「厚生年金の保険料はいつまで支払いが続くの?」「65歳以上も働き続けるなら、厚生年金の保険料の支払いはどうなるの?」

毎月の厚生年金保険(以下「厚生年金」と表記)の保険料の負担は決して少なくありません。会社に勤めている人なら、厚生年金の保険料の支払いがいつまで続くのか気になったことがあるのではないでしょうか。この記事では、ファイナンシャルプランナーのタケイ啓子さん監修のもと、厚生年金の保険料はいつまで支払うのか、65歳以上で働き続けた場合の厚生年金の保険料の支払いなどについて詳しく説明します。

※この記事は2024年4月15日に更新しています。

この記事の監修者

タケイ 啓子(タケイ ケイコ)

ファイナンシャルプランナー(AFP)。36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。

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厚生年金の保険料の支払いは最長で70歳まで

画像: 画像:iStock.com/SeiyaTabuchi

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厚生年金の保険料は、定年退職の年齢まで支払う必要があります。そのため、65歳で定年退職をした場合、保険料の支払いは65歳までとなります。ただし、定年後に再雇用などで働き続けるのであれば、最長で70歳まで厚生年金の保険料を支払います。厚生年金の加入資格は70歳で失うため、70歳以降は会社勤めを続けても厚生年金の保険料の支払いはありません。

厚生年金は70歳以上も任意加入できる

前述のとおり、厚生年金の加入資格は70歳で失います。しかし70歳以降も任意で厚生年金に加入することはできます。任意で加入するケースとしては、年金の加入期間が10年未満の場合が挙げられます。厚生年金と国民年金を合わせた保険料の支払い期間が10年未満の場合、年金を受け取ることができないため、70歳以降も支払い期間が10年になるまで厚生年金に加入することがあります。

ただし、70歳以上で厚生年金に加入するには、以下の2つが必要です。

  1. 厚生労働大臣の認可
  2. 勤務先の許可

厚生労働大臣の認可は、「高齢任意加入被保険者資格取得申出書」などの必要書類を提出するだけなので、さほど問題はありません。一方で勤務先の許可は、厚生年金に加入すると保険料の半分を勤務先が負担することになるため、認めてもらえない可能性があります。もし70歳以降も厚生年金に加入したい時は、まずは勤務先と話し合うことが大切でしょう。

国民年金の保険料の支払いは60歳まで

厚生年金の場合は、会社に勤めていて加入資格があるなら70歳まで保険料を支払います。しかし国民年金の場合は、保険料の支払いは原則60歳までです。

これだけを聞くと、早く保険料の支払いが終わる国民年金のほうがよく思えますが、厚生年金と国民年金では、そもそものしくみが違い、受給額も異なります。

以下の図のように、厚生年金は国民年金に上乗せして支払いをする年金です。厚生年金の保険料の支払い期間が長かったり、月々の保険料の負担が国民年金より多かったりしますが、その分、65歳以降で受け取れる年金の額が多いというメリットがあります。

〈図〉公的年金制度の構造

画像: 国民年金の保険料の支払いは60歳まで

厚生年金と国民年金の違いについて知りたい人は、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

【関連記事】厚生年金と国民年金の違いについて、詳しくはコチラ

65歳以上で働く場合、厚生年金はどうなる? 支給停止となる条件も解説

画像: 画像:iStock.com/EdwinTan

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厚生年金の支給開始年齢である65歳以降も会社に雇用されている場合は、厚生年金の保険料を支払いながら、年金を受け取ることになります。会社からの給与に加えて年金が支払われるため、収入が増えるように感じますが、給与と年金の合計が基準額を超えると年金の一部が受け取れなくなるので注意が必要です。

年金の一部を受け取れなくなる条件と、受給額の変化について説明します。

老齢年金の支給停止(60歳以上)

年金を受給しながら会社で働く際は、年金の一部が受け取れなくなることがあります。これを「老齢年金の支給停止」といいます。支給停止は以下の図のように給与と老齢厚生年金の合計が基準額を超えると発生します1)

〈図〉老齢年金の支給停止

画像: 老齢年金の支給停止(60歳以上)

