スマホ決済ってどんなもの?
「スマホ決済」とは、読んで字のごとくスマホで行う決済の総称です。話題のPayPayやLINE Payなど、サービスごとに特色があるほか、支払いの手順も異なります。
支払い時には、スマホをレジに搭載されたリーダーにかざしたり、スマホ画面に表示したQRコードやバーコードを店員に読み取ってもらったりして、決済を行います。作業はほんの数秒で完了するため、小銭をせっせと取り出すよりもお手軽。お財布を忘れた時の保険としても役立ちます。
2つに分けられる決済方法
スマホ決済のタイプは「非接触IC方式」と「QR・バーコード方式」の2つに大別されます。それぞれ説明していきましょう。
(1)非接触IC方式のしくみとメリット
非接触IC方式とは、専用のリーダーにスマホをかざして決済する方法のこと。Suicaなどの交通系ICカードと同じように決済する様子を想像してもらえればOKです。料金の引き落としは、あらかじめ登録したクレジットカードや電子マネー、デビットカードなどから行われます。
代表的なサービスとしては、SuicaやEdy、WAON、nanaco、QUICPay、iDなど。どれも専用のカードで決済するイメージかもしれませんが、スマホ決済にも対応しています。日頃から利用しているサービスをスマホ決済に切り替えることで、かさばりがちなカード類をまとめられるのは非常に便利です。
ちなみに、よく耳にするApple PayやGoogle Payは、決済サービスそのものではなく、クレジットカードや電子マネーなどを登録するアプリのこと。お店ではこれらのアプリを開き、店員さんに「Suicaで」「Edyで」といった利用したい決済サービスの名称を伝えます。「Apple Payで」とお願いしても決済はできないのでご注意を。
(2)QR・バーコード方式のしくみとメリット
QR・バーコード方式は、スマホ画面に決済用のQRコードやバーコードを表示し、それを店頭で読み取ってもらうことで決済する方法です。サービスによっては、印刷物やタブレット端末などに表示されたQRコードやバーコードを、スマホで読み取ることで決済するパターンのものもあります。
PayPayやLINE Payなど、近年登場したサービスの多くはQR・バーコード方式。このタイプの決済の利点は、スマホの機種をほとんど問わずに利用できることです。画面にQRコードやバーコードを表示するだけなので、非接触IC方式に必要な「FeliCa」という国内で主流になっている技術を搭載していないスマホでも使えます。
現在はまだ対応していない店舗も多いですが、ここ数年でユーザー数がぐんぐん伸びていること、さらにお店側もFeliCaの読み取り端末のような高額な設備投資が必要ないことを踏まえると、QR・バーコード方式が普及していくのは間違いなさそうです。
ほかのキャッシュレス決済との違いは?
そんなスマホ決済ですが、ほかのキャッシュレス決済(クレジットカード、デビットカードなど)との違いはどこにあるのでしょうか。結論から言うと、レジで差し出すものがスマホであることを除けば、しくみは大きく変わりません。
しかし、スマホ決済は使い方次第で、ほかのキャッシュレス決済よりおトクになります。
スマホ決済サービスの多くはポイント還元システムがあり、利用した金額の一部がポイントとして貯まっていきます。それ自体はクレジットカードなどにも存在するしくみで、目新しさはありません。しかし、スマホ決済の方法をクレジットカード払いにしておけば、双方のポイント還元を“二重取り”することも可能です。
かといって、すべての支払いをスマホ決済に移行するのは時期尚早でしょう。スマホ決済に対応していない店舗はまだ多いですし、決済手段を大幅に変えると管理できなくなるリスクもあるからです。バッテリー切れなどのアクシデントを考えても、長時間の外出ではクレジットカードのほうが頼りになります。
まずは交通系ICカードをスマホに登録したり、ご近所での買い物だけをスマホ決済に変えてみたりと、段階的にスマホ決済の範囲を広げていくのが無理のない利用法でしょう。また、スマホを肌身離さず持ち歩く人ならスマホ決済をメインにするなど、ご自身の習慣に合わせて使い分けることも大切です。
政府による「キャッシュレス還元」とお得なポイント
スマホ決済とクレジットカード決済による“ポイント還元”に加え、さらに見逃せないのは、2019年の消費増税に伴って2020年6月までの期間、国による「キャッシュレス・ポイント還元事業」が行われていることです。
対象の店舗においてキャッシュレスで支払いをすると、スマホ決済サービスやクレジットカードの事業者とは別に、国から最大5%ものポイント還元を受けられます。
