医療費控除は、1年間に支払った医療費の一部を所得金額から控除できる制度です。「医療費控除を受けられるのは10万円から」と耳にしたことがある人は多いでしょう。それでは、医療費が10万円以下の場合、控除は適用されないのでしょうか。

この記事では、ファイナンシャルプランナーの荒木千秋さん監修のもと、年間の医療費が10万円以下でも医療費控除を利用できるのか徹底解説。医療費控除を利用する際のポイントや、確定申告の手順もご紹介します。この記事を読めば、正しく医療費控除を申請できるようになるでしょう。

この記事の監修者

荒木 千秋(あらき ちあき)

荒木FP事務所代表。10年間の銀行勤務を経て独立。これからの女性が人生を楽しむためには「お金・投資」との付き合い方を変えなければならないと確信し、現在は、大学講師、セミナー、ウェブ執筆、個別相談などを行っている。 著書に『「不安なのにな〜んにもしてない」女子のお金入門』(講談社)がある。

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医療費が10万円以下でも医療費控除は申請できる

画像: 画像:iStock.com/laymul

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結論からいうと、年間の医療費が10万円に満たなくても、医療費控除を申請できるケースがあります。それは、年間の所得金額が200万円未満の場合です。

「医療費控除は10万円から」といわれる理由は、医療費控除対象額を計算する際に10万円を差し引くことが広く認知されているためです。

しかし、それは年間の所得金額が200万円以上の場合であり、200万円未満の場合は〈1年間で支払った医療費の合計−所得金額の5%〉が基本的な医療費控除対象額となります。たとえば、所得金額が150万円であれば差し引きできる金額は7万5,000円なので、年間の医療費が7万5,000円以上であれば控除を受けられます。

〈図〉医療費控除対象額の計算式

画像: 医療費が10万円以下でも医療費控除は申請できる

【所得金額別】医療費控除対象額の計算方法

画像: 画像:iStock.com/miya227

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医療費控除の対象となる金額の計算方法は、年間の所得金額が200万円以上かそれ未満かで変わります。それぞれのケースに分けて、解説します。

年間の所得金額が200万円以上の場合

年間の所得金額が200万円以上の場合、医療費控除対象額の計算式は以下のとおりです。

1年間で支払った医療費の合計−保険金や給付金−10万円

なお、控除額は1年間で200万円が上限である点も把握しておきましょう。200万円を超えた部分は控除できません。

所得金額が200万円以上の場合、保険金などの補填を除けば差し引きされる金額は10万円です。つまり、所得金額が200万円以上で、年間の医療費が10万円以下の場合は、医療費控除を受けることができません。

年間の所得金額が200万円未満の場合

年間の所得金額が200万円未満の場合の計算式は以下のとおりです。

1年間で支払った医療費の合計−保険金や給付金−所得金額の5%

所得金額が200万円未満の場合は、所得金額に応じて差し引かれる金額が変動します。たとえば、所得金額が100万円の人は5万円、150万円の人は7万5,000円です。いい換えると、民間の保険などによる補填を考慮しない場合、医療費を所得金額の5%以上支払っているなら医療費控除を受けられます。医療費が少ないからと諦めるのではなく、金額を計算してから申請の可否を判断しましょう。

医療費控除を利用する際の5つのポイント

画像: 画像:iStock.com/erdikocak

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医療費控除を活用するにあたり、特に覚えておきたいポイントは以下の5つです。

①医療費控除には対象期間・申請期限がある
②自由診療の治療費は控除の対象外
③出産や介護、通院時の交通費も対象となる
④医療費より保険金額が多い場合でも控除対象になることがある
⑤確定申告が必要

これらのポイントを押さえておくことで、医療費控除の申請をより正確に行えます。それぞれ詳しく解説します。

①医療費控除には対象期間・申請期限がある

医療費控除は、原則として1年間で支払った医療費に対して利用できる制度です。具体的には1月1日から12月31日までに支払った医療費の合計で計算し、申請をします。年内に発生した医療費を、年をまたいで支払った場合は翌年の計算に含めます。

