【INDEX】
(1)商品(投資対象)の種類
(2)運用方法の種類
(3)購入窓口の種類
【メリット1】100円、1000円と少額から始められる
【メリット2】「長期積立投資」に向いている
【メリット3】「分散投資」が自動的にでき、リスク軽減につながる
【メリット4】運用の専門家が投資してくれる
【メリット5】インフレに強い
【デメリット1】運用コストや手数料がかかる
【デメリット2】株のようにタイムリーな売買が不可能
【デメリット3】商品数が多く「玉石混淆」。選ぶのが大変
【デメリット4】購入額を下回る(元本割れする)可能性がある
【理由1】つみたてNISA・iDeCoを活用すれば、「長期積立分散投資」と「非課税」を組み合わせられる
【理由2】「長期」「積立」「分散」投資を少額で実践できる
この記事の監修者
頼藤 太希(よりふじ たいき)
Money&You代表取締役/マネーコンサルタント。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。女性向けWebメディア『FP Cafe』や『Mocha(モカ)』を運営すると同時に、マネーコンサルタントとして、資産運用・税金・Fintech・キャッシュレスなどに関する執筆・監修、書籍、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力している。『1日5分で、お金持ち』(クロスメディア・パブリッシング)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂)など著書多数。日本証券アナリスト協会検定会員、ファイナンシャルプランナー(AFP)、日本アクチュアリー会研究会員。
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投資信託っていったいどんなもの?
投資信託とは、私たち(投資家)から集めた資金をまとめて、資産運用の専門家が代わりに運用する投資手法です。つまり、自分で運用する必要はありません。運用で得た利益は、資金を提供した投資家へと還元されます。
投資の代表である「株式投資」の場合、1つの企業の銘柄を購入すると1社に投資することになりますが、投資信託の商品は、1つの商品の中に国内外の株式や債券など、様々な投資先が含まれています。
その投資先は専門家が選定しており、投資信託の多くが50〜300の投資先を組み入れています。そのため、投資信託を1本購入するだけで、値動きを抑える「分散投資」(詳しくは後述)が可能となります。
どのように投資・運用するかは、商品ごとに用意された「目論見書」という文書で説明されており、事前に確認することが可能です。そこに書かれた運用方針や投資先を見ながら、投資家はどの商品を購入するか(投資の資金を提供するか)を考えていきます。
なお、投資信託は金融機関によっては100円といった少額で投資がスタートできるのも魅力です。
商品や運用方法など、投資信託の種類は様々
投資信託は国内に6,000本以上の商品があり、いろいろな種類・タイプに分けることができます。以下に、大まかな分類をまとめました。
(1)商品(投資対象)の種類
投資信託は、国内外の株式や債券、不動産、金、仮想通貨(暗号資産)など、様々なものが投資対象になります。何に投資をするかは商品ごとで異なり、株式と債券など、複数の投資対象を組み合わせた商品もあります。
〈図〉投資信託の主な投資対象資産と商品カテゴリー
(2)運用方法の種類
運用方法は大きく2つのタイプがあります。インデックス型とアクティブ型です。
① インデックス型
市況(市場の状況)を表す「指数」に連動するよう運用されるものです。代表的な指数として、日本なら「日経平均株価」や「TOPIX」、アメリカでは「S&P500」や「ダウ平均株価」などが挙げられます。原則的には、その指数に連動して投資信託の基準価額(株価と同様の意味)も上下します。
これらの指数を対象とする商品の場合、市場の「平均」を示す指数と連動するため、リスクやリターンも平均的になることが多いと言えます。運用コストは、アクティブ型より低いのが一般的です。
② アクティブ型
インデックス型以外の運用方法はアクティブ型と呼ばれます。指数を上回る運用を目指す商品や、ベンチマークを定めず毎年の目標利益を定めて運用する商品など、様々なタイプがあります。インデックス型に比べて、商品ごと独自の運用を行うため、リスク・リターンの幅も大きいと言えます。また、運用には専門家の理論や戦略が用いられ、人的な手間・コストがかかります。その分、コストは一般的にインデックス型より高くなります。
〈図〉インデックス型とアクティブ型の特徴の違い
(3)購入窓口の種類
投資信託を販売している機関として、①銀行、②証券会社、自ら運用している投資信託を直接販売する③運用会社などが挙げられます。
