納税は国民の義務であり、誰でも必ず果たさなければなりません。本来、税金はそれを負担できるだけの収入などに応じて課されますが、家庭の経済状況などによっては支払うことが困難な場合も少なくありません。では、税金を滞納して差し押さえを受けた場合、具体的にどのようなことが起こるのでしょうか。

この記事では弁護士・鈴木淳也さん監修のもと、税金の滞納と差し押さえの関係について解説します。

※この記事は、2026年2月10日に更新しています。

この記事の監修者

画像: 税金滞納で差し押さえされたらどうなる?期限や解除法・対処法を解説

鈴木 淳也 (すずき じゅんや)

大手法律事務所で活躍したのち、2018年4月に鈴木淳也総合法律事務所を設立。借金の債務整理から企業法務など幅広く対応。気象予報士や防災士の資格も保有するマルチ弁護士。
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税金の差し押さえとは? 滞納すると調査が行われる

画像: 画像:iStock.com/robeo

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会社員などの給与所得者の場合は、所得税や住民税が給与から天引きされるので、税金の滞納が問題になる可能性は少ないでしょう。しかし、自営業者をはじめ、会社員でも副業で一定以上の所得や不動産収入などがある場合は、確定申告をして自分で税金を納めます。

税金を滞納したまま放置しておくと、「滞納処分」が下されます。法律上は、納付書や納税通知書に書かれている納付期限(納期限)を1日でも過ぎた場合に滞納となりますが、通常はすぐに税務署から取り立てに来ることはありません。以下にて、差し押さえまでの流れを解説します。

画像: 税金の差し押さえとは? 滞納すると調査が行われる

(1)税金の滞納が発生

税金は1日でも納期限を過ぎれば「滞納」となります。住民税や自動車税、自営業者なら法人税や消費税など、税金ごとに納期限が定められており、それぞれ期日は異なります。滞納しないために、まずは支払い義務のある税金について細かくチェックしておきましょう。

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(2)督促状の送付

納期限を過ぎても滞納が続くと、税務署から「督促状」が送られます。

送付される時期は国税と地方税で異なり、国税は滞納から50日以内、地方税は20日以内です。さらに督促状の送付から10日経っても滞納が続いていると、差し押さえの権利が発生します。すぐに実行されるとは限りませんが、法律上は差し押さえが可能となります。

(3)電話や文書による催促

督促状を送ったあと、基本的にはすぐに差し押さえを実行せず、電話や書面などで改めて催促が行われます。この際に、連絡が取れない、一向に納付の意思を見せないといった状況が続けば、差し押さえに向けて動きます。

(4)財産や人物の調査

差し押さえる財産を決めるために、滞納者の身辺調査が行われます。主に、口座の預金残高や月々の給与、不動産や自動車の有無など、財産に関する調査が行われます。また、金融機関にも連絡し、滞納者の契約状況を確認します。

そのほか、勤務先への在籍確認が行われることもあります。勤務が確認でき、滞納者に毎月の給与が発生していれば、その差し押さえも可能になるためです。このような勤務先への調査権限も行政には与えられています。

(5)差し押さえ

行政からの連絡に応じず滞納を続けると、差し押さえが実行されます。事前調査をもとに、延滞税を含めた滞納額に見合う資産が差し押さえされます。

一般的には、まず金融機関の口座が取引停止となり、預金が差し押さえられるか、勤務先の給与について、毎月一定額を差し押さえられます。この場合、差し押さえ分の給与は本人に渡されず、勤務先から納税機関へ直接振り込まれます。

そのほか、状況により不動産や自動車などの資産が差し押さえられ、公売にかけられます。差し押さえの対象となるものについては後述します。

(6)差し押さえた資産の換金

不動産や自動車などお金以外の資産が差し押さえられた場合、国税局や地方公共団体により公売が行われ、現金に換金(換価)されます。口座や給与の場合には、必要金額のみが差し押さえられます。

(7)滞納した税金への充当

差し押さえで確保された現金は、滞納していた税金の支払いに充てられます。不動産や自動車が差し押さえられて換金された場合には、滞納分を支払ったあとにお金が余るケースがありますが、このお金は滞納者に返還されます。

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滞納後の納付には「延滞税」が課される

税金を滞納すると、納期限の翌日から1日ごとに延滞税が課せられます。滞納者は、税金と延滞税を合わせて納付する必要があります。延滞税は、税金を完納(全額納める)する日まで加算されます。

