はたして、生命保険は必要なものなのでしょうか? この記事では、東京海上日動あんしん生命のライフパートナー・金刺丈晴が、「生命保険はいらない」と考える人がいる理由や、生命保険が不要なケースなど、生命保険にまつわる疑問についてお答えします。
この記事で回答した「保険のプロ」
金刺 丈晴(かねざし たけはる)
東京海上日動あんしん生命保険 エグゼクティブライフパートナー・ロイヤルメンバー。2023年度MDRT(COT)終身会員・生命保険協会認定ファイナンシャルプランナー・相続相談士。「保険を活用した老後資金形成」や「保険のセカンド・オピニオン」を得意とする保険業界歴14年のベテラン。ご相談に乗る時の信条は「本当のお客様本位」。
【Q1】ずばり、生命保険はすべての人に必要?
【A1】結論として、すべての人に生命保険は必要ではありません。たとえば、潤沢な貯蓄のある人なら、“万が一”の事態に直面しても、経済的な危機には陥らないからです。
また、日本は公的な社会保障制度が手厚いのは事実ですし、ライフプランの考え方は人それぞれです。十分な現金を保有していなくとも、こういった面を考慮して、「生命保険はいらない」と判断する人がいてもおかしくないでしょう。必要かどうかを決めるのは、あくまでもご自身です。
しかし、「いらない」と考える人に話を聞いてみると、実際には「いらない」のではなく「いるのかどうかわからない」と思っている場合も少なくありません。
【詳細解説】相当潤沢な貯蓄のある人でない限り、「生命保険はいらない」とはっきり断言できる人は、とても少ないでしょう。なぜなら、自分の未来に何が起こるのかを確実に予測することはできないからです。
たとえば自分が将来、がんのような重い病気や大きなケガをして働けなくなったり、若いうちに死んでしまったりする確率が高いと思っている人は、少ないと思います。むしろ、漠然と「自分はがんにはならないだろう」「若いうちには死なないだろう」と考えている人のほうが多いものです。そういう人が「生命保険はいらない」と考えるのは自然です。
とはいえ、確実に「がんにならない」「若いうちに死なない」という保証はどこにもありません。ですから、「生命保険はいらない」という考えの多くは、掘り下げてみると「生命保険が必要かどうかわからない」という場合が多いのです。
「生命保険はいらない」と判断すること自体は悪いことではないのですが、「なぜ生命保険はいらないと判断するのか」を突き詰めて、考えを深めることが大切です。
【Q2】「生命保険がいらない」と考えられがちな理由(根拠)とは?
【A2】よく聞かれるのは、「大病をしても、公的医療保険で医療費はまかなえる」「万が一の場合でも、遺族年金で遺された家族の保障はまかなうことができる」といった意見です。
そもそも生命保険とは、病気やケガ、死亡などによって発生する経済的な負担を軽減するためのものです。
つまり、経済的な負担を軽減する手段を別で準備でき、「万が一の場合でも、保障が十分と判断できれば、生命保険に加入する必要はありません。
【詳細解説】「生命保険はいらない」と考えられる根拠として、よく挙げられる理由を生命保険の種類別にご紹介します。
【医療保険がいらない理由】公的医療保険・傷病手当金などで十分だから
「国民皆保険制度」を採用している日本では、国民全員が公的医療保険に加入しています。病院で保険証を提示すれば、医療費の自己負担が3割以下で済みますし、1カ月の医療費が一定額を超えた時には「高額療養費制度」を利用し、負担を軽減することもできます2)。
さらに会社員の場合、病気やケガで働けなくなった時には「傷病手当金」によって、給与の2/3程度が保障されます3)。このように、公的医療制度が充実しているため、民間の医療保険への加入は不要と考える人が多いようです。
【死亡保険がいらない理由】遺族年金・死亡退職金があるから
「遺族年金」とは、国民年金または厚生年金保険の被保険者、または被保険者であった人が亡くなられた時に、その人によって生計を維持されていた遺族が受け取れる年金のことです4)。
また、勤めている会社によっては本人の代わりに遺族が退職金を受け取る「死亡退職金」を設けている場合もあります。そのため、死亡保険に入らなくても、遺された家族の生活を保障できると考える人もいます。
なお、遺族年金について詳しく知りたい人は、以下の記事を併せて確認してみてください。
【関連記事】遺族年金とは?受給対象者や受け取れる金額について、詳しくはコチラ
参考資料
【Q3】本当に公的保険制度で十分?生命保険に加入する必要性は?
