奨学金を借りる手続きを親に任せていた場合には「返済はいつから始まるの?」「退学した場合、返済はどうなるの?」といった疑問を持つかもしれません。
そこでこの記事では、奨学金アドバイザーの久米忠史さん監修のもと、奨学金の返済がいつから始まるのか、そしていつまで続くのかについて詳しく解説します。また、毎月の返済額に関わる返済方法や分割方法についても併せて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
この記事の監修者
久米 忠史(くめ ただし)
株式会社まなびシード 代表取締役。奨学金アドバイザーとして活動。
2005年頃から沖縄県の高校で始めた保護者・高校生向けの奨学金ガイダンスが「わかりやすい」との評判を呼び、現在では高校だけでなく全国各地で開催される進学相談会や大学のオープンキャンパスなどで毎年150回以上の講演を行うほか、奨学金関連本をこれまで4冊出版。2009年には進学費用対策ホームページ「奨学金なるほど!相談所」を開設。
奨学金の返済はいつから始まる?
奨学金の返済は、いつから始まるのでしょうか。ここでは、日本で最も利用者が多い独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の奨学金を例に紹介します。
注:日本学生支援機構の奨学金は「返還」としていますが、本記事では「返済」と記載します。日本学生支援機構の奨学金に関する情報は、記事の公開日時点のものとなります。最新情報は、公式ウェブサイトをご確認ください。
日本学生支援機構の奨学金の場合、返済は奨学金の貸与が終了した月の翌月から数えて7カ月目の月の27日から始まります。たとえば4年制の大学を3月に卒業した場合は、その年の10月27日から返済が始まることになります。以降、毎月27日に、奨学金の返済用に指定した「リレー口座」(※1)から引き落としが行われます。
ちなみに、大学を中退した場合は、中退した月(最後に奨学金が振り込まれた月)の翌月から数えて7カ月目から返済が始まります。たとえば大学2年生の4月に中退した場合は、その年の11月27日から返済が始まります。
※1:リレー口座とは、奨学金返済を行う振替口座の愛称です。「あなたの返還金が後輩奨学生の奨学金としてリレーされる」という意味で用いられています1)。
参考資料
奨学金の返済はいつまで続く?
奨学金の返済が始まると、以降は完済するまで、毎月返済が続くことになります。基本的に、返済期間は借りた奨学金の総額と、奨学金を利用する際に指定した返済方法(返還方式)によって決まり、15年や20年ほど続くことになります。日本学生支援機構の場合、以下の2つの返済方法があります。返済方法は奨学金の申込時に選択します。
(1)定額返還方式の場合2)
定額返還方式とは、月々の返済額が一定の返済方法です。借りた奨学金の総額に応じ、自動的に返済額と返済期間が決まります。返済期間は最長20年間となっています。
〈図〉定額返還方式のイメージ
定額返還方式は、第一種奨学金(無利子)と第二種奨学金(利子あり)の両方で利用できます。多くの人が、定額返還方式を選んでいます。以下の表は、定額返還方式における大学や専門学校での返済例です。
●定額返還方式における第一種奨学金の返済例
〈表〉国公立4年制大学 自宅外通学(貸与月額51,000円)の場合
貸与 | 貸与月額 | 借りた期間 | 貸与総額 |
---|---|---|---|
51,000円 | 4年(48カ月) | 2,448,000円 | |
返済 | 返済月額 | 返済期間 | 返済総額 |
13,600円 | 15年(180カ月) | 2,448,000円 |
〈表〉私立4年制大学 自宅通学(貸与月額54,000円)の場合
貸与 | 貸与月額 | 借りた期間 | 貸与総額 |
---|---|---|---|
54,000円 | 4年(48カ月) | 2,592,000円 | |
返済 | 返済月額 | 返済期間 | 返済総額 |
14,400円 | 15年(180カ月) | 2,592,000円 |
〈表〉私立2年制専門学校 自宅外通学(貸与月額60,000円)の場合
貸与 | 貸与月額 | 借りた期間 | 貸与総額 |
---|---|---|---|
60,000円 | 2年(24カ月) | 1,440,000円 | |
返済 | 返済月額 | 返済期間 | 返済総額 |
9,230円 | 13年(156カ月) | 1,440,000円 |
●定額返還方式における第二種奨学金の返済例
〈表〉4年制大学 (貸与月額100,000円)の場合
貸与 | 貸与月額 | 借りた期間 | 貸与総額 |
---|---|---|---|
100,000円 | 4年(48カ月) | 4,800,000円 |
返済 | 年利 | 返済月額 | 返済期間 | 返済総額 |
0.5% | 21,069円 | 20年(240カ月) | 5,056,654円 | |
1% | 22,172円 | 20年(240カ月) | 5,321,420円 | |
2% | 24,478円 | 20年(240カ月) | 5,874,754円 | |