基本的には税込価格の5%が還元されますが、フランチャイズチェーンの店舗やガソリンスタンドの還元率は2%。対象となる店舗は、加盟している中小の小売店や飲食店などで、イオンやユニクロといった大手量販店は含まれません。キャンペーンは経済産業省が主導しており、増税による国民の負担を和らげながら、キャッシュレス決済を推進するのが目的です。
これにより、期間内にスマホ決済を利用すれば、
- スマホ決済サービスによるポイント還元
- クレジットカードによるポイント還元
- 国のキャンペーンによるポイント還元
という最大3種類のポイント還元を同時に受け取ることも可能です。
〈図〉「三重取り」のしくみ
ただし、還元される金額は、事業者ごとに上限が設けられています。たとえば、クレジットカードやデビットカードで国のポイント還元を受ける場合、多くのサービスの上限額は月に1万5000円ほど。また、付与されたポイントは事業者ごとの有効期限も存在するので、すっかり忘れて失効しないように気をつけましょう。
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5つのスマホ決済サービスを比較
ここまでしくみやメリットを紹介してきましたが、どのサービスを選べばいいのでしょうか? ここからは代表的な5つのサービスを比較しながら、自分に合ったサービスの選び方も紹介します。
※本記事の内容は4/20時点の情報です。逐次更新されていますのでご了承下さい。
(1)特典・還元率
特典 | 還元率 | 備考 | |
---|---|---|---|
PayPay | PayPayボーナス | 最大1.5% | PayPay残高またはクレジットカード(Yahoo!カード含む)での支払い |
楽天ペイ(アプリ決済) | 楽天ポイント | 1% | 楽天カードの紐付けで1% |
LINE Pay | LINEポイント | 1〜3% | LINEのメンバーシッププログラムのマイランクによって変動 |
d払い | dポイント | 実店舗:0.5% オンライン:1% | スーパー還元プログラムに登録すると対象サービスの利用状況などにより、さらにポイント還元率がアップ |
メルペイ | メルカリポイント | ×(定期的に還元キャンペーンを開催) | 豊富なクーポンを配布 |
各社ともに様々なキャンペーンを実施しており、タイミングによってはより充実したポイント還元を得られることもあります。なかには国のキャッシュレス還元を含めて6〜10%もの還元率になるケースもあるので、おトクなキャンペーンを狙い撃ちするのも選択肢のひとつです。
(2)機能
QR・バーコード決済 | 非接触IC決済 | オンライン決済 | 個人間送金 | |
---|---|---|---|---|
PayPay | ◯ | × | ◯ | ◯ |
楽天ペイ(アプリ決済) | ◯ | ◯(楽天Edy。おサイフケータイ対応のAndroidのみ) | ◯ | ◯(楽天キャッシュの送付) |
LINE Pay | ◯ | ◯(QUICPay。Android版のみ) | ◯ | ◯ |
d 払い | ◯ | ◯(iD。Android版のみ) | ◯ | ◯ |
メルペイ | ◯ | ◯(iD) | ◯ | × |
どんなに特典が充実していても、限られた機能しか備わっていなければ、利用する機会も減ってしまうもの。オンライン決済によるネット通販や、個人間送金を利用した飲み会での割り勘など、便利に活用するためには機能面も重要です。ご自身の使い方に合わせて、しっかりと機能が揃っているサービスを選びましょう。
(3)支払い元
クレジット | 残高チャージ | デビットカード | その他 | |
---|---|---|---|---|
PayPay | ◯ | PayPay残高 | × | あと払い |
楽天ペイ(アプリ決済) | ◯ | 楽天キャッシュ | ◯ | |
LINE Pay | △(Visa LINE Payクレジットカードのみ可) | LINE Pay | × | |
d払い | ◯ | ウォレット残高 | ◯ | キャリア決済 dポイント充当 |
メルペイ | × | メルカリの売上金、銀行チャージ、セブンATMチャージ | × | メルペイスマート払い |
スマホ決済サービスでは、料金の支払いや引き落としの方法にいくつかのタイプが存在します。たとえば、登録したクレジットカードによる後払い、デビットカードによる銀行口座からの即時払い、残高チャージによる先払いなど。自分にとって管理しやすいタイプを選択してください。
ちなみに、残高チャージをクレジットカード払いで行えば、その際にもクレジットカード事業者からのポイント還元が発生します。ポイント還元の恩恵を最大限に受けたいなら、残高チャージ+クレジットカードの組み合わせを検討してみるのも手です。
スマホ決済アプリの特徴とメリット・デメリット
また、これらの指標だけでなく、サービス独自の機能や特色も存在します。最後に各サービスの特徴とメリット・デメリットも見ていきましょう。