購入方法は店舗型とネット型があり、販売機関ごとに異なります。一般的に、ネット型は店舗型に比べ手数料が安く、取り扱う商品も多いと言えます。
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投資信託のメリット・デメリットとは
投資信託のメリット・デメリットにはどんなものがあるのでしょうか。投資信託以外の資産運用や投資と比較してみます。
【メリット1】100円、1000円と少額から始められる
投資信託は、他の投資商品に比べて少額で始められるのがメリットです。たとえば株式投資の場合、1株500円の銘柄でも、最低100株以上の購入が必要になるケースが一般的です。しかし、投資信託なら同じ銘柄が含まれた商品をより少額で買うこともできるのです。
投資信託は、金融機関によっては100円と少額から購入できますので、まとまったお金の準備がいりません。初心者でも手軽に、少ない金額から始められると言えます。
【メリット2】「長期積立投資」に向いている
投資信託は、資産運用の基本と言われる「長期積立投資」を手軽に実践できます。
もし特定企業の株式を買って長期積立投資をするには、その都度自分で購入しなければなりません(一部の証券会社では株の積み立てができるサービスはあります)。しかし投資信託は、どの金融機関でも自動で積み立てが行えるようになっているため、その手間がありません。
「長期積立投資」がなぜ資産運用の基本かというと、長期間、定期的に定額の投資を行うことにより安定した利益につながるためです。
投資の相場はつねに上下しており、その動きをすべて読むのは難しいものがあります。
そこで、投資の世界では、毎日・毎月などの“定期的に”同じ商品を定額購入する手法が推奨されています(=ドルコスト平均法)。つねに同じ金額分購入するので、値下がりした時には、その分、購入口数が増えます。また、相場が落ちた時に買うと、全体の平均購入額が下がり、その後、値上がりした際に利益が出やすくなります。
さらに、長期投資は複利効果を活かせます。複利効果とは、利息(分配金を含む運用益)が次の利息(分配金を含む運用益)を生み出していく効果のことです。投資期間が長くなるほど、複利効果も大きくなりますので、お金が増えるスピードが増していき、より利益を生むことができます。
【メリット3】「分散投資」が自動的にでき、リスク軽減につながる
資産運用におけるもうひとつの基本が「分散投資」です。値動きの異なる資産に投資することで、リスク(値動き)を抑える投資手法です。
たとえば、株式と債券は一般的に“逆の動き”をします(株式相場が値上がり傾向だと、債券相場は値下がり傾向になる)。両方の資産を買うことで、片方の値下がりをもう片方が相殺し、全体としてのリスクを下げる効果があります。
値動きの異なる資産を増やすほど分散効果は高まりますが、個人でたくさんの投資先にお金を投じるのは、経済的にも時間的にも簡単ではありません。一方、投資信託は多数の人から集めた大きな資金を使います。1商品でおおむね50〜300の投資先に分散投資でき、リスク軽減につながります。
【メリット4】運用の専門家が投資してくれる
投資信託は、「ファンドマネージャー」と呼ばれるプロの投資家が代わりに運用してくれます。市況を見ながら投資対象や運用方法の見直しも行ってくれるため、運用中の手間がほとんどかかりません。一度購入の手続きをしたら、ほったらかしできるのもメリットです。
【メリット5】インフレに強い
預貯金と比べて、インフレに強い※のが投資信託です。特に株式に多く投資する商品は顕著でしょう。インフレで物価が上昇すると、企業収益が増えますので、それによりその企業の株価が上がるからです。当然、株式を組み込んだ投資信託も値上がりします。さらに、一つの企業ではなく、複数の企業に投資できる投資信託だからこそ、市場全体の物価が上昇するインフレに強いと言えます。
不動産もインフレに強いとされており、投資先に不動産が組み込まれた投資信託もインフレ時のメリットが見込めます。
※「ベア型ファンド」など、インフレに逆連動する投資信託もあるため、すべての商品に当てはまるわけではありません。
【デメリット1】運用コストや手数料がかかる
運用を代わりに行ってもらう分、投資信託はコストがかかります。主なコストは3つに分けられます。
〈表〉投資信託にかかるコスト
購入時 | 購入(販売)手数料がかかる。おおむね購入額の0〜3%。ネット型の窓口は、手数料が無料のケースも多い。 |
---|---|
保有中 | 投資信託を保有している間は「信託報酬」がかる。おおむね投資額の0.1〜2%。 |
解約時 | 投資信託の解約時には「信託財産留保額」が徴収される。最大0.3%で、この費用はかからない商品が多くなってきている。 |
【デメリット2】株のようにタイムリーな売買が不可能
