そこでこの記事では、ファイナンシャルプランナーの氏家祥美さん監修のもと、学費を払えない時の6つの対処法を解説。学費を払えない時に起こる問題や、学費を払えなくなるような事態を避けるための方法もご紹介します。学費が払えなくて困っている保護者の人や自分で学費を工面している学生の人は参考にしてみてください。
この記事の監修者
氏家 祥美(うじいえ よしみ)
ハートマネー代表。ファイナンシャルプランナー・キャリアコンサルタント。子育て世帯、共働き夫婦の家計相談に豊富な実績を持ち、「幸福度の高い家計づくり」を総合的にサポートしている。オンラインでの家計相談やマネー研修も実施中。
大学の学費を払えない時の6つの対処法
学費を払えない時の対処法は、以下の6つです。
上記の方法で、学費が払えない状況を乗り越えられる可能性があります。それぞれ詳しい内容をご紹介します。
①大学に学費の延納や分納・免除の相談をする
学費を払えない場合、まずは大学に相談するのがおすすめです。学費の支払いが間に合わないと判断した時点で、早めに大学側に延納や分納・免除の相談をしましょう。もし延納や分納が認められれば、学費を工面できるかもしれません。
大学によって対応は異なるため、詳細は大学の学生課や財務課などに問い合わせましょう。奨学金制度などと併せて利用すれば選択肢が増えるため、まずは相談をすることが大切です。
②緊急採用・応急採用奨学金を利用する
災害や事故、病気などで家計が逼迫し、学費を払えない人には日本学生支援機構の「緊急採用・応急採用奨学金」があります。「緊急採用」が第一種奨学金(無利子)、「応急採用」が第二種奨学金(有利子)です。対象は、家計急変から12カ月以内の人で、それぞれの学力と家計基準を満たしていれば随時申し込みができます。利用条件は、以下のとおりです1)。
対象課程:短期大学・大学・大学院・専修学校(専門課程)・高等専門学校の正規課程が対象。
※通信教育課程は対象外。
要件:家計急変の事由が発生してから12カ月以内の人で、学力・家計基準(所属大学に確認)を満たすこと。
※ 新型コロナウイルスの影響による家計急変も事由として含む。
家計の急変により学費が払えない人は、1人で悩まずに、早めに相談をしましょう。日本学生支援機構の問い合わせ窓口や、大学・学校の学生窓口などに連絡をすると、詳しい条件や手続きなどを教えてもらえます。
学校によっては、独自の奨学金制度を用意している場合もあるので、併せて確認してみましょう。
③教育一般貸付を利用する
「教育一般貸付」は、日本政策金融公庫が提供している国の教育ローンのことです2)。教育ローンは、一般的に親が子どものために利用する借り入れのことで返済も親が行います。教育資金目的に利用することを条件に、ほかのローンよりも金利が低めに設定されている傾向があります。受験費用や入学金の支払いなど、入学前から利用できるので、奨学金だけではまかなえない費用をカバーすることができるでしょう。
日本政策金融公庫の借り入れ上限額は、350万円(一定条件を満たせば最大450万円まで利用可能)です。金利は年1.95%ですが、家族構成や世帯年収などの条件によっては金利の優遇を受けられる可能性があります。
申し込みは1年を通して可能ですが、利用にあたって審査があります。申し込みには、教育資金目的であることを証明する書類を含む複数の書類の準備も必要です。また、混雑時であるほど審査に時間を要する場合があるため、余裕を持って申請しましょう。
なお、国の教育ローン以外にも、様々な金融機関で教育ローンを取り扱っています。審査基準や金利などの借り入れ条件は金融機関ごとに異なるため、必要な場合には問い合わせをしてみるといいでしょう。利用する際には、無理なく返済できるかどうか確認することも忘れないようにしましょう。
④母子父子寡婦福祉資金貸付金を利用する
無担保で借りられる「母子父子寡婦福祉資金貸付金」を利用することもおすすめです。利用条件は「20歳未満の児童を扶養している」上で、以下の条件を満たした場合です。
- 母子家庭の母
- 父子家庭の父
- 寡婦
利用したい場合は、お住まいの市区町村の福祉担当窓口に申請しましょう。利用できるのは「修学支度資金」と「修学資金」の2つです。申し込みから審査、振り込みまで時間がかかる場合があるため、余裕を持って申請しましょう3)。
⑤修学支援新制度を利用する
給付型奨学金の一種で、大学の学費を免除・減額する方法として、「修学支援新制度」があります。支援の対象は、住民税非課税世帯(※)やそれに準ずる世帯の学生です。具体的な支援対象は、世帯年収が約270万〜460万円前後である場合です4)。
大学の学費の免除・減額できる修学支援新制度については、以下の記事で詳しく解説しています。気になる人は確認してみてください。
※:住民税が非課税となる人のこと。対象者は、生活保護を受給している人や、障がい者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親で前年中の合計所得が135万円以下の人、前年中の収入から様々な控除を行い計算した結果、合計所得金額が一定額以下になる人。
参考資料
⑥休学する
