一人暮らしをしている人の中には、お金のやりくりが上手くいかず、貯金ができなくて悩んでいる人も多いことでしょう。
そこでこの記事では、ファイナンシャルプランナーの藤井亜也さん監修のもと、一人暮らしで貯金ができない原因を徹底解説。貯金が苦手な人にもおすすめの貯金方法や改善方法も併せて紹介しているので、この記事を参考に貯金を始めてみましょう。
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※この記事は、2022年7月8日に公開した内容を最新情報に更新しています。
一人暮らしの人が貯金できない原因とは?

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一人暮らしの人が貯金できない原因には、主に以下のようなものが挙げられます。
- 貯金の重要性を感じていない
- 家計を管理できていない
- 生活費が高い
それぞれ詳しく説明していきます。
【原因1】貯金の重要性を感じていない
一人暮らしの人の中には、一緒に暮らす家族や養う子どもがいないため、将来的な貯金の重要性をあまり感じていない人も少なからずいるでしょう。また、元気に仕事をしているうちは、その日暮らしの生活でも何とかなってしまうので、このような感覚の人も、貯金に対する意識が低くなっている可能性があります。

一人暮らしの方は、支出を見てくれる人がいないため、気づかないうちに“お金はあるだけ使ってしまう”状態になりがちです。将来のライフイベントや万が一の備えに向けて、早めに“お金を残す習慣”をつけておくことが大切です
「余ったら貯金する」のではなく、まずは「使う前に、貯金のためのお金を取り分ける」ことを意識しましょう。毎月の貯金額を決め、給料が入った時点で貯金額だけ取り分けることで、気づいたら全額使ってしまってなくなっている、という状況を避けられます。
【原因2】家計を管理できていない
一人暮らしの人は、実家暮らしの人と比べると、家賃なども含めて自分でしっかりと家計を管理しなければなりません。しかし、貯金できない人の多くは収入・支出の金額を把握しておらず、家計の管理ができていないことが少なくありません。
なかでも、管理が必要なのが「変動費」です。
「変動費」とは、家賃や水道光熱費といった毎月決まった額の支出ではなく、食費や交際費、趣味の費用など、月ごとに金額が変動する支出を指します。意識しないと、つい使いすぎてしまいます。

変動費は“つもり使い”が起こりやすい支出です。『そんなに使ったつもりはないのに残っていない』という場合は、まず1カ月だけでもお金の流れを“見える化”してみましょう。支出の傾向がつかめれば、改善点がはっきり見えてきます
たとえば、食費は月3万円まで、交際費は月2万円までといったように変動費の上限を決めるだけで、貯金の確保はできるものです。お金を使いすぎている自覚がある人は、変動費を見直してみましょう。
【原因3】生活費が高い
そもそも一人暮らしは、実家暮らしと比べると圧倒的にお金がかかります。家賃や水道光熱費を自分一人で支払わなければいけないため、実家暮らしよりも経済的な負担は重くなります。
特に都市部に住んでいる場合、家賃が高めなため、郊外と比べてお金がかかりやすい傾向です。その結果、貯金する余裕がない人は多いでしょう。

生活費の中でも家賃や光熱費は“逃れられない固定費”ですが、工夫次第で見直せる部分も多くあります。通信費を格安プランに変える、電力会社を見直す、物件の条件を柔軟にするなど、小さな改善の積み重ねが大きな差になります
貯金をしたいと考えるならば、意識して生活費を節約する必要があります。
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まずは手取りの1割から!FPがすすめる「無理のない貯金額」の目安
貯金できない人が貯金を始めるにあたって大切なのは、なんとなく貯めるのではなく、“目標額”を定めることです。
漠然と「お金を貯めたい」と思っていても、具体的なゴールが見えていないと、途中で挫折したり使ってしまったりすることも少なくありません。まずは「月にいくら貯める」という具体的な目標額を設定し、無理のないペースで続けていくことが大切です。

ファイナンシャルプランナーの多くがすすめているのは、『手取り収入の1〜2割を目安に貯金する』という考え方です。
たとえば、手取り20万円の人であれば、月2万円程度の貯金から始めるとよいでしょう
みんなはいくら貯めている?一人暮らしの平均貯蓄額
「目安額はわかったけれど、みんなはどのくらい貯めているんだろう?」と気になる方も多いのではないでしょうか。J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」によると、一人暮らしの人の金融資産保有額は989万円、そのうち預貯金として保有している金額は362万円となっています1)。
〈表〉世帯主の年齢別一人暮らしの人の貯金額の平均(金融資産を保有していない世帯を含む)
世帯主の年齢別 | 金融資産保有額(※1) | うち預貯金(※2) |
---|---|---|
平均 | 989万円 | 362万円 |
20歳代 | 161万円 | 91万円 |
30歳代 | 459万円 | 200万円 |
40歳代 | 883万円 | 331万円 |
50歳代 | 1,087万円 | 419万円 |
金融資産保有額は20歳代が161万円と最も低く、50歳代が1,087万円と、基本的には年齢が上がるごとに保有額が増えていく傾向が見られます。預貯金についても同様に、年齢とともに金額が増える傾向にあります。
なお、金融資産保有額には、預貯金に加え、株式や投資信託、保険などの金融商品も含まれています。上表を見ると、全年代で金融資産保有額の約半分が預貯金として保有されていることがわかります。この傾向から、投資よりも預貯金で備えるという人が多いことがうかがえます。
以下の記事では、貯金額の目安とともに、貯金ができない原因と対策を紹介しています。貯金ができず悩んでいる人は、併せてご覧ください。
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一人暮らしで貯金できない人が改善すべき6つのポイント

