ボーナスは、通常の給与と同じように税金や社会保険料が差し引かれます。そのため、想定していた額面の金額よりも、手取り額が少なくなることもあるでしょう。また一度に支給される金額が多いからこそ、その差し引かれた金額に驚いたことがある人も多いと思います。
そこでこの記事では、ファイナンシャルプランナーの氏家祥美さん監修のもと、ボーナスにかかる税金や差し引かれる項目について詳しく紹介します。手取り額の計算方法なども解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
※この記事は、2022年10月26日に公開した内容を最新情報に更新しています。
この記事の監修者
氏家 祥美(うじいえ よしみ)
ハートマネー代表。ファイナンシャルプランナー・キャリアコンサルタント。子育て世帯、共働き夫婦の家計相談に豊富な実績を持ち、「幸福度の高い家計づくり」を総合的にサポートしている。オンラインでの家計相談やマネー研修も実施中。
ボーナスから差し引かれる税金や社会保険料とは

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ボーナスから差し引かれるものは、税金や社会保険料などいくつかの項目があります。以下でそれぞれ詳しく説明します。
①所得税
所得税は所得に対してかかる税金で、一般的に民間企業では、給与から天引きというかたちで源泉徴収されています。これは、毎月の給与でも同じです。
ただし、ここで注意したいのが、同じく毎月の給与から差し引かれている住民税は、ボーナスから差し引かれない点です。これは、住民税は給与やボーナスを含めた前年の総所得から計算され、12カ月で割った金額を毎月給与から差し引いているためです。
なお、所得税の計算方法については後述します。
②健康保険料
健康保険料は、公的医療保険の保険料です。会社員や公務員は、健康保険組合や協会けんぽ、共済組合などに加入しています。公的医療保険に加入することで、現役世代は医療費の自己負担が3割負担になるほか、医療費の自己負担に上限を設ける高額療養費制度や、療養のため働けない期間には傷病手当金、出産のために産前産後休暇を取る場合には出産手当金を受け取ることができます。
公的医療保険の保険料は、被保険者と会社が半分ずつ負担することになっており、毎月の給与やボーナスから引かれるのは、被保険者の負担分です。
③雇用保険料
雇用保険料は雇用保険の被保険者が支払う保険料で、失業時や育休時の給付金などの財源となっています。被保険者と会社のどちらもが支払いますが、会社側のほうが多く負担するしくみになっています。毎月の給与やボーナスから引かれるのは、被保険者の負担分です。
④厚生年金保険料
厚生年金保険料は、公的年金制度である厚生年金保険の被保険者が支払う保険料です。原則65歳から受け取れる老齢年金のほか、障害や病気、ケガによって生活や仕事に制限が生じた場合に受け取れる障害年金、遺族が受け取れる遺族年金などの財源となっています。厚生年金の加入者は、厚生年金保険料を支払うことで、老後に老齢厚生年金と老齢基礎年金の両方を受け取ることになります。厚生年金保険料は被保険者と会社が半分ずつ負担することになっており、毎月の給与やボーナスから引かれるのは、被保険者の負担分です。
⑤介護保険料
介護保険は、40歳以上の人が加入します。40歳から64歳の人は介護保険の第2号被保険者、65歳以上の人は第1号被保険者としてどちらも介護保険料を支払います。会社員等が給与やボーナスから支払う保険料は、被保険者と会社が半分ずつ負担することになっています。介護保険に加入することで、介護サービスが必要になった時には原則自己負担1割(所得により2割、3割)で利用できます。
ボーナスから差し引かれる税金や社会保険料はいくら? 計算方法を紹介

