単身赴任手当とは、単身赴任の際に会社から支給される手当の総称です。どのような手当があり、実際にどのくらいの金額を受け取れるのか、気になる人も多いでしょう。

今回は、ファイナンシャルプランナーの氏家祥美さん監修のもと、単身赴任手当の相場を公務員と民間企業に分けて紹介します。代表的な単身赴任時の手当や、単身赴任をする際に会社に確認すべきポイント、支給条件なども徹底解説。この記事を読めば、単身赴任手当の理解を深められるでしょう。

この記事の監修者

氏家 祥美(うじいえ よしみ)

ハートマネー代表。ファイナンシャルプランナー・キャリアコンサルタント。子育て世帯、共働き夫婦の家計相談に豊富な実績を持ち、「幸福度の高い家計づくり」を総合的にサポートしている。オンラインでの家計相談やマネー研修も実施中。

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単身赴任手当の相場は? 公務員と民間で異なる

画像: 画像:iStock.com/bankrx

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単身赴任手当の相場は、以下のとおりです。

  • 公務員の場合:基本は3万円で、距離加算もある1)
  • 民間企業の場合:平均4万7,600円2)

単身赴任手当は、一般的に公務員よりも民間企業のほうが高額です。ただし、公務員の場合は単身赴任先と家族が住んでいる住居との距離に応じ、金額が加算されます。それぞれ詳しく解説します。

①公務員の場合:基本は3万円で、距離加算もある

公務員の場合、人事院規則により単身赴任手当の金額や支給条件が定められており、基本の支給額は3万円です。そこから補足的な処置として、新たな住居から配偶者の住む家までの距離に応じた手当額が加算されます。距離による加算額は以下のとおりです。

〈表〉公務員の単身赴任手当の距離による加算額1)

距離金額
100〜300km8,000円
300〜500km16,000円
500〜700km24,000円
700〜900km32,000円
900〜1,100km40,000円
1,100〜1,300km46,000円
1,300〜1,500km52,000円
1,500〜2,000km58,000円
2,000〜2,500km64,000円
2,500km〜70,000円

単身赴任先が自宅から遠方になるほど、手当の金額が高くなると覚えておくとよいでしょう。

②民間企業の場合:平均4万7,600円

民間企業の場合、単身赴任手当の金額は平均で4万7,600円です。

また、規模が大きな企業ほど、単身赴任手当を支給している割合が高いです。企業規模ごとの単身赴任手当を支給している割合を、以下の表にまとめたのでご覧ください。

〈表〉企業規模別の単身赴任手当の支給割合2)

企業規模支給割合
全体13.1%
1,000人〜66.6%
300〜999人41.4%
100〜299人22.0%
30〜99人5.3%

1,000人以上では66.6%、30〜99人では5.3%と、企業規模により単身赴任手当の支給割合が大きく異なりますが、支給される金額に大きな違いはありません。

単身赴任の代表的な5つの手当

画像: 画像:iStock.com/byryo

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単身赴任時の代表的な手当は、以下の5種類です。

①単身赴任手当
②住宅手当、家賃補助
③引っ越し手当
④帰省旅費手当
⑤着後手当

単身赴任時にもらえる手当には、支給の目的に応じていくつかの種類があります。支給される手当の種類は会社によって異なります。ここでは代表的な5つの手当を紹介します。

①単身赴任手当:二重にかかる生活費の補助

「単身赴任手当」とは、二重にかかる生活費の補助となる手当です。単身赴任中は家族と離れて生活するため、生活費が二重にかかってしまいます。

具体的には、水道光熱費やインターネット代、家賃などが単身赴任先でもかかります。新たな住居で使う家具や家電を購入する必要もあります。単身赴任手当は、増えてしまった生活費を補助してくれるありがたい存在です。