では、実際にどのくらいの延滞税がかかるのでしょうか。延滞税は納付が遅れたことに対するペナルティの意味合いと、納期限から納付時点までの利息の意味合いがあります。
具体的な延滞税の税率は以下のとおりです1)

延滞税の税率
納期限から2カ月まで本則:7.3%
特例:2.8%
納期限から2カ月を超えたあと本則:14.6%
特例:9.1%

現行制度では特例の割合が適用されるのが一般的です。

差し押さえの対象になるもの・ならないもの

画像: 画像:iStock.com/bymuratdeniz

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差し押さえの対象になる資産にはどんなものがあるのでしょうか。また、差し押さえから免除されるものもあります。差し押さえの対象になるもの、ならないものについて、以下にまとめました。

差し押さえの対象になるもの

〈図〉差し押さえの対象になるものの例

画像: 差し押さえの対象になるもの

現金、口座の預金、給与から、株式や投資信託、国債などの金融商品、さらには不動産や自動車、貴金属、骨董品に至るまで、もの自体に価値があり、お金に換金できるものが対象となります2)

ここで注意したいのが、手持ちの現金・預金だけでなく、勤務先から支払われる給与についても差し押さえられる可能性があるということです。

差し押さえに至るような状況の人が、滞納分を一括で支払えるだけの現預金を持っていることのほうが珍しいので、実際は、差し押さえといえば給与が差し押さえられることと考えてもいいでしょう。

給与の差し押さえを受けると、当然、勤務先にも知られてしまい、ます。しかし、給与全額が差し押さえられて無収入になるというわけではありません。給与を差し押さえる場合、手取り額の1/4までと決められています。

たとえば、源泉徴収される税金や社会保険料を除いたあと、手取り額が20万円であったなら、差し押さえできるのはそのうち5万円までです。

5万円で滞納額をすべて支払えない場合は、滞納額(+延滞税)がすべて支払えるまで毎月の給与から差し押さえが続くという状況になります。

ちなみに、手取り額の1/4を差し押さえた残額(手取り額の3/4が33万円を超える時は、手取り額の3/4のうち33万円を超えた分についても差し押さえが可能とされています。

差し押さえの対象にならないもの(差し押さえできないもの)

〈図〉差し押さえの対象にならないものの例

画像: 差し押さえの対象にならないもの(差し押さえできないもの)

滞納者やその家族の生活に欠くことができない衣服家具などをはじめ、家族の生活に必要な3カ月分の食料および燃料も差し押さえはできません。滞納者や家族の教育・学習に必要な書籍や器具も差し押さえ不可です。

そのほか、仕事や生計を立てるために必要不可欠なものも差し押さえの対象から外れます。

たとえば、農業や漁業を営む人が保有する道具や飼料などが当てはまります。自動車についても、業務に使う場合は差し押さえの対象にならない可能性があります。印鑑も、職業に欠くことができなければ差し押さえできません。また実印は、職業にかかわらず、差し押さえが禁止されています。

給与が差し押さえされたらどうなる?

給与は差し押さえ可能ですが、限度額が決まっており、「各種控除の金額」「生活維持費」「体面維持費」を合計した金額は差し押さえされません。これらの項目は以下の金額を表しています。

項目詳細
各種控除の金額所得税、住民税、社会保険料の合計。
生活維持費滞納者を含む家族数に対する金額。1人世帯の場合は10万円。生計を共にしている家族がいる場合には、10万円に「4万5,000円×滞納者本人を除く家族の人数」を追加。
体面維持費総支給金額から「各種控除の金額」と「生活維持費」を差し引いた金額の2割。もしくは、「生活維持費」を2倍にした金額のいずれか少ないほう。

したがって、差し押さえされる給与の計算は以下のとおりです3)

画像: 給与が差し押さえされたらどうなる?

たとえば、夫婦2人暮らしで夫の給与のみで生計を立てており、夫の月給が40万円の場合、各種控除の金額を6万円と仮定すると、各項目は下記のようになります。

総支給金額40万円
各種控除の金額6万円
生活維持費14万5,000円
(10万円+4万5,000円×1人)
体面維持費3万9,000円
(40万円―6万円―14万5,000円)×0.2

したがって、差し押さえの対象とならない金額が24万4,000円、差し押さえられる金額が15万6,000円となります。

差し押さえ可能額に沿って、滞納分を支払い切るまで毎月給与を差し押さえるケースもあります。

差し押さえされると給与や信用情報にも影響が出る?

