そもそもマネープランって何? メリットを解説
マネープランとは、マイホームの購入、子どもの大学進学、自分たちの老後の問題など、早い時期から「いつ」「どんな」ライフイベントを迎えるかをきちんと考え、将来の収入と支出をシミュレーションしてお金の見通しを立てることです。
マネープランは10年後や20年後ではなく、老後というもっと先の将来までシミュレーションして「生涯お金に困らないようにする」のが目的です。それだけ先までお金の見通しを立てるということは、「人生の計画を立てること」にほかなりません。そのため、一般的には「ライフプラン」と呼ばれることもあります。
そうはいっても、なぜいまから何十年も先のお金の見通しを立てる必要があるのか、疑問に感じる人もいるでしょう。そこで、まずマネープランのメリットを紹介します。
マネープランのメリット① 早い段階で危機感を持てる
メリットのひとつは家計の問題に早い段階で気づき、危機感を持つことができる点です。
給料が右肩上がりに増えて、退職金も年金も十分な額を受け取ることのできる豊かな時代はとっくの昔に終わりを告げました。世間的には、いまの30〜40代は65歳以上の高齢者に比べて貯蓄残高が少ないといわれています。また、年金の受給年齢は引き上げられ、受給額も減るのではないかと予測されています。一方、会社から受け取る給料は上がりにくく、逆に生活費や教育費は上昇傾向にあるともいわれています。
もはや無計画に生活していてもなんとかなるような時代ではありません。みなさんが安心して暮らすためには、将来の収入と支出をシミュレーションし、早い段階で自分たちの家計の問題に気づき、しっかりとしたマネープランを立てることが大切なのです。
マネープランのメリット② 将来への対策をとりやすい
収支をシミュレーションした結果、将来赤字になることがわかったとしても、悲観する必要はありません。むしろ赤字になることに気づけたことを喜ぶべきでしょう。なぜなら、早い時期に家計の問題を改善したり解決したりする方法を考えることができるからです。
この「早い時期に対策をとれる」というのもマネープランのメリットです。
将来に向けた対策はいたってシンプルで、基本的には「収入を増やす」「支出を減らす」「保有する資産を運用する」「資産を守る」の4つしかありません。まずシミュレーションによって現状分析を行い、そのうえでどのような対策を講じていくかを考えていきます。
マネープランのメリット③ キャリア設計にもつながる
企業が従業員の面倒を定年まで見る終身雇用制度は少なくなってきており、働き方がどんどん多様化しています。シミュレーションの結果、もっと収入を増やさなければならないとなった場合には、自分たちのキャリアプランも併せて考えなければなりません。
逆にいうと、マネープランを立てることは、今後の自分のキャリアを考えるきっかけにもなるということです。たとえば、勤務先が副業OKの会社の場合、なんらかの副業を始めてダブルワークに移行し、将来に備えるという方法があります。
▼「会社員の副業」について詳しく知りたい方はコチラ
また、大手企業では定年を65歳に設定したり、60歳で定年退職しても再雇用する制度を導入したりする会社が増えているようですが、中小企業は60歳定年の会社が多いのではないかと思います。その場合、年金受給が始まる65歳までの5年間をどうするのか、という問題も出てくるでしょう。このようにマネープランはキャリアプランとセットになっているのです。
人生の3大支出「教育資金」「住宅資金」「老後資金」がキモ!