年金を受け取りながら働く際に得られる収入は、給与、老齢基礎年金(国民年金)、老齢厚生年金(厚生年金)に分けることができます。このうち、老齢基礎年金は支給停止の影響を受けず、全額受け取ることができます。

一方で、厚生年金と毎月の給与は、合計額が50万円(令和6年の場合)を超えると支給停止の対象となります。支給停止額は以下の計算式で算出できます。

(給与+老齢厚生年金-50万円)÷2

給与が50万円、老齢厚生年金が10万円のケースを例に支給停止額と受け取れる老齢厚生年金を計算してみましょう。

支給停止額:
(50万円+10万円-50万円)÷2
=5万円
受け取れる老齢厚生年金:
10万円-5万円=5万円

このように給与が50万円、老齢厚生年金が10万円のケースでは5万円が支給停止となり、受け取れる老齢厚生年金は5万円となります。支給停止された金額は、あとから還付されることはないため、このケースでは年間60万円の年金を受け取れないことになります。

支給停止の制度は60歳から適用されるため、年金の受給を早めた場合も支給停止に該当する可能性があります。また、年金の受給開始を遅らせた場合にも適用され、支給停止額を差し引いた上で年金の金額を算定します。

高年齢雇用継続給付による年金の支給停止(60歳以上65歳未満)

60歳以降は給与が下がるケースも多いです。60歳から65歳までの間に、給与が60歳時点の75%未満に下がった場合、下がったあとの賃金の最大15%を雇用保険から受け取ることができる「高年齢雇用継続給付」という制度があります。

収入の減少を補える制度ですが、年金を65歳より前から受け取る選択をした人が高年齢雇用継続給付も利用する場合、「高年齢雇用継続給付による年金の支給停止」として、老齢厚生年金の一部(最高で標準報酬月額の6%)が支給停止になる可能性があるので気をつけましょう2)

以下では、60歳到達時に40万円だった給与が20万円に減少し、老齢厚生年金を月10万円受け取る場合を例に、高年齢雇用継続給付を利用するとどのようなことが起こるのかを説明します。

高年齢雇用継続給付の受給額:
20万円×15%=月3万円

高年齢雇用継続給付による
年金の支給停止額:
20万円×6%=月1万2,000円

受け取れる老齢厚生年金:
10万円-1万2,000円
=8万8,000円

高年齢雇用継続給付を利用したことで毎月3万円を受け取れますが、受給額は1万2,000円減ります。受け取れる総額が増えることに変わりはないものの、老齢厚生年金の一部が受け取れなくなることは把握しておきましょう。

65歳以降も厚生年金に加入すると受給額が増える「在職定時改定」とは?

「在職定時改定」とは、令和4年度から新しく始まった制度で、65歳以降も厚生年金に加入して保険料を支払いながら年金を受け取る場合、毎年の受給額が改定されていくしくみです。以前は、65歳以降の保険料の支払いは厚生年金の資格喪失後に受給額に反映されていましたが、在職定時改定によって年単位で反映されることになり、老齢厚生年金の受給額が増えやすくなりました。

〈図〉在職定時改定のしくみ

画像: 65歳以降も厚生年金に加入すると受給額が増える「在職定時改定」とは?

受け取れる年金がいくら増えるかは、支払った保険料などで異なります。日本年金機構の「働きながら年金を受給する方へ」1)では増額例として、65歳まで給与20万円で保険料を支払い、65歳から70歳までの期間も給与20万円で保険料を支払い続けた場合、1年につき年額約1万3,000円ずつ増えていくと紹介されています。

在職定時改定は毎年9月1日が基準日で、前年9月から当年8月までの実績が10月分(12月支給分)から受給額に反映されます。

年金受給は繰上げ・繰下げができる

年金の受給は、基本的には65歳からですが、受給開始の年齢を早めることも遅くすることも可能です。受け取り開始の年齢を変えることで毎月の受給額は以下のように変わります。