医療費控除の申請には期限が定められており、申請できる期限は、医療費を支払った翌年の1月1日から5年間です。5年が過ぎると申請の権利を喪失します。逆にいえば、過去5年分までであればさかのぼって申請が可能です。申請が漏れている医療費がある場合は、早めに申請しましょう。

②自由診療の治療費は控除の対象外

医療費控除は、一般的な治療費を超える部分には適用されません。自由診療の場合、歯の治療など一部に適用される場合もありますが、基本的には対象外です。

医療費控除を利用する際は、治療費など適用範囲の総額を算出するだけでなく、対象となる金額も洗い出しましょう。申請内容に手違いがあると、修正などで手続きが増え、手間がかかってしまいます。

なお、以下の記事では医療費控除の対象となる医療費や所得金額ごとの控除額のシミュレーションをしています。興味のある人は、併せてご覧ください。

【関連記事】医療費控除でいくら戻る? 計算方法や具体的な金額シミュレーションについて、詳しくはコチラ

【関連記事】医療費控除の申告はいつまで? 期限や対象となる費用について詳しくはコチラ

③出産や介護、通院時の交通費も対象となる

画像: 画像:iStock.com/takasuu

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治療にかかった費用以外に、出産や介護、通院の交通費も医療費控除の対象となります。また、歩行が困難な場合などやむを得ない理由でタクシーを利用した時の料金も対象になります。ただし、これらの事情がなくタクシーを利用した場合の代金は対象ではありません。

原則、交通費を医療費控除として利用するには領収書が必要ですが、電車やバスでは領収書が発行されない場合があります。その際は、利用した日時や費用を家計簿などに記録しておき、もし税務署で詳細を聞かれた時に説明できる状態にしておきましょう。

【関連記事】交通費は医療費控除の対象になる? 対象となるための細かな条件について詳しくはコチラ

④医療費より保険金額が多い場合でも控除対象になることがある

前述の計算式のとおり、民間の医療保険などの保険金が多く給付された場合は、医療費控除対象額が0円になってしまい、医療費控除を受けられない可能性が高いです。

しかし、場合によっては支払った医療費を超える保険金を受け取っていても控除を受けられる場合があります。これは、保険金は医療費の総額からではなく、給付の目的となったケガや病気の治療費から差し引くためです。

たとえば、交通事故で入院した際に100万円の医療費がかかり、保険金として150万円を受け取ったとしましょう。このままでは、保険金が医療費を上回っているので、医療費控除は受けられません。

しかし、あとからほかの病気が見つかり、治療に50万円かかったとします。この場合、残りの保険金50万円は病気の治療費から差し引かれません。受け取っている保険金は、交通事故が原因となったケガを治療するための手術費用や入院費として給付されているためです。そのため、病気の治療費50万円から10万円を差し引いた40万円は、医療費控除の対象となるのです。

⑤確定申告が必要

大前提として忘れてはならないのが、医療費控除を受けるには、確定申告が必要なことです。確定申告の際は、収入や控除額を確定申告書に記載するだけでなく、医療費の明細など必要書類を添付して申請します。

会社員など確定申告が不要な人は忘れやすいので、注意が必要です。確定申告の詳しい手順は後述します。確定申告を上手に活用すれば、税金額の軽減につながることもあるので、この機会に申請方法を覚えておくとよいでしょう。

医療費控除の申請方法を4ステップで解説

画像: 画像:iStock.com/Promo_Link

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医療費控除を申請するためには、確定申告の手続きが必要です。では、確定申告で具体的にどのように手続きをすれば、医療費控除を受けられるのか、詳しくご紹介します。

