たとえば、「誰にあげるべきなのか?」「どのくらいの金額を包んだらいいのか?」「包み方にルールはあるのか?」などが挙げられるのではないでしょうか。
そこで、和文化研究家・三浦康子さん監修のもと、よくある疑問について解説します。この記事を読めば、チェックしておきたいお年玉マナーがわかります。
この記事の監修者
三浦 康子(みうら やすこ)
和文化研究家。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、ウェブ、講演などで活躍中。「行事育」提唱者としても知られる。著書『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)、監修書『季節を愉しむ366日』(朝日新聞出版)など。
マナーの基本は歴史にあり。まずはお年玉の由来を知ろう
現代では、子どもに対するお小遣いのような存在になっているお年玉。しかし、もともとお年玉はお金ではなく、お餅でした。
そもそもお正月は、新年の神様である“年神様”を家にお迎えして、もてなし、見送る行事です。年神様は、新年を生きる力を意味する「年魂(としだま)」を授けてくれると考えられてきました。
家にいらした年神様は、お餅を依り代(よりしろ)にします。年神様の魂が宿ったお餅を、「御年魂」として家長が家族に分け与えたのが、お年玉の始まりとされているのです。
お年玉は誰にあげるのが正解? 親や上司の子どもはOK?
一般的に、お年玉は自分の子どもや親戚の子どもにあげる場合が多いはずです。なぜなら、お年玉は、家長から家族に分け与えたことが始まりなので、親から子へ、店の主人から使用人へ、師匠から弟子へなど、目上の者から目下の者にあげるのが基本だからです。
ただし、相手が子どもであっても、その親が自分の目上の存在の場合は注意が必要です。たとえば、上司の子どもがそれにあたるので、上司の子どもにお年玉を渡す必要はありません。もし何か差し上げたい場合には、お年玉ではなく、名目を「文具代」「図書代」「玩具代」などにすると失礼になりません。
また同様に、子から親へお年玉をあげるのはNGです。親に渡す場合は「お年賀」(年始の挨拶をする時に渡す品物)として渡しましょう。
多ければ多いほどいい? お年玉の金額にマナーはあるの?
お年玉に金額の決まりはありません。だからこそ、迷うことが多いでしょう。
金額に悩んだら、一般的な相場を目安にしつつ、相手の年齢相応の金額にすることをおすすめします。また、あげる子どもや親との関係性が薄いのに高額のお年玉をあげると、相手の親が気を使ってしまうこともあります。相手との関係性も考えて金額を決めましょう。また、小さなお子さんには、お金ではなく、品物をあげてもいいでしょう。
初めてお年玉をあげる時は、その子どもの親に相談しておくとスムーズです。甥や姪にあげる時は、親同士で金額の取り決めをしている家族が多いようです。
お年玉は、成長とともに金額を上げることはあっても、下げづらいものです。大人になるまで続くものだと肝に銘じて、金額設定をするといいでしょう。
なお、一般的なお年玉の相場や、金額を決める考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。併せてチェックしてみてください。
【関連記事】お年玉の相場はいくら? 自分の子ども、甥・姪、年代など、統計情報の詳細はコチラ
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ポチ袋への正しい入れ方、新札に関するマナーは?
お年玉をいくらあげるかを決めたら気になるのが、包み方に関するマナーです。
まず、お年玉としてあげるお金は新札が望ましいです。どうしても新札が用意できない場合は、なるべくきれいな紙幣を用いましょう。
お金は、ポチ袋などの祝儀袋に入れるのが基本です。紙幣を入れる場合には、ポチ袋の大きさに合わせて、オモテ面(肖像が描かれた面)が内側になるように左→右の順で、ゆるやかに三等分に折ります。そして、ポチ袋をオモテ面にして、天地が逆さまにならないように折った紙幣(右側がかぶさった状態)を封入しましょう。
なお、ポチ袋へのお年玉の入れ方の図解や、比較的大きな金額を入れる場合の祝儀袋の選び方、新札を準備するための方法については、以下の記事で詳しく紹介しています。入れ方に不安がある方は、チェックしておきましょう。
【関連記事】お年玉の正しい入れ方、紙幣の折り方、紙幣・硬貨のオモテ・ウラの図解はコチラ
【関連記事】お年玉の新札はどこで準備できる? 詳しくはコチラ
お年玉はいつまでに渡すべき?
お年玉は、いつまでに渡すべきなのでしょうか? 基本的には、年が明けたらなるべく早く、年始の挨拶をしたあとに渡せるとベストです。毎年、親戚で集まっているような場合には、「年始の挨拶をした直後」「乾杯のタイミング」「新年会が一段落してから」など、その家の定番のタイミングで渡せばいいでしょう。
お年玉はお正月に伴うご祝儀ですから、三が日、難しい場合でも松の内(1月7日まで。地域によっては1月15日まで)に渡すのが原則です。その期間に会うことができない場合は、郵送する方法もあります。
ただし、松の内以降に会うことが決まっているのなら、遅くなったことを詫びつつ、手渡してもいいでしょう。また、年末に会うことが決まっている場合、「少し早いけれど」とマナーをわきまえていることを示しながら渡しましょう。地域によっては、31日の日没後からお正月の催しを始めることもあります。
喪中に迎えるお正月にお年玉はあげてもいい?
近親者が亡くなると喪に服し、お祝い事を控えます。その期間を喪中と呼び、お祝い事であるお正月行事も控えるのが習わしです。そのため、お年玉を積極的にあげる必要はありません。しかし、「喪中でも子どもにお年玉くらいは渡したい」という方は多くいるでしょう。
では、喪中にお年玉をあげるには、どうしたらいいのでしょうか?
まずは、親御さんに了解を得ます。そして、「お年玉」という名目を使わず、「文具代」「図書代」「玩具代」などとして渡しましょう。また、お金を入れる袋も水引などのおめでたい装飾があるデザインのものは避けましょう。白い無地の袋や白い和紙で包むのが無難ですが、お正月らしさのない絵柄のポチ袋でもいいでしょう。
渡す時には、「あけましておめでとう」とはいわずに、「今年もがんばってね」などと声をかけましょう。
お年玉をもらう時のマナーとは?
お年玉を“あげる側”のマナーをご紹介してきましたが、ここからは自分の子どもがお年玉をもらった時のマナーを解説します。
まず大切なのは、子ども自身がきちんとお礼を言うこと、その場で袋の中身を見ないことです。また、親のいない場所でもらった場合には、必ず報告するようにしつけましょう。もちろん、もらった相手には親からもお礼を言います。
なお、子どもが単なるお小遣いだと思わないように、親はお年玉の由来や意味を教えることも重要です。お年玉の使い道を、お年玉をもらった相手に伝えたりすると喜ばれるでしょう。
お年玉で最も大切なのは「相手を想い、配慮する心」
お年玉の金額やあげるタイミングには、明確なルールがないだけに迷うことも多いでしょう。また、マナーにはいろいろなポイントがありますが、それらをすべて守ることは難しいこともあります。
大切なのは「相手を想い、配慮する心」です。もし、マナーに則さない渡し方になってしまう場合には、お詫びや断りの言葉を添えて、心を尽くしましょう。きっと、その想いは相手に伝わるはずです。
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