この記事では、家事アドバイザーの矢野きくのさん監修のもと、2人暮らしのガス代の平均額を季節別・地域別に解説します。また、都市ガスとプロパンガスの違いや、ガス代が高くなる原因もご紹介。ご家庭の状況に近い平均額を参考にしながら、自身の家庭のガス代を見直してみてください。
この記事の監修者
矢野 きくの(やの きくの)
家事アドバイザー・節約アドバイザー。家事の効率化、家庭でできるSDGsを中心に、テレビ、講演、コラム連載などで活動。働く人向けの時短家事術、50代からシニア層への家事改革などをアドバイス。「食育指導士」「食生活アドバイザー」の資格も持ち、食品ロス削減をテーマにした講演も行う。100円ショップや業務用スーパーでの買い物術や、便利グッズの開発にも携わる。著書に『シンプルライフの節約リスト』(講談社)など。
2人暮らしのガス代の平均額は4,330円/月
総務省の「2021年度 家計調査」によると、2人暮らしのガス代の平均額は1カ月4,330円です1)。
一方、1人暮らしのガス代の平均額は約3,000円です2)。2人暮らしになると金額は大きく上がり、1人暮らしと比べて1,300円ほど高くなります。その理由として、1人暮らしよりも料理をする機会が多くなることが考えられます。
なお、以下の記事では、世帯人数別のガス代の平均額を詳しく解説しています。気になる人は確認してみてください。
2人暮らしのガス代の平均額を季節別・地域別にご紹介
ガス代が高くなりやすい季節や地域を事前に知っていれば、節約の対策を考えやすいでしょう。そこで、季節別・地域別に2人暮らしのガス代の平均額を解説します。
季節別:2人暮らしのガス代の平均額
はじめに季節別に2人暮らしのガス代の平均額を見ていきましょう。総務省の「2021年度 家計調査」をもとに、以下の表にまとめました1)。
〈表〉時期別2人暮らしのガス代の平均額/月
時期 | ガス代の平均額 |
---|---|
1〜3月 | 6,049円 |
4〜6月 | 5,083円 |
7〜9月 | 3,448円 |
10〜12月 | 4,013円 |
ガス代は季節ごとの差があり、1~3月が最も高く、7~9月が最も低くなっています。これは、気温が低い1〜3月は、お風呂の水を溜めたり、追い焚きを使用したりするなど、ガスを使う機会が増えるためです。また、水温が低い1〜3月は7〜9月と比べて、お湯を沸かすのにガスの消費量が増えるのも理由の1つだといえます。
地域別:2人暮らしのガス代の平均額
次に地域別に2人暮らしのガス代の平均額をご紹介します。総務省の家計調査をもとに、以下の表にまとめました1)。
〈表〉地域別2人暮らしのガス代の平均額/月
地域 | ガス代の平均額 |
---|---|
北海道 | 3,945円 |
東北 | 4,261円 |
関東 | 5,032円 |
北陸 | 3,994円 |
東海 | 4,970円 |
近畿 | 4,899円 |
中国 | 4,201円 |
四国 | 3,739円 |
九州 | 3,815円 |
沖縄 | 4,209円 |
地域別で見ると、関東地方や東海地方の金額が高く、四国地方や九州地方が低い傾向にあります。
地域によって差が出るのは、ガス単価の違いや、都市部と地方のライフスタイルの違いが要因と考えられます。自宅のガス代がお住まいの地域の平均額を大きく上回っている場合は、ガス代の見直しが必要かもしれません。
2人暮らしでガス代が高くなる3つの原因
2人暮らしでガス代が高くなる主な原因は、以下の3つが考えられます。
それぞれ詳しく解説します。
原因①そもそもガスの使用量が多い
まず考えられるのが、日々のガスの使用量が多いということです。暖房機器に頼らざるを得ない冬などにガスの使用量が多くなることは、ある程度仕方ないことです。
しかし、普段のガスの使い方を変えるだけでガス代を抑えられる可能性があります。中でも、ガスの使用量が多いのがお風呂での追い焚きです。冷めたお湯を温め直すのには大きなエネルギーが必要です。資源エネルギー庁のデータ3)によると、1日1回の追い炊きを減らすだけで、年間で約6,190円の節約が可能になるとされています。間隔を空けずに続けて入浴するなど、工夫するようにしましょう。