【A3】公的保険制度による保障で十分かどうかは、ライフプランや貯蓄状況によって異なります。ただし、最低限の保障になることは認識しておく必要があります。
生命保険に加入する最大のメリットは、病気やケガ、死亡といった“万が一”の事態にともない、経済的な負担を“十分に”軽減できるよう、それぞれ設計できることです。
医療保険や死亡保険など、生命保険の種類によって対応できる“万が一”は異なります。シチュエーションごとに、どのような経済的な負担が発生し、どのような保障が受けられるかを確認しておくことが大切です。
【詳細解説】具体的に、医療保険や死亡保険などの生命保険が、それぞれどのように経済的負担を軽減してくれるのかをご紹介します。また、あまり知られていない生命保険の必要性ついても見ていきましょう。
【医療保険・がん保険】病気・ケガで発生する経済負担の保障
確かに日本は公的医療保険が充実していますが、それだけで病気やケガに関わるすべての経済的な負担をまかなえない場合もあります。
治療費について考えてみると、特にがんになった場合には公的医療保険の適用外となる「先進医療」が必要になるケースも少なくありません。
また、病気やケガをしている期間にかかる臨時出費も問題です。通院にかかる交通費や、家事・育児ができない場合の外食費や追加の保育料などが大きくかさむことがあるでしょう。
このように、病気やケガをした際の経済的な負担は、公的医療保険だけで補えない場合も少なくありません。その際に役立つのが、先進医療にかかる費用を軽減する民間の医療保険やがん保険なのです。
【死亡保険】遺された家族の生活保障
たとえば、小さな子どもがいる家庭の場合には、子どもが社会人になるまでの生活費や教育費が必要です。しかし、その前に親が亡くなってしまうと、子どもの人生設計が崩れてしまう可能性があります。
子どもが社会人になるまでの生活費や教育費に相当する貯金があれば問題ありませんが、そうでなければ、貯えに代わる備えとして、死亡時に一定額の保険金を受け取れる死亡保険が役立ちます。
【介護保険】老後の生活保障
いわゆる「2,000万円問題」で明らかにされたように、人生100年時代では、退職金や年金だけでは安定した暮らしが難しい場合もあります。
確かに高齢になれば、税金や医療費の負担も減りますが、一方で自分や配偶者の介護にかかる費用が増加します。介護してくれる人がいない場合は、介護施設に入居する費用も想定しなければなりません。
生命保険の中には、老後に想定される介護への経済的負担を軽減してくれる介護保険もあります。
【番外編:死亡保険】相続税の負担軽減
相続の際、資産が一定額を超えていると相続税を納めなければなりません。たとえば遺された家族のために貯金をしておいたとしても、その貯金額によっては、相続の際に満額にならない可能性があるわけです。
一方で、死亡保険で受け取る死亡保険金は、一定の金額までが非課税になります。具体的には、相続人が保険金を受け取る場合に限り、「500万円 × 法定相続人の人数」が非課税となるのです。そのため、遺された家族のことを考え、相続税対策として死亡保険に加入する人もいるようです。
【Q4】生命保険の必要性が高いのはどんな人?
