「子どもにかかる教育費について不安はあるが、何から始めればいいかわからない」「自分なりに教育費を貯めているけど、足りているのだろうか」といった漠然とした不安を抱えている方は多いのではないでしょうか?
本ウェブセミナーでは、教育に必要な費用やすぐに始められる対策について、ファイナンシャルプランナーでマネコミ!監修者の一人でもある高山一惠さんが解説。子育て世帯が抱える悩みの解消につながるウェブセミナーとなりました。
この記事の監修者
高山 一恵(たかやま かずえ)
株式会社Money&You 取締役。ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。DCプランナー1級。東京都出身。慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを創業。10年間取締役を務めた後、現職へ。女性向けWEBメディア『FP Cafe®』や『Mocha』を運営。全国での講演活動、執筆、マネー相談を通じて、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく、親しみやすい講演には定評がある。
※セミナーは以下よりご覧いただけます。
教育費の前に「マネープラン」を立てて「支出」を見直す
子供のためだからとついつい、教育費にはお金をかけてしまうという方も多いもの。しかし、長い人生において、教育費以外にも、お金はさまざまな場面で必要になります。そこで、まずは「家族でマネープランを立てること」が重要です。
高山さん(以下敬称略)「昔に比べて、マネープランの重要性はどんどん増しています。国や企業が生活を守ってくれたバブル時代まではよかったのですが、その後の30年間は経済成長率が1%を下回るほど低成長で、収入は上がるどころか下がる場合も珍しくない状況だからです。さらに、高齢化社会による公的年金の不安や医療費負担増、終身雇用の崩壊などの問題も起き、最近の世界経済の状況から今後は、インフレが続く可能性もあります」
マネープランの最初に考えたいのが、人生の3大資金と呼ばれる「教育資金」「住宅資金」「老後資金」です。どれも数千万円単位という大きなお金がかかります。
高山「この3大資金をバランスよく、計画的に準備していかないと、家計が赤字に転落してしまうことも考えられます。そのため、何年後にどんなイベントがあり、どれくらいの資金が必要かを確認してみましょう。
マネープランを立てて、具体的に必要な資金がわかったら、まずは『家計管理』から始めます。
家計簿や家計簿アプリなどを活用して、支出を記録・分析することで、コンビニで“ついで買い”をしていたり、残業後にタクシーで帰ったりと、削減できるお金に気付くことも多いでしょう」
さらに、支出を『基本生活費』と『生活を豊かにするための費用』の二つに分けて集計するとよいというアドバイスもありました。
高山「『基本生活費』は、衣食住などを中心に、生活していくために最低限必要なお金のことです。また、『生活を豊かにするための費用』は、旅行やレジャー、交際費などのことです。これらを分けて把握しておくと、不測の事態があっても対処しやすくなるでしょう。
さらに、今後1年以内の特別支出の確認も大切です。特別支出とは、冠婚葬祭や家電の買い替えなどにあたります。こうした支出が発生すると、大きく貯蓄を取り崩してしまう可能性があるため、事前に予算としてとっておくとよいでしょう」
大学までに必要な教育費を長期的な目線で把握しよう
ここからが、本題の教育費についてです。文部科学省「子供の学習費調査」(平成30年度)によると、幼稚園から大学卒業までにかかる総額は、小学校、中学校、高等学校とすべて公立で1,000万円、同じくすべて私立で2,500万円です。
最近では、首都圏を中心に中学受験をする家庭も増え、塾に通う年齢も低年齢化しています。
高山「我が子は中学受験に向けて塾に通っていますが、月謝以外に夏期講習や冬期講習などの費用もかかります。場合によっては、塾についていくためのフォローで別の塾に行ったり、家庭教師をつけたりするケースもあります。一口に教育費といっても、進学プランによって大きく変わるので、しっかり考えてみてください」
高山「高校までの費用は家計から捻出するのが基本的な考え方です。
公立に通う場合は、小学校で月2.7万円、中学と高校は月4万円程度です。一方で私立の場合は、小学校と中学では、月10~12万円、高校は月7~8万円程度です。こちらの金額が家計から出せるかを確認してみてください。
そして、大学は4年間で300~500万円程度かかるので、この費用を子どもが18歳になるまでに貯めていきましょう」
教育費の準備は、早く始めてコツコツ積み立てがおすすめ
ここまでの話を踏まえて、主に大学のための教育費の準備をしていく必要があることがわかりました。そこで、その準備方法について確認しましょう。
高山「教育費は、できるだけ早く貯め始め、子ども一人一人に対して、コツコツ積み立てて準備することが大切です。そのためには、先取りで自動積立できるものがよいでしょう。例えば、財形貯蓄、自動積立定期預金、こども保険(学資保険)、低解約返戻金型終身保険などがあります。
さらに、支給される児童手当をすべて貯めていくと、約200万円になります。2022年の10月から所得制限があり、年収1200万円以上の家庭では児童手当がもらえませんが、こちらは夫婦どちらかの年収で判断されます。例えば年収600万円ずつで、世帯年収1200万円の家庭では、児童手当は支給されることになります」