原因②プロパンガスを利用している
家庭で使われているガスは大きく2種類に分類できます。1つは製造所で造られたガスをガス導管を通じて各家庭へ供給する都市ガス、そしてもう1つはボンベに入っているLP(プロパン)ガスです。
一般的に、プロパンガスのほうが都市ガスよりも基本料金が高く設定されています。その理由は、「料金制度の違い」と「配送コストの有無」が大きいとされています。
都市ガスは公共料金に含まれるため、総括原価方式(※1)と呼ばれる方法で料金設定を行うよう、ガス事業法4)という法律で義務付けられています。一方、プロパンガスの料金は、小売業者がすべて自由に決定できる自由料金制(※2)が採用されています。
また、都市ガスは地下に設置されたガス導管を通じて各家庭に供給されるため配送料がかかりませんが、プロパンガスはガスボンベの配送に費用がかかります。
両者の料金を比較した調査によると、平均額はプロパンガスのほうが都市ガスより1.8~2倍にもなるとされています5)。
※1:供給原価に基づき料金が決められるものであり、安定した供給が求められる公共性の高いサービスに適用される方式のこと。
※2:価格を規制する法律がなく、独自の料金システムにのっとって、自由に価格を決定できる制度のこと。
原因③原油価格の上昇によりガス料金が上がった
原油価格の上昇により、月々のガス代が値上がりすることがあります。為替レートの変動など経済情勢の影響を受けやすいガスは、原料費の変動に応じて毎月自動的に料金が変化する、原料費調整制度が適用されています6)。
具体的には、液化天然ガスと液化石油ガスなどのガスの原料の3カ月間にわたる貿易統計価格に基づいて、平均原料価格を毎月算定します。算定された平均原料価格と基準原料価格とを比較し、その差分が月々のガス代に反映されるのです。なお、プロパンガス・都市ガスともに、原料費調整制度の対象となります。
2人暮らしでできるガス代を抑えるための7つの方法
2人暮らしでできるガス代を抑える方法として、以下の7つが挙げられます。少しの工夫で月々の金額が大きく変わることもあるので、できることから試してみましょう。
それぞれ詳しく解説します。
①料金プランやガス会社を見直す
ガスの使用量を抑えなくても、料金プランを見直したり、ガス会社を変えたりすることでガス代を抑えられる可能性があります。特に、長らくガス会社や料金プランを変えていない場合は、今の生活スタイルに料金プランが合っていない可能性があります。
電気と同様に、ガスも小売自由化が開始され、価格競争が起きています。そのためこれまで契約していたガス会社よりもおトクな料金プランを打ち出している企業があるかもしれません。
また、電力会社がガス事業を始めたり、ガス会社が電力事業に参入したりすることも増えてきました。この動きに伴い、これまで別々に契約することが主流だった電気とガスをセットにしたおトクな料金プランも多く登場しています。
なお、家庭で使用されるガスにはプロパンガスと都市ガスがありますが、どちらのガスを使っていても会社の変更は可能です。プロパンガスの場合、切り替えに費用はかからず簡単に変更できますが、最低契約年数に注意が必要です。都市ガスも小売全面自由化が行われたため、私たち消費者側がガス会社を選択できます。
②プロパンガスから都市ガスへ切り替える
現在プロパンガスを使っているなら、都市ガスに変更するだけでガス代を抑えられる場合もあります。自宅のガスが、プロパンガスか都市ガスかを見分ける方法は、ガスの供給方法です。プロパンガスではガスボンベからエネルギーが供給されるのに対し、都市ガスでは道路下の地中のガス管を通じて供給されます。
