ボーナスの理想的な使い方をマスターすれば、しっかり貯金もしながら、将来に向けた自己投資にお金を割くことも可能です。この記事では、ファイナンシャルプランナーの氏家祥美さん監修のもと、ボーナスの平均額や一般的な使い道などのデータを紹介しながら、おすすめのボーナスの使い道について解説します。
※この記事は、2022年10月26日に更新しています。
この記事の監修者
氏家 祥美(うじいえ よしみ)
ハートマネー代表。ファイナンシャルプランナー・キャリアコンサルタント。子育て世帯、共働き夫婦の家計相談に豊富な実績を持ち、「幸福度の高い家計づくり」を総合的にサポートしている。オンラインでの家計相談やマネー研修も実施中。
ボーナスの平均支給額は約38万円
まずは、ボーナスの平均支給額を見ていきましょう。厚生労働省の「毎月勤労統計調査」1)2)によると、2020年、2021年の夏季・冬季におけるボーナスの平均支給額は以下のとおりです。
〈表〉ボーナスの平均支給額
2020年 | 2021年 | |
---|---|---|
夏季 | 380,439円 | 380,268円 |
冬季 | 380,481円 | 380,787円 |
夏季・冬季ともに約38万円が支給されていることがわかります。また、調査対象となっている各事業所では、平均してボーナス1回につき約1カ月分の給与相当額が支給されています。なお、この平均支給額は、民間企業が対象となっているため、公務員の場合には平均支給額が異なります。また、上記のデータは全体の平均ですが、ボーナスの支給額は業界や企業規模によって異なります。詳しくは以下の記事で紹介しているので、ぜひ併せて見てみてください。
みんなのボーナスの使い道は? 「貯金・預金」が1位
それでは、ボーナスが一般的にどのように使われているのか、詳細を見ていきましょう。
株式会社ロイヤリティ マーケティングが実施した「第53回 Ponta消費意識調査 2022年6月発表」3)によると、2022年夏のボーナスの使い道ランキングは、以下のようになっています。
〈図〉2022年夏のボーナスの使い道
「支給されない・分からない」の回答を除くと、「貯金・預金」が一番多く、34.8%となっています。同調査では2018年からトップを取り続けており、ボーナスの使い道として預貯金を選択する人が多いことがうかがえます。
つぎに多いのが「旅行」で7.8%。コロナ禍だった2020年、2021年は減少傾向が続いていましたが、2022年は昨年の5.2%から2.6%増加しており、旅行需要の回復が読み取れます。一方で、3位の「食品」も昨年の5.3%から増加し、6.4%となっています。こちらはコロナ禍以降上昇が続いており、家での食生活の充実化が進んでいると考えられます。
そのほか、特徴的な部分としては8位の「投資信託」が挙げられます。2019年0.9%、2020年1.1%、2021年1.9%、2022年2.8%と3年連続で増加しており、9位の株式と併せて投資への関心の高まりが読み取れます。
ちなみに、調査の中には含まれていませんが、FPの氏家さんの経験によるとボーナスは夏休み、冬休み前の時期に支給されることから「休暇中の帰省費用にまわす」という人も多いそうです。
ボーナスの半分以上を「貯金・預金」したい人は約6割
同じく「第53回 Ponta消費意識調査 2022年6月発表」によると、支給されるボーナスのうち、貯金・預金したい金額の割合は以下のようになっています。
〈図〉支給されるボーナスのうち、貯金・預金したい金額の割合
50%以上という回答が全体の58.1%と約6割に上ります。また、貯金・預金する用途については、42.7%の人が「決めている」と回答しており、その内訳は以下のようになっています。
老後の生活や将来の消費への備えなど、長期的なお金の備えのために貯金・預金をしている人が多くなっています。
FP直伝! ボーナスの使い道の理想の配分とは?
