子どもの教育費を考える際、一番の不安は大学進学する際の授業料や仕送りではないでしょうか。2020年4月からスタートした「修学支援新制度」の対象になると、入学金・授業料の免除・減額や給付型奨学金の支給を受けられます。とはいえ、「入学金や授業料の免除・減額を受けるには、年収に基準はあるの?」など、自分が給付対象かどうかわからないという人は多いでしょう。

この記事では、ファイナンシャルプランナーの氏家祥美さん監修のもと、大学の学費を免除・減額できる修学支援新制度について解説。対象者の条件から具体的な内容、手続き方法まで詳しくご紹介します。

この記事の監修者

氏家 祥美(うじいえ よしみ)

ハートマネー代表。ファイナンシャルプランナー・キャリアコンサルタント。子育て世帯、共働き夫婦の家計相談に豊富な実績を持ち、「幸福度の高い家計づくり」を総合的にサポートしている。オンラインでの家計相談やマネー研修も実施中。

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大学の学費を免除・減額されるには「修学支援新制度」を利用する

画像1: 画像:iStock.com/metamorworks

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大学の学費が免除・減額される方法として、国が支援する「修学支援新制度」があります1)。これは経済的な理由で大学進学が難しい学生を対象に、授業料や生活費の経済的な支援を目的とした制度です。具体的な対象者は、大学・専門学校・高等専門学校に進学予定、または在籍する学生です2)

修学支援新制度には、「授業料等減免」と「給付型奨学金(返済不要)」の2つの支援内容があります。

〈図〉修学支援新制度の概要

画像: 大学の学費を免除・減額されるには「修学支援新制度」を利用する

授業料等減免は、大学や短大の入学金・授業料が免除・減額される制度です。支援の対象となる大学・短大・高専・専門学校一覧は、文部科学省のウェブサイトから確認できるため、志望校や在学校があるかどうか確認してみてください。なお、入学後3カ月以内に申し込んだ場合は、授業料だけでなく入学金の減額も受けることができます。

一方、給付型奨学金とは、日本学生支援機構から受け取れる返済不要の奨学金のことです。

なお、大学の学費や入学金の平均については以下の記事で詳しく解説しています。興味のある人は併せて確認してみてください。

【関連記事】大学の学費の平均について、詳しくはコチラ

修学支援新制度で大学の学費を免除・減額されるための3つの条件

画像2: 画像:iStock.com/metamorworks

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修学支援新制度の対象かどうかは、以下の3つのポイントを確認する必要があります。なお、授業料等減免と給付型奨学金ともに同じ条件となり、対象者はどちらの支援も受けることができます。

それぞれの条件を詳しく解説します。

①年収

前提として修学支援新制度は、住民税非課税世帯(※1)とそれに準ずる世帯の学生が対象です。ただし、年収によって給付額が変わるため注意が必要です。モデルケース別の年収条件を、以下の表にまとめました1)

〈表〉年収条件

支援対象者年収の目安
(両親・本人(18歳)・中学生の家族4人世帯の場合)
年収の目安
(両親・本人(19〜22歳)・高校生の家族4人世帯の場合)
給付額
住民税非課税世帯の学生〜270万円〜300万円満額
住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生〜300万円〜400万円満額の2/3
〜380万円〜460万円満額の1/3

なお、詳しい給付額については後述します。

※1:住民税が非課税となる人のこと。対象者は、生活保護を受給している人や、障がい者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親で前年中の合計所得が135万円以下の人、前年中の年収から様々な控除を行い計算した結果、合計所得金額が一定額以下になる人。

②資産

大学の授業料を免除・減額されるためには、資産の基準額も確認する必要があります。生計維持者の人数ごとの資産条件を、以下の表にまとめました。

〈表〉資産条件の基準額

生計維持者基準額
生計維持者が2人2,000万円未満
生計維持者が1人1,250万円未満

学生と生計維持者の資産合計額が基準額の範囲内に収まるかを確認しましょう。なお、この資産とは、現金や有価証券(※2)を対象としており、不動産は資産要件に含まれません3)

※2:債券や株券、投資信託など、財産的価値のある権利を表す証券や証書のこと。

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③学業成績や進学意欲

画像: 画像:iStock.com/smolaw11

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学業成績と進学意欲も、大学の授業料が免除・減額される条件の1つです。注意点は、申請時期により成績のチェック方法が異なることです。ここでは、高校3年次に申し込む「予約採用」と、大学入学後に申し込む「在学採用」に分けて解説します。

それぞれの条件を詳しく見ていきましょう。

予約採用の場合

予約採用で学費の免除・減額を受けるには、高校2年次の「学業成績」と「学修意欲」が以下の要件を満たしている必要があります。予約採用の条件を、以下の表にまとめたのでご覧ください3)

〈表〉予約採用の条件

学業成績
※高校2年次(申請時)までの評価平均値
学修意欲の判断基準
3.5以上進路指導において学修意欲を見る
3.5未満レポートまたは面談により学修意欲を確認する

高校3年次に予約して申し込んだ場合、高校2年次までの評価平均値によって学修意欲の条件が変わります。学業成績が3.5未満である場合は、レポートや面接による確認が必要になるので準備をしておきましょう。