株式は、市場が開いている間ならリアルタイムで株価が変動し、その株価を見ながら購入することができます。一方、投資信託の基準価額は、1日1回、多くは取引市場終了後の夜に発表されます。そのため、購入時は前日の基準価額を見て判断することが多くなります。売買した瞬間の基準価額は、当日の夜に発表される基準価額となりますので、その時点ではわかりません。
ただし、ETF(上場投資信託)と呼ばれる商品は、株式と同じくリアルタイムで市場価格が変動し、売買もそれに基づいて行えます。
【デメリット3】商品数が多く「玉石混淆」。選ぶのが大変
個人が買える投資信託は6,000本を超えています。運用成績が悪い商品、コストが相場より高い商品もあり、玉石混淆と言えます。特にアクティブ型は、インデックス型と比べコストが高いのが一般的です。運用成績がマイナスでもコストは発生するので、よく吟味する必要があるでしょう。
【デメリット4】購入額を下回る(元本割れする)可能性がある
投資信託は、運用次第で資金がマイナスになる(元本割れする)可能性もあります。投資信託1本で分散投資が実行できるとはいえ、元本が保証されている商品ではないので、損する場合もあることを認識しておきましょう。
【合わせて読みたい記事】
FPが資産運用初心者に投資信託をすすめる最大の理由
投資信託の仕組みやメリット・デメリットを踏まえた上で、なぜ資産運用初心者に投資信託がオススメなのかを解説します。
【理由①】つみたてNISA・iDeCoを活用すれば、「長期積立分散投資」と「非課税」を組み合わせられる
最大のおすすめポイントは、「長期積立分散投資」が実行しやすい投資信託と税制優遇を受けられるつみたてNISAとiDeCoを組みあわせることできる点です。
〈表〉つみたてNISAとiDeCoの概要
つみたてNISA | 国の基準を満たした投資信託で積立投資を行い、最長20年、毎年40万円までの投資額について、その運用益が非課税になる。 |
---|---|
iDeCo | 私的年金制度で、自分で運用商品を選び運用する。その際、掛け金は全額所得控除となり、運用益も非課税となる。資産を受け取るときも税負担を軽くする制度がある。 |
投資で利益が出た場合、通常は20.315%の税金がかかります。利益のおよそ5分の1に当たりますから、2つの非課税制度を支える投資信託は大きなメリットになります。
この税金があるかないかの影響は、長期になればなるほど大きくなります。
つみたてNISAは、国が定めた基準をクリアした投資信託が対象となります。iDeCoは、このような基準はなく、各金融機関により対象商品が異なります。
▼iDeCoの詳しい仕組みやメリットについてはコチラ
【理由②】「長期」「積立」「分散」投資を少額で実践できる
投資の基本である「長期」「積立」「分散」という3つを少額で行えます。投資信託の商品の多くが、国内外の株式、債券、不動産などに幅広く投資しています。個人で世界経済全体に分散投資をするのは簡単ではありませんが、投資信託なら100円から少額で可能です。世界経済は年3〜4%の成長率で推移しており、今後の成長も期待されています。値動きの異なる資産を組み合わせれば、ひとつの国・企業の浮き沈みはカバーされます。
また、少額かつ運用中は手間がかからないので、長期運用のハードルも高くありません。これらも投資信託をオススメする理由です。
初心者が投資信託を始めるなら、いくらからが良い?
いざ投資信託を始めようと思った時、どのくらいの金額から投資するのが良いのでしょうか。適切な金額の導き方を考えます。
まず、投資には使わない「生活防衛資金」を確保する
投資信託に使う金額を決める前に、まずは投資で使わない最低貯蓄を確保しましょう。いざという時の「生活防衛資金」を作るためです。目安は生活費の6〜12カ月分です。
iDeCoの場合は60歳以降まで引き出しできませんが、それ以外ではいつでも引き出すことができるので、いざという時やライフイベント資金のために売却することもできます。
しかし、短い期間で売却すると長期積立の効果が出ません。特に、基準価額が下落した際にリスクを恐れて売ってしまうケースがありますが、下落時に買い続けることこそ、長期積立のメリットを大きくします。あくまで余裕資金で長く続けることが重要なので、まずは生活防衛資金をきちんと確保しましょう。
税制メリットを受けられるのは月5〜6万円まで
その上で、月々の金額を決めていきます。投資信託は100円から始められますが、少額だとなかなか投資額が増えず、利益も上がりません。よって、最低月3,000円は投資することをお勧めします。3,000円であれば、家計的に無理な金額でもなく、利益の金額も増えます。慣れてきたら、少しずつ投資金額を増やしていけば良いのです。
一方、つみたてNISAの上限は月3万3,000円ほど(年間40万円)、iDeCoは会社員・公務員であれば月1万2,000円〜2万3,000円が上限額となっていますので、合わせて月5〜6万円程度が税制の優遇を受けられる上限となります。まずは月3,000円〜5万円の中で考えてみましょう。
自分に見合った投資金額の計算方法は?
