この記事では、ファイナンシャルプランナーの荒木千秋さん監修のもと、医療費控除の対象となる交通費や、対象外となる交通費をわかりやすく解説します。本人以外の交通費も認められるケースや、確定申告の手順もご紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
※この記事は2022年9月11日に公開した内容を最新情報に更新しています。
通院にかかった交通費は医療費控除の対象
結論からいうと、通院にかかった交通費のほとんどは、医療費控除の対象です(対象外となる交通費については後述)1)。確定申告時に医療費控除を申請すれば、所得金額の控除を受けられ、所得税額が少なくなる可能性があります。
持病がある人や高齢者は、通院する日数も多く、交通費が多くかかるものです。そうした負担を少しでも減らすためにも、電車やバスを多く利用する人は、医療費控除の申請をするとよいでしょう。
なお、医療費控除を受けられる金額の基準については、下記の記事で詳しく解説しています。興味がある人は、併せてご覧ください。
【関連記事】医療費控除の対象となる医療費はいくらから? 10万円以下でも利用できる? 詳しくはコチラ
参考資料
医療費控除の対象となる交通費と領収書について
医療費控除の対象に含まれる可能性があるのは、以下3つの交通費です1)。
①電車代
②バス代
③新幹線代や飛行機代
2017年分の確定申告から、医療費控除の適用を受けるためには「医療費控除の明細書」が必要になりました。それに伴い、申請時に医療費の領収書の添付が不要になりました。
ただし、医療費控除の明細書に書かれた内容を確認するため、税務署から領収書の提示や提出を求められる場合があります。そのため万が一に備えて、確定申告期限から5年間は領収書を捨てずに保管しておくほうが安心でしょう。また、金額や利用日を忘れないように以下の内容を手帳やスマホのメモ機能に記録しておくのがおすすめです。
- 利用日
- 行き先
- 病院名
- 鉄道会社
- 支払金額 など
なお、電車やバスなどの交通費の医療費控除の明細書の書き方は後述します。
医療費控除の対象外となる2つの交通費
ほかによい交通手段がない場合は、自家用車やタクシーが選択肢になりがちです。しかし、自家用車を使った際にかかった費用や、タクシー代は原則として医療費控除の対象外です。以下で詳しく解説します。
①自家用車を使った際にかかった費用
自家用車での移動は便利ですが、それにかかった費用は医療費控除の対象外です。この場合の費用には、駐車場の利用料金やガソリン代、高速代などが該当します。
自家用車の費用が対象外である理由は、「通院には公共交通機関の利用が妥当」と国が判断しているためです。しかし、病状などによっては、自家用車での移動が必要な状況があるでしょう。その場合はタクシーの利用がおすすめです。このあとに説明しますが、タクシー代は例外的に医療費控除が認められることがあります。
②タクシー代
タクシー代は、原則医療費控除の対象外です。ただし、以下の場合では例外的に認められます。
- 深夜に緊急で病院にかかった
- 公共交通機関では通えない病院に通院している
- 妊娠の陣痛により、公共交通機関の利用が難しい
上記のように、緊急を要する場合や、タクシー移動が妥当であると判断される場合は医療費控除の対象として認められます。妊娠中の人は、陣痛などで電車やバスを利用できないケースもあるでしょう。その場合は、タクシーを使って移動することがおすすめです。
交通費が医療費控除の対象になる2つの特殊なケース
医療費控除の対象となるのは、原則自分が負担した通院のための交通費ですが、以下の費用も対象となる可能性があります。
それぞれ詳しく解説します。
①付添人の交通費
付き添いが必要なシーンに限り、家族の分を含めた交通費は医療費控除の対象となります。具体的には、以下のような場合が対象となります。
- 配偶者や子ども、高齢の家族の通院で付き添いをした
- 足が不自由など、移動に不安がある人の通院に付き添いをした
安全に通院するために付添人が必要な場合には、家族分の交通費も医療費控除の対象となります。ただし、自力での通院が可能な人に同伴した場合は、対象外になるため注意が必要です。
②訪問診療の医師を招くための送迎費
医師の訪問診療で発生する費用は、すべて医療費控除の対象となります。治療費はもちろん、医師の送迎費も含まれます。
つまり、在宅で治療にかかった費用は医療費控除の対象となります。診療以外に、介助サービスでも同様に控除を受けられます。ただし、料金体系によっては控除の対象外のものもあるため、事前に病院の担当窓口で詳細を確認しましょう。
虚偽の申告をするとペナルティーが課される
医療費控除は、確定申告をすることで受けられます。内容は自己申告ですが、正しい情報であることが前提です。もし虚偽の内容を申告すると、不正と見なされペナルティーが課せられるため、注意しましょう。
場合によっては、確定申告の内容の真偽を確かめるために、税務署の職員による税務調査が入ります。税務署の職員が来たら、拒否をせず自宅に招き入れ、領収書などの必要書類を提出しましょう。
