金額を把握することで、適切な備えができます。
結婚後におすすめのお金の管理方法

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夫婦の働き方やお金の使い方の傾向によって、おすすめのお金の管理方法は異なります。ここでは、具体的なお金の管理方法と、どのようなライフスタイルの夫婦におすすめなのかも紹介します。
その前に、まず知っておいてほしいのが、どんな管理方法を採用する場合でも夫婦で一緒に管理することが基本だという点です。1人がお金の管理を引き受けていると、その人に病気やケガなどのアクシデントがあった際、どこにどのようなお金があるか把握できなくなるリスクが発生します。お金の管理が得意な人が中心になる形でもいいので、2人で管理や把握をすることが大切です。
もし、2人ともお金の管理が苦手な場合は、プロに相談をしてしくみづくりのアドバイスをもらうところから始めるのもおすすめです。
①項目別に支払いを分担する方法
「妻が食費」「夫が家賃」といったように、それぞれが担当する項目を決めて支払う方法です。年収差や家事貢献度なども考慮して比率を変えるなど、負担割合に不公平が生じないように設定する必要があります。また、それぞれの項目にどんな支出が含まれるのかを明確にし、夫婦で共有するのが上手くいくポイントです。
おすすめの夫婦 | 共働きなどお互いに収入がある夫婦 |
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メリット | 自分が担当する項目のお金だけ負担すればいいので、自由なお金がある程度ある |
デメリット | 食費に外食は含むのか、子どもの本などちょっとした買い物は教育費なのかなど、あいまいな部分が発生しやすく項目設定が難しい |
②共通の口座に定額を入金して管理する方法
毎月、それぞれが決まった金額を共通の口座に入金し、生活費や貯蓄などに割り当てます。この方法も、年収差や家事貢献度などを考慮することが大切です。また、お小遣いを除いた金額を共同管理すると、各自が自由に使えるお金を確保しつつ、家計の透明性を保ちやすくなります。
おすすめの夫婦 | 共働きなどお互いに収入がある夫婦 |
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メリット | 不公平が生じにくく、お金の流れが把握しやすい。共通の口座内で貯蓄も行えば、貯蓄も見える化できる |
デメリット | 共通の口座に入れたお金からお小遣いを割り振ると、不自由さがある |
③1つの財布にまとめてお小遣い制にする方法
2人の収入をひとまとめにして、そこから生活費や貯蓄、お小遣いを支払う方法です。どちらか一方が家計管理を担いがちになるため、お互いに相手任せにせず、定期的に2人で確認や見直しをすると円滑に運営できます。
おすすめの夫婦 | 片働き・共働き問わず、夫婦2人もしくはどちらかがあまりお金を使わない夫婦 |
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メリット | お金の流れの見える化がしやすい。そのため、無駄な支出がわかりやすく省け、貯蓄もしやすい |
デメリット | 片働きの場合、働き手のお小遣いが少ないと不満が生じやすい |
④完全に収入管理を分ける方法
夫婦の収入をまとめず、生活費を折半する方法です。家賃はもちろん、その時々で変動する食費や光熱費なども半分ずつ支払います。
おすすめの夫婦 | お互いに家計管理が得意で、それぞれ高収入な共働き夫婦 |
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メリット | 生活費以外は自分の裁量で好きなように使えるため、自由度が高い |
デメリット | どちらかが働けなくなった時に家計が苦しくなる可能性がある |
結婚後のお金の管理を円滑にするためのポイント