一つの目安ですが、毎月の収入(手取り)のうち、2割を貯蓄・投資に回します。手取り30万円の場合は6万円です。すでに生活費12ヶ月分の貯蓄(生活防衛資金)があるなら、6万円のうち、貯蓄に3分の1、投資に3分の2を使います。したがって、手取り30万円の場合、投資信託に回す目安は月4万円となります。まとまった貯蓄が既にあるのならば6万円を投資に回すのも良いでしょう。生活防衛資金の貯蓄がもっと少ない場合は、投資への割合を低くします。
投資信託初心者におすすめの、購入窓口・商品の選び方
次に、商品を買う上での選び方のポイントをまとめます。
【購入窓口について】
ネット型と対面型の違い
ネット証券は手数料が低く、100円単位の少額で購入できます。取り扱う商品数も多いです。ただし、店舗型のように対面で相談をすることはできません。
なお、ネット証券も投資セミナーの開催や投資メディアの運営を行っています。こういったサービスを見ながら、ネット証券の中でもどれを選ぶか考えるのが良いでしょう。
対面型のメリットは、窓口で相談しながら決められる点です。自分で選ぶのが難しい人、自分で決めるのが不安な人に向いているでしょう。その代わり、コストは高くなる傾向にありますし、知識がなければコストの高い商品を購入してしまう可能性もあります。手数料・サービス面を考慮して選びましょう。
【商品について】
商品を選ぶ上では、着目してもらいたいポイントが6つあります。
(ポイント1)つみたてNISA・iDeCoが適用されるか
まず大前提として、税制優遇を受けられるつみたてNISAとiDeCoの口座を活用できるものの中から選びます。
(ポイント2)どんな指数・指標が対象か
指数・指標と連動するインデックス型投資信託の場合、なるべく広い指数・指標を対象にしたものが良いでしょう。たとえば、日経平均株価とTOPIXを基準にした投資信託がありますが、日経平均株価は東証一部の225銘柄の値動きを元に算出しています。対してTOPIXは、東証一部の全銘柄(2000以上)を元に算出しています。TOPIXの方が広く市場全体に投資しているので、分散効果があると言えます。
(ポイント3)信託報酬は高くないか
投資信託の手数料のうち、特に重要なのが保有中にかかる信託報酬です。そのほかの手数料は無料のケースが増えているためです。商品を選ぶ際は、信託報酬の数字を必ずチェックしましょう。
(ポイント4)純資産総額が低すぎないか
純資産総額とは、ひとつの投資信託商品が現在投資している全資産の規模の大きさを表しています。株式や債券など、現時点におけるすべての投資先の時価(現在の価値)を合計した総額であり、常に変動します。
純資産総額が少なくなると、途中で運用が中止されてしまう「繰上償還」が発生する可能性が高くなります。繰上償還になると、たとえ損失が出ている状況でも、その時点の評価額で強制的に運用が終了します。投資家は損失を被るケースがほとんどです。それを避けるために、ひとつの目安として、純資産総額50億円以上の商品を選ぶと安全度が高いでしょう。
(ポイント5)過去の運用成績が伸びているか
投資信託の基準価額が、5年、10年と長期で伸びている商品が理想的です。そのほかに見てほしいのが「シャープレシオ」という指標です。これは、その商品がリスクに見合った利益を得られているか数値化したものです。証券会社の商品ページにシャープレシオが掲載されていることがほとんどですので確認しましょう。シャープレシオの数値が高いほど、同程度のリスクに対してより高いリターンを得ていると言えます。
(ポイント6)トラッキングエラーが大きくないか
インデックス型の投資信託は指数に連動することを目指しますが、基本的には指数の動きとズレます。その誤差を示すのがトラッキングエラーという指標です。トラッキングエラーが高いほど、その投資信託は指数とのズレが大きいと言えます。インデックス型の投資信託を選ぶ場合は、トラッキングエラーが小さいものを選ぶのが良いでしょう。
タイプ別、こんな人におすすめの投資信託モデル
投資を行う人の状況や目的、環境により、最適な投資信託は異なります。ここでは、3つの人物モデルを定め、投資信託の選び方を考えます。
その前に、商品選びをする上で欠かせない「リスク許容度の確認」について説明します。
リスク許容度とは?
