大きなライフイベントのひとつである結婚。華やかな新婚生活を思い浮かべる一方で、何かとお金のかかるイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。事実、新生活を始めるとなれば、引っ越し費用や新しい家具・家電の購入費用など、大きな支出が発生します。

そんな時に役立つのが、結婚に伴って支給される国の補助金です。代表的なのが、全国の市区町村で実施されている「結婚新生活支援事業費補助金」という制度で、最大60万円の補助金を受け取れます。年齢・所得などの条件はありますが、賢く使いたい補助金と言えるでしょう。

この記事では、ファイナンシャルプランナーである冨士野喜子(ふじのよしこ)さんの監修のもと、結婚新生活支援事業費補助金のしくみや申請方法、さらには結婚時に活用できる企業の福利厚生なども解説します。

【この記事の監修者】

画像: 【2021年】結婚した時にもらえる補助金って、知ってる? 条件・申請方法をまとめてチェック!

冨士野 喜子(ふじの よしこ)

ふじのFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー。 教育出版会社、外資系生命保険会社を経て、2012年にFPとして独立。自身の結婚、妊娠、出産、子育ての経験を活かし、20~30代のライフプランニングを中心に活動。最近はラジオ出演や子ども向けのマネー講座の講師をするなど幅広い年代に向けてお金に関する情報発信を行っている。

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結婚時にもらえる補助金「結婚新生活支援事業費補助金」とは?

画像: 画像:iStock.com/frema

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まずは、結婚した時にもらえる補助金である「結婚新生活支援事業費補助金」とはどのような制度なのか、概要としくみについて説明します。

結婚新生活支援事業費補助金とは、新婚世帯の新生活の初期費用に対して補助金を支給する制度です。少子化対策のため、平成30年度から始まった「結婚新生活支援事業」という政策のひとつで、結婚に伴う経済的負担の軽減を目的としています。

令和3年8月現在、結婚新生活支援事業費補助金は539の市区町村で導入されています1)。補助金の上限金額は30万円か60万円のどちらかで、自治体によって異なります。補助対象となるのはおもに新居の住居費用と引っ越し費用です。基本的に家具の購入費用や結婚式などの費用は含まれません。

また、補助金を受け取るためには、一定の年齢・年収以下であることなどの条件を満たしていることが求められ、自治体の審査も行われます(補助対象となる費用と条件の詳細は後述します)。

〈図〉結婚新生活支援事業費補助金のしくみ

画像: 結婚時にもらえる補助金「結婚新生活支援事業費補助金」とは?

なお、結婚新生活支援事業費補助金の予算は各自治体で決まっているため、その年の予算上限に達すると補助金を受け取れなくなります。基本的に先着順のため、申請したタイミングによっては受け取れない場合もあることも頭に入れておきましょう。

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補助金の「補助対象となる費用」と「受給条件」は?

では、結婚新生活支援事業費補助金の補助対象となるのは、どのような費用なのでしょうか。また、受給するためには、どのような条件を満たすことが必要なのでしょうか。それぞれを見ていきましょう。

補助金の対象は「住居の初期費用」と「引っ越し費用」

画像1: 画像:iStock.com/kokouu

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〈表〉補助金の対象となるおもな費用

項目具体例
住居費住宅購入費用、新築工事費用、家賃、敷金、礼金、共益費、仲介手数料
引っ越し費用引っ越し業者または運送業者に支払った費用

結婚新生活支援事業費補助金の補助対象となる費用は、結婚をきっかけに住宅を購入または賃借した際にかかった住居費と、その引っ越し費用です。

住居費は初期費用であり、購入の場合は購入費用や工事費用、賃貸の場合には家賃のほか、敷金・礼金なども対象となります。一方、引っ越し費用は引っ越し業者または運送業者に支払った費用のみが対象です。レンタカーを利用するなど、自ら荷物を運搬した場合の費用は含まれません。

ただし、対象となる費用は自治体によって異なる場合もあります。上記の内容はあくまで例ですので、利用を考えている場合には、あらかじめどこまで対象になるのかを確認しておきましょう。

補助金の受給条件①年齢

画像2: 画像:iStock.com/kokouu

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続いて、受給条件について確認していきましょう。まず、夫婦の年齢についてですが、夫婦ともに39歳以下であることがどの自治体においても条件となっています。さらに、夫婦の年齢により受給できる上限額が自治体ごとに異なります。

上限額は「結婚新生活支援事業」の種類ごとに定められており、「一般コース」「都道府県主導型市町村連携コース」の2種類があります。2)まずは、申請する自治体がどちらのコースを導入しているかを確認しましょう。