ただし、都市ガスは供給地域が限られているためお住まいの地域によっては利用できない場合もあります。そのため、新規でガス導管を敷地に引き込む工事をする場合はかなりのコストがかかる可能性があります。また、マンションなど集合住宅の場合は工事自体が難しいため、入居の際に確認するようにしましょう。
③ガス機器の使用頻度を抑える
ガス代を抑える最も簡単な方法は、普段の生活におけるガスの使用量を削減することです。無駄遣いしないのはもちろんですが、家庭で使われるガス機器の日々の使用頻度を抑えれば、ガスの使用量も少なくできます。家庭で使われる主なガス機器には、以下があります。
〈表〉家庭で使われる主なガス機器
・ガスコンロ ・ガスファンヒーター ・床暖房 ・衣類乾燥機 ・ガス給湯器 |
これらの使用頻度を抑えられれば、ガス代の節約が期待できます。ガス機器をよく使う人は、日々の生活に支障がない程度に意識してみましょう。
④給湯器を交換する
給湯器が古くなっている場合は、交換することでガス代を節約できる可能性があります。給湯器を長い期間使い続けると、熱効率が悪くなるため、ガスの使用量が増えることもあるからです。
給湯器を交換するタイミングの目安は、多くのメーカーが「給湯器を問題なく利用可能な期間」としている8〜10年です7)。10年以上同じ給湯器を使っている場合は、新しい給湯器の購入を検討してみましょう。現在では、少量のガスで効率よくお湯を沸かす、省エネ性能の高い給湯器も販売されています。
参考資料
⑤お風呂やキッチンでのガスの使い方を工夫する
電気と比べ、使う場所が限られるガスは、細かな点に気を配れば月々の料金を抑えることが可能です。家庭で多くのガスを使う主な場所は、お風呂とキッチンです。それぞれで工夫できることを以下にまとめました。
〈表〉お風呂で工夫できること
・お湯の使用量を減らす ・節水シャワーヘッドなどの節約グッズを使う ・家族で入浴の時間をそろえる |
〈表〉キッチンで工夫できること
・電子レンジを併用して、ガスの使用量を減らす ・落とし蓋や圧力鍋などを活用する |
これらはあくまで一例です。できることから、無理せずに取り組むことが大切です。
⑥エコキュートを導入する
2人暮らしで持ち家にお住まいの人は、給湯器を電気で動くエコキュートに変えるという方法もあります。エコキュートとは、ヒートポンプユニット(※3)で1日に使う分のお湯を貯湯タンクに溜めておく機器の総称です。空気の熱を利用することで、電気の消費量を抑えるので、CO2(二酸化炭素)削減にもつながります。
エコキュートを導入すれば、お湯を沸かす時にガスではなく電気を使用するため、ガス代がかかりません。その分電気代が高くなりますが、お湯を沸かす深夜に電気代が安くなる電気料金プランなどを契約することで、光熱費をトータルで見た時に節約できる可能性は十分にあります。
※3:空気の中の熱を集めてお湯を沸かす機器のこと。
⑦オール電化住宅に切り替える
エコキュートと同様に、2人暮らしで持ち家の人の場合は、給湯や調理、暖房といった住宅で用いるエネルギーをすべて電気でまかなうオール電化住宅にするというのも1つの手です。オール電化住宅は、ガスを使用しないためガス代がかかりません。ガスコンロはIHクッキングヒーターに、ガス給湯器はエコキュートに置き換えることで、住宅設備の熱源を電気だけでまかなうことができます。
オール電化住宅に切り替えると電気の使用量が大きく増えるため、電気代が上がります。しかし、深夜の電気代が安くなる電気料金プランを契約するなどで、光熱費全体で見た時には節約になる可能性もあります。光熱費の削減以外にも、調理時の安全性が高いなどのメリットがあります。
なお、ガス代を抑える方法については以下の記事で詳しくご紹介しています。興味のある人は確認してみてください。
ガス代が平均額を超える場合はできることから始めてみよう
2人暮らしのガス代の平均額は、地域や季節によって変わることがわかりました。ガス使用量を減らす方法は、お風呂やキッチンの使い方の見直しからガスの料金プランの変更など、様々な方法があります。この記事でご紹介した節約方法を参考に、2人でできることから始めてみましょう。