単身赴任の際にかかる生活費について詳しく知りたい人は、以下の記事も併せてご覧ください。どのような費用がかかるのかを詳しく解説しています。

【関連記事】単身赴任の生活費は平均いくら? 詳しくはコチラ

②住宅手当、家賃補助:転勤先の住居費の補助

「住宅手当」や「家賃補助」は、単身赴任先の住居費の補助に充てられる手当です。単身赴任の場合、家族を本来の住まいに残して、新たに単身赴任先に家を借りることになるため、2軒分の住居費が必要になります。そのため、単身赴任先の住居費の補助として、住宅手当や家賃補助を支給する企業が多くなっています。

金額については、住居の家賃を基準に決定されます。家賃の何割が支給されるかは企業によって異なるため、確認が必要です。家賃の大部分を負担してくれる企業もありますが、ごく一部しか補助のない企業もあります。

③引っ越し手当:転勤先への引っ越し費用の補助

「引っ越し手当」とは、単身赴任先への引っ越し費用を補助する手当です。引っ越し業者への支払いに加えて、新たな住居の敷金・礼金や仲介手数料を負担してくれる場合もあります。企業によっては鍵交換費用や火災保険料なども負担してくれる場合があるので、手当の支給範囲を確かめておくとよいでしょう。

また、春や秋など引っ越しが重なる季節は、引っ越し料金が高騰します。勤務先の引っ越し手当が全額支給でない場合には、なるべく自己負担を減らせるように、引っ越しの日時や業者選びも工夫するとよいでしょう。

④帰省旅費手当:家族のもとへ帰省する費用の補助

画像: 画像:iStock.com/RichLegg

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「帰省旅費手当」とは、家族のもとへ帰省する費用を補助する手当です。単身赴任した場合、定期的に単身赴任先から家族のもとへ帰る人がほとんどでしょう。単身赴任先が家族の住む家から遠い場合は、多額の旅費が必要です。そのため、帰省時の交通費を支給する企業が多くなっています。

企業により多少の違いはありますが、帰省旅費手当は往復分の交通費が実費で支給されることが多いようです。その際、上限金額があったり、支給回数に制限があったりと、企業によって支給要件が異なります。帰省旅費手当を利用する際には、勤務先に事前に確認するとよいでしょう。

⑤着後手当:新生活の支度金の補助

「着後手当」は、新生活の支度金を補助する手当です。たとえば、新たな住居への入居前にホテルに宿泊し、ホテルから単身赴任先へ通勤した場合などが挙げられます。単身赴任の際に、新生活をスムーズに始めるための費用が着後手当と考えるとよいでしょう。

新生活にかかる費用には様々な種類があるため、どの支出に対して着後手当が支給されるか把握する必要があります。詳しくは勤務先に確認するようにしましょう。また、着後手当として扱われる出費が生じた場合には、領収書など証明できるものを必ず保管しておきましょう。

単身赴任手当の支給条件

画像1: 画像:iStock.com/takasuu

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単身赴任手当をはじめ、各種手当を受け取るためには、いくつかの条件を満たす必要があります。公務員と民間企業に分けて詳しく解説します。

公務員の場合

公務員の場合、人事院規則により単身赴任手当の支給条件が以下のとおりに定められています1)

  • 配偶者が両親や同居している親族を介護する必要がある
  • 配偶者が学校などの教育施設に在学している子どもを養育する
  • 配偶者が現在の仕事に引き続き就業する
  • 配偶者が住んでいる住居を管理する
  • 配偶者が自分と同居できないと認められる何らかの事情がある

単身赴任手当を受け取るには、上記のいずれかに該当する必要があります。その上で、通勤距離が60km以上か、通勤方法・通勤時間・交通機関の状況から通勤が困難だと認められなければなりません。

民間企業の場合

民間企業の場合、支給条件は勤務先により異なります。基本的には家族と別居し、1人で転勤することが条件です。民間企業の中には、公務員の支給条件を参考にしているケースもあります。

単身赴任の際に会社へ確認すべき2つのポイント

画像2: 画像:iStock.com/takasuu

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単身赴任する際に、特に勤務先に確認しておきたいポイントは以下の2点です。