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夫婦でお金の管理を始める時に、押さえておきたいポイントがあります。円滑にトラブルなく進めるために重要なので、ぜひチェックしてください。
ポイント①夫婦のお金の現状をオープンに共有する
まずお互いに把握しておきたいのが、それぞれの収入、支出、貯蓄額です。これらのバランスが悪かった場合、現状がわかることで初めて対策ができるようになるので、まずはお互いにオープンにすることが大切です。
お金の管理に苦手意識があると、「無駄遣いを指摘されそう…」と身構えてしまう人がいるので、話し合いでは相手に対して“悪いコメントはしない”とルールづくりをしておくといいでしょう。
完璧な人はいないということを念頭において、まずは話し合いの場を作り、お互いの状況を把握することを目指しましょう。また、当事者同士での話し合いが難しい場合は、ファイナンシャルプランナーなどのプロを頼ることもおすすめです。
ポイント②2人のライフプラン・人生設計を明確にする
ライフプランによって、備えておくべき金額は変わります。
たとえば、住居購入の場合、住宅を購入するのかだけでなく、マンションなのか戸建てなのか、場所はどこかなどによって金額は異なります。また、相続予定の土地や社宅・住宅手当の有無なども知っておく必要があります。
特にしっかりと話し合いたいのが子どもについてです。子どもを持つかどうかだけでなく、希望する人数も確認しておきたいポイントです。また、教育についても私立学校をいつから選択肢として入れるのか、塾や習い事、留学についても考えを共有しましょう。
その際、教育費を補助する制度についても調べておくのがおすすめです。子育てに関わる補助金は自治体によって差があるので、住んでいる場所だけでなく今後住みたいエリアについても調べておくといいでしょう。
生まれる前から「教育について話し合うのは早い」と感じるかもしれませんが、どちらかが突然「中学受験させよう」などの提案をすると夫婦で対立することも。早めに話し合っておけば、時間をかけて意見をすり合わせることもできます。
若い夫婦が遠い未来だと考えがちな老後についても、この機会に話し合っておきたいもの。最近では、必要額の目安として持ち家と基本生活費、医療費、介護費などで1,500~2,000万円が必要だと言われています。退職金や年金がどのくらい見込めるのかなどを把握し、目標額を設定して計画的に貯めていきましょう。
ポイント③お互いが納得できるルールを決める
夫婦で決めたお金の管理方法でも、どちらかが我慢する形になると続きません。大切なのは、お互いが納得できる方法だということ。負担する割合はもちろんですが、高額な買い物をする際のルールや貯蓄についてはきちんと価値観を伝え合い、折衷案を見つけておきたいところです。
また、趣味や娯楽費は興味がない人からすると無駄遣いに見えることもありますが、それをそのままぶつけるとトラブルの原因になります。お互い様だと考えて、尊重することを心に留めておきましょう。特に、お小遣いの使い道については、お互いの価値観を尊重しましょう。
この時、一緒に考えておくといいのが、夫婦で分担する家事と育児の割合です。どちらか1人に家計の負担と家事・育児の負担の割合が偏ると、不満が溜まりやすくなるため、役割分担のバランスを意識することが重要です。
ポイント④定期的に見直しをする
家計管理方法が決まっても、ライフステージや生活環境の変化に応じて見直しは必要です。転職や出産、引っ越しなどのタイミングはもちろんですが、理想的なのは月に1度。その月の収支や貯蓄額を把握するとモチベーションも上がりますし、新しい情報をお互いに共有しておけば、何か不測の事態が起きた時にも慌てず対応できるでしょう。
それが難しい場合は、3カ月に1回が目標です。光熱費や帰省費用などによって支出は季節ごとに変動するので、このタイミングでの確認と見直しはしておきましょう。
「毎月やるのは面倒」「お金の話は気が重い」という人は、給料日にイベント化して明るい雰囲気で行うのがおすすめ。「1カ月お疲れ様」と夫婦でお互いを労いつつ家計を振り返ることで、ポジティブなイベントに変えられるでしょう。また、ルーティーンになってしまえば、意外と面倒ではなくなるものです。
結婚後のお金の管理に便利なツール・方法

