整理収納アドバイザーでミニマリストのFujinaoさんに、モノを減らす方法と、ミニマリストでもずっと持っていたくなる実用的でデザイン性に優れた逸品を紹介してもらいました。
お話を聞いた人
Fujinaoさん
整理収納アドバイザー。モノが少ない暮らしの気楽さに魅了されてしまった元転勤族。心を解きほぐしてモノの多さから解放される「整理収納自宅レッスン」を行う。2021年1月に『片づけの力 私たちは、もっと美しくなれる、部屋も、心も、』(KADOKAWA)を出版。
モノを減らすことで生き方も変わる
Fujinaoさんのお宅、本当にモノが少なくてスッキリしていますね! それでいて寂しい感じはなく、使われているモノ一つひとつがオシャレで素敵です。おすすめのモノをご紹介いただく前に、まずモノを少なくするメリットについて教えてください。
まずモノを減らしていくには「厳選していくこと」が必要になります。自分にとって使い心地がいいモノ、気分が上がるモノなど、基準をはっきりさせて厳選していきます。そうすると買い物の失敗がなくなっていくんです。
たとえば洋服を買う時に、セールで安いからといって似合わない色やあまり着ない服に手を出すことがなくなり、似合う色、本当に着たい服などよく考えて選ぶようになります。モノを減らすことで自分が本当に何を必要としているかがわかり、線引きが明確になってくるわけです。
無駄な買い物がなくなるわけですね。
はい。そうすると家の中がだんだん好きなモノだけになっていきます。好きなモノに囲まれているとゆったりした気分で過ごせて生活の満足度が上がりますし、無駄なモノを家に入れたくないので、それ以上モノは増えなくなり好循環でつながっていきます。
〈図〉モノを厳選することによる好循環
今はおうち時間が増えているので、居心地よく過ごすためにもそうしたスキルはますます必要になりそうです。
居心地がよくなるだけではありません。モノを減らすと気持ちのあり方や生き方にも変化があります。部屋が散らかって整理整頓ができないと、「どうして自分は部屋の整理すらできないんだろう…」と自己嫌悪してしまうこともあるかもしれませんが、これがモノを減らして常に整理ができれば低い自己嫌悪の払拭、自己肯定感の向上につながります。
また、モノを厳選する過程で、自分が本当は何が好きなのか心の声をよく聞くことになるので、「安いから買わなきゃ」とお金に振り回される生き方から脱したり、「いつも同じ服を着ていると思われたくないからたくさん買わなきゃ」と他人の目に翻弄されることから卒業でき、 “自分軸の生き方”ができるようになるんです。
片付けは納戸や押入れからスタート
生き方まで変えることができるとは驚きです。でも、そうは言ってもなかなか⋯⋯。
「やらなきゃ」と言っても重い腰が上がらない人や、自分以外の価値に重きを置いている人は結構多いですね。「買った時、高かったから」「リサイクルショップに持っていっても二束三文なのでもったいない」という言葉をよく聞くのですが、リサイクルショップで二束三文のモノに、自分の居住スペースを侵されてまで取っておく必要があるのだろうかと疑問に思います。
確かにそうですね。では何からスタートすればいいでしょうか。
まずはモノの持ち方に対する考え方の改革が必要です。モノよりもあなたが大切、あなたが心地よく生活できることに大きな価値がある、この考え方をしっかりと身に付けることから始めます。
心が動いたら手を動かします。まず、納戸や押入れといった大空間から片付けましょう。そういう場所にはたいてい使っていない家電などが入っていることが多い。しばらく使ってないモノは、いる・いらないの判断がしやすいんです。リビングなどに散らかっているモノは、最近使ったばかりで判断が難しいので後回しにします。
厳選する時のポイントはありますか。
重要なポイントは、(1)今後、役に立ってくれるか、(2)今、役に立ってくれているかの2点です。この2つに当てはまっていれば残しましょう。なお、今使っていなくても、夏や冬に使うモノなど時期が来れば使うことがはっきりしていれば残します。
一方で「昔は旬だった」というだけで持ち続けているモノは手放していいと思います。たとえば、昔はよく着ていたけれども今は体に合っていない服など。趣味のモノも持っていることが心の負担になっていれば手放します。私は昔ミシンにハマって生地をたくさん持っていたのですが、他にもやりたいことができて、持っていることが負担になったので手放しました。もしまた何か縫いたくなったらその時に新しく選んだほうが自分自身を更新できていいと思っています。
取っておくものはなんでしょうか。
取っておいて元気になれるなら残します。たとえば新婚旅行先のお土産品。実用性はないけれど、見るたびに思い出してあたたかい気持ちになるのであれば心の豊かさに役立っているモノなので「自分に役立っている」という認識で取っておきましょう。
「役に立つ」という言葉には、ツールとして実際に役に立つモノと、心を豊かにしてくれるモノ、2つの意味があるということでしょうか。
そのとおりです!