マネープランをつくる最大の目的は、しっかりとした計画を立てることによって生涯お金に困らないようにすることです。その際に大きなポイントとなるのは、人生における3大支出、つまり「教育資金」「住宅資金」「老後資金」の3つです。
一般的に教育資金は子ども1人につき1,000万〜1,200万円かかるといわれ、住宅資金は首都圏に住む人なら5,000万〜7,000万円1)は必要でしょう。老後資金に関しては、2019年に「老後2,000万円問題」が大きな関心を集めました。
こうした支出が人生のどのタイミングで発生し、どれくらいのお金が足りなくなるのか。マネープランを立てることによって、それらを確認することができるわけです。
▼「子どもの教育費」について詳しく知りたい方はこちら
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どうやって立てる? マネープランのコツと注意点
マネープランは一度作成したらそれで終わりというわけではありません。毎年見直してアップデートする必要があります。世の中の状況は常に変化しているからです。
こうした変化に対応するには、「収入は低めに見積もる」「支出は高めに見積もる」ことが重要になります。
たとえば、支出の見積もり方について考えてみましょう。変動要素としては、物価上昇がありますが、どれくらい上昇するかは予測できません。そのため、物価上昇にともなう生活費は毎年1%ずつ増やしていくといいでしょう。そうすると、子どもが育ちざかりの中学生になった時、予想以上に食費が高くなるでしょう。
このように、家計をめぐる状況は毎年変化し続け、昨年と今年とではマネープランが全然違ってくることもあります。だからこそ、常にアップデートする必要があるのです。この前提を踏まえたうえで、マネープランを立てる際のポイントや注意点を紹介していきましょう。
ポイント① 収支を時系列に並べていく
最初のポイントは、収支をすべて洗い出し、その収支を今年、来年、再来年と、時系列で書き出していくことです。たとえば、現在の年収が500万円だとすると、来年は少しだけ多い505万円とし、現在の生活費が毎月20万円なら、来年は21万円で計算します。
教育資金は子どもが小学生か中学生か、高校に進学するなら公立か私立かで大きく変わってきます。そうした収支をすべてエクセルの表に入力していくイメージです。
〈表〉マネープランのイメージ)
2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | |
---|---|---|---|---|
夫の年齢 | 40歳 | 41歳 | 42歳 | 43歳 |
妻の年齢 | 38歳 | 39歳 | 40歳 | 41歳 |
子の年齢 | 10歳 | 11歳 | 12歳 | 13歳 |
夫の収入 | 500万円 | 505万円 | 510万円 | 515万円 |
妻の収入 | 100万円 | 100万円 | 100万円 | 100万円 |
収入合計(A) | 600万円 | 605万円 | 610万円 | 615万円 |
生活費 | 240万円 | 252万円 | 264万円 | 276万円 |
住居費 | 120万円 | 120万円 | 120万円 | 120万円 |
教育費 | 50万円 | 50万円 | 50万円 | 150万円 |
保険料 | 25万円 | 25万円 | 25万円 | 25万円 |
その他の支出 | 30万円 | 30万円 | 30万円 | 30万円 |
支出合計(B) | 465万円 | 477万円 | 489万円 | 601万円 |
収支(A-B) | 135万円 | 128万円 | 121万円 | 14万円 |
このように聞くと「マネープランって手間がかかって面倒だな」と思うかもしれませんが、こうしたシミュレーションを手軽に行える無料のウェブサービスもたくさんあります。このシミュレーションサービスについてはあとでもう少し詳しく説明します。
ポイント② プランの期間は100歳まで
収支を時系列で並べるといいましたが、前述したように、その期間は10年後や20年後などではなく老後まで、つまり100歳までです。いまは「人生100年時代」だからです。
仮に10年後まででマネープランを立てた場合、現在小学生の子どもはまだ大学を卒業していませんし、住宅ローンの返済もまだ終わっていないかもしれません。当然、人生はその後も続いていくので、老後のことまでしっかりと考えておかないとマネープランとはいえません。