(1)還元率と普及率の高さを誇る「PayPay」
PayPayの特徴といえば、最大1.5%というポイント還元率の高さです。前月の使用頻度によって還元率が変動するようになっており、頻回に使う方の選択肢になるでしょう。また、大盤振る舞いとも言える還元率アップのキャンペーンも数多く開催されています。
加盟店の多さも魅力のひとつで、2020年4月には全国に220万店舗を突破。コンビニや飲食店チェーンはもちろんのこと、最近はスーパーや個人経営店に導入される例も増えてきました。
デメリットとしては、PayPay残高またはYahoo!カード以外での支払いの場合、最大1.5%のポイント還元を受けられないこと。これはYahoo!カードを持っていない人からすると不便な点と言えるでしょう。
(2)楽天ポイントを貯めて使える「楽天ペイ」
楽天カードのユーザーにおすすめしたいのが、楽天ペイです。楽天ペイ(アプリ決済)自体のポイント還元はありませんが、楽天カードに紐付けた場合、クレカ側で1%の還元が行われ、このポイントは楽天ペイで利用することも可能です。
また、楽天ポイントカードや楽天Edyの機能を、楽天ペイのアプリひとつで網羅できるのも見逃せません(楽天Edyはおサイフケータイ対応のAndroid のみ)。一方で、クレカ以外だと楽天銀行、ラクマの売上からしか残高をチャージできない点は、クレカを使わない人にとってハードルになりそうです。
(3)LINEアプリ内でのやり取りが便利な「LINE Pay」
LINE Payで面白いのが、2020年5月スタートのLINEのメンバーシッププログラムです。これは過去6カ月のLINEポイント獲得量に応じて「プラチナ」「ゴールド」「シルバー」「レギュラー」という4つのランクが決定するシステム。ランクに応じて、50社以上の人気加盟店で使えるクーポンが毎月配布されるため、LINE Payやその他のLINEサービスを日常的に使う人には重宝します。
それだけでなく、ランクの高い人ほど新機能「チャージ&ペイ」の還元率も上がります。チャージ&ペイとは、LINE PayとVisa LINE Payクレジットカードを紐づけることで、残高をチャージしなくてもクレカ料金として一括支払いできるサービス。ランクによる還元率アップは最大3%にも上ります。今後もLINEの各種サービスがお得になる特典を拡充していくそうです。
また、LINE PayはLINEアプリ内から利用することが可能なので、LINEをダウンロードしている人ならすぐに始められるほか、飲み会の割り勘などに役立つ個人間送金の機能も非常に使いやすいのもメリットと言えるでしょう。
(4)携帯料金のポイントを買い物に使える「d払い」
ドコモユーザーならやはりおすすめしたいのがd払いです。通信会社の強みであるキャリア決済のほか、通信料の支払いで溜まったポイントをd払いで利用できます。ドコモのAndroidユーザーであれば、iDによる非接触IC方式の決済も可能。なお、ドコモユーザー以外でも利用することはできます。
欠点の少ないサービスですが、dカード以外によるクレジットカード決済や、dポイントでの支払いがポイント還元の対象外になるのはデメリットと言えそうです。
(5)メルカリの売上を実店舗での決済に使える「メルペイ」
フリマアプリのメルカリに実装されたスマホ決済サービス。メルカリで得た売上金を、実店舗やメルカリ内での買い物にそのまま使用することが可能です。残高は銀行口座からもチャージできるほか、事前の銀行チャージなし(チャージレス)で、使った分だけ翌月にまとめて支払うことができる「メルペイスマート払い」など独自のサービスも提供しています。iDとの連携に対応しているのも強みのひとつです。
ポイント還元のしくみが存在しないのはデメリットですが、その分定期的に還元キャンペーンが開催されたり、おトクなクーポンが頻繁に配布されています。メルカリアプリからお手軽に利用できるため、すでにメルカリを使っている人はこれを機にチェックしてみてください。
スマホがお財布代わりになるスマホ決済。ポイント還元やクーポン、キャンペーンなどを使いこなせば、節約や貯金をサポートする心強い味方になります。皆さんもスマホ決済デビューを飾って、その便利さとお手軽さを体感してみてくださいね。
※「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
この記事の著者
佐藤宇紘
1991年3月生まれ。チームラボのグループ企業でメディアコンサルタントを経験後、フリーランスのライター・編集者に転身。雑誌やIT系のウェブ媒体を中心に、取材・構成・執筆を手がける。その他、ブログやオウンドメディアのコンテンツマーケティングの支援なども行っている。
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