【A4】たとえば、小さな子どもや高齢の親など扶養する家族がいる人やフリーランスの人、老後に備える十分な貯えがない人などが挙げられます。
また、これらの条件に当てはまらなくても、現在貯蓄が少ない人は、病気やケガをした際に経済的な危機に陥る可能性が高いため、必要性は高いです。
ただし、最終的にはご自身が決めることが大切です。家族と十分に話し合って、必要かどうかを考えましょう。
【詳細解説】生命保険は、主に病気やケガ、死亡時に想定される経済的な負担の軽減に役立つものです。いいかえると、生命保険の必要性が高い人とは、万が一の時に想定される経済的な負担に対し不安を抱いている人といえます。具体的に、必要性が高い人についてご紹介します。
①扶養する家族がいる人
経済的な自立が難しい小さな子どもや高齢の親など、扶養する家族がいる人は、ご自身が亡くなったり働けなくなったりした場合の経済的な負担に備える必要があります。
子持ちの人ならば、共働きでも備えは必要ですが、特にシングルマザーやシングルファザー、専業主婦(主夫)家庭では経済的なリスクが大きいため、生命保険の加入を検討するといいでしょう。
なお、シングルマザーや専業主婦(主夫)など、その人の立場ごとに生命保険の必要性を考えたい場合は、以下の記事を併せて確認することをおすすめします。
【関連記事】シングルマザーは生命保険がいらない? 詳しくはコチラ
【関連記事】専業主婦(主夫)は生命保険がいらない? 詳しくはコチラ
②フリーランス(個人事業主)の人
会社員が加入できる健康保険(社保)や厚生年金に比べ、フリーランスが加入できる国民健康保険や国民年金は、保障の範囲が狭く保障額も少なくなっています。
そのため、会社員以上に万が一の際の経済的なリスクに備えておく必要があります。働けなくなった際に備える十分な貯えがない場合は、生命保険の加入を検討しておいたほうがいいでしょう。
③老後資金に不安がある人
高齢になって働けなくなった時、年金が主な収入となりますが、年金だけで暮らせる人は残念ながら少数でしょう。老後の暮らしを支えるための十分な貯えを準備する自信がない人は、不足分を補うために役立つ生命保険の加入を検討すべきかもしれません。
④経済的リスクに備える貯蓄がない人
①~③に当てはまる人以外でも、貯蓄が少ない人は貯蓄に代わる備えとして、生命保険の加入を検討すべきといえるでしょう。
なお、独身の人が生命保険の必要性を考えたい場合は、以下の記事を併せて確認してみてください。
【Q5】生命保険の必要性が低いのはどんな人?
【A5】潤沢な貯蓄がある人は、生命保険に加入する必要はありません。また、扶養すべき家族がいない独身の人や共働きの人も、ライフプランによっては死亡保険の必要性が低い場合もあります。
【詳細解説】繰り返しになりますが、医療保険や死亡保険を含む生命保険とは、病気やケガ、そして死亡時に想定される経済的な負担に備えるものです。つまり、万が一の際の経済的な負担に対応できる十分な貯えがあれば、生命保険に加入する必要はありません。
また、十分な貯えがない場合でも、生命保険の種類によっては必要性が低いと考えられるものもあります。
たとえば、扶養すべき家族がいない独身の場合、自分の葬儀代程度の貯えがあれば、生命保険に加入する必要はないでしょう。
また、子どもがいない共働きの夫婦で、互いに十分な収入を一定期間得られる見通しが立っているなら、配偶者のために死亡保険に加入する必要はないという考え方もあるでしょう。
【Q6】最低限入っておくべき生命保険はある?
【A6】万人向けの「最低限入っておくべき生命保険」というものはありません。なぜなら、その人のライフプランによって生命保険の必要性は異なるからです。
ただし、万が一の事態が起こった場合に対処しにくく、多くの人が加入したほうがいい保険の代表例はいくつかあります。
【詳細解説】生命保険が必要かどうかは、その人のライフプランや価値観に応じて異なります。しかし、“万が一”の中には突発的にまとまったお金が必要になってしまったり、長期的な金銭的不安が発生したりするケースもあり、よほどの潤沢な貯蓄がなければ、対処できないことも起こり得ます。そのため、多くの人におすすめする機会がある生命保険の種類を、理由と併せてご紹介します。
①がん保険
がんになった場合には、公的医療保険の適用範囲外となる先進医療を受けることになる可能性が少なくありません。また、治療費や入院費以外の生活費もかさみますし、病気の間は収入も途絶える場合が多いでしょう。
このように病気の中でも、がんは公的医療保険や社会保障制度だけではカバーできない経済的な負担をともなうことが多いのです。そのため、がん保険は多くの方におすすめします。
②就業不能保険
病気やケガもしくは死亡、重度の障がいなどによって、家族を経済的に支えるための収入が減る、または途絶えてしまう可能性は、誰にでもあります。
たとえば、子どもが社会人になるまでに必要なお金に対して不安を感じる人も多いものです。そういった場合、就業不能保険への加入を提案することもあります。
③介護保険
老後の暮らしを支える貯えがない人や、頼れる家族がいない人に対しては、老後の生活を保障するような保険をおすすめする場合があります。代表的なものとしては、介護に必要な費用の不足分を補う介護保険があります。
④変額保険
生命保険の必要性を感じる人の中には、十分な貯えがない人が多くいます。そのため、まずは貯金を優先させることをおすすめしていますが、場合によっては投資と保障の両方の役割を果たす変額保険をおすすめすることもあります。目減りする可能性があるものの、長期であれば預金よりも大きなリターンが得られる可能性も高いからです。
変額保険は死亡保険の機能も併せ持つため、遺された家族のことを考えた場合にも有効な選択肢のひとつといえるでしょう。
【Q7】自分に生命保険が必要かどうか、どうやって判断すればいい?
