確定申告は、個人事業主だけでなく、副業収入のある会社員や年金受給者であっても対象となることがあります。確定申告の対象者であるにもかかわらず申告をしなかった場合、罰則として追加で税金を課される恐れもあります。

この記事では、税理士の植野正子さん監修のもと、確定申告をしなかった場合の罰則を解説。また、申請が期限内に間に合わなかった場合の対処法もご紹介します。

この記事の監修者

植野 正子(うえの まさこ)

税理士。植野正子 税理士事務所代表。税理士業と並行して執筆活動も活発に行なっており、著書に『個人事業の始め方 手順と届出・経理』『これだけは知っておきたい「副業」の基本と常識』(ともにぱる出版)など多数。

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確定申告しないと課される3つの罰則

画像: 画像:iStock.com/utah778

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確定申告を期限内に行わなかった場合、「無申告」と呼ばれる状態に該当します。このような場合、以下の罰則を受ける可能性があります。

それぞれ詳しく解説します。

①無申告加算税の支払い

確定申告をしないと「無申告加算税」が発生します1)。これは申告期限をすぎてから、確定申告書を提出するまでの間に発生する税金です。具体的な加算額を以下の表にまとめました。

〈表〉無申告加算税の上乗せ金額

申告額概要
税務調査を受ける前に自主的に期限後申告納付する税額に加えて5%の上乗せ
50万円までの金額納付する税額に加えて15%の上乗せ
50万円を超える金額納付する税額に加えて20%の上乗せ

基本的には、本来納める所得税の15〜20%が上乗せされます。なお、税務署の調査が入る前に申告すると、罰金は5%に軽減されます。

②延滞税の支払い

確定申告をしないと、所得税も納めていないことになります。申告期限内に税金が納付できていないと、期限の日から実際の納付までの日割りで延滞税が発生します。令和4年の納付時期ごとの利率を、以下の表にまとめました2)

〈表〉延滞税の利率(令和4年1月1日~12月31日)

納付時期利率
期限日翌日から2カ月以内に納付2.4%
期限日翌日から2カ月を超えて納付8.7%

延滞税の利率は、2022年12月時点で最低2.4%です。納税が遅れれば遅れるほど金額は増えていくため、期限内に必ず申告しましょう。なお、最近は低金利が続いているため、延滞税率も連動して低くなっています。

③脱税に対する刑罰

画像: 画像:iStock.com/takasuu

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確定申告の未提出や経費の水増し、所得隠しなど、意図的に脱税を行うのは犯罪です。この場合、以下の刑罰を受ける可能性があります3)

  • 最大1,000万円以下の罰金
  • 過少申告加算税や重加算税などの行政処分

接待費・出張費などの偽装計上や、消費税・所得などの不正申告は脱税とみなされます。また、裏工作などを多くしている悪質性の高いケースでは逮捕される危険性が高まります。

参考資料

3)内閣府「罰則」

やむを得ない理由があれば期限延長申請ができる

画像1: 画像:iStock.com/kazuma seki

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仮に申告期限がすぎても、確定申告は可能です4)。確定申告をしていない人には税務署から警告・通知が届きます。申告漏れは無申告加算税や延滞税などの罰則対象です。なお、早く申告するほど附帯税額(※)は小さくなります。また、申告忘れを防ぐには、日頃の記帳が効果的です。

災害など、やむを得ない理由で、期限内に提出できない場合には延長申請ができます。延長申請の方法は、以下のとおりです。

①「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を記入する
②上記書類を所管の税務署へ提出(郵送or窓口)する
③提出できる日に確定申告をする

申請書は国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。延長申請が認められたら、申告ができるようになった日から2カ月以内に確定申告を行いましょう

※:納税者が税法により定められている申告期限までに申告書を提出しなかったり、納期限までに税金を納付しなかったりした時に、本来納めるべき税金のほかに課されるもの。

確定申告をしないと起こる6つのデメリット

画像: 画像:iStock.com/miya227

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多くの人にとって、確定申告は面倒な作業でしょう。しかし、前述した罰則のほかに、確定申告をしないと以下のデメリットが発生します。

それぞれ詳しく解説します。

①収入証明書が発行されない

フリーランスや個人事業主の場合、確定申告をしないと収入証明書を発行できません5)。収入証明書とは、クレジットカードの発行やローンの申し込みなどの場面で必要な書類です。会社員の場合は、勤務先が発行してくれます。納税証明書や所得証明書と呼ぶこともあります。

近い将来、クレジットカードの発行や物件を借りる予定、車両購入の予定などがある人は、注意が必要です。収入証明書がないと所得がわからないため、カード会社や賃貸物件などの審査を受けられない可能性があります

②国民健康保険料が減額されない

確定申告をしないと、国民健康保険料の減額制度の対象に含まれません。国民健康保険には、家計が苦しい人を対象とした減額制度があります。

保険料の減額制度は、前年比で3割程度の所得減が見込まれる人が対象です。新型コロナウイルス感染症によって生活が厳しくなっている世帯も、減額制度を利用できます6)

