2024年からスタートした新NISAは長期資産運用に向いているといわれる制度です。これから老後資金を貯めようという人にはぴったりの制度でしょう。しかし「20代だとまだ早い?」「40代だともう遅い?」と悩む人もいるのではないでしょうか。

この記事では、ファイナンシャルプランナー・佐々木裕平さんの監修のもと、年代別のシミュレーションを紹介しながら、何歳から始めるといいのかを解説します。

※:この記事では便宜上、2023年までのNISAを「旧NISA」、2024年からの新制度を「新NISA」と呼びます。
シミュレーションの結果は、将来の運用成果を予測したものであり、保証するものではありません。

この記事の監修者

佐々木裕平(ささき ゆうへい)

ファイナンシャルプランナー。金融教育研究所代表。著書に『お金と僕らの物語』(GAKKEN)、『FPの先生!小学生の私でもわかるように、お金の増やし方教えてえや』(文響社)、『学校では教えない! お金を増やす授業」(ぱる出版)など多数。1級FP技能士。中立・公正な立場からの金融教育を行う。

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新NISAは18歳以上から始められる

画像: 画像:iStock.com/artplus

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新NISAの口座を開設できるのは、「日本に居住する18歳以上の人」です1)日本に居住していて18歳以上であれば、誰でも新NISAを始めることができます。なお、新NISAでは満年齢ではなく、「その年の1月1日時点での年齢」が基準となります。つまり、2024年1月2日が誕生日で18歳になった人は2025年1月1日から口座を開設することが可能です。

なお、2023年までは日本に居住していれば、0歳から口座の開設ができる「ジュニアNISA」がありましたが、これは現在、廃止されています。ただし、2024年以前に口座を開設している人は買付や新NISAへの移管はできないものの、18歳になるまで非課税で運用したり、非課税で引き出したりすることは可能です1)

新NISAの口座開設方法などについてもっと知りたい人は、以下の記事で詳しく解説しているので、併せてご覧ください。

【関連記事】新NISAをやらないほうがいい? 見落としがちなデメリットと対策を解説

新NISAには投資枠が2種類ある

画像: 画像:iStock.com/VladGans

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新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があります1)。旧NISAのつみたてNISAを引き継ぐのがつみたて投資枠、一般NISAを引き継ぐのが成長投資枠です。

〈表〉新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠

つみたて投資枠成長投資枠
年間投資枠120万円240万円
非課税保有期間無期限
非課税保有限度額1,800万円(成長投資枠単体では1,200万円まで)
口座開設期間恒久化
投資対象商品金融庁の基準を満たした投資信託金融庁の基準を満たした投資信託、
国内外の上場株式やREIT(不動産投資信託)
対象年齢18歳以上
※:年間投資枠と非課税保有限度額は金融商品の取得金額(簿価)をもとに計算する。

つみたて投資枠と成長投資枠では、年間投資枠と非課税保有限度額、投資対象商品が異なります。

それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。

違い①年間投資枠

上限額は、つみたて投資枠が120万円までなのに対し、成長投資枠は240万円までです。

なお、つみたて投資枠で保有する投資信託の分配金が再投資されるように設定し、上限額をオーバーした場合、金融機関によりますが、成長投資枠、課税口座(特定・一般口座)の優先順位で再投資されるのが一般的です。分配金の再投資について知りたい人は、以下の記事で詳しく開設しているので併せてご覧ください。

【関連記事】新NISAのつみたて投資枠の分配金について詳しくはコチラ

違い②非課税保有限度額

新NISAでは、生涯を通じて適用される非課税保有限度額が新たに設けられました。総額1,800万円ですが、どちらか一方だけを運用した場合、つみたて投資枠は1,800万円まで利用できるのに対し、成長投資枠では1,200万円が上限になります。

違い③投資対象商品

つみたて投資枠で運用できるのは、投資対象商品が長期・積立・分散投資に適しているとして金融庁の基準を満たした公募株式投資信託と一部のETF(上場投資信託)に限定されています。一方、成長投資枠では1,200万円を超えない範囲であれば、目的に合わせて対象外の金融商品も購入・運用することができます。つみたて投資枠で指定外の投資信託に加え、上場株式やETFなどが該当します。

どちらの枠をいかに活用するかは運用資金額によって異なる

運用資金に余裕があるのであれば、長く複利効果を得るために、非課税保有限度額を早めに使い切るのがおすすめです。まずは年間投資枠が大きい成長投資枠を優先し、最短の5年間で1,200万円の非課税保有限度額を使い切りましょう。その上で、つみたて投資枠で非課税保有限度額の残額を消化します。もちろん両方の枠を満額満たし、最短5年間で1,800万円の枠を使い切ることも可能です。