給与への影響

身辺調査で勤務先に連絡が行く可能性は高いといえます。また、給与の差し押さえを行う場合、勤務先は滞納者の毎月の給与のうち、決められた金額を行政機関に毎月支払います。

毎月支払う金額は税金の納付先の行政機関により定められます。給与は毎月変動する可能性があるため給与から前述の控除金額を控除した残額という形で指定されるのが一般的です。支払いは滞納分を完済するまで毎月続きます。

信用情報への影響

まず、信用情報とは、私たち1人ひとりの借金歴やローンの履歴を専門機関が記録しているものです。これらは、ローン契約やクレジットカードの申し込みなどにおいて、金融機関が審査の参考にしています。一般的に、過去に借金の未返済や延滞があったことが信用情報からわかれば、金融機関の審査は厳しくなるとされています。

では税金の滞納が、この信用情報に影響があるのかというと、基本的に税金の滞納は信用情報に記録されません。税金を管轄するのは国や地方自治体であり、信用情報を記録・共有する機関に加盟していないためです。

なお、住宅ローンは住民税の納税証明書が必要であり、住民税を滞納していると加入できません。また、自動車の車検は自動車税の納税証明書が必要です。滞納すると車検が受けられなくなります。

税金滞納で差し押さえされた時の対処法・解除方法

画像: 画像:iStock.com/Yusuke Ide

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税金を滞納して財産を差し押さえされた際は、スピーディーに対処し、差し押さえを解除してもらわないと、生活が立ち行かなくなります。納付相談や生活保護、債務整理といった手段から、自分の現状に合った方法で対処しましょう。

滞納している税金を全額納付する

差し押さえは、滞納している税金と延滞税をすべて納付することで解除されます。早急な解除を望む場合は、現在の滞納額を確認したうえで、できるだけ早く納付することが大切です。納付が確認されると、差し押さえは不要となり、速やかに解除されます。

全額が難しい場合は、分割納付や納税猶予などを利用して一部でも返済する

生活状況によっては、滞納している税金を全額納付するのが難しい場合もあるでしょう。その場合は、税務署や自治体の窓口で分割納付について相談するのが望ましいです。計画的に滞納分を納める姿勢を見せれば、差し押さえを解除してもらえる可能性があります。

また、災害や病気といったやむを得ない事情がある場合は、以下のような猶予制度を利用できることもあります4)5)

  • 納税の猶予:原則1年、納税が猶予される
  • 換価の猶予:財産を現金に換える換価を猶予してもらう

猶予が認められれば、新たな差し押さえを回避でき、現在執行されている差し押さえが解除される可能性もあるでしょう。

生活保護を受ける

病気やけがで働けない場合や生活に困窮している時は、生活保護の受給を検討するのも選択肢のひとつです。生活保護の受給が決定すれば、滞納処分が一時的に停止されます。もし3年間停止状態となれば、滞納していた税金の支払い義務は免除されます6)

生活保護は国民全員に受給する権利がある制度のため、立ち行かなくなって困っている際は、ためらわずに申請するのが望ましいです。

個人再生・自己破産を申告する(債務整理)

借金が多く税金を支払えない場合は、債務整理をすることも検討するとよいです。債務整理の手段としては、個人再生や自己破産など様々な方法があります。

ただし、債務整理をしても滞納している税金の支払い義務は免除されません。債務整理はあくまで一度家計を立て直し、滞納している税金の支払いができる状況をつくる手段です。生活に余裕が生まれれば、収入の一部を税金の支払いにまわせるため、滞納を解消できるでしょう。

差し押さえ解除にかかる日数は完納した日から数日後

画像: 画像:iStock.com/megaflopp

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差し押さえの解除にかかる日数は完納した日から数日かかります。また、解除にかかる期間は、給与・口座の場合と不動産の場合など、債権者が差し押さえた対象物が何かによっても大きく異なります。

給与の差し押さえの場合は、通知が勤務先に行くため、完納した時点からつぎの給与振り込み日には全額が受け取れることになります。また、口座の差し押さえの場合は、「口座凍結」ではないため、該当の口座への入金や出金は問題なく行えます。