いまは、退職金や年金だけでは老後を安心して暮らしていくには不十分な場合がほとんどでしょう。30〜40代のうちから、100歳までのマネープランを考えておいたほうが安心です。
ポイント③ 自分の人生を「見える化」する
そもそも、10年後の未来ならある程度想像することが可能です。そのくらいのスパンのマネープランだったら誰でも頭の中でぼんやりと計算できると思います。しかし、それではマネープランを立てる意味がありません。
100歳までシミュレーションすると、多くの人は収支が赤字になります。それは見たくない現実であり、目を背けたくなることかもしれません。しかし、現実と向き合い、老後までしっかりと収支をシミュレーションし、自分の人生を数値にして「見える化」することが重要です。頭の中だけで想像するのではなく数字として「見える化」することで、正しく危機感を感じることができ、将来をより具体的に想像できるからです。
100歳までのマネープランを立てるといっても、30〜40代の人には老後の生活など想像できないかもしれません。だとしても、老後にどれくらいの生活費が必要となり、どのように老後を過ごすかについて想像をめぐらせ、この機会にきちんと考えるべきです。
注意点① 甘めのマネープランを立てない
当然ながら、マネープランを立てる際に注意しなければならないこともあります。そのひとつは、収入が毎年右肩上がりで増えていくような甘い計画を立てないこと。前述したように、収入は低めに見積もり、支出は高めに見積もるのがマネープランの基本です。
支出に関しても、毎月の生活費を15万円ぐらいと思っていたら、じつは20万円だったというケースもよくあります。仮に支出が毎月2万円違っていたら年間24万円となり、10年間で240万円、20年間で480万円です。支出が500万円近くも違うと家計に与えるインパクトは大きくなるので、できる限り支出は正確な数字を出してください。
注意点② 数字を間違えがちなのは変動費
とくに支出で注意が必要なのは「変動費」です。家賃や住宅ローン、保険料、携帯電話代など、こうした毎月同額の支出がある固定費はあまり間違うことはありません。電気代、ガス代、水道代といった光熱費も毎月の支出はそれほど大きく変わらないと思います。
一方、間違いやすいのは食費や日用品費、被服費、交際費など、やりくりによって金額が変わる支出です。こうした変動費を甘めに見積もる人が非常に多いのです。ここをきちんと割り出してください。そうしないと正確なマネープランは立てられません。
マネープランをシミュレーションできるおすすめツール紹介
マネープランの作成をむずかしいと感じた場合、ファイナンシャルプランナーに相談するのもひとつの方法ですが、公的機関や銀行、証券会社のウェブサイトには、将来の収支をシミュレーションできる無料のサービスを公開しているところが多数あります。
サービスによって、とても細かくシミュレーションできるものからざっくりしたものまで様々ですが、いずれも「職業」「家族構成」「収入」などを入力するだけなので、簡単に利用することができ、アドバイスや診断も行ってくれます。
そうしたサービスから、比較的利用しやすい3つのシミュレーターを紹介します。
おすすめサービス① 全銀協「ライフプランシミュレーション」
URL:https://www.zenginkyo.or.jp/special/lps/
全国銀行協会が運営しているシミュレーションサービスです2)。各項目に数字がデフォルトで入っているので入力が非常に簡単。平均のデータも表示されるため、具体的な数字がわからない場合はデータを参考に入力することができ、シミュレーション結果のグラフが簡単なアニメーションのように表示される点もユニークです。
おすすめサービス② 日本FP協会「ライフプラン診断」
URL:https://www.jafp.or.jp/know/lifeplan/simulation/
こちらは日本ファイナンシャルプランナー協会のサービスです3)。デザインがポップでかわいらしく、カラフルで見やすいのが特徴。操作性もよく、数字を入力するのではなく選択式になっていて、年代や職業、収入などの項目ごとに画面が切り替わって展開します。マネープランを作ったことのない人が試めすにはちょうどいいシミュレーションサービスです。