運用資金に余裕がなかったり、投資の知識が少ない初心者であったりする場合には、つみたて投資枠にコツコツ投資しながら、投資信託の「再投資型」を選ぶのも一手です。金融機関にもよりますが、一般的には分配金でつみたて投資枠の年間上限額を超えた場合、成長投資枠での再投資ができるので、複利効果を期待することができるでしょう。

【年代別】新NISAの積立額をシミュレーション

画像: 画像:iStock.com/kokouu

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18歳から始めることができる新NISAですが、運用益の推移を見ると、計算上は積み立て投資を早くから始めるほど、より大きな複利効果が得られます。

〈表〉18歳から月額1万円・年利3%で60歳まで運用した場合

年齢積立期間積立総額運用益
25歳7年93万3,419円9万3,419円
30歳12年173万743円29万743円
40歳22年373万2,798円109万2,798円
50歳32年643万4,278円259万4,278円
60歳42年1,007万9,530円503万9,530円
※:複利を想定。税金・手数料は考慮しないものとする。

このように、「何歳から始めたらいいか」については計算上、早く始めることに越したことはありません。つぎに、目標額と目的別に見てみましょう。

仮に老後資金を貯めることを目的とした場合はどうでしょう。「家計調査報告書」などをもとにした試算によると、老後資金は独身で1,786万円、夫婦2人で2,722万円が必要といわれています。

〈表〉高齢者世帯の老後資金2)3)4)

【夫婦(高齢夫婦無職世帯)の老後資金】(※)
・生活費(夫婦2人):約1,364万円
・介護費(夫婦2人):約1,162万円
・葬儀費(夫婦2人):約196万円
合計:約2,722万円

【独身(高齢単身無職世帯)】(※)
・生活費:約1,107万円
・介護費:約581万円
・葬儀費:約98万円
合計:約1,786万円

※:65~95歳の「老後」30年間を暮らすために必要と考えられる、年金収入以外の資金を試算。持ち家で住宅ローンの返済が完了後の場合。

以下では、老後の資金づくりを目的とした場合の年齢別シミュレーションを紹介します。

なお、老後の生活費についてもっと知りたい人は以下の記事で詳しく紹介しているので、併せてご覧ください。

【関連記事】老後資金、いくら必要?独身の男女の生活費や貯めるべき金額を紹介

18歳から始めた場合

18歳から新NISAだけで60歳までの42年間で老後資金を用意するには、毎月いくら積み立てればいいでしょう。

〈表〉18歳から年利3%で60歳まで運用した場合

掛金額(月額)5,000円1万円1万5,000円2万円2万5,000円3万円
最終積立金額503万9,765円1,007万9,530円1,511万9,295円2,015万9,060円2,519万8,825円3,023万8,590円
投資元本252万円504万円756万円1,008万円1,260万円1,512万円
※:複利を想定。税金・手数料は考慮しないものとする。

上表を見ると、新NISAだけで老後資金1,800万円を用意するには18歳から月額2万円程度の積立が必要だとわかります。また、夫婦2人の老後資金2,700万円を夫か妻どちらか一方が用意する場合、月額3万円程度の積立が必要です。

ただし、18歳という年齢を考えると、毎月1〜3万円を積み立てるのは難しいかもしれません。まずは月額5,000円から新NISAを始め、就職して収入が増えたタイミングで掛金額を上げるのが現実的といえるでしょう。

25歳から始めた場合

25歳から新NISAだけで60歳までの35年間で老後資金を用意しようとすると、18歳から始める以上の金額を積み立てる必要があります。

〈表〉25歳から年利3%で60歳まで運用した場合

掛金額(月額)2万円2万5,000円3万円4万円
最終積立金額1,483万1,273円1,853万9,091円2,224万6,910円2,966万2,546円
投資元本840万円1,050万円1,260万円1,680万円
※:複利を想定。税金・手数料は考慮しないものとする。

25歳から35年間で1,800万円に到達するには月額2万5,000円程度の積立が必要だとわかります。また、夫婦2人の老後資金を夫か妻どちらか一方が用意する場合、2,700万円に到達するには月額4万円程度の積立が必要です。

30歳から始めた場合

30歳から新NISAだけで60歳までの30年間で老後資金を用意する場合、毎月の掛金額はいくら必要でしょうか。

〈表〉30歳から年利3%で60歳まで運用した場合

掛金額(月額)2万5,000円3万円4万円5万円
最終積立金額1,456万8,422円1,748万2,107円2,330万9,475円2,913万6,844円
投資元本900万円1,080万円1,440万円1,800万円
※:複利を想定。税金・手数料は考慮しないものとする。