資産運用をした場合、どこまでの損に耐えられるかという度合いです。絶対に損したくない人はリスク許容度が極めて低く、反対に、多少は損をする危険をおかしてもお金を増やしたい人はリスク許容度が高いと言えます。また、年収が高い人や保有資産の金額が多い人は、リスク許容度が高い傾向にあります。年齢が高い人や扶養家族が多い人は、リスク許容度が低い傾向にあります。
投資は、取るリスクが高いほど、望めるリターンの可能性も高くなるのが一般的です。つまり、目標とするリターン(利回り)はリスク許容度に比例して上がります。
〈表〉リスク許容度の程度と目標利回り
リスク許容度 | 目標利回りと投資信託の内容 |
---|---|
【低】 お金をなるべく減らさず堅実に運用したい | 目標利回り1〜2%。 値動きが比較的小さい「債券」を中心とした投資信託の商品が適切。 |
【中】 わずかなリスクで、そこそこお金を増やしたい | 目標利回り3〜4% 「債券」と、値動きが比較的大きい「株式」の割合が均等な商品がおすすめ。 |
【高】 リスクをとってもお金を増やしたい | 目標利回り5%〜 「株式」中心の商品で高いリターンを狙う。 |
〈図〉自分のリスク許容度を確認する簡単フローチャート
リスク許容度の概要がわかったところで、具体的な人物モデルをあげて、おすすめの投資信託プランを考えてみます。
【モデル①】 20代・会社員Aさんの場合
基本情報 | 25歳・会社員 |
家族構成 | 独身 |
世帯年収 | 300万円 |
【状況】
現在独身の会社員Aさんは、今後の結婚や子育て、老後の生活などにおいて、漠然としたお金の不安を抱えている。生活防衛資金の貯金はあるがそこまで多くはなく、投資も初めて。そのため、将来に向けて堅実に貯蓄を増やしていきたいと考えている。
【おすすめの投資信託プラン】
投資目的 | 将来のための資金 |
リスク許容度 | 中(目標利回り3%) |
投資内容 | 債券と株式の割合が均等な商品 |
運用口座 | つみたてNISA |
Aさんはまだ若く、長期間の運用を想定しています。投資が初めてで、堅実に貯蓄を増やしたいと考えているため、まずはリスクを背負ってでも積極的にお金を増やすより、確実に資産形成をすべきでしょう。とはいえ、本人はそこまで弱気に運用することも考えていません。このことから、リスク許容度は「中」と判断し、目標利回りは3%に設定しています。25歳の独身という点から、今後、結婚などの大きなお金が必要となるライフイベントも考えられるため、途中で引き出し可能なつみたてNISAがおすすめです。
働き始めの頃はまだ貯蓄も多くはないため、最初の3年間は毎月3,000円からスタートし、4年目以降から毎月10,000円に切り替えます。つみたてNISAは非課税対象が20年なので、21年目からは特定口座での運用となります。
【運用金額のシミュレーション】
もしも60歳までの35年間、毎年利回り3%で運用したと考えると、元金394万8,000円に対し、利益371万1,854円、総額は765万9,854円となります。
【モデル②】30代・主婦Bさんの場合
基本情報 | 32歳・主婦 |
家族構成 | 夫婦、0歳の子ども1人 |
世帯年収 | 450万円 |
【状況】
子どもが生まれたばかりのBさん。一先ず公立の学校に行ける程度の資金は貯金していっているが、子どもの将来の選択肢を増やすためにも、これからの教育資金をより貯めたいと考えている。
【おすすめの投資信託プラン】
投資目的 | 子どもの教育費 |
リスク許容度 | 低(目標利回り2%) |
投資内容 | 債券を中心とした商品 |
運用口座 | つみたてNISA |
子どもが生まれたばかりで現在の収入源は夫の給与のみのため、無理せず毎月20,000円の積立を続けて投資信託を運用していきましょう。最低限の教育資金はある程度確保しているものの、リスクをできる限り抑えた運用を希望していたため、リスク許容度は「低」と判断し、目標利回りは2%に設定しています。高校を卒業するまでの18年間運用するとして、中途引き出しが可能なつみたてNISAがおすすめです。
【運用金額のシミュレーション】
18年間、毎年の利回り2%で運用したと考えると、元金432 万円に対し、利益87万4,799円、総額は519万4,799円となります。
【モデル③】30代・共働き夫婦Cさんの場合
基本情報 | 38歳・会社員(共働き) |
家族構成 | 夫婦、9歳の子ども1人 |