学費を稼ぐためにアルバイトなどに多くの時間を取られている人もいるかもしれません。学業とうまく両立できていればいいのですが、肝心の学校に通えず、卒業単位もままならずに留年となると、さらに学費の負担が増していきます。
そのようなケースを避けるためには、「休学」という手段もあります。休学期間中は、学費の支払いを全額もしくは一部免除としている学校が多くあります。ただし、在籍料が別途必要などの要件があったり、学費の支払いは通常どおり必要といったりするケースもあります。休学を検討する際は、しっかりと要件を確認してから決めるのがいいでしょう。
ただし、休学をするとその分、卒業が遅れます。就職活動などに影響が出る場合もあるので、慎重に検討しましょう。
大学の学費を払えないと起こる2つの問題
大学の学費を払えない場合、以下の2つの問題が起こる可能性があります。
それぞれの措置の内容や、どのようなデメリットがあるかを解説します。
除籍処分を受ける
大学の学費を払えない場合、除籍処分を受ける可能性があります。除籍処分とは、大学の在籍者名簿から自分の名前を外されることです。
具体的なタイミングは、各大学のウェブサイトに記載されています。除籍になる前には、通知や催促状が届くので、処分を受ける前にできる限り対処しましょう。
なお、除籍は「大学側から辞めさせられた」という印象を与えやすいです。自主退学よりも除籍のほうが就職活動での印象が悪くなりやすいので、注意が必要です。
自主退学せざるを得なくなる
自主退学とは、学生が自ら申し出て退学することです。自ら辞めることを選択しているため、退学した理由を論理的に説明できれば、就職活動時に印象が悪くなることを防ぐことができます。
そのため、除籍になる前に自ら退学を選ぶ人は多くいます。どうしても学費が工面できず、やむを得ず大学を辞める場合は、自主退学を選択するのがおすすめです。
除籍になってから復学する方法
万が一除籍されてしまった場合は、一定期間内に滞納している学費や手数料を払い、大学の許可が下りれば、復学できる場合があります。
一般的に復学願を出して復学が認められた場合には、各学期の初めから復学することになります。大学によっては、復学試験や再入学金の納付が必要な場合もあるため、事前に確認することが大切です。
具体的な復学方法は大学ごとに決められているため、詳しくは大学のウェブサイトで確認しましょう。
大学の学費をしっかり払うためにできる3つのこと
前述した6つの対処法は、学費を払えなくなった時の手段です。もちろん、このような事態は避けたいことでしょう。当たり前ですが、早いうちから計画的に資金を貯めておくことが大切です。ここでは、学費を払えなくなるような事態を避けるための3つの方法をご紹介します。
①学資保険に加入する
学資保険に加入していれば、入学、進学などの一時的にお金が必要なタイミングで保険金を受け取れます。事故や病気などで突然契約者が亡くなった場合にはそれ以降、保険料の支払いが免除されることも特徴です。
保険会社ごとに学資保険の補償内容が若干異なるため、複数社でシミュレーションしてみてもいいでしょう。心配な場合は、ファイナンシャルプランナーに相談することもおすすめです。
②児童手当を貯金する
児童手当とは、中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育する人に国から支給される手当のことを指します。いくつか条件がありますが、基本的には誰でも申請すれば受け取れます。
児童手当を使わずに貯金しておけば、大学の学費にまわすことが可能です。3歳未満までの35カ月で52万5,000円、それ以降の156カ月なら156万円が支給されます5)。合計すると208万5,000円になるので、国立大学のおよそ2年分の学費をまかなえるでしょう。
ただし、所得制限があるため、世帯の所得によっては月額5,000円の特別手当のみになります。また、2022年10月には「年収1,200万円」を目安とする高所得者世帯における5,000円の特例給付も停止されました。
参考資料
③つみたてNISAを行う
つみたてNISAとは、2018年1月からスタートした長期・積立・分散投資を支援する非課税制度です。通常、投資での運用益には約20%の税金が発生しますが、つみたてNISAは年間40万円まで、最長20年間非課税で運用できます6)。
つみたてNISA向けの銘柄は、金融庁が長期積立投資に適していると選定したものだけが選ばれています。
また、18歳未満の未成年が利用できる、ジュニアNISAというものもあります7)。ジュニアNISAでは、17歳まで毎年80万円まで非課税で積み立てできます。投資可能期間は2023年までですが、2024年以降も18歳になるまで非課税で保有可能です。2024年以降は、18歳にならなくても払い出しが可能になります。
参考資料
除籍・退学になる前にしっかり対処しよう
大学の学費が払えない時には、除籍・退学になる前に対処をしましょう。事前に大学に相談すれば、学費の延納や分納・免除などの対応をしてもらえる可能性があります。また、緊急奨学金や教育一般貸付などの制度を利用することもおすすめです。
除籍や退学になってしまうと、就職活動で悪い印象を与えかねません。そうなる前にできるだけ早く行動することが大切です。