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ここからは、貯金できない人が特に改善すべき6つのポイントを、貯金できない原因に当てはめて紹介します。
貯金できない原因 | 改善ポイント |
---|---|
貯金の重要性を感じていない | ①貯金をする理由や目標を持つ |
家計を管理できていない | ②家計簿をつける |
③小さな買い物や外食を控える | |
④クレジットカードの利用を制限する | |
⑤電子決済の利用額を確認しておく | |
⑥自動で貯金できるしくみを利用する | |
生活費が高い | ⑦固定費の見直しや節約をする |
これらのポイントが改善できれば、自然と貯金できるようになるでしょう。それぞれ詳しく解説していきます。
① 貯金をする理由や目標を持つ
貯金できない人にありがちなのが、貯金をする理由や明確な目標を持っておらず、貯金の重要性を感じていないことです。漠然と「貯金をしよう」と思っていても、強い動機がないと長く続けるモチベーションが保てなくなってしまいます。
貯金をする際には、たとえば「車や家の購入」「結婚資金」「老後資金」など、具体的な目標を持つことが大切です。まずは、何のために貯金するのかを自分の中で明確にしましょう。
② 家計簿をつける
前述のとおり、貯金できない人は家計を把握できていないことが多いです。そこでおすすめしたいのが、家計簿をつけることです。
家計簿をつけると、収入と支出のバランスが把握でき、自分が何に多くお金を使っているかも可視化することができます。貯金ができない人は、どこかで無駄遣いをしている可能性が高いので、家計簿をつけて現状の家計を把握することで、節約できる項目を探しましょう。
なお、家計簿をつける場合は、最初から意気込んで細かくつけようとすると、挫折の原因になります。まずは、おおざっぱでもよいので、続けることを目標にしましょう。
たとえば、以下のようなざっくりとした項目分けで構いません。
〈表〉初心者におすすめの家計簿項目
管理項目 | 具体的な内容 |
---|---|
固定費 | 家賃、水道光熱費、通信費など |
食費 | 食材費、外食費など |
生活費 | 日用品費など |
雑費 | 美容・洋服代、趣味関連費など |
特別出費 | 冠婚葬祭費など |
最近では、手書きの家計簿のほかにアプリやExcelを使った家計簿も多くあります。特にアプリの家計簿は、自動で計算してくれるほか、レシートの自動読み取り機能や銀行口座やクレジットカードとの連携機能なども充実しているので、管理の手間が省けるでしょう。
自分に合った方法を見つけ、家計簿をつける習慣を身につけましょう。
③ 小さな買い物や外食を控える

