ボーナスの理想的な使い方をマスターすれば、しっかり貯金もしながら、将来に向けた自己投資にお金を割くことも可能です。この記事では、ボーナスの平均額や一般的な使い道などのデータを紹介しながら、おすすめのボーナスの使い道について解説します。
ボーナスの平均金額は?大手企業の2020年平均は約74万円

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まずは、ボーナスの平均支給額を見ていきましょう。一般財団法人労務行政研究所の調査1)によると、東証一部上場企業205社で支給される2020年冬のボーナスの平均額は74万3,968円。前年度比で2万4,708円減る見込みとなっています。
ただし、これは大手企業に絞ったデータに過ぎません。一般的な中小企業の場合、1回のボーナスの金額は世代を問わず、月収の1カ月分ほどということが多いのではないでしょうか。
また、2020年は新型コロナウイルスの影響で、ボーナスが大幅に減額される企業も目立ちます。10月に発表された「第43回 Ponta消費意識調査」2)によると、今年の冬のボーナスが「支給されない・わからない」と答えた人は46.4%と過去最高。また、コロナ禍の冬のボーナスへの影響については「減った」と答えた人が29.5%と、全体の約3割を占めています。
〈図〉コロナ禍の、今年の冬のボーナスへの影響

株式会社ロイヤリティ マーケティング「第43回 Ponta消費意識調査」2)より
実際に冬のボーナスをゼロにする、減額すると発表した大企業もあり、ニュースになりました。ステイホームの影響が大きい旅客運送業や旅行業、飲食業などが大きな打撃を受けていることはご存じの通りです。一方でドラッグストアやスーパー、サービスのオンライン化に成功した企業などは軒並み業績を伸ばしており、そういった企業では、ボーナスが増えるということもあるでしょう。
また、コロナ禍の影響を受けて、ボーナスの使い道も変化しつつあるようです。
同調査によると、冬のボーナスの使い道について「貯金」と答えた人は38%で、その目的は「収入の変化への備え」が40%と、前年度比で約13%増加しています。さらに、ボーナスの使い道に「貯金・預金」を選んだ人の中では、ボーナスの半分以上を貯金したいと考えている人は61.6%。前年度比で約8%も増えています。さらなる経済の悪化に備えて、貯蓄の意識が高まっているようです。
〈図〉ボーナスを貯金・預金に回す割合

株式会社ロイヤリティ マーケティング「第43回 Ponta消費意識調査」2)より
ボーナスが減って家計が苦しい…と思っている人もいるかもしれませんが、そもそもボーナスは、企業の業績によって支給額も変化する不確かなもの。ボーナスに依存した家計になっていた人にとって、コロナ禍は使い方を見直すチャンスなのです。この記事を参考にボーナスの理想的な使い方を身につけて、アクシデントに左右されにくい盤石な家計を目指しましょう。
みんなのボーナスの使い道は?世代別・世帯構成別のボーナス事情