世帯年収 | 700万円 |
【状況】
子どもの教育資金や生活資金については、既に積立預金などで確保しているCさん夫婦。子どもが小学校に慣れて、今はフルタイムの共働きのため余剰資金もある状態。今後は自分たちの老後資金を増やしたいと考えている。
【おすすめの投資信託プラン】
投資目的 | 老後資金 |
リスク許容度 | 高(目標利回り5%) |
投資内容 | 株式を中心とした商品 |
運用口座 | iDeCo |
共働きで収入源も2つあること、また余剰資金での積極運用を考えていることから、リスク許容度は「高」と判断し、目標利回りは5%に設定しています。運用資金を途中で引き出す予定はなく、老後のためだけの運用なのでiDeCoを選ぶのがおすすめ。今回は、所得税率の高い夫がiDeCoに加入することにしました(夫の所得税10%、妻の所得税5%)。毎月の積立金額は、iDeCoの上限金額である23,000円としています。
【運用金額のシミュレーション】
60歳までの22年間、年利回り5%で運用したと考えると、元金607万2,000円に対し、利益593万8,595円、総額(所得控除含む)は1,201万595円、となります。
6STEPで紹介!投資信託のはじめ方
ここまでの内容から、投資信託をはじめる際の手順をステップ形式で紹介します。
(1)投資に使える資金を確認する
毎月の手取り収入と生活防衛資金を計算して、自分が投資に回せる金額を算出します。
(2)自分のリスク許容度を確認する
自分が許容できるリスク、どこまでの損に耐えられるかを明確にします。
(3)運用の方向性を決める
何年後に資産をいくらにしたいか、期間と目標利回りを決めます。初心者の場合、途中で解約するケースがよくありますが、しっかりと期間を決めることで、最後まで継続するようにします。
(4)商品の種類を決める
リスク許容度と目標利回りに合わせて、株式や債券の比率など、自分にあった商品を選びます。
(5)会社を選んで口座を開設する
投資信託を行うためには、専用の投資信託口座を開設する必要があります。まずは、つみたてNISAとiDeCoの口座を開設するのが良いでしょう。それ以外には、基本的に確定申告が不要な「特定口座(源泉徴収あり)」と、確定申告が必要な「特定口座(源泉徴収なし)」「一般口座」があります。特段の理由がなければ「特定口座(源泉徴収あり)」を選ぶと良いでしょう。
(6)投資信託を購入する
自分が選んだ投資信託について、毎月の購入額を決めて購入します。購入した後は、基本的に何もすることはありません。「ほったらかし投資」をしましょう。
初心者におすすめ!投資信託の仕組みがわかる本
投資信託の仕組みをさらに深く知るには、本を読むのがオススメです。実際に投資信託を購入する際の手続きや、商品の選び方について具体的に書かれた本も多数出版されています。ここでは、初心者の方に推奨したい2冊を紹介します。
『投資信託 勝ちたいならこの7本(河出書房新社)』
全編にわたり、二択形式で投資信託のノウハウを学べる一冊。購入窓口は「ネット型・対面型のどちらがよいか」、積み立て投資のペースは「毎日・毎月のどちらがいいか」など、いろいろな場面での二択が用意されています。最後には、おすすめする7本の具体的な商品が挙げられています。
『はじめてのNISA&iDeCo(成美堂出版)』
NISAやiDeCoの制度の仕組みから、商品選びのポイント、金融機関の選択や口座開設の流れなど、一つ一つの手順が詳しく記載されています。本人確認書類の提出方法など解説も充実しており、全編カラーで、漫画も挿入され見やすいつくりになっています。
投資信託初心者が押さえておきたい5つの知識
聞き慣れない言葉が多く、覚えることも多い投資信託ですが、この記事で挙げた以下のポイントに注意しながら知識を積んでいくと良いでしょう。そうしてはじめた投資信託が、いずれ自身の資産形成を助けてくれるかもしれません。
1、投資信託は少額から始められ、投資のプロが代わりに運用してくれる投資
2、「長期」「分散」「積立」の投資ができ、安定したリターンを期待できる
3、つみたてNISAとiDeCoを活用することで税金がお得
4、自分のリスク許容度と目標利回りを考えてから、商品選びに入る
5、商品を選ぶ時は、純資産総額や基準価額の伸びなどをチェックする
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