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では、実際にお金の管理をする際にどんなツールを使ったらいいのでしょうか? ここではその方法や便利なツールを紹介します。
家計簿をつける習慣を作る
家計を把握するために、家計簿をつける習慣を作ることを目標にしましょう。便利な家計簿アプリもありますが、習慣づけをするというところではノートにまとめるアナログな方法もおすすめです。その場合は項目ごとに、1円単位でなくていいので何にどのくらいお金を使ったか記録します。このほかにエクセルなどの表計算ソフトなど、2人が取り組みやすい方法を選び、ざっくりとでもいいので、まずは家計簿をつける習慣を持つことが大切です。
家計簿アプリを活用する
家計簿アプリのメリットは、いつでもどこでも確認できること。こまめにチェックできるので、支出の抑止力にもなり、使いすぎに気がつきやすくなります。また、家計簿アプリを選ぶ時は、夫婦で同じアカウントを共有できるものがマスト。口座やクレジットカードを紐付けられるサービスなどもあるので、2人が使いやすいものを探してみてください。
【関連記事】FP推薦!家計簿アプリ9選について、詳しくはコチラ
目的別に口座を用意する
口座は2人名義で作ることはできませんが、生活費や貯蓄など夫婦で共有して使う、どちらも確認することができる口座を開設しましょう。最近では1つの代表口座の中で、目的別に管理できるサービスも多くなっています。生活費をはじめ、貯蓄、教育費など、必要な費用別に分けるといいでしょう。特に貯蓄は、何のための貯蓄なのかわかるよう、老後資金、住居購入費など細かく分けることがおすすめです。
緊急時に備えたお金は、すぐに引き出せる普通預金の口座へ。また、NISAやiDeCoなどを利用している場合は、たとえばNISA は教育費、iDeCoは老後資金といったように、それぞれに目的を設定するといいでしょう。
そのほか、教育費は子ども名義の口座を使う方法もありますが、その場合、成人後の管理方法など、注意が必要な点もあります。利用する際には気をつけましょう。
定期預金や積立、保険も活用する
「生活費のあまりを貯金にまわそう」と思っていても、なかなか難しいものです。貯金が苦手な夫婦は、普通口座で貯めるだけでなく目的別に適した方法を選ぶと貯めやすいでしょう。
たとえば、積立貯金は毎月一定額を自動で積み立てられるので、貯蓄のしくみづくりになります。また、普通預金よりも金利が高く、満期日まで引き出しができない定期預金は、ボーナスを貯蓄したり、住居購入の頭金を貯めたりするのに向いています。
結婚を機に保険加入を検討している人は、保障機能と貯蓄機能を兼ね備えた“貯蓄型保険”という選択肢もあります。また、“変額保険”など、投資ができる保険もあるため、資産形成の方法の1つとして検討してみるのもいいでしょう。
結婚後は将来のリスクに備えるお金も考えよう

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結婚のタイミングには、日々の生活費や老後資金のほか、もしものリスクに備えるお金を考えることが大切です。また、どんな備えをしておくべきかについても、併せて紹介します。
緊急予備資金を用意しよう
病気や事故、天災、失業など、不測の事態が起きた時に備えて、すぐ引き出せるお金“緊急予備資金”を準備しておくことは大切です。保険や社会保障制度などもありますが、一時的にまとまったお金が必要になるケースも多くあります。
緊急予備資金は、すぐに引き出せる形式の普通預金で、ほかの用途とは別に口座を作っておくといいでしょう。金額の目安は生活費の3~6カ月分ですが、個人のほかの貯蓄の有無や公的・企業の保障がどれほど充実しているかによって、必要な金額を設定しましょう。
なお、この緊急予備資金を用意していないと、投資しているお金を引き出さなくてはいけなくなる可能性もあります。投資のお金は元本が割れている時に引き出すことになると損をしてしまうので、注意が必要です。
長期的に考えて投資も検討しよう
人生100年時代と呼ばれるようになり、自分やパートナーがいつまで働けるか、経済などにどんな変化があるかわかりません。今後20~30年など、将来を長期的に考えて資金の準備をすることが大切です。
教育費や老後資金など時間をかけて準備する必要があるものは、長期運用でお金が増やせる投資を検討してみましょう。NISAやiDeCoなどは初心者でもはじめやすく、非課税のメリットもあるためおすすめです。
スムーズなお金の管理で夫婦円満な生活を

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夫婦2人で貯める必要があるお金、使っていいお金を把握できれば、理想の結婚生活のための備えができるだけでなく、必要以上に将来への不安を感じることがなくなります。定期的に話し合うことで、お互いの考えへの理解も深まるはず。結婚したら、夫婦一緒に家計の状況を把握し、幸せな結婚生活を送りましょう!