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ボーナスの使い道、もらった人の過半数は「貯蓄」に充てる
それでは、ボーナスが一般的にどのように使われているのか、詳細を見ていきましょう。
2020年の夏のボーナスに関するデータになりますが、消費者庁が2020年6月に実施した「ゴールデンウィークの過ごし方及びボーナスの使途予定に関する意識調査結果」3)を参考にします。
ボーナスの使い道として当てはまるもの全てを答えてもらったアンケートでは、29.7%の人が「貯蓄」に充てると回答。なお、「ボーナスはなし」と答えた人が全体の35%いたため、実質的にボーナスをもらった人の半分近くの人が(一部であっても)「貯蓄」に充てると答えています。また、他の使い道としては、ローンの返済と国内旅行と回答した人は11〜12%、外食や生活家電、衣料・ファッション雑貨、教育関連と回答した人は6〜9%。「特に決めていない」と回答した人は13.1%でした。
調査の中には含まれていませんが、FPとして様々な方のお話を聞いている中では、ボーナスは夏休み、冬休みの時期に支給されることから「休暇中の帰省費用に回す」という人も多い印象です。
〈表〉2020年 夏のボーナスの使い道
使い道 | 当てはまると答えた人の割合 |
---|---|
貯蓄 | 29.7% |
ローンの返済 | 11.8% |
国内旅行 | 11.5% |
外食 | 8.8% |
生活家電 | 7.7% |
衣料・履物・ファッション雑貨 | 7.0% |
教育・教養関連 | 6.3% |
趣味・娯楽サービス | 4.7% |
自動車・バイク関連 | 4.3% |
食品・飲料 | 4.0% |
趣味・娯楽用品 | 3.7% |
AV・情報家電 | 3.4% |
住宅関連 | 3.1% |
家具・インテリア等 | 2.9% |
金融商品への投資 | 2.9% |
海外旅行 | 2.7% |
理美容関連 | 1.9% |
時計・宝飾品 | 0.7% |
その他 | 2.8% |
特に決めていない | 13.1% |
ボーナスはなし | 35.5% |
20代は娯楽費が中心、30〜50代はローンの返済が多い
年代別で見ていくと、20代のボーナスの使い道はほかの世代とは大きく異なることがわかります。
なかでも「理美容関連」が19.4%というのは他世代と比べて圧倒的に高い数値になっています。さらには旅行、衣料・ファッション雑貨、自動車・バイク関連、趣味・娯楽用品に使うと答えた人も多く、他の年代と比較して個人の買い物を中心に消費していることが伺えます。
〈図〉ボーナスの使い道(年代別)

消費者庁「ゴールデンウィークの過ごし方及びボーナスの使途予定に関する意識調査結果」3)より
一見すると20代は“遊びすぎ”にも思えますが、自身への支出が多いのは、ローンの返済が少ないことが要因の1つ。大きな固定費を抱えていないということは、ボーナスの使い道を臨機応変に変えられるということで、そこはポジティブにとらえて良いでしょう。
一方でほかの世代を見てみると、30〜50代はローンの返済が多いことがわかります。特に住宅ローンはボーナス月に上乗せして支払う前提で設定することが多いかと思いますが、その場合は注意が必要です。
単身・二人・三人以上世帯で使い道に違いがある
また、世帯構成別でボーナスの使い道を見ていくと、単身と2人暮らしの世帯では「貯蓄」と回答した人の割合が20%前後ですが、子どものいる3人以上の世帯では30%以上でした。「教育関連の費用」に使うと回答した人も、単身と2人暮らしの世帯では1〜2%と少ないものの、3人以上の世帯では7〜11%と多くなっています。
さらに単身世帯では、趣味・娯楽用品に使うと答えた人の割合が5.8%と、ほかの世帯より多め。ボーナスの使い道は家族の有無によって変わってくることがわかります。
〈図〉ボーナスの使い道(家族構成別)

消費者庁「ゴールデンウィークの過ごし方及びボーナスの使途予定に関する意識調査結果」3)より
単身や2人暮らしの世帯で「貯蓄」に当てはまる人が少ないからといって貯蓄意識が低いかというと、そうとは限りません。
単身世帯の場合、働き手も一人なので、共働き世帯に比べると自由になる収入が少ないと考えられます。また、比較的若い人や高齢者層の占める割合が高いと思われることから、ボーナスの支給額が少なく、単純に貯蓄に回すほどの余裕がないというケースもあるでしょう。
2人暮らし世帯の場合も同様です。共働き世帯では単身世帯よりも余裕が生まれる傾向にありますが、働き手が1人だと所得が足りないというケースが考えられます。このように、貯蓄に回したくても回せない世帯は決して珍しくありません。
FP直伝!ボーナスの使い道の理想の配分とは?