大学資金として500万円を準備したい場合、児童手当で200万円を貯めることができれば、残り300万円を貯めればよいことになります。
家計に余裕があり、積極的に増やしていきたい場合は、投資商品を使ってお金を貯める選択肢もあります。
高山「選択肢の一つとして、つみたてNISAがあげられます。年間投資金額が40万円までで、その投資から得られた利益は非課税になるという仕組みです。投資信託が主な対象商品で、金融庁から、中長期的に安定してお金を増やしていけるラインアップのため、投資初心者の方も安心して始められるのではないでしょうか。
途中でお金が必要になったときは、いつでも引き出すことができるので、柔軟に資金を活用できます」
さらに、年収500万円の家庭で、教育費を貯めるモデルケースを紹介していただきました。
高山「もしもに備えるお金として、生活費の半年から1年分は確保しておくとよいでしょう。大学資金用の預貯金とは別で、児童手当もここに全額貯めておきます。つみたてNISAは、大学資金の不足分に充てることもでき、そのほかの用途にも使うことができます。iDeCoにより軽減できた税金の年4万円程度を貯蓄しておきましょう」
このロードマップを参考に運用していくことで確実に教育費が貯められ、教育費以外の資金も効率的に積み立てられるのではないでしょうか。
教育費の「助成制度」も調べよう
教育費の助成制度を調べておくことの重要性についてもお話がありました。
高山「国や自治体の助成制度なども調べておきましょう。高校は授業料無償化制度があり、私立高校に進学する場合でも、両親の一方が働いている場合で、高校生・中学生の4人家族のケースでは、年収590万円未満なら年間39万6,000円、年収590万円以上910万円未満なら、年間11万8,800円までが助成されます。
令和3年の東京都の私立高校の平均額は、入学金が16万円くらい、授業料が44万円くらいですので、授業料の負担がかなり減るのではないでしょうか」
支援の対象になる世帯年収は、お子様の数、ご両親が共働きかどうかによって異なります。文部科学省の『私立高校実質無料化リーフレット』などで確認しておきましょう。
質疑応答~実際のお困りごとを紹介~
当日は、視聴者のみなさんからたくさんの質問が寄せられました。高山さんからの回答とあわせてご紹介します。
※以下Q&Aについては高山氏の見解としての意見です。
Q)つみたてNISAに関心がありますが、20年間続けて、元本割れする可能性はあるのでしょうか。
A)投資に“絶対”というものはありませんので、元本割れがまったくないとは言えませんが、金融庁の資料を見ると、「長期」「積み立て」「分散投資」の3つを心がけることで、過去の実績では、20年間投資すると2~8%の収益率におさまるというデータがあります。過去において損失はないということですので、安定的に増やせる可能性が高いのではないでしょうか。
Q)15年後の教育費を貯めたいと思ったら、貯蓄か、つみたてNISAか、一般のNISAか保険か、どれがよいでしょうか。
A)投資商品は、一般的には投資期間が短い場合にはおすすめしていません。10年以上が目安になりますが、「15年後」ということでしたら十分でしょう。おすすめはつみたてNISAになります。ただ、投資には“絶対”はないので、せっかく15年コツコツ積み立てていたのに、大暴落をしてしまっては大変。なので、貯蓄や保険商品などと組み合わせた方がよいと思います。
Q)「NISAが利用できるのは日本在住の人」だそうですが、海外に転勤になる場合はどうしたらよいでしょうか。
A)2019年度の税制改正により、最長5年の海外転勤・赴任になった場合、届け出によって、これまで一般NISA・つみたてNISAで保有してきた資産をNISA口座で保有できるようになりました。新たに資金を出して積み立てはできませんが、運用は続けることができます。対応している金融機関は少ないですが、調べてみてはいかがでしょうか。
Q)教育費の貯蓄をするなら、子ども名義がよいのでしょうか。
A)子ども名義にすると、子どもの成人後にお金を引き出すときにお子さんに無断で引き出せなかったり、お子さんがアルバイトなどで銀行口座を作らなければならないときに、同じ銀行ではもう一つ口座を作れないということもあります。子ども名義にすると、貯蓄が“見える化”できるとは思いますが、特に子ども名義ではなく、ご自身の名義で教育資金を貯めていくのがよいのではと思います。
あなたの教育費の悩み、プロに相談してみては?
教育費が心配なときに、最初に考えるべきマネープランや、大学までに必要な資金の目安、そして子どもが小さいうちからコツコツと準備していくことの大切さなど幅広い内容のウェブセミナーでした。
個人的なお悩みのご相談がある場合や、より詳しく知りたい場合には、お金のプロへの相談サービスを利用するのもひとつの手です。東京海上日動あんしん生命では、相談相手とのマッチングサービスを行っています。ご自身の情報や関心事項を入力すると、あなたにおすすめのお金のプロが見つかります。ぜひ一度確認してみてはいかがでしょうか。
子どもが成長するにつれて必要になるお金を“見える化”し、お金が貯まる、増える仕組み作りができるように、今すぐ始めませんか? 今回の記事とウェブセミナーをご参考にしてみてください。
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