30歳から30年間で1,800万円に到達するには月額3万円程度の積立が必要だとわかります。また、夫婦2人の老後資金2,700万円を夫か妻どちらか一方が用意する場合、月額5万円程度の積立が必要です。

40歳から始めた場合

40歳から新NISAだけで60歳までの20年間で老後資金を用意しようとすると、毎月の掛金額はいくら必要でしょうか。

〈表〉40歳から年利3%で60歳まで運用した場合

掛金額(月額)5万5,000円6万円7万円7万5,000円
最終積立金額1,805万6,610円1,969万8,120円2,298万1,140円2,462万2,650円
投資元本1,320万円1,440万円1,680万円1,800万円
※:複利を想定。税金・手数料は考慮しないものとする。

40歳からの20年間で1,800万円に到達するには月額5万5,000円程度の積立が必要だとわかります。なお、運用期間が20年間の場合、月額7万5,000円では夫婦の老後資金2,700万円に不足するものの、非課税保有限度額の1,800万円に到達してしまいます。そのため、それ以上の資金づくりは、夫婦それぞれで新NISAを運用するか、新NISA以外の手段を使う必要があります。

50歳から始めた場合

50歳から新NISAだけで60歳までの10年間で老後資金を用意しようとすると、毎月の掛金額はいくら必要でしょうか。

〈表〉50歳から年利3%で60歳まで運用した場合

掛金額(月額)12万円13万円14万円15万円
最終積立金額1,676万8,970円1,816万6,384円1,956万3,799円2,096万1,213円
投資元本1,440万円1,560万円1,680万円1,800万円
※:複利を想定。税金・手数料は考慮しないものとする。

50歳からの10年間で1,800万円に到達するには月額13万円程度の積立が必要だとわかります。運用期間が10年間の場合、月額15万円で非課税保有限度額の1,800万円に到達してしまいます。やはりそれ以上の資金づくりは、夫婦それぞれで新NISAを運用するか、新NISA以外の手段を使う必要があります。

40代から夫婦2人分の老後資金を用意するには新NISAだけでは不足

これまでの試算で、40代以上で新NISAでの資産形成を行う場合、60歳までの期間では独身の老後資金は問題ないものの、夫婦2人分の金額を用意するのは難しいということがわかりました。税制優遇を受けながら、夫婦2人分の老後資金づくりをしたい場合は、夫婦それぞれで新NISAを始めるのが賢明でしょう。

または、新NISAの資産を引き出す時期を60歳よりあとにすることでより大きな複利効果を得るか、残りの老後資金はiDeCoを併用して用意するというのもひとつの方法です。

iDeCoと新NISAを併用する場合の運用方法や複利効果を効果的に得る方法について知りたい人は、以下の記事で詳しく紹介しているので、併せてご覧ください。

【関連記事】新NISAとiDeCoはどっちがいい? 年代別に解説【20歳、30歳、40歳、50歳】

【関連記事】ほったらかしでOK! 新NISAの非課税枠1,800万円を使い切る場合の運用益は?

新NISAの年齢制限に関するよくある質問

画像: 画像:iStock.com/metamorworks

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Q1.新NISAは子どもでも始められる?

前述のように、新NISAの口座を開設できるのは、「日本に居住する18歳以上の人」です。そのため、18歳以下の子どもは新NISAを運用することはできません

Q2.新NISAは18歳未満でも口座開設できる?

新NISAの口座を開設できるのは18歳以上なので、18歳未満の人は新NISAを始めることはできません

Q3.新NISAは高校生でも始められる?

18歳の誕生日を迎えた翌年の1月1日以降であれば、高校生でも新NISAを始めることは可能です。つまり4月1日〜1月1日の間に誕生日を迎える高校3年生であれば、高校生の間に新NISAを始めることが可能です。

Q4.ジュニアNISAの代わりとなる制度はある?

前述のように、ジュニアNISAは2023年で終了しました。18歳未満でも未成年口座を開設し、投資を運用することはできます。ただし、ジュニアNISAのように、税制優遇は受けられません。

新NISAを始める年齢は早いほどいい

画像: 画像:iStock.com/akasuu

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複利効果を考えると、早い年齢から新NISAを始めたほうがより少ない掛金額で効率よく恩恵を受けることが可能です。ただし、新NISAの非課税保有限度額は1,800万円で、それ以上は課税口座での投資運用になります。税制優遇を受けながらの長期的な資産形成をしたいと考えるのであれば、iDeCoを併用するのがおすすめです。

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