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ボーナスの使い道、理想の配分は?
ここからは、ボーナスの使い道の配分を考えていきましょう。
まず基本的な考え方として押さえてほしいのが、固定費をボーナスで支払うことを避けるということです。
繰り返しになりますが、ボーナスの支給額は企業の業績や社会情勢に左右されます。リーマンショックやコロナ禍のような未曾有の経済危機が起きた時、ボーナスの支給を前提とした家計管理をしていると、生活が一気に苦しくなってしまいます。家賃や生活費などの日々の生活で必ず発生する固定費を、月々の給与でカバーできるような家計を作っておくことが大切です。
では、ボーナスはどのように使うのが理想的なのでしょうか。支給額によっても異なるのであくまでも目安ではありますが、20代〜30代であれば「貯蓄:5割、お小遣い:3割、自己投資:2割」という配分がおすすめです。
〈図〉ボーナスの理想の配分

ボーナスの半分は貯蓄に回そう
ボーナスの半分は可能な限り貯蓄に回すようにしましょう。これをあらかじめ決めておくことで、定期的にまとまった金額を貯金できるのはもちろんのこと、日々の家計管理におけるボーナスへの依存度も自然と下がります。
新型コロナウイルスの感染が収まったとしても、今年受けた経済的ダメージによる影響は来年以降もしばらく続くでしょう。今年ボーナスを減額した企業がV字回復するとは考えにくい状況です。コロナ禍は長引くことを覚悟し、いざという時の貯蓄を用意しておくことは、今年は特に重要です。
不安な時代、2割はスキルアップや投資に
資格取得や副業のための勉強といった自己投資にも取り組んでください。経済が不安定な時代には、資格やスキルを身につけておくことが武器になります。
実際にリーマンショックの時には、資格手当による給与アップを目指す人や、再就職したいという主婦層のニーズが高まって、資格取得がブームになりました。2021年も同様に、手当や副業による収入アップを目指す人が増え、資格に注目が集まると思われます。
資格取得の勉強を始める際にある程度まとまったお金が必要になることも多いので、ボーナスが支給されるタイミングこそ勉強の始めどきです。テレワークや残業の減少によって空いた時間を有効活用し、社会情勢の変化に強いビジネスパーソンを目指しましょう。
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投資などの資産運用を始めてみるのも一つの手です。その場合、勉強のためのお金と考えて、まずは「自己投資」の配分の中から出すようにすると良いでしょう。

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我慢しすぎは禁物。お小遣いに3割回してOK
もちろん、せっかくのボーナスなので、あまり我慢しすぎるのも禁物。3割ほどはお小遣いに回し、旅行や外食、高価な洋服、家電やインテリア家具など、普段は手の届かないものを購入しても良いでしょう。休暇中の実家への帰省費用もここに含めます。
住宅ローンに使う場合は、ルールを決めて
現実問題として住宅ローンの支払いなどにボーナスを使わないといけない場合もあります。その際には、「貯蓄:5割、お小遣い:3割、自己投資:2割」の配分から貯蓄とお小遣いから1割ずつ減らすなどして、支払いに回してください。ただし、貯蓄を減らして予算を捻出するのがクセになると、お金は一向に貯まりません。高額な支払いをボーナスに任せるのは基本的に避け、貯蓄に回す4〜5割はどんな場合でもなるべく維持できるように心がけましょう。
こんな場合はどうする?パターン別・ボーナスの使い道の決め方
ここまでは一般的におすすめしたいボーナスの使い道を紹介しましたが、なかには理想の配分を実現するのが難しく感じる人もいるはず。パターン別に注意点を解説します。
結婚して子どものいる家庭の場合

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教育費や養育費にボーナスを回しがちですが、可能な限り「貯蓄:5割、お小遣い:3割、自己投資:2割」の配分を目指しましょう。もちろん、学校行事や入学金の支払いなど、どうしても必要な費用を局所的にボーナスから確保するのは1つの手です。しかし、子どもを塾や習い事に通わせるなら、毎月の給与でやりくりできる範囲にとどめてください。
高額な教育費をボーナス決済で支払っていると、ボーナスが途絶えただけで家計も破綻してしまいます。最悪の場合、高校や大学の学費すら用意できない事態になりかねません。
結婚や引越しなどのライフイベントを控えている場合