一方、不動産差し押さえの場合は日数がかかります。通常、売却代金から税金の滞納を支払うことで交渉が完了した場合、決済日の当日納付書と差し押さえ解除証書を持って、移転登記の手続きを行います。このように、不動産売買の通常のスケジュールに沿って手続きを進めていくことになるため、売却が決まったからといってすぐに差し押さえが解除できるわけではありません。

税金滞納で差し押さえにならないために、できること

画像: 画像:iStock.com/maroke

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差し押さえされた場合の対処法を紹介しましたが、まずは差し押さえの対象とならないようにすることが大切です。税金滞納で督促などが来た場合には、以下の対策を講じるとよいでしょう。

  • 自治体・税務署への相談
  • 専門家への相談

納付できないからといって差し押さえされるのを待つのではなく、払うのが難しいと判断した時点で、自治体の税金窓口や税務署に相談しに行きましょう。相談に行くタイミングが早いほど、分割納付などの柔軟な対応をとってもらえる可能性が高まります。

また、弁護士やファイナンシャルプランナーといった専門家に相談するのも効果的です。家計を改善して滞納を解消したいならファイナンシャルプランナーに、債務整理をして立て直しを図りたいのであれば弁護士への相談がおすすめです。

税金を滞納してしまった時に、やってはいけないNG行動

財産を差し押さえされた際や、差し押さえが迫っている時は、以下の行動は避けるべきです。

  • 督促状や各種通知を無視、放置する
  • 嘘の申告や財産隠しをする
  • 高金利で借金をして滞納を解消しようとする

自治体からの督促や通知については、無視せず真摯に対応しましょう。電話に出ない、通知を無視するといった行為は「逃げている」と判断され、差し押さえ実行を早める可能性もあります。

また、虚偽の申告や財産隠しは、追徴課税や罰金の対象にもなる行為です。収入や財産額は正直に申告しましょう。

このほか、滞納を解消するためにお金を借りることも望ましくありません。滞納を解消できたとしても、借りたお金を返せずに債務が膨らみ、生活が立ち行かなくなる可能性があります。

税金滞納による差し押さえに関するよくある質問

画像: 画像:iStock.com/MicroStockHub

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税金を滞納してから差し押さえされるまで、どのくらいかかる?

税金を滞納してから差し押さえされるまでは、最短で督促状の発行から10日です。これは督促状に記載される納付期限が、督促状発行から10日後になっているためです。

ただし、実際には催告期間も含むため、差し押さえまでは数カ月程度の猶予があります。とはいえ、連絡を無視し続けると差し押さえ実行となるため、早めに対処しましょう。

差し押さえで生活できない状態になる?

差し押さえとなっても、最低限の生活は守られるようになっています。守られる財産としては、以下のようなものがあります。

  • 給与の4分の3
  • 生活に欠かせない衣服や寝具、家具、台所用具、建具
  • 3カ月間の生活に必要な食料や燃料
    など

そのため、差し押さえによって生活がまったく立ち行かなくなるわけではありません。

差し押さえられたものや財産はどうなる?

差し押さえられた財産・資産は、現金に換価されて、滞納する税金の支払いに充てられます。不動産や自動車といった資産は、公売に出され、売却されます。売却された代金が、税金や延滞税に充当されるしくみです。

売却代金が滞納額を上回った場合、差額は返還されます。

給与が差し押さえられたら、いつまで続く?

給与の差し押さえは、滞納する税金と延滞税を全額支払うまで続きます。毎月の給与支給のたびに一定額が差し押さえられるしくみです。

税金をすべて支払い終えたら、差し押さえは解除され、これまでどおりの手取り額が振り込まれます。

差し押さえされたら、家族に影響はある?

差し押さえの対象になっても家族の財産に影響が出ることは少ないです。ただし、共有名義の不動産がある場合や、家族が連帯保証人になっている場合は、家族の財産も差し押さえされる可能性があります。

また、直接的な影響はなくても、収入が減ったり自動車が使えなくなったりと、生活・家計には影響が及びます。差し押さえされる前に、滞納は解消しましょう。

税金の滞納による差し押さえで生活できなくなる前に対応しよう

差し押さえが始まってしまうと、家計がよりいっそう苦しくなってしまいます。差し押さえを解除できる可能性はゼロではありませんが、仮にできたとしてもそれなりの期間がかかります。そのため、税金は滞納せずに市区町村の窓口へ相談するなどして、差し押さえを受ける前に早めに対応するようにしましょう。

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