この記事では、ファイナンシャルプランナーの頼藤太希さん監修のもと、ポイント還元のリスクと割引(現金値引き)の強さを、具体例や比較を交えてわかりやすく解説します。
※この記事は2025年11月14日時点の情報をもとに執筆しています。
この記事の監修者

頼藤太希(よりふじ たいき)
(株)Money&You代表取締役/マネーコンサルタント
中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。ファイナンシャルプランナー三田会代表。慶應義塾大学経済学部卒業後、アフラックにて資産運用リスク管理業務に6年間従事。2015年に現会社を創業し現職へ。日テレ「カズレーザーと学ぶ。」、フジテレビ「サン!シャイン」、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「定年後ずっと困らないお金の話」(大和書房)など書籍110冊、累計190万部。日本年金学会会員。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。宅地建物取引士。日本アクチュアリー会研究会員。
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家計を守るなら「割引(現金値引き)」を優先!

画像:iStock.com/metamorworks
割引(以降、現金値引き)とポイント還元を比べると、じつは家計に与える影響が大きく異なります。
多くの人が「ポイント=得」と感じる理由は、“あとでもらえる”という期待感があるからです。しかし、家計管理という視点で見ると、大切なのは“手元にいま残るお金(キャッシュフロー)”になります。
まずは、現金値引きとポイント還元の違いを見ていきましょう。
【現金値引きの場合】
- その場で支払いが安くなる
- 使えるお金を減らさずに済む
- 家計簿にも即時反映されてブレにくい
たとえば1万円の商品が10%割引なら、
1,000円をその場で節約でき、手元に現金が残ります。
【ポイント還元の場合】
- もらえるのは“後日”
- ポイントの使い道が限られる
- じつは手元のお金は減ったまま
このように、現金値引きとポイント還元では、本質的な違いがあります。
家計を守るうえでは、いま財布にお金が残ることの価値は現金値引きのほうが大きいことがわかります。
「ポイント還元」に潜む“3つの落とし穴”

画像:iStock.com/zakokor
さらに、ポイントは確かに魅力的ですが、つぎの3つの落とし穴を避けて通ることはできません。
落とし穴①:失効リスク
ポイントには「使用期限」があるケースが多いです。忙しさに追われて気づけば失効していた…という人は少なくないでしょう。
せっかく10%還元されても、“使わなかった瞬間に0%還元と同じ”です。
落とし穴②:利用先の制限
ふたつめは、ポイントの利用先が限られていることです。ポイント移行という方法もありますが、一般的には特定のサイトやサービスでの利用に制限されています。
落とし穴③:無駄遣いの誘発
じつは、結構多いのがこのケース。「ポイントが貯まっているから…」と、つい必要のないものを購入してしまう人は多いのではないでしょうか。
人は“ポイント消化”という名目があると、出費への罪悪感が薄れ、結果として支出が増える傾向があります。つまり、ポイント還元は出費を抑えるつもりが、結果的に支出増につながることもあります。
【比較】10%割引と10%還元で、手元に残るお金はいくら?

画像:iStock.com/years
もっと具体的に、財布への影響を比較してみましょう。
【1万円の商品を購入した場合】
A:10%割引 → 支払い9,000円
手元に残る現金:1,000円
B:10%ポイント還元 → 支払い1万円(1,000pt獲得)
手元に残る現金:0円
使用できるポイント:1,000pt(ただし期限・使い道の制限あり)
この比較を見ると、「10%割引のほうが家計にやさしい」という理由がはっきりわかります。ポイントは“あとで戻るかもしれない価値”、割引(現金値引き)は“いま確実に残る価値”。家計管理において重要なのは、後者です。
また、実質の「割引率」でも確認してみましょう。
【1万円の商品を購入した場合】
A:10%割引 → 支払い9,000円
手元に残る現金:1,000円
割引率:1,000円÷1万円=10%
B:10%ポイント還元 → 支払い1万円(1,000pt獲得)
手元に残る現金:0円
使用できるポイント:1,000pt=1,000円(1pt=1円として計算した場合)
この1,000ptは別の商品を購入するため、実質的には1万1,000円分を支払うことになります。
そのため、
割引率:1,000円÷1万1,000円=約9.1%
という計算になります。
このように、割引率もポイント還元よりも現金値引きのほうがお得だということがいえます。
とはいえ、ポイント還元が本当に力を発揮する場面もあります。
ただし、ポイント還元がお得になるケースもある

画像:iStock.com/maruco
例外的にポイント還元のほうが得になるケースもあります。それは主につぎのような場合です。
①必要な支出が確定していて、ポイントを確実に使い切れる
電気代・ネット代・日用品など、月に必ず支払う項目があり、そこで確実にポイントが使える場合はメリットが大きいです。
②割引(現金値引き)よりも還元率が圧倒的に高い
たとえば、以下のようなケースでは、還元のほうがお得です。
現金値引き:5%引き → 500円お得
ポイント還元:10%還元 → 1,000円相当のポイントが付与
このように、ポイント還元の相当額が(1,000円) > 現金値引きの額(500円) であれば、前者のほうが結果的にお得になります。
割引(現金値引き)とポイント還元は、賢く使い分けよう
「ポイント還元」は魅力的に見えますが、
- 失効リスク
- 利用先の制限
- 無駄遣いの誘発
といった落とし穴があります。
対して「割引(以降、現金値引き)」は、現金がその場で確実に残る、家計防衛によい選択肢です。ただし、ポイント還元が合理的に働く場面もあります。また、実際の割引率も現金値引きのほうが高くなります。
最後に、割引・ポイント還元に関わらず抑えて欲しいのが、大切なのは「欲しいかどうか」より「必要かどうか」。
「必要かどうか」という明確な判断基準を持っていると、無駄な出費や衝動買いを抑えることができます。
この視点をもって、セールの波に流されず、賢くブラックフライデーを利用しましょう。