おすすめサービス③ 金融広報中央委員会「知るぽると」
URL:https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/sindan/
金融広報中央委員会が運営しているサービスです4)。すべての項目の数字をいちから入力していかなければならないので、上記の2つに比べると手間がかかり、デザインもやや堅苦しい雰囲気があります。しかし、その分しっかりとしたキャッシュフロー表を作成できるので、きちんとしたマネープランを立てたい人にはおすすめです。
より詳しいマネープランを自分で作成したい場合は…
こうした無料のウェブサービスを使ってシミュレーションした人は、次に自分自身でより詳しいマネープランを作成してみるのもいいでしょう。上記の「ライフプラン診断」を運営している日本ファイナンシャルプランナー協会のウェブサイトでは、「家計のキャッシュフロー表」という計算式の入ったエクセルファイルをダウンロードすることができます。
〈図〉日本FP協会公式サイトでダウンロードできる「家計のキャッシュフロー表」(一部省略)
この「家計のキャッシュフロー表」は20年分しかありませんが、コピー&ペーストすれば50年でも100年でもいくらでも伸ばすことが可能です。ただし、プランをつくったらそれで終わりではなく、前述したように毎年見直して必ずアップデートしてください。
マネープランを立てるために参考になる本
自分でマネープランを立てる場合、やはり最低限のお金の知識を学んでおいたほうがいいでしょう。そこで、いずれも最近のものではありませんが、お金にまつわる普遍的な内容が書かれた2冊の書籍を紹介します。きっとみなさんの参考になると思います。
参考になる本① 藤川太著『サラリーマンは2度破産する』
平均年収以上を得ているサラリーマンの世帯でも、大きな支出を想定してきちんと計画を立てていなければ、家計が破綻してしまうことを教えてくれる本です。タイトルの「2度破産する」の「2度」とは、教育資金と老後資金のことです。
この本を読めば、人生の3大支出「教育資金」「住宅資金」「老後資金」がどのように発生するかがよくわかります。家計を破綻させないために、著者はマネープランを立てることを推奨していて、本の中でキャッシュフロー表も紹介されています。
ただし、新書として出版されたものですが、現在は絶版となっていてKindle版しか購入できません。紙の本で読みたいという人は、2014年に改訂版の『やっぱりサラリーマンは2度破産する』が出版されているので、そちらを購入するといいでしょう。
参考になる本② 本多静六『人生計画の立て方』
著者の本多静六氏は、給料の4分の1を天引き貯金してつくった資金を元手に投資し、巨万の富を築いた人物です。人生哲学を著した『私の財産告白』という本が有名ですが、この『人生計画の立て方』も多くの著名投資家がSNSなどで紹介している名著です。
この本を読めば、お金との向き合い方のほか、『サラリーマンは二度破綻する』と同様にきちんとした計画を立てること、そして投資の重要性を学ぶことができます。
マネープランを立てると、多くの人は老後資金が足りなくなります。そこでiDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISA(少額投資非課税制度)を利用して資産を運用するという選択肢も重要になります。そうしないと老後資金が足りなくなるということがこの本でよくわかると思います。
▼「iDeCo」について詳しく知りたい方はこちら
【夫婦・独身×子あり・子なし】どんなプランを立てればいい?
ひと口に30〜40代といっても、結婚している人と結婚していない人、子どもがいる人と子どもがいない人と、その人が置かれている状況は様々です。ひとりで子どもを育てているシングルマザーやシングルファーザーの人もいることでしょう。
マネープランはこうした条件によって立て方が変わってきます。そこで「夫婦×子あり」「夫婦×子なし」「独身×子あり」「独身×子なし」という4つのケースを設定し、それぞれマネープランを立てる時のポイントと注意点を紹介しましょう。
ケース①「夫婦×子あり」の場合
最初のケースは「夫婦×子あり」のケースです。ともに30代で、それぞれ年間400万〜500万円の収入を得ている共働き夫婦、子どもは小学生と想定しましょう。