収入減を証明するためには、確定申告をして所得を申告することが必須です。

③還付金を受け取れない

画像: 画像:iStock.com/Yusuke Ide

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確定申告をしないと、納めすぎた税金が納税者に返還される「還付金制度」を利用できません7)

個人事業主の場合には、委託業務を受ける際に事業者から源泉徴収されることがあります。源泉徴収は、いわば所得税の前払いの納税です。もし、源泉徴収分が実際の所得税額を上回る場合には、還付が行われます。確定申告をしないと、本来は自分のお金であるはずの過払い分の税金が戻ってきません。

なお、確定申告での還付金がいつ戻ってくるかについては、以下の記事で解説しています。興味のある人は併せて確認してみてください。

【関連記事】確定申告の還付金はいつ戻ってくる? 詳しくはコチラ

④医療費控除を受けられない

確定申告をしないと、医療費控除を受けられません。医療費控除とは、持病や通院を理由に医療費が高額になった人への税負担軽減の制度です。所得が200万円以上あり、年間で10万円以上の医療費支払いがある人は、医療費控除を受けられます8)。なお、所得が200万円未満でも納税がある人なら還付申告できます。

医療費控除を受けることで、課税所得が減り、所得税を安くできる可能性があります。メリットのある制度ですが、医療費控除を受けるには確定申告をしなければなりません。

なお、住宅ローン控除で所得税が全額還付になっていても、住民税の減額効果があるので受けられるようにしておきましょう。

⑤青色申告の控除が減額される

青色申告をすると、最大65万円の所得控除を受けられます9)。すべてのフリーランスや個人事業主が青色申告の必要条件を満たせば青色特別控除を利用できますが、確定申告を行わないと控除を受けられません。

控除額は通常55万円、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を使って確定申告をすると最大65万円です。ただし、控除を受けるためには複式簿記に基づいて作成した損益計算書と貸借対照表を添付し、青色申告控除を受ける金額を記載する必要があります。

確定申告が遅れた場合は10万円の控除しか受けられないため、期限内に行ったほうがいいでしょう。

⑥非課税証明書を受け取れない

画像2: 画像:iStock.com/kazuma seki

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非課税証明書を受け取るには、確定申告が必要です。非課税証明書とは、市区町村が発行する住民税の課税がされないことを証明する書類のことです10)

非課税証明書を受け取ることができるのは、「生活保護を受けている」「前年の合計所得額が一定の所得以下」など、収入が一定以上得られていない人です。

これらの人には特別措置があり、非課税証明書を示すことで子どもの奨学金を申請する時などに通過しやすくなります。しかし、確定申告をしていないと発行できません。売り上げがないからといって、確定申告をしなかったら、思わぬデメリットが発生する恐れがある点に注意しましょう。

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確定申告をするメリット

画像: 画像:iStock.com/west

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以下の条件に当てはまる人には、確定申告をするとメリットがあります。

  • 住宅ローンを組んでいる人
  • 市販の医薬品を購入している人
  • 事業で赤字が出ている人

具体的に確定申告で受けられる控除を、以下にまとめました11)12)

〈表〉確定申告で受けられる特別控除

特別控除詳細
住宅借入金等特別控除住宅ローンを組んでいる人を対象に所得を一定額控除
セルフメディケーション税制病気予防の医薬品に対して一定額控除
青色申告の赤字繰越し制度課税所得が赤字の場合には、赤字の繰越しが3年間可能

マイホームを住宅ローンで購入している人は、特別控除をぜひ利用しましょう。たとえば、3,000万円のローンを組んでいる場合には、20万円程度の控除を受けられます

なお、住宅ローンの特別控除については、以下の記事で詳しく解説しているので確認してみてください。

【関連記事】確定申告と住宅ローンについて、詳しくはコチラ

確定申告が必要な人の条件

画像: 画像:iStock.com/laymul

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確定申告の対象者は、主に以下のとおりです13)

①会社員で年収が2,000万円以上ある場合
②副業所得が年20万円以上ある場合
③医療費控除や住宅ローン控除などを受ける場合
④個人事業主で年48万円以上の所得がある場合

基本的には、年間の所得が基礎控除の48万円を超える個人事業主や年末調整を行っていない会社員が確定申告の対象です。年金受給者のうち、所得控除額を引いて残額がある場合も、確定申告をする必要があります。また、会社員の中には、副業をしている人もいるでしょう。副業の所得が20万円を超える場合にも、確定申告が必要です。

なお、確定申告はいくらから必要なのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。気になる人は確認してみてください。

【関連記事】確定申告はいくらから必要? 詳しくはコチラ

個人事業主も会社員も必要な時は必ず確定申告を行おう

画像: 画像:iStock.com/kyonntra

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確定申告をしなくてはいけない個人事業主や会社員は、正しく申告することが大切です。納税は国民の義務であり、違反をすると本来納めるべき税金に加え、重加算税や延滞税なども課せられることがあります。

確定申告は納税義務を果たすために必要なだけでなく、税金の還付を受けるためにも大切です。また、利用できる所得控除を活用するためにも、期限内に正しい手続きを行うようにしましょう。

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