在学採用の場合

大学入学後に修学支援新制度を利用する場合、学年により学業成績・学修意欲の評価基準が異なります。学年ごとの基準を、以下の表にまとめました。

〈表〉在学採用の条件3)

学年学業成績・学修意欲に関する要件
1年生以下の①〜④までのいずれかに該当
①高校の評定平均値が3.5以上である
②入学試験の成績が上位1/2以上である
③高卒認定試験の合格者である
④学修計画書の提出を求め、学修の意欲や目的、将来の人生設計などが確認できる
2〜4年生以下の①か②のいずれかに該当
①在学する大学などにおける学業成績について、GPA(平均成績)などが上位1/2以上である
②修得単位数が標準単位数以上かつ学修の意欲や目的、将来の人生設計などが学修計画書により確認できる

2〜4年生については、在籍する大学・短大にて成績上位1/2以上であることが求められます。また、修得単位数が標準単位数以上かつ、学修計画書で意欲があると認められた場合も、制度を利用できる可能性があります3)

授業料等減免と給付型奨学金の給付額

修学支援新制度は、たとえば下の表のように、授業料等減免と給付型奨学金を一緒に利用できます。ただし、前述したように世帯年収の状況によって給付額が異なるため、注意が必要です。授業料減免額と給付型奨学金の給付額についてそれぞれ解説します。

授業料・入学金の減免の上限額

修学支援新制度による授業料等減免は、学校の種類や昼間・夜間制などによって異なります。それぞれ減免の上限額(住民税非課税世帯の学生の場合)を、以下の表にまとめました1)

〈表〉住民税非課税世帯の学生の授業料減免の上限額(昼間制)1)

国公立私立
入学金授業料入学金授業料
大学約28万円約54万円約26万円約70万円
短期大学約17万円約39万円約25万円約62万円
高等専門学校約8万円約23万円約13万円約70万円
専門学校約7万円約17万円約16万円約59万円

〈表〉住民税非課税世帯の学生の授業料減免の上限額(夜間制)1)

国公立私立
入学金授業料入学金授業料
大学約14万円約27万円約14万円約36万円
短期大学約8万円約20万円約17万円約36万円
専門学校約4万円約8万円約14万円約39万円

〈表〉住民税非課税世帯の学生の授業料減免の上限額(通信課程)1)

私立
入学金授業料
大学約3万円約13万円
短期大学
専門学校

なお、繰り返しになりますが、上記は住民税非課税世帯の学生の場合の金額で、それに準ずる世帯はそれぞれ表の金額の2/3か1/3が受け取れます。

給付型奨学金の給付額

給付型奨学金は、国公立か私立か、どこから通学するかなどの条件により給付額が異なります。それぞれの給付額を以下の表にまとめたので、ご覧ください1)。奨学金は、日本学生支援機構から学生の口座に毎月振り込まれます。

〈表〉住民税非課税世帯の学生の昼間制・夜間制の給付額(月額)1)

国公立私立
自宅生自宅外自宅生自宅外
大学2万9,200円
(3万3,300円)
6万6,700円3万8,300円
(4万2,500円)
7万5,800円
短期大学
専門学校
高等専門学校1万7,500円
(2万5,800円)
3万4,200円2万6,700円
(3万5,000円)
4万3,300円
※(  )内は、生活保護世帯で自宅から通学する人および児童養護施設から通学する人の金額です。

〈表〉住民税非課税世帯の学生の通信課程の給付額(年間)1)

私立
自宅生自宅外
大学5万1,000円
短期大学
専門学校

なお、給付型奨学金の給付額も授業料等減免と同様で、住民税非課税世帯の学生は全額、それに準ずる世帯の学生は2/3または1/3の金額が支給されます。

給付型奨学金は生活費を補助するという意味もあるため、自宅外から通う学生のほうが、金額が高めに設定されています。また、生活保護世帯の学生で自宅通学や児童養護施設からの通学の場合は、さらに手厚い支援が受けられます。

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給付型奨学金の手続き方法

画像: 画像:iStock.com/SetsukoN

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授業料等減免の申請は入学後3カ月以内と前述しましたが、給付型奨学金は、原則、春と秋の年2回、募集を行っています。希望する人は在学している学校の奨学金窓口に問い合わせをしましょう4)。ただし、給付型奨学金の申し込み方法は大学によって異なるため、詳細は大学に確認してみてください。

また、申請が通ったあとも、毎年、利用継続の意思確認とともに、成績や経済状況などの確認が行われます。途中で支援が得られなくならないよう、継続的な努力が求められます。

なお、修学支援新制度の受給資格は、申請者の家庭の年収や学業成績、そのほかの要素に基づいて決定されます。応募資格を満たしていると思われる場合でも、審査を受けてみないと奨学金を受給できるかはわかりません。

大学の学費免除には年収・資産・成績の条件がある

画像: 画像:iStock.com/kazuma seki

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修学支援新制度で大学の授業料免除を受けるには年収、資産、成績の条件があります。家族構成などにより、年収や資産の基準額が変わります。成績条件も、申請時期や評価平均値などで変化するため、注意しましょう。

条件を満たせば、授業料などの減免や給付型奨学金が利用できる可能性があります。自分が対象となるか確認してみましょう。

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