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これからもらえるボーナスを見込んだ上で、ライフイベントの支払いを想定するのは危険です。ボーナスが支給されなかった際、ライフイベントごと中止せざるを得なくなります。
また、勤め先のボーナスがカットされる時はその後の収入も厳しくなる可能性が高いということです。なんとかライフイベントを行うことができても、新生活の費用や家賃の支払いが苦しくなる可能性もあります。大きな出費を伴うイベントは、ある程度の余剰資金をプールしてから検討することが大切です。
住宅ローンを組んでいる場合

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ライフイベントを控えている場合と考え方は同様で、あてにしていたボーナスでの返済ができなくなってしまうと、家を手放さなければならなくなるリスクもあります。住宅価格はタイミングによって変動するため難しい部分もありますが、なるべくボーナス返済なしで購入できる価格帯の住宅を選びましょう。
こんな使い方をしている人は要注意!ボーナスの使い方NG例

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ボーナスを使う時にありがちな失敗についても、見ていきましょう。
前述した消費者庁の調査3)によると、ボーナスの使い道として「特に決めていない」と回答した人は13.1%でした。このように“なんとなく使っている人”が陥りがちなのが、日頃の赤字をボーナスで帳消しにしているケースです。こういったケースは本当に多いのです。
たとえば、貯金をしたい気持ちはあるものの思うように貯まらず、残高は減るばかり。減ったぶんの貯金をボーナスで補填して帳尻を合わせている……なんて状況に心当たりはないでしょうか。あるいは、クレジットカードのボーナス払いを気軽に利用した結果、ボーナスのほとんどが手元に残らなかったという人もいるかもしれません。
このように、毎月の負債をボーナスでカバーするような家計になっている場合、ボーナスを貯蓄に回すことは難しいでしょう。ボーナスを有効活用するためには、まずは毎月の収支を黒字化させないといけません。毎月の家計を月収の範囲内に収めて黒字体質にすることが、スタートラインになります。

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多くの場合、こうした赤字を引き起こしている大きな原因は、冠婚葬祭に呼ばれたり、壊れた家電を修理したりといった臨時支出です。その内容こそ様々ですが、臨時支出は多かれ少なかれ毎月発生するもの。これらが想定外の出費になり、貯金を切り崩すことやボーナス払いの利用につながるケースが多いのです。
それを避けるために、食費やお小遣いなどと同様に、臨時支出のための予算をあらかじめ用意するようにしましょう。これによりイレギュラーな状況で家計管理を狂わされることもなくなり、自然と「理想のボーナスの使い方」ができるようになるはずです。
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新型コロナウイルスはボーナスの使い方を見直す機会

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繰り返しになりますが、2020年の冬はボーナスの使い方を見直す貴重な機会です。もちろん、コロナ禍の影響でボーナスがカットされたことで、各種支払いが苦しくなった人も多いでしょう。ですが、これを機にボーナスに依存していた現状を見直し、ボーナスを貯蓄できるようにシフトチェンジすれば、強い家計へと生まれ変わらせることも可能です。
また、時間やお金に余裕のある人は、ぜひ自己投資にもトライしてみましょう。しばらくは厳しい社会情勢が続きますが、自分のスキルや収益の柱を増やしておくことは、時代に左右されない有効なセーフティネットになるはずです。
この記事の監修者

氏家 祥美(うじいえ よしみ)
ハートマネー代表。ファイナンシャルプランナー/キャリアコンサルタント。子育て世帯、共働き夫婦の家計相談に豊富な実績を持ち、「幸福度の高い家計づくり」を総合的にサポートしている。オンラインでの家計相談やマネー研修も実施中。
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