〈表〉年金受給の繰上げ・繰下げによる受給額の変化

繰上げ・繰下げ受給額の変化
繰上げ受給受給が1カ月早まるごとに0.4%減額
繰下げ受給受給が1カ月遅くなるごとに0.7%増額

繰上げ受給すると1カ月早まるごとに0.4%減額

年金の受給は60歳まで繰上げることができます。65歳を迎える前に厚生年金の受給を開始する場合、1カ月早めるごとに受給額が0.4%ずつ減っていきます(昭和37年4月1日以前の生まれの人は0.5%)。

そのため、60歳の誕生日を迎えた時点から年金を受給すると、65歳で受給開始する場合と比べて毎月の受給額が24%少なくなります。減額は老齢厚生年金、老齢基礎年金のどちらも対象です。

受給開始のタイミング別の減額率の一例を紹介します。

〈表〉繰上げ受給の減額率と受給額の変化3)

受給開始のタイミング減額率受給額の変化
(受給額15万円の場合)
60歳0カ月24%11万4,000円
61歳0カ月19.2%12万1,200円
62歳0カ月14.4%12万8,400円
63歳0カ月9.6%13万5,600円
64歳0カ月4.8%14万2,800円
64歳11カ月0.4%14万9,400円
※昭和37年4月2日以降生まれの場合

年金の受給額が15万円の人が受給開始を繰上げると、最大で毎月の受給額が3万6,000円減少します。毎月の年金が3万6,000円も減るのは生活への影響も大きいでしょうから、繰上げる際は慎重に判断したほうがよさそうです。

また、「1度繰上げたら、あとから変更することはできない」など、繰上げ時に注意したいこともあります。なお、厚生年金の繰上げを選択した人は、令和4年度は受給者全体の0.7%です4)

繰下げ受給すると1カ月遅くなるごとに0.7%ずつ増額

年金の繰下げ受給は、本来なら65歳からの受給開始を最長で75歳まで遅らせ、その分、受給額を増額できる制度です。66歳0カ月から75歳0カ月までの間であれば、1カ月単位で自由に設定できます。老齢基礎年金と老齢厚生年金のどちらか片方だけを繰下げることも可能です。

受給開始のタイミング別の増額率の一例を紹介します。

〈表〉繰下げ受給の増額率と受給額の変化5)

受給開始のタイミング増額率受給額の変化(受給額15万円の場合)
66歳0カ月8.4%16万2,600円
68歳0カ月25.2%18万7,800円
70歳0カ月42%21万3,000円
72歳0カ月58.8%23万8,200円
74歳0カ月75.6%26万3,400円
75歳0カ月84%27万6,000円

年金の受給開始を75歳まで繰下げると、65歳から受給する場合と比べて毎月の受給額が84%も増えます。受給額が15万円の人であれば、毎月12万6,000円増えるので大きな違いです。増額率は条件によって異なる場合があります。なお、厚生年金の繰下げ受給を選択した人の割合は、令和4年度は受給者全体の1.3%です5)

年金を多く受け取れるのは繰上げと繰下げどっち?

「年金を多く受け取れるのは繰上げと繰下げどっち?」と気になる人もいるでしょう。年金は一生涯受け取れるもので、その総額は最終的に何年間受け取ったか次第で変わります。受給開始のタイミングでは何年受け取れるかわかりようがありませんので判断は難しいです。

あくまで参考程度となりますが、受給額15万円の人が年金を85歳まで受け取ったケースを例に、通常通りもらった場合、繰上げた場合、繰下げた場合を比較してみましょう。

〈表〉繰上げ、繰下げの年金受給額の比較

受給開始年齢65歳60歳75歳
毎月の年金受給額15万円11万4,000円27万6,000円
85歳までの月数240カ月300カ月120カ月
85歳での累計の受給総額3,600万円3,420万円3,312万円

上記のように、85歳時点では65歳から年金を受給した例が最も受給額が多い結果となりました。受給開始を繰上げると90歳、95歳と歳を重ねるにつれ、65歳で受給を開始した場合との金額差は広がります。受給を繰下げると85歳時点では受給額が一番少ない結果でしたが、90歳時点では受給総額は以下のようになります。