医療費控除申請の流れ

まずは、医療費控除を申請するために、確定申告の全体の流れを把握しておきましょう。確定申告から口座への入金までの流れは以下のようになります。順に解説していきます。

医療費控除を行うための確定申告の流れ

【STEP1】確定申告に必要な書類を準備する
【STEP2】確定申告書、医療費控除の明細書を作成する
【STEP3】書類ができたら、税務署に提出する
【STEP4】口座への入金を確認する

【STEP1】確定申告に必要な書類を準備する

確定申告で医療費控除を申請するために必要な書類はつぎのとおりです。

  • 確定申告書
  • 医療費控除の明細書
  • マイナンバーカード
    (持っていない場合は通知カードと本人確認書類)
  • 医療費の領収書(※保管しておくことを忘れずに)

確定申告書の原紙は国税局のウェブサイトから印刷するか、自治体の役所や税務署でもらいましょう。マイナンバーカードや本人確認書類も準備しておきます。

【STEP2】確定申告書、医療費控除の明細書を作成する

必要な書類が準備できたら、確定申告書と医療費控除の明細書を作成します。基本的には、確定申告の一環として医療費控除の入力を進めます。

確定申告の際には、年間収支の記録が必須です。会社員や専業主婦(夫)は確定申告書A、フリーランスや個人事業主はBを目安に選んでください。確定申告書では、給与や副業などの所得を記入します。給与所得は、会社から発行される源泉徴収票などを参考にしましょう。

医療費控除の明細書は、国税庁のウェブサイトから取得できます。なお、健康保険組合などが発行する「医療費のお知らせ」があれば、代わりに添付することで明細書の記入が省略できます。

医療費控除を受けるには、医療費の計算が必要ですが、年間の医療費をすべて手動で計算することは面倒な作業でしょう。国税庁では、医療費を自動で計算してくれる「医療費集計フォーム」を提供しています。ファイルはエクセル形式で、金額を入力すると、自動で計算してくれるためとても便利です。

エクセルに入力する際には、以下の項目が必須であるため、日頃からレシートやメモを記録しておきましょう。

  • 病院や薬局名(交通費もここに入力)
  • 医療費
  • 利用年月日

すべての入力を終え、明細書作成ボタンをクリックすると自動的に明細が作成されます。

【STEP3】書類ができたら、税務署に提出する

税務署への提出方法は3つあります。

(1)所轄の税務署に持参する
(2)所轄の税務署に郵送する
(3)国税庁のウェブサイトで作成した確定申告書をe-Tax(インターネット)で送信する

確定申告で使用した領収書類は、5年間の保管義務があるので、捨てずに必ず保管しましょう。紙面で記入した場合は税務署に持参するほか、郵送も可能です。

マイナンバーカードを持っている人は、国税電子申告・納税システム(e-Tax)のウェブサイトから送信が可能です。会計サービスとe-Taxを併用すると、オンラインで確定申告が完結できるので便利です。

【STEP4】口座への入金を確認する

口座振り込みをお知らせするハガキが届きます。内容に間違いがないか念のため確認しましょう。還付金の振り込みは確定申告後、1カ月から1カ月半程度かかると想定しておきましょう。

医療費控除を受けられるかどうか、きちんと確認して利用しよう

画像: 画像:iStock.com/Seiya Tabuchi

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医療費が10万円以下でも、年間所得金額が200万円未満であれば医療費控除の申請が可能です。「支払った医療費が10万円以下だから医療費控除を利用できない」と決めつけずに、自分が対象となっているかどうか、一度確認するようにしましょう。

また、支払った医療費を超える保険金を受け取っていても、医療費控除を受けられることがあるかもしれません。自分が該当するか迷った場合には、国税庁の窓口やファイナンシャルプランナーの無料相談窓口などに相談してみることをおすすめします。

医療費の負担が心配……そんな時はお金のプロに相談してみませんか?

医療費控除の制度を利用すれば、自己負担額をある程度抑えることができますが、とはいえ医療費の負担が少ない訳ではありません。もしもの時のために、普段から貯蓄や保険を意識して備えることが大切です。

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