プロフィール | 30代共働き夫婦 |
---|---|
子ども | 1人(小学生) |
世帯年収 | 800万〜1,000万円 |
【ポイント】教育資金の確保を最優先に
このケースで考えなければいけないのは教育資金です。子どもが進学するのが私立か公立かで必要となる資金も多少変わってきますが、まず教育資金の確保が重要。そのうえで、マイホームを購入したい場合はしっかり計画を立てて頭金を貯蓄してください。
もちろん、老後のことを考えて積み立て投資などもしなければなりませんが、実際にシミュレーションしてみると、それによって教育資金が不足してしまう家庭もあります。その場合は教育資金と住宅資金を優先して計画を立てたほうがよいでしょう。
【貯金額】毎月最低でも所得の1割を
理想は可処分所得の2割を貯蓄することですが、このケースは教育資金を優先しなければなりません。とはいえ、最低でも可処分所得の1割は貯蓄してほしいところです。
ケース②「夫婦×子なし」の場合
次は「夫婦×子なし」のケースです。ともに40代で、結婚して10数年経ちますが、子どもはいません。夫婦合わせて年間1,000万円以上の収入があるとしましょう。
プロフィール | 40代共働き夫婦 |
---|---|
子ども | なし |
世帯年収 | 1,000万円以上 |
【ポイント】老後をどう過ごすかプランを立てる
このケースは、お金に関してそこまで心配しなくてもよいでしょう。高所得の家庭でも子どもが3人いたらマネープランに苦労します。その点、このケースは教育資金が必要ないので、おそらく収支は毎年プラスになり、マイナスになることはほとんどないでしょう。
この場合に大切なのは、夫婦で老後をどう過ごすかというリタイアメントプランです。すでにマイホームを持っているなら、そこを収益物件にして自分たちは地方に移住してのんびり暮らすなど、セカンドライフを考えてマネープランを立てるといいと思います。
【貯金額】毎月所得の5割が理想
十分な収入がある共働き夫婦の場合、理想は可処分所得の半分を貯蓄することです。さすがに5割は厳しいとしても、所得の3分の1、3割は貯蓄してほしいところです。子どものいない共働き夫婦のなかには月に40万円を積立投資している人たちもいるくらいです。
ケース③「独身×子あり」の場合
このケースは30代のシングルマザーを想定しました。中小企業の正社員として働いていて、子どもは小学生としましょう。収入は年間300万円ほどのイメージです。
プロフィール | 30代シングルマザー |
---|---|
子ども | 1人(小学生) |
世帯年収 | 300万円 |
【ポイント】子どもの独立後の老後資金を考える
このケースは助成金や手当てが充実していて、親と同居したり援助を受けたりしていることも多いため、想像よりもお金の心配がいらない場合が多いです。とはいえ、計画的に貯蓄していかないと、子どもの教育資金を確保するのは厳しいかもしれません。
また、子どもの独立後はひとりになるので、老後に備えて貯蓄するか、保険で準備するかのいずれかをしっかり考えおくべきです。再婚することもあるかもしれませんが、マネープランはあくまでひとりで生きていく前提で立ててください。再婚した場合は、そのマネープランを白紙に戻し、夫婦のマネープランをつくり直せばいいのです。
【貯金額】毎月最低でも所得の1割を
「夫婦×子あり」のケースと同様に、理想は可処分所得の2割、最低でも1割は貯蓄に回してほしいところです。加えて、このケースは自分に何かあった際、子どもが希望する教育を受けられなくなる可能性があります。死亡保険は考えておいたほうがいいでしょう。
ケース④「独身×子なし」の場合
最後のケースは「独身×子なし」です。ライフイベントが多くなる30〜40代に向けて準備を始める、20代後半の独身男性を想定しました。収入は年間400万円でひとり暮らし、30代前半までに結婚したいと考えているとしましょう。
プロフィール | 20代後半独身男性 |
---|---|
子ども | なし |
世帯年収 | 400万円 |
【ポイント】固定費を抑えて結婚資金を貯めておく
数年後に結婚したいと考えているとしても、このケースでは独身のマネープランを立てます。現時点では相手の年収もわからないからです。この場合に重要なのは、できるだけ家賃が安い物件に住んで毎月の固定費を少なくすること。20代のうちから住宅購入を計画する人がいますが、まだ考えないほうがいいでしょう。
