キャリアや稼ぎ方を考えるうえで、避けては通れなくなっている「フクギョウ(副業・複業)」という考え方。でも、本業以外に仕事をもつ意味って? それはお金のため? それともキャリアのため? 「正しいフクギョウ」とは何なのか、フリーライターをしながら企業の広報もしている著者が、実際に“フクギョウ”をしている人にインタビューしながら十人十色の答えを探っていきます。

連載「正しいフクギョウ」の第1回では、副業を紹介する人材紹介会社で働きながら、自身も副業をしている28歳の男性に話を伺いました。

「“副業との出会い”は、前職の同僚からの紹介でした」

画像1: 「“副業との出会い”は、前職の同僚からの紹介でした」

今回のフクギョウ人 申晶樹(28歳)

・本業の職種:株式会社シューマツワーカー カスタマーサクセス責任者
・副業の職種:人材紹介会社でスカウト代行
・副業の月収:5万円

――じつは申さんは私(著者)が働いている副業サービス会社の一員です。プロから見た“副業像”とはどんなものなのか、ご自身の経験も踏まえて教えてください! まずは自己紹介をお願いします。

申晶樹です。2018年に副業を紹介する株式会社シューマツワーカーへ入社して、現在はカスタマーサクセスの責任者をしています。パートナー企業が、僕らのサービスを効率的に利用できるように支援する仕事ですね。

――そもそもなぜ副業しようと思ったのでしょうか?

以前働いていた大手人材会社の同僚からたまたま紹介してもらったのがきっかけです。副業を紹介する会社に転職した、という話をしたら「じゃあお前も副業してみたら?」と人材紹介会社でスカウト代行をする副業を紹介してもらいました。

画像2: 「“副業との出会い”は、前職の同僚からの紹介でした」

――副業をすることに対して不安な気持ちはありませんでしたか?

もちろんありましたよ! 副業を支援する企業に勤めていますが、私自身が初体験でしたから。紹介してもらった企業は名前も聞いたことのない小さなところだったので、「どんな人と働くんだろう……」という漠然とした不安がありました。

――私も副業を始める時、似たような不安がありました。不安のなか、実際に副業に踏み切ったのはなぜでしょうか?

理由は2つあります。1つは副業先の代表が、僕の働き方に理解を示してくれていたこと。初めて打ち合わせに行った時に「日中は本業があるので稼働できない」、「リモート作業をメインにしたい」という僕の希望する働き方を伝えたら、快諾してくれました。彼の下でなら本業と両立できそうだと思ったんです。

――それは安心できますね。人の繋がりにも恵まれた面もありそうです。

はい。もう1つは業務内容です。前職で人材紹介会社の営業として採用業務をしていたのですが、現職では、その時のスキルをあまり使っていません。

それを承知で転職した一方で、“採用に関する自分のスキルを低下させたくない”という気持ちが以前からありました。だから、スカウト代行という副業を通じて自分のスキルを維持できるというメリットもあると思ったんです。

リモートでの副業だと「依頼側の期待値が見えない」という課題がある

画像: リモートでの副業だと「依頼側の期待値が見えない」という課題がある

――ちなみに「スカウト代行」とはどのような業務なのでしょうか?

主な業務は、転職サイトのデータベースに登録されている人材にスカウトメールを打つことです。転職希望者の活動が活発になるのは土日と平日夜間が中心なので、その時間帯に合わせて僕もデータベースをチェックし、メールを打っています。

――なるほど。その業務内容なら本業以外の時間にリモートでも働けますね。実際に副業をしてみてどうでしたか?

平日の夜、夕食を食べてお風呂を入ったあとに作業をするので、最初は24時過ぎまでやってしまう日も。寝不足気味になり、翌日の仕事に響くこともありました。そのため現在は、日付が変わる前には「もう寝る!」と決めて布団にもぐるようにしています(笑)。

あとは副業先の期待値がわからない、という課題もありましたね。

――「期待値」ですか?

はい。ある日、代表の方から「話があるから打ち合わせしたい」と連絡がきて。ドキドキしながら打ち合わせに行ったら、仕事のやり方に対してダメ出しを受けてしまいました。依頼側としてはメールの文面や転職希望者とのやり取りをもっと僕なりに工夫してほしいと思っていたようで……。

要はリモートのやりとりだと、「わざわざ言わなくても伝わる」という細かなニュアンスを理解し合うのが難しかったんです。定期的に対面で話し合うことが大事だと感じましたね。

「副業に向いているのは、“横展開しやすい”職種の人」

画像: 「副業に向いているのは、“横展開しやすい”職種の人」

――せっかくなので普段聞きづらいことも聞きちゃいますね。ここだけの話、副業ではいくら稼いでいるのでしょうか!

切り込みますね(笑)。週に3回、夜22時から24時くらいの1〜2時間稼働で月5万円です。僕のスカウトで採用ができたら10万円の報酬という契約になっています。

――月5万円! 年間60万円だと思うと、なかなかの収入ですよね。

そうですね。でも贅沢したいわけじゃないんです。大きい声では言えないのですが(笑)、僕は大手企業からスタートアップ企業へ転職したということもあり、以前より収入は下がっています。だから副業を始めたというわけではないんですが、結果的には、転職前の生活水準を維持することができました。

――話を聞いて思ったのですが、申さんは人脈や人材業界のスキルを持っているからこそ副業ができていますよね。でも中には「どうやって副業を始めたらいいかわからない」という人もいます。その場合、何から始めたらいいのでしょうか?

汎用性のあるスキルを持っている人は副業しやすいと思います。例えばマーケティングやPR、編集などのスキルは横展開しやすいので、副業を見つけるのも容易いはず。

ただ、「副業を探すのは大変・・・」という人も少なくないと思います。それならスキルシェアサービスのストアカココナラなどを使ってみてはいかがでしょうか。

「飲料メーカーで働いている自分がおいしい缶コーヒーを教えます」、「不動産で働いている自分が一人暮らしに向いている地域を紹介します」といった“特定の分野で働いているからこそ持っている知識”を売ることができるんです。

実際に僕もスキルシェアサービスで「人材会社で得た知識を活かして転職の相談に乗ります」という投稿をしたら、買ってくれる人がいました。匿名登録が可能なサービスもあるので、まずはスキルを言語化して発信してみるのがおすすめです!

申晶樹(28歳)が考える、「正しいフクギョウの始め方」とは…

画像: 申晶樹(28歳)が考える、「正しいフクギョウの始め方」とは…

――では最後に、申さんが考える「正しいフクギョウの始め方」とはどのようなものですか?

先ほどご紹介したスキルシェアサービスなどで、副業のハードルは確実に下がっています。だからこそ、“まずは収入を度外視して、とりあえずやってみる”ことじゃないでしょうか。最初はさほどの収入にならなくても、複数案件を受けたら相場がわかってくるので金額交渉もしやすくなります。

あとは、時間管理や“ホウレンソウ”といった社会人としての基本を守ることができれば、無理のないフクギョウが続けられるはず。私もそうやって、これからも続けていきたいと思います。

――自分では当たり前だと思っているスキルも、他人にとっては価値のあるものかもしれません。だからまずは自分ができることを発信し、需要があるのかを確かめることが大切ですね。今日はありがとうございました!

撮影/牛島康介

この記事の著者

橋本岬

1991年生まれ。ファッション誌の編集を経てフリーランスへ。2018年からフリーライターを続けながら、シューマツワーカー広報に。主にIT業界、女性の働き方について書いています。
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