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差し引かれる項目がわかったところで、それぞれの項目の具体的な計算方法を紹介します。
所得税の計算方法
ボーナスから差し引かれる所得税は、以下の計算式で求められます1)。
(ボーナス額面−社会保険料の額)×所得税率 |
計算式内にある社会保険料の額には、健康保険料、雇用保険料、厚生年金保険料、介護保険料が含まれます。所得税率は、ボーナス支給月の前月の社会保険料控除後の給与と、扶養家族の人数から算出します。国税庁のウェブサイトには、賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表が公開されています。所得税率は0%~45.945%と幅広く、所得が高い人ほど所得税率が高くなります。所得が同じ場合、扶養家族の人数が多い人ほど所得税率が低くなります。
参考資料
健康保険料の計算方法
ボーナスから差し引かれる健康保険料は、以下の計算式で求められます。
ボーナス額面(1,000円未満切り捨て)×健康保険料率÷2 |
健康保険料は被保険者と会社で半分ずつ負担するため、「ボーナス額面(1,000円未満切り捨て)×健康保険料率」で求めた健康保険料を2で割って、差し引かれる金額を算出します。
健康保険料率は、加入している健康保険組合や自治体により異なります。たとえば、東京都における協会けんぽの2025年3月分以降の健康保険料率は9.91%です2)。
介護保険料の計算方法
40歳以上になると、健康保険料に上乗せする形で介護保険料が差し引かれます。ボーナスから差し引かれる介護保険料は、以下の計算式で求められます。
ボーナス額面(1,000円未満切り捨て)×介護保険料率÷2 |
介護保険料は被保険者と会社で半分ずつ負担するため、「ボーナス額面(1,000円未満切り捨て)×介護保険料率」で求めた介護保険料を2で割って、差し引かれる金額を算出します。
介護保険料率は、加入している健康保険組合や自治体により異なります。たとえば、東京都における協会けんぽの2025年3月分以降の介護保険料率は1.59%です2)。
雇用保険料の計算方法
ボーナスから差し引かれる雇用保険料は、以下の計算式で求められます。
ボーナス額面×0.55%(被保険者負担分の雇用保険料率) |
雇用保険料は、被保険者と会社側で負担割合が異なりますが、上記の0.55%は被保険者の負担分のみの割合です。なお、それぞれの負担割合は以下のとおりです。
〈表〉雇用保険料率3)
労働者負担 | 事業主負担 | |
---|---|---|
一般の事業 | 0.55% | 0.9% |
農林水産・清酒製造の事業 | 0.65% | 1.0% |
建設の事業 | 0.65% | 1.1% |
厚生年金保険料の計算方法
ボーナスから差し引かれる厚生年金保険料は、以下の計算式で求められます。
ボーナス額面(1,000円未満切り捨て)×18.3%(厚生年金保険料率)÷2 |
厚生年金保険料は被保険者と会社で半分ずつ負担するため、「ボーナス額面(1,000円未満切り捨て)×厚生年金保険料率」で求めた厚生年金保険料を2で割って、差し引かれる金額を算出します。なお、厚生年金保険料率は、現在一律で18.3%(※厚生年金基金加入員を除く)に固定されています2)。
ボーナスの手取り額の計算例
ボーナスから差し引かれる金額の計算方法をもとに、3つのモデルケースについて実際の手取り額の計算例を見てみましょう。
ボーナス25万円・20代Aさんの場合

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- 25歳会社員、独身
- ボーナス額面25万円
- 前月の社会保険料控除後の給与22万円
- 東京都在住
- 協会けんぽに加入中
Aさんの場合における、所得税と社会保険料の計算は以下のとおりです。
健康保険料=25万円×9.91%÷2=1万2,387円…① 雇用保険料=25万円×0.55%=1,375円…② 厚生年金保険料=25万円×18.3%÷2=2万2,875円…③ 社会保険料の合計=①+②+③=3万6,637円 所得税=(25万円−3万6,637円)×4.084%=8,713円…④ |
したがって、ボーナスの手取り額は以下のとおりです。
25万円−(①+②+③+④)=20万4,650円 |
Aさんの手取り額は20万4,650円となりました。額面の25万円に対しての割合では約82%です。
ボーナス60万円・30代Bさんの場合

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- 31歳会社員、既婚(扶養家族1人)
- ボーナス額面60万円
- 前月の社会保険料控除後の給与30万円
- 東京都在住
- 協会けんぽに加入中
Bさんの場合における、所得税と社会保険料の計算は以下のとおりです。
健康保険料=60万円×9.91%÷2=2万9,730円…① 雇用保険料=60万円×0.55%=3,300円…② 厚生年金保険料=60万円×18.3%÷2=5万4,900円…③ 社会保険料の合計=①+②+③=8万7,930円 所得税=(60万円−8万7,930円)×6.126%=3万1,369円…④ |
したがって、ボーナスの手取り額は以下のとおりです。
60万円−(①+②+③+④)=48万701円 |
Bさんの手取り額は48万701円となりました。額面の60万円に対しての割合では約80%です。
ボーナス80万円・30代Cさんの場合

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- 37歳会社員、既婚子ども1人(扶養家族2人)
- ボーナス額面80万円
- 前月の社会保険料控除後の給与45万円
- 東京都在住
- 協会けんぽに加入中
Cさんの場合における、所得税と社会保険料の計算は以下のとおりです。
健康保険料=80万円×9.91%÷2=3万9,640円…① 雇用保険料=80万円×0.55%=4,400円…② 厚生年金保険料=80万円×18.3%÷2=7万3,200円…③ 社会保険料の合計=①+②+③=11万7,240円 所得税=(80万円−11万7,240円)×14.294%=9万7,593円…④ |
したがって、ボーナスの手取り額は以下のとおりです。
80万円−(①+②+③+④)=58万5,167円 |
Cさんの手取り額は58万5,167円となりました。額面の80万円に対しての割合では約73%です。
なお、以下の記事ではボーナスの平均支給額を紹介しています。併せて参考にしてみてください。
ボーナスから差し引かれる金額を考慮して、使い道を考えよう
ボーナスの手取り額の割合は、およそ70%〜80%となることが一般的です。そのため、額面の金額だけ見て使い道を考えていた人からすると、少ないと感じることもあるでしょう。
ボーナスの使い道を決める際には、差し引かれる金額分も考慮して、予算を考えることが大切です。先に額面の金額がわかっているのであれば、この記事を参考に、自分で手取り額の目安を計算してみるのもよいでしょう。
なお、以下の記事ではボーナスの使い道について紹介しています。ぜひ、併せて参考にしてみてください。