確認中に誤った申告が見つかれば、正しい所得税が計算され、重加算税が課せられる場合があります。また、過去の申告内容をチェックされることもあります。延滞税が上乗せされる可能性もあるため、確定申告は正しく行いましょう。
医療費控除明細を使った交通費の書き方
医療費控除を受けるためには、医療費控除の明細書を確定申告書と一緒に提出します。この明細書の中で「交通費」について記載する場合、つぎのようになります。
例)安心太郎さんが○△病院に通院した場合の交通費の書き方
- 10月18日 診療:6,500円 交通費(JR、○○バス)往復780円
- 11月28日 診療:5,500円 交通費(JR、○○バス)往復780円
- ○△病院計:1万2,000円 交通費計:1,560円
基本的には通院した病院とセットで交通費を記載します。交通機関の乗り継ぎなどによって、支払先が複数ある場合であっても、1つの行にまとめて記入します。
なお、助成によって、医療費が0円になる場合は交通費のみ記載することになります。
医療費控除を受けるための確定申告のやり方
はじめて確定申告を行う人は、手順がわからず困ってしまうこともあるでしょう。医療費控除を受けるための確定申告の手順を、以下の4ステップに分けて解説します。
それぞれ詳しく解説します。
【STEP1】確定申告に必要な書類を準備する
まずは、確定申告に必要な書類を揃えましょう。具体的には、以下のとおりです。
- 確定申告書
- 医療費控除の明細書(詳しくは後述)
- マイナンバーカード
(持っていない場合は通知カードと本人確認書類) - 医療費の領収書(※保管しておくことを忘れずに)
確定申告書の原紙は国税局のウェブサイトから印刷するか、自治体の役所や税務署でもらいましょう。マイナンバーカードや本人確認書類も準備しておきます。
【STEP2】確定申告書、医療費控除の明細書を作成する
必要な書類が準備できたら、確定申告書と医療費控除の明細書を作成します。基本的には、確定申告の一環として医療費控除の入力を進めます。
確定申告の際には、年間収支の記録が必須です。会社員や専業主婦(夫)は確定申告書A、フリーランスや個人事業主はBを目安に選んでください。確定申告書では、給与や副業などの所得を記入します。給与所得は、会社から発行される源泉徴収票などを参考にしましょう。
医療費控除の明細書は、国税庁のウェブサイトから取得できます。なお、健康保険組合などが発行する「医療費のお知らせ」があれば、代わりに添付することで明細書の記入が省略できます。
医療費控除を受けるには、医療費の計算が必要ですが、年間の医療費をすべて手動で計算することは面倒な作業でしょう。国税庁では、医療費を自動で計算してくれる「医療費集計フォーム」を提供しています。ファイルはエクセル形式で、金額を入力すると、自動で計算してくれるためとても便利です。また、前述したように交通費がある場合は医療費控除の明細書に記載して提出しましょう。
- 病院や薬局名(交通費もここに入力)
- 医療費
- 利用年月日
すべての入力を終え、明細書作成ボタンをクリックすると自動的に明細が作成されます。
【STEP3】書類ができたら、税務署に提出する
確定申告には、3つの提出方法があります。
(1)所轄の税務署に持参する
(2)所轄の税務署に郵送する
(3)国税庁のウェブサイトで作成した確定申告書をe-Tax(インターネット)で送信する
確定申告で使用した領収書類は、5年間の保管義務があるので、捨てずに必ず保管しましょう。紙面で記入した場合は税務署に持参するほか、郵送も可能です。
マイナンバーカードを持っている人は、国税電子申告・納税システム(e-Tax)のウェブサイトから送信が可能です。会計サービスとe-Taxを併用すると、オンラインで確定申告が完結できるので便利です。
なお、以下の記事では医療費控除の計算方法や、明細書の詳しい書き方などを解説しています。興味のある人は、併せてご覧ください。
【関連記事】医療費控除でいくら戻る? 計算方法や還付金額のシミュレーションについて詳しくはコチラ
【STEP4】口座への入金を確認する
口座振り込みをお知らせするハガキが届きます。内容に間違いがないか念のため確認しましょう。還付金の振り込みは確定申告後、1カ月から1カ月半程度かかると想定しておきましょう。
通院に交通費がかかったら控除申請をしよう
移動手段によって、交通費が医療費控除に含まれるかが異なります。電車やバスなどの公共交通機関は控除の対象ですが、タクシーや新幹線、飛行機、自家用車を使った際の費用は基本的に対象外です。ただし、タクシーや新幹線、飛行機代はやむを得ないと認められれば控除の対象となるケースがあるので、この記事を参考に条件を覚えておくとよいでしょう。
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医療費控除の制度を利用すれば、自己負担額をある程度抑えることができますが、医療費の負担が少ないわけではありません。もしもの時のために、普段から貯蓄や保険を意識して備えることが大切です。
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