〈図〉厳選するモノの判断基準
痛みを乗り越えて本当にほしいものが得られる
モノの厳選の仕方についてなのですが、「これが好き」という自分の軸がコロコロ変わってしまうせいか、統一感がありません。モノを減らしたところでFujinaoさんのような素敵な部屋になる気がしません。
やはりひとつ軸を決めたほうがいいですね。私も以前は北欧系が好きだったんですが、今はシンプルモダンに落ち着きました。モノが少なくなってだんだん統一されてくると、テイストが違うモノを持ち込みたくなくなって、お店で素敵なモノを見かけても「うちには合わないから買うのはやめておこう」と考えられるようになります。
素敵なモノを見るとつい買いたくなってしまいます。
私も昔は雑貨屋さんに通うのが好きで集めていましたよ。でも、結局買っても使っていないモノが多くて、かなりの量を手放しました。その過程で「どうして買ってしまったんだろう」と後悔しましたし、痛みも味わった。そういう経験をすると、そうそう簡単にはモノを増やせなくなります。ダイエットに似ているかもしれません。苦労して運動して減量したから「リバウンドしたくない」と自制できるようになる。私はダイエットはできないんですが(笑)。
痛みを乗り越えてこそ、見える景色があるということですね!
美しく機能的にも優れた5品はこれ!
では、そんなFujinaoさんが厳選した「ずっと使いたい美麗プロダクト」を教えてください。
次の5品になりますが、厳選したポイントは、ずっと置いておきたいと思うデザインに加えて、”モノを増やさない”ために多機能だったり、長く使えたりすること。皆さんが知っている定番商品もあると思いますが、やはり人気があるモノはそれだけに理由があるんです。
機能性が高く、心を豊かにしてくれる電気ケトル
BALMUDA The Pot/BALMUDA
電気ケトルはいろいろな種類が販売されています。この製品はケトルのなかではちょっとお高めですが、見た目が美しくインテリアのアクセントになり、日々使っていて手にもなじむのでとても気に入っています。注ぎ口が細いのでコーヒーを入れる時にも便利。機能性も申し分なく、かつ心も豊かにしてくれるので気に入っています。
大定番の1台数役で、収納性の高さもポイント
取っ手のとれるフライパン インジニオ/T-fal
見た目も美しいのですが機能的にも優れています。特に深さがあるフライパンはお鍋としても使えますし、オーブンにそのまま入れることができるのでグラタン皿としても使える。1台何役にもなるので重宝しています。取っ手がとれるので収納性能もとてもいい。モノを減らすにあたって多機能であることは意識していますね。
“壊れない”がポイントな洗濯物干し
ステンレスハンガーDL 28ピンチ/大木製作所
プラスチック製は経年劣化しやすく1つ2つとピンチが欠けていってしまいますが、これはステンレス製なので耐久性があり、もう7〜8年使っていますが1つもピンチが欠けることなく使えています。ピンチを下げる鎖が両吊りになっているので、ピンチどうしが絡んでイライラすることもありません。毎日気持ちよく洗濯物を干せます。
配線ナシで省スペース。部屋に馴染む秀逸デザイン
マルチコネクトコンポ 1BOXタイプ『CMT-X5CD』/Sony
スピーカー一体型なので配線不要。移動しやすく、引っ越しが多い方にもおすすめ。CDやラジオが聴けるほか、Bluetoothにも対応しているのでスマホの音楽などを聴くこともできます。いかにも「スピーカー」という形をしてないので部屋のどこに置いてもなじみ、お客様によく「どこから音楽が鳴ってるの?」と驚かれます。
衛生的な自動ポンプ。水回りが高見えする好脇役
センサーポンプソープディスペンサー/シンプルヒューマン
手をかざすだけで出てくる非接触型のポンプ。キッチンではヤシノミ洗剤を入れて食器、手洗い両用にし、洗面所ではハンドソープを入れて使っています。上蓋を外すだけでこぼさず詰め替えしやすい設計ですし、防水型なのでまるごと水洗いができて衛生的。1回充電すると最長約3カ月、頻繁に使う我が家では約1カ月くらい持ちます。
どれも素敵ですね。ずっと使う家電などと消耗品の選び方は同じですか。
家電製品など長く使うモノは、「欲しいな」と思ったら楽天やAmazonなどのショッピングサイトなどでよく比較検討して厳選します。ちょっと高かったとしても、本当にほしいモノに投資するように心がけていますね。一方で、日常使うモノ、たとえば洗濯洗剤やシャンプー、リンスなどは私はそれほどこだわりないので、その時々でお店に行って安くなっている商品を買っています。
わかりました。スッキリした暮らしをめざして、少しずつ片付けを始めたいと思います!
撮影/Studio D-ROOM 小池大輔
この記事の著者
安楽由紀子(あんらく ゆきこ)
ライター。1973年、千葉県生まれ。編集プロダクションを経てフリーに。芸能人、スポーツ選手、企業家へのインタビューを行う。