①どの種類の手当が支給されるか
②社宅や借り上げマンションがあるか

単身赴任時には多くの費用がかかるので、手当による補助は大きなサポートといえます。負担を少しでも抑えるために、可能な範囲で手当や単身赴任先の住居について確認しておきましょう。それぞれ詳しく解説します。

①どの種類の手当が支給されるか

前述のとおり単身赴任の際に受け取れる手当の種類はいろいろありますが、実際にどれが支給されるかは企業によって異なります。「受け取れると思っていた手当がもらえなかった」ということにならないためにも、勤務先で支給される手当の種類は事前に確認しておきましょう。

ちなみに、企業によっては生活費として光熱費を負担してくれるケースもあります。光熱費の有無により生活費は大きく変わるので、前述の代表的な手当以外にもチェックしてみるとよいでしょう。

②社宅や借り上げマンションがあるか

企業によっては、社宅や借り上げマンションが用意されている場合があります。社宅や借り上げマンションがある場合は、自分で新たな住居を探す必要がなく、引っ越しにかかる負担を大きく軽減できるでしょう。

社宅や借り上げマンションの場合、一般的に家賃が安くなるため、生活費を節約できます。賃貸契約の手続きが不要である点や、給与から家賃が引かれる場合は所得税が下がる点もメリットです。ただし、自分好みの物件を探せない点はデメリットかもしれません。

単身赴任時の注意点2つ

画像: 画像:iStock.com/Makhbubakhon Ismatova

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単身赴任時に特に気をつけたい注意点は以下の2つです。

①単身赴任手当は課税の対象になる
②住民票・免許証・郵便物の住所変更が必要になる

それぞれ詳しく解説します。

①単身赴任手当は課税の対象になる

単身赴任手当は給与ではありませんが、税制上は給与所得として課税されます3)。支給される単身赴任手当が全額手元に残るわけではなく、所得に応じた税金が引かれる点に注意しましょう。

また、住宅手当や帰省旅費手当も基本的には課税対象となります4)。ただし、帰省旅費手当は出張後に帰る際など職務遂行上必要な費用がある場合、非課税となるケースもあります。

②住民票・免許証・郵便物の住所変更が必要になる

単身赴任により引っ越す際には、住民票・免許証・郵便物などの住所変更が必要です。転勤時は慌ただしくなりがちで忘れやすいため、注意しましょう。

転勤時における住民票の住所変更の届出は、法律により義務付けられています。住民票を移動しないと、罰則を受ける可能性がある上、引っ越し先の行政サービスが利用できなくなる、選挙の投票ができなくなるなど、様々な不利益が生じます。

ほかの市区町村へ転勤する際は、引っ越してから14日以内に、転出証明書を添えた上で転入届の提出が必要です。転出証明書は、引っ越し前の市区町村の役所で受け取れます。同一の市区町村で転勤する際は、引っ越して14日以内に転居届を提出すれば問題ありません5)

運転免許証や郵便物についても、住所変更しておきましょう。郵便物の転居届は、郵便局の窓口もしくはウェブサイトから行えます。転居後に旧住所に届いた郵便物の転送を希望する場合には、転送サービスを併せて申し込んでおきましょう。また、運転免許証の住所変更は、免許センターや警察署で可能です。

単身赴任時にはどの手当が支給されるかを確認しよう

画像: 画像:iStock.com/AzmanL

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単身赴任手当の相場や、単身赴任の際に受け取れる代表的な手当、支給条件などを詳しく解説しました。単身赴任する際に会社に確認するポイントなど、単身赴任手当に対する理解が深まったのではないでしょうか。

単身赴任の際には、支給される手当の種類を確認しておきましょう。勤務している企業により、受け取れる手当が異なるからです。公務員は受け取れる金額が明確ですが、民間企業の場合は会社によって規定が違います。転勤時には金銭的な負担が大きくなるので、きちんと把握しておきましょう。

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