「今の企業を辞めた時、退職金っていくらもらえるのだろう?」
「そもそも退職金は支払われるの?」
など、今後のキャリアプランや人生設計を考えていく中で気になる人は多いでしょう。

退職金規定が明確な企業もあれば、退職金が支払われない企業もあります。この記事では、ファイナンシャルプランナーの高山一恵さん監修のもと、退職金の相場を勤続年数や企業規模、学歴別に解説します。また、退職金のしくみについてもご紹介するので参考にしてみてください。

この記事の監修者

高山 一恵(たかやま かずえ)

株式会社Money&You 取締役。ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。DCプランナー1級。東京都出身。慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを創業。10年間取締役を務めた後、現職へ。女性向けWEBメディア『FP Cafe®』や『Mocha』を運営。全国での講演活動、執筆、マネー相談を通じて、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく、親しみやすい講演には定評がある。

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退職金の相場は大卒が1,983万円、高卒が1,618万円

画像1: 画像:iStock.com/Zephyr18

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はじめに、労働基準法では、企業側に退職金を支給する義務はありません1)。そのため、企業の方針によって退職金の支給の有無や支給額が異なります。

厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査の概況」1)によると、大学・大学院卒で定年退職した人の退職金の平均額は1,983万円、高卒で定年退職した人は1,618万円です。また企業によっては、退職金がない場合もあります。

なお、退職金なしの企業について以下の記事で詳しくご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

【関連記事】退職金がない企業について、詳しくはコチラ

退職金の相場に影響する3つの要因

画像: 画像:iStock.com/Nuthawut Somsuk

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前述したように、退職金の相場は企業の方針によって大きく変化します。退職金の相場に影響するのは、主に以下の3つです。

①勤続年数
②企業規模(中小企業・大企業)
③退職理由

それぞれの退職金の相場について詳しく解説します。

①勤続年数別:退職金の相場

前提として、退職金は「在職中の功績への報償」の意味合いがあるため、勤続年数によって相場が変化します。勤続年数別の退職金の相場は、以下のとおりです。

〈表〉勤続年数別の退職金の相場2)

勤続年数大卒・大学院卒の退職金高卒の退職金
3年65万円43万円
5年117万円79万円
10年289万円184万円
15年520万円347万円
20年822万円557万円
25年1,209万円838万円
30年1,649万円1,163万円
35年2,086万円1,708万円
※卒業後すぐに入社し標準的に昇進・昇格した人が対象、管理・事務・技術労働者、1万円未満は四捨五入したもの。

表からわかるとおり、勤続年数によって退職金の相場は大きく異なります。勤続年数が35年と3年の場合、大卒・大学院卒であればその差は2,000万円以上となります。

退職金の計算方法にはいくつか種類があります。たとえば基本給連動型(※1)の場合、勤続年数に支給率をかけて算出するので、勤続年数が長いほど高額になります。

※1:原則退職時の基本給を在職年数や退職事由に連動させ、退職金の金額を決めるしくみのこと。

②企業規模別:退職金の相場

画像: 画像:iStock.com/jimfeng

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企業規模は、退職金の相場に大きく影響する要因といえるでしょう。企業規模別の退職金の相場は、以下のとおりです。

〈表〉企業規模別の退職金の相場1)

企業規模大卒・大学院卒の退職金高卒の退職金
30~99人1,407万円887万円
100~299人1,605万円1,318万円
300~999人1,825万円1,416万円
1,000人以上2,233万円2,067万円
※勤続20年以上かつ45歳以上の退職者、管理・事務・技術職が対象。

従業員数1,000人以上の大企業は100人未満の中小企業に比べて退職金が高いことがわかります。大卒・大学院卒であればその差は800万円以上であり、高卒の場合の差は1,000万円以上になります。従業員の多い大企業のほうが、退職金の相場が高い傾向があります