仮にマンションを購入した場合、結婚相手が戸建てを望んだらどうするのでしょうか。また、結婚前から住宅購入すると、子どもができた時に学区を選ぶ自由度も制限されます。このケースでは、どう転んでもいいように結婚資金を貯めることを優先すべきです。
【貯金額】毎月最低でも所得の3割を
ひとり暮らしの人は可処分所得の3割でもいいですが、親と同居している場合は5割を貯蓄に回していいと思います。このケースで大切なのは、とにかく貯蓄することです。
【年代別】マネープランを立てるコツ・ポイント
マネープランは、既婚者か単身者か、子どもがいるかいないかだけではなく、その人の年齢によってもそれぞれアプローチが微妙に変わってきます。20代から50代まで、マネープランを立てる時のポイントを「年代別」に見ていきましょう。
年代別のポイント① 20代の場合
できるだけ早い時期からマネープランを立てることは大事なのですが、20代の人が考えるべきなのは、お金のことよりも自身のキャリアプランです。若いうちから毎月1万円でもiDeCoなどに積立投資するのはとてもいいことですが、iDeCoは原則60歳まで引き出せない長期投資です。それならば、その1万円で書籍を購入したり、セミナーを受講したりして、キャリアアップのために使ったほうがいいでしょう。
投資信託で分散投資した場合のリターンは5〜7%(年率)ですが、自分に投資した場合、キャリアアップして年収が1.5倍になれば、それは50%(年率)のリターンということになります。将来に向けて貯蓄するのは当然として、20代はまず自分に投資することを考えるのがいいと思います。
年代別のポイント② 30代の場合
30代は結婚や出産、住宅購入などのライフイベントが発生する時期ですが、まず「緊急予備資金」をしっかり貯めておくことが大切です。これは、いざという時のために準備しておく緊急用のお金のことです。貯金が少ない人は7桁、100万円の貯金を目指しましょう
。
生活費の3カ月分から6カ月分を緊急予備資金として確保しておけば、病気やケガ、何かの事情で失職した時にも対応できます。すでに7桁の貯金がある場合は、教育費を確保しつつ、少しずつでもつみたてNISAなどで投資を始めるといいと思います。
年代別のポイント③ 40代の場合
40代は住宅ローンや子どもの大学進学など、支出がかさむ年代です。その一方、もはや転職は容易ではなく、新しいことにチャレンジすることがむずかしいので、収入も頭打ちになります。こうした40代が家計を改善するには、支出を減らすのが有効です。住宅ローンや携帯電話代などの固定費を見直して、教育資金や老後資金を確保するのです。
たとえば、携帯電話の契約を見直すと数千円程度の支出をすぐカットできます。カットできたのが月々5,000円だとすると、年間で6万円、10年で60万円です。40代が収入を60万円増やそうと思ったら、残業や副業を相当がんばらないといけないでしょう。教育資金や住宅ローンにお金がかかるなら、支出を見直してキャッシュフローを改善するしかありません。
年代別のポイント④ 50代の場合
50代は、そろそろ老後に向けて具体的な準備をしなければいけない時期です。その際に確認してほしいのが、毎年の誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」です。
50歳未満の場合、ねんきん定期便にはこれまでの納付実績が載っているだけですが、50歳以上になると65歳から受け取る年金の「見込み額」が記載されます。そのお金で生活していけるのかどうか、年金の見込み額から逆算して老後資金を準備するわけです。
また、60歳で定年になる人は、年金受給が始まる65歳までの「空白の5年間」をどう過ごすかについて考えておかないといけません。貯金の取り崩しだけでは生活できない場合は、いまから年金の空白期間に向けてキャリアプランを考える必要もあります。
▼「ねんきん定期便」について詳しく知りたい方はこちら
■各年代のポイントまとめ
- 20代 自分への投資でキャリアプランを考える
- 30代 「緊急予備資金」をしっかり貯めておく
- 40代 固定費の見直しで支出を減らす
- 50代 「ねんきん定期便」を確認し老後資金を準備する
【ライフイベント別】マネープランを立てるコツ・ポイント