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スーパーやコンビニで小さな買い物をしてしまう人は要注意です。これらの支出は、一回当たりに使う金額は低いかもしれませんが、積み重なると大きな出費となり、家計を圧迫します。
このような人は、買い物リストをつくることがおすすめです。あらかじめ買うものを決めておけば、余計なものを買わずに済むでしょう。また、買い物をする日も週に1〜2回と決めるとなおよいです。スーパーの特売日を狙って、買い溜めをすることも効果的です。
外食が多い人も注意が必要です。外食の回数が多いと、月に数万円の出費になることもあり、決して小さな支出ではなくなります。交際費も入れると、家計への負担は大きいでしょう。
外食が多い人は、「週に●回は自炊をする」と目標を設けて外食の頻度を下げましょう。いきなり自炊メインにすることは大変なので、徐々に自炊の頻度を増やすとよいでしょう。
④ クレジットカードの利用を制限する
クレジットカードの支払いは、財布や銀行口座からすぐにお金が減らず、お金を使っている実感がないまま、ついつい使いすぎてしまう恐れがあります。また、本来ないはずのお金をあるように錯覚してしまい、自分が支払える以上のものを買えてしまう点も注意が必要です。
貯金できない人の中には、衝動買いがクセになっている人もいると思います。そういった人はクレジットカードを利用していると、どんどん支払いが膨れ上がってしまうため注意が必要です。具体的には、クレジットカードの利用限度額を下げ、光熱費や保険料などの支払いだけに使うなど、利用を制限する必要があります。それでも使いすぎてしまう場合は一度利用をきっぱりとやめたほうがよいでしょう。
⑤ 電子決済の利用額を確認しておく
コンビニやスーパーでの買い物に便利な電子決済ですが、手軽さゆえに使いすぎてしまうという人が増えています。特に、クレジットカードと紐づいている場合は、実際の支払いが月末など後日になるため、「明細を見て使いすぎていたことに気づく」というケースもよくあります。
電子決済での出費を防ぐには、週に1回は電子決済の利用履歴をチェックする習慣をつけるのがおすすめです。また、「電子決済は1週間で○○円まで」など、自分なりの上限金額を決めておくのもいいでしょう。事前にルールを決めておくことで、無意識の浪費を防ぎ、メリハリのあるお金の使い方がしやすくなります。
⑥ 自動で貯金できるしくみを利用する
なかなか貯金ができない人は、自動で貯金できるしくみを利用することもおすすめです。自動で「貯金」のためのお金を分けることで、それらのお金に手をつけないようにすることができます。
銀行のサービスや投資・保険の制度など様々な方法がありますが、具体的には以下の3つがよいでしょう。
- 定期預金
- 財形貯蓄
- 積立投資
定期預金は、設定した金額を毎月専用の口座に預け入れるしくみです。財形貯蓄は、給料の一部を天引きして会社経由で銀行に預け入れる制度です。定期預金や財形貯蓄は確実に貯金できる一方で、利息は少ない傾向にあります。勤務先によっては、財形貯蓄の制度がない状況も考えられます。
積極的にお金を増やしたい人におすすめなのは積立投資です。毎月決まった金額を積み立てながら運用していく投資制度で、長期運用することで比較的リスクが低くなるのが特徴です。特に、つみたてNISAは投資によって得た利益が最長20年間非課税になるので、お金を増やしやすい制度といえるでしょう。
⑦ 固定費の見直しや節約をする
貯金する上で重要なのは、支出を抑えて節約をすることです。特に、毎月必ず発生する固定費が高いと継続的に家計を圧迫してしまうため、まずは固定費を見直しましょう。
具体的には、以下の支出のうち、節約できるものがないかを確認しましょう。
- 家賃
- 水道光熱費
- スマホ、インターネットなどの通信費
- 駐車場代、ガソリン代
- 各種保険料
- サブスク代
上記のうち、比較的すぐに削減できる支出は水道光熱費や通信費、サブスク代です。水道光熱費や通信費については、契約している会社の乗り換えやプランの見直しなどを行うと、今よりも料金を抑えられる場合があるでしょう。特にスマホ代は、格安SIMへ乗り換えると、料金が半額以下になるケースもあります。
サブスク代についても、利用頻度が低いもの、自分にとって重要度が低いものは思い切って解約するのも1つの手です。
一人暮らしで貯金できない人におすすめの貯金方法2選

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貯金が苦手な人におすすめの、具体的な貯金方法について紹介します。
おすすめ貯金方法①先取り貯金
先取り貯金とは、収入の中から貯金分のお金を先に取り分け、残りのお金で生活する方法です。残ったお金を生活費にまわすため、「このお金は使い切っていい」という意識になり、精神的にも楽になるでしょう。
貯金の金額は、毎月●万円というように決めてもよいですし、収入に変動がある人は収入の●%というように決めるのもおすすめです。
貯金できない人はあればあるだけお金を使ってしまう傾向があるため、そういったことも防止できる貯金方法です。
〈図〉先取り貯金と、そうではない貯金のしくみの違い

おすすめ貯金方法②小銭貯金
ついつい小さな買い物をしてしまう人は、小銭貯金もおすすめです。毎日もしくは●日に1回というように貯金する頻度を決めて、その時財布の中にある小銭を貯金していくだけの簡単な貯金方法です。
すぐに始めることができ、特に用意するものも必要ないため、手軽なのも特徴です。貯金箱など目に見える形で貯めることで、どんどん貯まっていく楽しみも感じられるかもしれません。
また、500円玉貯金もおすすめです。財布に500円玉が入っていたら必ず貯金箱へ入れるという習慣をつくることで、簡単に貯金を始めることができます。
番外編:スマホ決済を効果的に使う
貯金方法とは少し異なりますが、最近ではスマホ決済を利用することも節約につながります。スマホ決済は還元率も高いため、現金で買い物をするよりもお得な場合が多いでしょう。
また、サービスによりますが家計簿アプリと連携をすることにより、支出の振り分けをすべて自動で行うことも可能です。家計簿をつける手間も省けるので、一石二鳥の方法でしょう。
【関連記事】手取り20万円の一人暮らしでも貯金をする方法について、詳しくはコチラ
一人暮らしで貯金できるようになるには、意識改革としくみ作りが大切
一人暮らしで貯金できない人に向けて、その原因と有効な貯金方法を解説しました。
すでに一人暮らしをしている人は、ある程度の家計管理はできているでしょう。貯金をするまでは、あと1歩のところです。
現在貯金できないことに悩んでいる人は、まず「貯金をする」という意識改革と、自然と貯金ができるようになるしくみ作りから始めましょう。