【A7】生命保険は「将来の安心を買うもの」ではなく、「将来の経済的な負担を軽減するもの」です。そのため、家計状況を具体的な数字に起こして考えることをおすすめします。
まずは「現在の生活を維持するために必要なお金」と「万が一の時に必要なお金・対策」を把握しましょう。そうすると、自然と自分には必要なのかどうかを判断できるようになります。
ただし、どこまで保険を手厚くするかは、価値観やライフプランが大きく関わるため、家族と十分に話し合いましょう。
【詳細解説】生命保険が必要かどうかを判断するのは、ご自身です。とはいえ「どうやって必要かどうかの判断をすればいいの?」と感じる人も多いでしょう。じつは、判断の方法はとてもシンプルです。以下に、判断する方法を2ステップでまとめたので、ぜひ試してみてください。
STEP①生活に必要な収入を計算する
まず、生活を営むために必要な1年間の収入を考えます。たとえば、お子さんがひとりと、専業主婦の奥様がいる3人家族を例に考えてみましょう。
この家族が、生活を営むために毎月40万円必要だとすると、年間で480万円は必要です。つまり、少なくとも480万円の年収がなければ、この家族の1年間の生活は維持できないわけです。
さらに、子どもを大学まで進学させるための教育費など、ライフプランに応じて必要な金額をプラスして計算してみましょう。
STEP②収入が減る、または途絶えた場合の対策を考える
1年間、健康に働き続けることができれば問題ありませんが、残念ながらその保証は、どこにもありません。そこで、考えておきたいのが、収入が減ったり途絶えたりした場合の対策です。
仮に、大きな病気やケガで1年間働けなくなったとしましょう。会社勤めなら、傷病手当金が支給されますが、金額の目安は最大で給与の2/3程度なので、年間に320万円受け取ることができます。480万円から差し引きすると、160万円の不足となります。
もし、160万円の貯金があれば生活を1年間維持することは可能です。しかし、そうでない場合は、貯金に代わる保障を考えなければなりません。年間で160万円ですから、1カ月約13万円の不足分を補うための手段を検討する必要があるわけです。
もちろん、生活費とは別に子どもの教育費や、老後の資金準備など、ライフプランによっては、より多くのお金が必要になります。ですから働けなくなった場合に想定される不足分も、ライフプラン次第で増加するわけです。
専業主婦(主夫)の人が働きに出る、返済できる当てがある場合には不足分を借金するなど、不足分を補うための手段はいくつも考えられますが、限界を感じる金額的なボーダーラインがあるはずです。その際には、生命保険への加入を検討するといいでしょう。
【Q8】これから生命保険を検討する人にアドバイスは?
【A8】「生命保険が必要かどうかを判断するのはその方自身」です。
「生命保険はいらない」と決めつけず、万が一の事態が起こった時どうなるかを、まずはイメージしてみましょう。そして、具体的な数字に落とし込み、冷静にシミュレーションすることが大切です。
ただし、それぞれの人が描くライフプランによって、人生に必要な金額は異なります。また、万が一の事態に対するシミュレーションや、現在使える制度の知識を集めるのは難しいかもしれません。
そんな時は、我々のような「お金のプロ」にご相談ください。もちろん、「最終的に生命保険には入らない」という選択をされても問題ありません。シミュレーションや制度などの情報提供によって、「生命保険が必要かどうか」から一緒に考えていきましょう。
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