マネープランを立てる時のポイントを、「子どもの進学(教育資金)」「マイホーム購入(住宅資金)」「自分たちの老後(老後資金)」といったライフイベントごとにもう一度おさらいしておきましょう。
ライフイベント① 子どもの進学(教育資金)
結婚して子どもが生まれたら、最初に迎える大きなライフイベントとなるのは子どもの進学です。公立に行くか私立に行くかで変わってきますが、教育費は年々上昇していて、子どもに十分な教育を受けさせたければ1,000万〜2,000万円以上の資金が必要になります。
たとえば、高校から私立だと約1,100万円、中学から私立なら約1,500万円、小学校から私立に行けば約2,200万円の教育費が必要といわれています。これだけのお金を確保するには、早い時期から収支をシミュレーションし、計画的に備える必要があります。
しかも、子どもというのは計画していなくても2人目、3人目ができることもあります。子どもを取り巻く状況や教育に必要な資金は変化していくものなので、マネープランは一度つくったら終わりではなく、必ず毎年見直してアップデートしていく必要があるのです。
▼「子どもの教育費」について詳しく知りたい方はこちら
ライフイベント② マイホーム購入(住宅資金)
多くの場合、子育てと同時に発生するライフイベントがマイホームの購入です。マイホームは子どもの進学以上にお金がかかります。地方なら3,000万〜5,000万円でマンションが買えますが、首都圏なら5,000万〜7,000万円、なかには8,000万円台やそれ以上の物件もあります。
それだけの住宅ローンを組んで本当に返済できるのか。子どもが2人いる場合、その子どもたちが大学に進学するまでの教育資金を捻出しつつ、5,000万〜7,000万円のローンを返していくことが可能なのか、そのあたりはきちんとプランを立てる必要があるでしょう。
将来の収支をシミュレーションした結果、仮に返済するのが無理だということがわかったら、マイホーム購入の予算を引き下げるか、教育プランを変更しなければなりません。あるいは「収入を増やす」「支出を減らす」といった対策を講じる必要があります。
ライフイベント③ 自分たちの老後(老後資金)
子どもの進学やマイホーム購入をなんとか乗り切ったとしても、子どもが大学を卒業して独立するころには、その次を見据えて今後のマネープランを立てなければなりません。老後をどう過ごし、その資金をどうするかというリタイアメントプランです。
とくに現在の30〜40代が高齢者になるころには、年金の受給年齢が段階的に引き上げられ、受給額も現在より減額されると考えられます。さらに60歳で定年する場合、年金の受給が始まる65歳までの空白期間をどうするのかという問題もあります。
まだ老後のことは想像できないからといって無計画に暮らしていると、大変なことになります。だからこそ、なるべく早い時期から将来の収支をシミュレーションし、自分たちが100歳になるまでのマネープランをしっかり立てておく必要があるのです。
■各ライフイベントのポイントまとめ
- 子どもの進学
毎年必ずマネープランを見直してアップデートする - マイホーム購入
教育資金も頭に入れてローン返済が可能かきちんとプランを立てる - 自分たちの老後
年金受給額を把握し早い時期から100歳までのマネープランを立てる
よく考えてマネープランを立てる(見直す)ことが大切
最初にお話したように、マネープランを立てることには多くのメリットがあります。生涯お金に困らないようにするため、安心して長い人生を送るためには、マネープランを立てたほうが絶対にいいと断言できます。
右肩上がりに成長する時代は過去のものとなり、会社が定年まで面倒を見てくれる時代も終わりつつあります。社会保障制度に不安を感じている人もたくさんいます。会社や国を頼るだけではなく、今後は自分でなんとかしなければならないのです。
そのために欠かせないのが、将来の収支をシミュレーションし、しっかりとしたマネープランを立てることです。マネープランは一度立てたらそれで終わりではありません。夫婦であれば、結婚記念日などに計画を見直し、必ず毎年アップデートしてください。まず現状を把握し、改善点があったらそこを見直して、なんらかの対策を講じるのです。
そして、くれぐれも楽観的にならず、より厳しく見積もったマネープランを立てることを心がけましょう。その姿勢が将来安心して暮らせることにつながるのです。