3% | 26,914円 | 20年(240カ月) | 6,459,510円 |
〈表〉2年制専門学校 (貸与月額100,000円)の場合
貸与 | 貸与月額 | 借りた期間 | 貸与総額 |
---|---|---|---|
100,000円 | 2年(24カ月) | 2,400,000円 |
返済 | 年利 | 返済月額 | 返済期間 | 返済総額 |
0.5% | 13,874円 | 15年(180カ月) | 2,497,419円 | |
1% | 14,428円 | 2,597,188円 | ||
2% | 15,574円 | 2,803,404円 | ||
3% | 16,769円 | 3,018,568円 |
(2)所得連動返還方式の場合3)
所得連動返還方式とは2017年4月から始まった、前年度の所得に応じて月々の返済額が決まる返済方法です。2017年度以降、第一種奨学金(無利子)を利用しており「機関保証制度」を選択している人が、この返済方法を利用できます。機関保証制度とは、日本学生支援機構が指定する保証機関の連帯保証を受ける制度のことで、保証機関に保証料を支払う必要があります。
〈図〉所得連動返還方式のイメージ
所得が一定程度となるまでの間は、定額返還方式よりも返済月額が少なくなります。一方で所得が一定程度を超えると定額返還方式よりも返済月額が多くなります。その分、返済期間が短くなるわけです。逆にいえば、返済月額が少ないと返済期間がその分長くなり、20年以上になる場合もあります。
所得連動返還方式における、返済月額の計算式は以下のようになっています。計算の結果、もし2,000円以下となる場合には、返済月額は2,000円となります4)。
返済月額=前年の年間所得×9%÷12 |
なお、この制度を利用する条件となっている機関保証制度の利用には保証料がかかります(※2)。また、所得が一定以下であれば月々の返済の負担は軽減されますが、返済すべき総額は変わらないため、返済期間が大幅に長くなる可能性がある点に注意が必要です。
※2:貸与月額、貸与月数、貸与利率、返済期間などにより異なります。
奨学金の分割方法(割賦方法)
奨学金の毎月の返済額は、申し込みの際に選択した分割(割賦)方法によっても変わります。分割方法は「月賦返還」と「月賦・半年賦併用返還」の2種類から選択できます。
(1)月賦返還2)
割賦金を返済回数に応じて、毎月引き落とす返済方法です。
(2)月賦・半年賦併用返還2)
借りた奨学金の総額を月賦分と半年賦分とで二分し、それぞれの金額に応じた割賦金を支払う方式です。月賦分は毎月、半年賦分は6カ月ごと(1月と7月)に引き落とされます。いわゆるボーナス払いを組み合わせた方式と考えてよいでしょう。
ただし、年間の返済総額と返済年数は月賦返還と同じです。月賦・半年賦併用返還のほうが早くに返済が終わるわけではないという点に注意しましょう。
なお、平成29年度以降に第一種奨学金を申し込み、所得連動返還方式を選択している場合は、月賦返還のみ選択可能です。
繰り上げ返済や一括返済の利用も検討しよう
奨学金は、毎月所定の金額を返済するほか、数カ月分を先回りして支払う繰り上げ返済、または残額を一括で支払う一括返済も可能です。
繰り上げ返済をする最大のメリットは、返済総額が少なくなることです。有利子の奨学金を借りている場合なら、返済期間が短いほど利子分の金額が少なくなるわけです。また早いうちに返済義務も終われば、保証人や家族が本人に代わって返済を継続するリスクも少なくなります。
一方、繰り上げ返済のデメリットは、大きな金額をまとめて支払うことで、預貯金が減ってしまうことです。将来の備えが少なくなることで、心理的不安を抱く場合もあるでしょう。
奨学金の繰り上げ返済について、詳しくは以下の記事も併せてご参照ください。
【関連記事】奨学金の繰り上げ返済とは? メリット・デメリットなど詳しくはコチラ
返済開始時期や返済期間の目安を理解し、無理のない返済プランを立てよう
利用する種類や借りる金額にもよりますが、一般的に奨学金の返済は15年や20年は続くことになります。その間に、結婚やマイホーム購入など大きなお金が必要なライフイベントを考える人もいるでしょう。奨学金の返済が、ライフイベント実現の足かせにならないように、返済のルールを把握し、無理のない返済プランを立てるようにしてみてください。
将来のお金が不安……、そんな時は「お金のプロ」に相談してみませんか?
奨学金の利用を検討している人、または奨学金を返済中の人の中には、将来のお金に不安を抱えていたり、家計管理に悩みがある人もいるのではないでしょうか?
奨学金の利用は長期的なマネープランに関わるため、自分1人で計画を立てることが難しい場合もあるでしょう。そんな時には、自分にぴったりの「お金のプロ」に相談してみませんか?
「お金のプロ」とのマッチングサイトでは、あなたの性別や年齢、住んでいるエリア、相談したい事項を選択することで、あなたにぴったりの「お金のプロ」を選ぶことができます。
対面だけでなく、オンラインでの相談も行っているので、ぜひ以下から相性のよい人を探してみてください。