ここからは、ボーナスの使い道の配分を考えていきましょう。
まず基本的な考え方として押さえてほしいのが、固定費をボーナスで支払うことを避けるということです。
ボーナスの支給額は会社の業績や社会情勢に左右されます。リーマンショックやコロナ禍のような未曾有の経済危機が起きた時、ボーナスの支給を前提とした家計管理をしていると、生活が一気に苦しくなってしまいます。家賃や生活費などの日々の生活で必ず発生する固定費を、月々の給与でカバーできるような家計を作っておくことが大切です。
では、ボーナスはどのように使うのが理想的なのでしょうか。支給額によっても異なるのであくまでも目安ではありますが、20代〜30代であれば「貯蓄:5割、お小遣い:3割、自己投資:2割」という配分がおすすめです。
〈図〉ボーナスの理想の配分
ボーナスの半分は貯蓄にまわそう
ボーナスの半分は可能な限り貯蓄にまわすようにしましょう。これをあらかじめ決めておくことで、定期的にまとまった金額を貯蓄できるのはもちろんのこと、日々の家計管理におけるボーナスへの依存度も自然と下がります。
不安な時代、2割はスキルアップや投資に
資格取得や副業のための勉強といった自己投資にも取り組むとよいでしょう。経済が不安定な時代には、資格やスキルを身につけておくことが武器になります。
実際にリーマンショックの時には、資格手当による給与アップを目指す人や、再就職したいという主婦層のニーズが高まって、資格取得がブームになりました。
資格取得の勉強を始める際にある程度まとまったお金が必要になることも多いので、ボーナスが支給されるタイミングこそ勉強の始め時です。テレワークや残業の減少によって空いた時間を有効活用し、社会情勢の変化に強いビジネスパーソンを目指しましょう。
投資などの資産運用を始めてみるのも1つの手です。その場合、勉強のためのお金と考えて、まずは「自己投資」の配分の中から資金を出すようにするとよいでしょう。
我慢しすぎは禁物。お小遣いに3割まわしてOK
もちろん、せっかくのボーナスなので、あまり我慢しすぎるのも禁物です。3割ほどはお小遣いにまわし、旅行や外食、高価な洋服、家電やインテリア家具など、普段は手の届かないものを購入してもよいでしょう。休暇中の実家への帰省費用もここに含めます。
住宅ローンに使う場合は、ルールを決めて
現実問題として住宅ローンの支払いなどにボーナスを使わないといけない場合もあります。その際には、「貯蓄:5割、お小遣い:3割、自己投資:2割」の配分から貯蓄とお小遣いから1割ずつ減らすなどして、支払いにまわすようにしましょう。ただし、貯蓄を減らして予算を捻出するのがクセになると、お金は一向に貯まりません。高額な支払いをボーナスに頼るのは基本的に避け、貯蓄にまわす4〜5割はどんな場合でもなるべく維持できるように心がけましょう。
こんな場合はどうする? ライフスタイル別・ボーナスの使い道の決め方
ここまでは一般的におすすめしたいボーナスの使い道を紹介しましたが、中には理想の配分を実現するのが難しく感じる人もいるはず。ここからは、ライフスタイル別に注意点を解説します。
結婚して子どものいる家庭の場合
教育費や養育費にボーナスをまわしがちですが、可能な限り「貯蓄:5割、お小遣い:3割、自己投資:2割」の配分を目指しましょう。もちろん、学校行事や入学金の支払いなど、どうしても必要な費用を局所的にボーナスから捻出するのは1つの手です。しかし、子どもを塾や習い事に通わせるなら、毎月の給与でやりくりできる範囲にとどめるようにしましょう。
高額な教育費をボーナス決済で支払っていると、ボーナスが途絶えただけで家計も破綻してしまいます。最悪の場合、高校や大学の学費すら用意できない事態になりかねません。
結婚や引っ越しなどのライフイベントを控えている場合
これからもらえるボーナスを見込んだ上で、ライフイベントの支払いを想定するのは危険です。ボーナスが支給されなかった際、ライフイベントごと中止せざるを得なくなります。
また、勤め先のボーナスがカットされる時はそのあとの収入も厳しくなる可能性が高いということです。なんとかライフイベントを行うことができても、新生活の費用や家賃の支払いが苦しくなる可能性もあります。大きな出費を伴うイベントは、ある程度の余剰資金を貯めてから検討することが大切です。
住宅ローンを組んでいる場合
ライフイベントを控えている場合と考え方は同様で、あてにしていたボーナスでの返済ができなくなってしまうと、家を手放さなければならなくなるリスクもあります。住宅価格はタイミングによって変動するため難しい部分もありますが、なるべくボーナス返済なしで購入できる価格帯の住宅を選びましょう。
こんな使い方をしている人は要注意! ボーナスの使い方NG例
ボーナスを使う時にありがちな失敗についても、見ていきましょう。
前述した株式会社ロイヤリティ マーケティングの調査によると、ボーナスの使い道として「特にない」と回答した人は7.0%でした。このように“なんとなく使っている人”が陥りがちなのが、日頃の赤字をボーナスで帳消しにしているケースです。こういったケースは本当に多いのです。
たとえば、貯金をしたい気持ちはあるものの思うように貯まらず、残高は減るばかり。減った分の貯金をボーナスで補填して帳尻を合わせている……なんて状況に心当たりはないでしょうか。あるいは、クレジットカードのボーナス払いを気軽に利用した結果、ボーナスのほとんどが手元に残らなかったという人もいるかもしれません。
このように、毎月の負債をボーナスでカバーするような家計になっている場合、ボーナスを貯蓄にまわすことは難しいでしょう。ボーナスを有効活用するためには、まずは毎月の収支を黒字化しないといけません。毎月の家計を月収の範囲内に収めて黒字体質にすることが、スタートラインになります。
多くの場合、こうした赤字を引き起こしている大きな原因は、冠婚葬祭に呼ばれたり、壊れた家電を修理したりといった臨時支出です。内容こそ様々ですが、臨時支出は多かれ少なかれ毎月発生するもの。これらが想定外の出費になり、貯蓄を切り崩すことやボーナス払いの利用につながるケースが多いのです。
それを避けるために、食費やお小遣いなどと同様に、臨時支出のための予算をあらかじめ用意するようにしましょう。これによりイレギュラーな状況で家計管理を狂わされることもなくなり、自然と「理想のボーナスの使い方」ができるようになるはずです。
ボーナスをきっかけに家計やマネープランも見直してみよう
ボーナスは、年に1〜2回まとまったお金をもらえるせっかくの機会です。貯蓄や投資、買い物など人によって様々な使い道があると思いますが、この機会に、普段の家計や将来のマネープランと併せて見直しをしてみるのもよいでしょう。