「一般コース」の場合は、受給できる上限額は30万円となっています。一方、「都道府県主導型市町村連携コース」の場合は、夫婦の年齢が29歳以下であれば上限額が60万円と、30万円アップします。

ただし、「都道府県主導型市町村連携コース」の自治体では、結婚、妊娠・出産、男女参画などに関する1時間ほどのライフプランセミナーを受講しないと補助金を受けることができません。令和3年4月1日時点で、「都道府県主導型市町村連携コース」を導入する自治体は、12都道府県142市町村となっています3)

補助金の受給条件②前年度の総所得金額

画像: 画像:iStock.com/laymul

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〈表〉受給できる夫婦の総所得

項目受給対象となる金額
前年度分の世帯所得400万円未満

つぎに確認すべき条件は、夫婦の「前年度の総所得金額」です。

多くの自治体では、結婚新生活支援事業費補助金を受け取るには、夫婦の前年度分の所得を合わせた金額が400万円未満4)であることが必要とされています。なかには400万円未満ではなく、別の金額を設定している自治体もありますが、あくまでも年収ではなく所得なので、間違えないように気をつけましょう。

所得とは、「収入」から「必要経費」を引いたものです。会社員の場合はわかりにくいと思いますが、「収入金額」から「給与所得控除額」を差し引いた金額と考えましょう。職場から受け取る「源泉徴収票」に金額が記載されていますので、チェックしてみてください。

ちなみに、夫婦のどちらかが結婚をきっかけに退職した場合、退職した人の前年度分の所得は差し引いて計算して問題ありません。さらに奨学金を支払っている場合も、その年間金額を差し引いて計算することが可能です。

計算方法が少し難しいため、自治体のホームページなどで確認するようにしましょう。

補助金の受給条件③時期(婚姻届の提出、費用の発生)

画像: 画像:iStock.com/sharaku1216

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補助金を受け取るには、自治体の定めた期間に婚姻届を提出し、なおかつ補助対象となる費用も発生していることが必要です。

自治体によって設定期間が異なり、たとえば千葉県千葉市の場合5)、「令和3年1月1日〜令和4年2月28日」に婚姻届を提出し、同じ期間内に支払った対象となる新生活費用に対して補助金の申請が可能です。一方で神奈川県湯河原町6)では、「令和3年1月1日〜令和4年3月15日」に同様の条件を満たさなくてなりません。

つまり、自治体によって数週間の差が生じる場合があるのです。気づいたら、自分が住む自治体が定める期間が過ぎていた、という場合があるので、確認しましょう。

補助金の受給条件④住居地

画像: 画像:iStock.com/PeoGeo

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補助金を受け取るには、基本的に、申請を行う自治体に夫婦2人分の住民票があることが条件となります。ただし、自治体によっては、本籍地さえ登録されていれば、実際の住所は管轄外でも問題ないというケースもあります。

補助金の受給条件⑤その他

ここまで見てきてわかるように、結婚新生活支援事業費補助金という同じ補助金ではありつつも、自治体によって受給条件が多少異なります

また、上記の項目以外でも、「地方税の滞納がないこと」「公的な家賃補助の制度を利用していないこと」「過去にこの補助金を利用していないこと」などは、条件になることが多くなっています。自治体によって差があるため、必ず自分の住んでいる自治体のホームページでチェックするようにしましょう。

結婚新生活支援事業費補助金の申請方法とは?

ここからは、どのような手続きを行えば、結婚新生活支援事業費補助金を受給できるのかを解説します。申請方法や必要な書類を紹介しましょう。

申請の方法

画像: 画像:iStock.com/show999

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結婚新生活支援事業費補助金の申請は、市役所や区役所といった自治体の窓口で行うことが可能です。なかには郵送での申請にも対応している自治体もあります。

申請後はすぐに補助金を受け取れるのではなく、自治体による審査が行われます。審査にかかる期間は自治体によって異なり、残念ながらホームページなどでも公開されていないことが多いです。

補助金は、審査承認後すぐに振り込まれるわけではなく、審査の後に決定通知書が届き、振り込み先の銀行口座情報に関する書類などを追加で提出してから、振り込まれます。ただし、申請から支給までの手順も自治体によって異なることがあるため、詳細は窓口や電話などで確認するようにしましょう

申請に必要な書類

画像: 画像:iStock.com/MangoStar_Studio

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結婚新生活支援事業費補助金の申請に必要な書類は、以下のとおりです。