③退職理由別:退職金の相場

退職理由は、同じ企業内でも退職金の相場が分かれる要因のひとつです。同じ勤続年数であっても、退職理由によって相場が大きく異なることがあります。退職理由による退職金の相場は、以下のとおりです。

〈表〉退職理由別の退職金の相場1)

退職理由大卒・大学院卒の退職金高卒の退職金
定年退職1,983万円1,618万円
企業都合による退職2,156万円1,969万円
自己都合による退職1,519万円1,079万円
早期優遇退職2,326万円2,094万円
※勤続20年以上かつ45歳以上の退職者、管理・事務・技術職が対象。

退職理由による退職金の相場を見ると、早期優遇退職者の金額が最も高い傾向があります。これは、通常の退職金に一定額をプラスして支払うことが一般的なためです3)。一方で、自己都合による退職は減額されて退職金が支給されることが多いため相場も低くなる傾向があります。

企業によって退職金の有無が異なる

前述したように、退職金はすべての企業で支払われるわけではありません。厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査の概況」をもとに、退職金の有無を企業規模別にまとめました。

〈表〉退職金の有無の割合(企業規模別)1)

企業規模退職金あり退職金なし
1,000人以上92.3%7.7%
300~999人91.8%8.2%
100~299人84.9%15.1%
30~99人77.6%22.4%

企業規模が大きいと、9割以上が退職金を設けています。一方で、企業規模が小さくなるほど退職金を設けていない傾向があります。

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退職金の受け取り方法は制度によって異なる

画像2: 画像:iStock.com/Zephyr18

画像:iStock.com/Zephyr18

現在、従業員に退職金を支給するための退職金制度は、大きく分けて以下の3つがあります。それぞれで支給方法やメリットが異なるため、特徴を把握し自分が勤める企業がどれに当てはまるのか確認してみましょう。

①退職一時金制度

「退職一時金制度」は、従業員の退職時に一括で退職金を支給する退職金のことを指します4)。退職時の勤続年数や役職をもとに、支給する金額を企業が独自に決めます。規定が変更されない限り、企業の経営状況に関係なく、退職金の支払いが確約されます。

②企業年金制度

「企業年金制度」は、企業が福利厚生の一環として、公的年金に上乗せする形で年金を支給する制度です5)。企業年金制度には、主に、厚生年金基金や確定給付企業年金、確定拠出年金があります。受け取り方法は、金額をまとめてもらう「一時金」と毎年少しずつ受け取る「年金」の2通りです。

ただし、企業年金を一時金として受け取る場合も退職所得となり、退職所得控除(※2)が適用になります。年金として受け取る退職金は、そのまま公的年金などにかかる雑所得として計算されます。

なお、以下の記事では退職金にかかる税金や確定申告について解説しています。興味のある人は併せて確認してみてください。

【関連記事】退職金の税金について、詳しくはコチラ

【関連記事】退職金の確定申告について、詳しくはコチラ

※2:課税の対象となる退職所得の金額を計算する過程で、退職手当などの収入金額から控除する金額のこと。

③退職金前払い制度

画像: 画像:iStock.com/Igor Kutyaev

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「退職金前払い制度」は、在職中に給与やボーナスなどにプラスする形で退職金が支給される制度のことです6)。在職中にもらうため、自己都合による退職金減額のリスクがありません。また、毎月の給与が増えるメリットがあります。

ただし、退職金として上乗せされた相当額も所得として全額が所得税・住民税の課税対象です。さらに社会保険料もかかります。そのため、一時金制度や企業年金制度に比べると受け取る金額が減るというデメリットもあるので注意してください。

退職金の相場を理解しつつ、自分が勤める企業の規定を確認しよう

画像: 画像:iStock.com/Indysystem

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企業を退職する際、勤続年数が短ければ、退職金が出ないケースも多いです。また、企業によって退職金のしくみが異なります。企業の就業規則を確認したり、人事部や総務部に問い合わせたりするなど、退職前に詳細を確認しておくと安心です。

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