〈表〉繰上げ、繰下げの年金受給額の90歳時点での比較

受給開始年齢65歳75歳
毎月の年金受給額15万円27万6,000円
90歳までの月数300カ月180カ月
90歳での累計の受給総額4,500万円4,968万円

90歳まで年金を受給できれば、繰下げたほうが受給額は多い結果になりました。しかし、65歳時点で自分が何歳まで年金を受け取れるかはわからず、実際に年金を繰上げ受給した人の割合は全体の0.7%、繰下げ受給をした人は1.3%とごく少数です。このように、年金の総受給額を考慮して受給開始のタイミングを変更している人は少ないと考えられます。

年金の受給開始年齢については、以下の記事でも詳しく説明していますので、併せて確認してみてください。

【関連記事】年金は60歳からもらった方が賢い?いつからもらうのがお得なのか徹底検証

【Q&A】厚生年金についてよくある質問

画像: 画像:iStock.com/tolgart

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ここでは、厚生年金の保険料や受給額に関するよくある質問をまとめました。

Q.60歳になったら厚生年金の保険料は支払わなくていいの?

60歳以降も会社員として働くなら厚生年金の保険料を支払い続ける必要があります。70歳を迎えるまでは、企業に所属している限り、厚生年金の保険料の支払いが義務付けられているからです。

以前は公務員の定年が60歳だったため、60歳で定年退職し、その後は働かないのであれば、厚生年金の保険料を支払う必要はありませんでした。しかし、令和5年4月から国家公務員と地方公務員の定年が段階的に65歳まで引き上がることになり、60歳以上で働くのなら公務員も厚生年金の保険料の支払いが必要になりました。

なお、国民年金の加入義務は60歳までで、以降は加入期間が40年に満たない場合に65歳まで任意加入ができます。

Q.退職後、厚生年金の保険料はいつまで支払う?

企業などに勤めていた人が退職をした場合、その後は厚生年金の保険料を支払う必要はありません。ただし、退職時の年齢が60歳未満で退職後に個人で仕事をするのであれば、国民年金に加入して60歳まで国民年金の保険料を支払います。なお退職時の年齢が60歳以上であれば国民年金の保険料の支払いもありません。

Q.65歳まで厚生年金の保険料を支払うと受給額はいくらになる?

65歳まで厚生年金の保険料を支払ったら、受給額はいくらになるのか気になる人は多いはずです。これは収入と加入月数によって異なるため、一概にいくらとはいえません。

あくまで一例ですが、65歳まで40年間、ずっと月収20万円で保険料を支払ってきた場合だと、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせて月額11万1,848円(年額134万2,176円)となります(※)

厚生年金の平均受給額について以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。

【関連記事】厚生年金の平均受給額について、詳しくはコチラ

※:老齢基礎年金は令和6年度の満額(81万6,000円)、老齢厚生年金は「20万円×0.005481×480カ月(40年)」で算定

Q.厚生年金を満額受け取るには保険料を何年支払えばいい?

結論からいうと、厚生年金に満額はありません。理由としては、厚生年金は加入期間と収入に応じて受給額が決まるからです。ただし厚生年金には、報酬月額は63万5,000円、賞与は1回150万円という上限が設けられているため、その条件を満たす場合は、満額受け取れるといえるかもしれません。

たとえば、厚生年金に18歳または22歳から加入し、65歳までの月収が65万円以上続けば、以下の年金を受け取ることができます。

〈表〉年金受給額の上限例(月額)

標準報酬額18歳から厚生年金に加入22歳から厚生年金に加入
65万円約23万5,400円約22万1,200円
※(平均標準報酬月額×0,005481×加入月数+老齢基礎年金)÷12で計算
※老齢基礎年金は令和6年度の年金受給額(年間81万6,000円)

厚生年金の保険料は最長70歳までは支払う義務がある

厚生年金の保険料を支払う期間や働きながら年金を受給する方法について説明しました。会社員や公務員である以上、70歳までは厚生年金に加入して保険料を支払う義務があります。保険料は小さくない負担ですが、支払い続けた分、受け取る年金の額が増えます。

毎月の保険料や税金は、現役世代である以上は支払いが続きますので、負担を減らす対策を早くから行うことがおすすめです。お金のプロに相談するなどして保険料と税金について考える時間をつくってみてはいかがでしょうか。

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