〈表〉結婚新生活支援事業費補助金の申請必要書類

必要書類備考
申請書
婚姻および婚姻日を証明する書類婚姻届の受理証明書、戸籍謄本など
夫婦の前年度分の所得証明書(原本)
振り込み口座を確認できる書類通帳、キャッシュカードなどのコピー
対象費用を証明できる書類【住宅を購入した場合】
売買契約書または工事請負契約書、支払いが確認できる書類のコピー(※)
 
【住宅を賃借した場合】
賃貸契約書、支払いが確認できる書類のコピー(※)
 
【引っ越し費用】
支払いが確認できる書類のコピー(※)
※領収書、クレジットカードの利用明細など

〈表〉場合によって必要な書類

項目必要な書類
奨学金を返済している場合前年の奨学金の返済額を確認できる書類のコピー(奨学金返還額証明書など)
結婚を機に夫婦のどちらかが退職した場合退職を確認できる書類のコピー(離職票、退職証明書など)

ただし、必要な書類についても自治体によって異なります。詳細は自治体のホームページに記載されていることが多いため、目を通しておきましょう。

申請できる期間

画像: 画像:iStock.com/kiddy0265

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結婚新生活支援事業費補助金を申請できる期間は、自治体によって異なります。また、補助金の申請期間と補助金の対象期間(対象となる費用を支払った期間)は別物なので注意しましょう。

なお、前述したとおり、補助金の支給は、自治体が設定した予算に達すると終了します。予算に達してしまった場合、申請を行っても補助金は受給できません。

申請の受付が始まるタイミングは、年度の節目となる3月や4月、あるいは自治体の業務の関係から6月や7月になることが多いです。たとえば、前述の千葉県千葉市の場合は「令和3年6月1日~令和4年2月28日」、神奈川県湯河原町の場合は「令和3年4月1日〜令和4年3月18日」となっています。

申請できる期間は自治体のホームページに記載されていることが一般的です。必ずチェックしましょう。

あなたが住んでいる自治体で補助金はもらえる? 一覧からチェック

画像: 画像:iStock.com/samxmeg

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結婚新生活支援事業費補助金は令和3年8月時点で、539の市区町村で導入されており、一覧は以下のサイトから閲覧できます。繰り返しにはなりますが、自治体によって申請の条件や期間などが異なるため、詳細は自治体のホームページや窓口などでご確認ください。

▶︎内閣府「令和3年度 地域少子化対策重点推進交付金(結婚新生活支援事業) 交付決定一覧」

【結婚にまつわるお金】勤務先の福利厚生、自治体のその他の手当

画像: 画像:iStock.com/Hana-Photo

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近年では結婚新生活支援事業費補助金だけでなく、結婚祝い金などの制度を設けている自治体や、結婚にまつわる福利厚生が充実している企業も珍しくありません。このような制度・手当もしっかりとチェックし、上手に活用しましょう。以下では代表例を紹介します。

(1)結婚祝い金などの特別手当

福利厚生のひとつとして、結婚祝い金などの特別手当を支給している企業は多いです。金額は企業や勤続年数によって異なりますが、相場は3万〜5万円程度と言われています。

(2)住宅手当

住宅手当とは、従業員の住宅に関して金銭的な補助を行う福利厚生のひとつです。共働き世帯の場合、賃貸契約を行う前に夫婦のどちらかが家賃手当を受けられるかどうかを確認しましょう。家賃手当は基本的に、契約者の勤務先の制度だけが適用されることになるためです。夫婦のうち、より手厚く住宅手当を受けられる人が、賃貸契約を行いましょう。

(3)配偶者手当

結婚すると、勤務先から配偶者手当が支給されるケースがあります。手当の名称は家族手当や扶養手当など、企業によって様々です。相場は1万〜2万円程度と言われています。

(4)自治体による結婚祝い金や出産助成金

企業の福利厚生のみならず、自治体によっては結婚祝い金や出産祝い金といった助成金を設けているケースもあります。結婚を控えている人は支援を受け損ねないように、自治体のホームページなどで確認しておきましょう。

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画像: 画像:iStock.com/kyonntra

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結婚は人生の大きな転機です。結婚の後には、出産・育児やマイホーム購入など、お金のかかるライフイベントが発生しがちです。しかし、そうは言っても、貯金や節約ばかりに追われては、大切な夫婦の時間も楽しめなくなるでしょう。夫婦2人の楽しみにお金を使いつつ、将来に向けた資産も作っていけるように、補助金や助成金といったお得な制度はしっかりと活用していきましょう。

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