これから退職を考えている場合、「退職金を受け取ったら確定申告が必要なの?」と疑問に思っている人もいることでしょう。

原則として、退職金は源泉徴収されるため確定申告は必要ありません。しかし、状況によっては確定申告が必要な場合もいくつかあります。

この記事ではファイナンシャルプランナーの高山一恵さん監修のもと、退職金を受け取る際に確定申告が必要なケースを解説します。この記事を参考に、自身が該当するかどうか確認してみてください。

この記事の監修者

高山 一恵(たかやま かずえ)

株式会社Money&You 取締役。ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。DCプランナー1級。東京都出身。慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを創業。10年間取締役を務めた後、現職へ。女性向けWEBメディア『FP Cafe®』や『Mocha』を運営。全国での講演活動、執筆、マネー相談を通じて、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく、親しみやすい講演には定評がある。

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退職金は原則、確定申告の必要がない

結論からいうと、退職金を受け取っても、原則として確定申告は必要ありません。勤務先で所定の手続きをしていれば、源泉徴収で課税関係の処理が完了するからです。

退職金は所得税や住民税、復興特別所得税(※1)が徴収されます。しかし、「在職中の功績への報償」の意味合いをもつ退職金は、税負担が軽くなるように配慮されているのが特徴です。所得控除やほかの所得とは分離して課税される「分離課税」などの措置が受けられます。

なお、退職金にかかる税金については以下の記事で詳しく解説しています。併せて確認してみてください。

【関連記事】退職金にかかる税金について、詳しくはコチラ

※1:東日本大震災からの復興に必要な財源を確保するために創設された新しい税金のこと。会社員や公務員などの給与所得者は、2037年まで源泉所得税で復興特別所得税額も含めて徴収される。

退職金で確定申告が必要な4つのケース

画像: 画像:iStock.com/Promo_Link

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前述したように、原則として退職金の確定申告は必要ありません。しかし、以下の4つのどれかに当てはまる場合、確定申告が必要になります。

それぞれ詳しく解説します。

①退職所得の受給に関する申告書を企業に提出していない場合

まずは、退職金の支払いを受けるまでに、勤め先に対して「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合です。この場合、確定申告をすることで還付金を受け取れるかもしれません1)

申告書を提出した場合は、適正な退職所得の金額と所得税額が計算されて源泉徴収が行われます。提出していない場合、退職所得控除が適用されず、一律20.42%の所得税と復興特別所得税が源泉徴収されます

源泉徴収税額よりも退職所得控除後の所得税額のほうが低い場合、納めすぎた所得税が還付されます。申請書を提出していない人は忘れずに確定申告をしましょう。

②退職した年と同一年内に再就職しなかった場合

12月末日以外で退職したあとに再就職しなかった場合、確定申告をする必要があります。基本的に年末調整は12月の給与を支払う勤め先が行います2)。したがって、年の途中で退職した場合は年末調整がされていません。

在職中に源泉徴収されていた所得税を確定申告で精算すると各種控除が受けられ、所得税が還付される可能性があります3)。なお、年の途中で退職しても転職して別の企業で働いている場合は、新しい企業で年末調整が行われるので確定申告は不要です。

③医療費控除や生命保険料控除などの所得控除がある場合

画像: 画像:iStock.com/kudou

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医療費控除や生命保険料控除などの所得控除を受ける場合は、確定申告をしましょう

主な所得控除は以下の6つです4)

  • 医療費控除またはセルフメディケーション税制
  • 生命保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 寄附金控除
  • 雑損控除
  • 住宅ローン控除

医療費が年間10万円以上かかっている(※2)、もしくは、セルフメディケーション税制が適用できる場合には医療費控除が受けられます。自身の医療費だけでなく、生計を共にする配偶者や家族のために支払った医療費も対象です

なお、確定申告には医療費の領収書の提出の代わりに、医療費控除の明細書の添付が必要になります5)。ほかの控除を受ける場合も同様に、支払い金額を証明する書類が必要です。どんな書類が必要か、事前に確認しておきましょう。

※2:その年の総所得金額が200万円未満場合は、総所得金額の5%の金額。

④退職金以外の所得から所得控除を引いた金額が赤字の場合

退職金以外に赤字の不動産所得や事業所得などがある場合には、「損益通算」により退職所得が減少し、税額が還付される可能性があります6)。損益通算は、赤字の所得を他の黒字所得と相殺して税額を安くする制度です。最終的に残った赤字は、退職所得と損益通算が可能です。

また、配当所得や給与所得・一時所得・雑所得の計算上の損失は対象ではありません。対象となる所得や順序をしっかり確認して手続きを進めましょう。

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退職金の確定申告をする際の必要書類や方法を解説

画像: 画像:iStock.com/ilkercelik

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退職金の確定申告をする際に、必要な書類と方法を解説します。まず、確定申告に必要な書類は以下の5つです。

  • 確定申告書
  • 本人確認書類
  • 銀行の口座情報がわかるもの
  • 源泉徴収票
  • 所得控除の証明書

退職金の確定申告には、申告書B様式と申告書第三表(分離課税用)の2種類の申告書を使います。用意した必要書類をもとに、該当する箇所に記入します。記入の仕方がわからない場合は、国税庁の確定申告書等作成コーナーを参考にしてみてください7)

確定申告が必要かどうか事前に判断を

画像: 画像:iStock.com/gtlv

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退職金を受け取っても、原則、確定申告は不要です。しかし、状況によっては、確定申告をすることで税金が還付されることもあります。この記事でご紹介したケースに該当するかを確認し、必要な人は確定申告を行うようにしましょう。

【関連記事】確定申告の還付金はいつ戻ってくる?還付金を受け取るタイミングについて、詳しくはコチラ

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