お金のことって誰かに話しにくい。たとえそれが、生涯を共にする「家族」でも……。
だけど、1人よりもチームの方が力になる。ましてや家族なら、きっと大きな力になるはず! 今こそ 、お金の管理をみんなで考える「家族マネー会議」をはじめてみませんか?

いつも賑やかなマネ子さんの家を覗いて、その実践のヒントを見つけてみましょう。

<登場人物・マネ子さんファミリー>

マネ子さん:36歳パート主婦。家族で海外旅行をするのが夢。

パパさん:38歳会社員。休日に子どもとサッカーをするのが趣味。

ミミちゃん:小学5年生。オシャレな雑貨を集めるのが好き。

ムウタくん(息子):幼稚園年長さん。サッカーよりもゲームが気になるこの頃。

パパ、お財布がピンチの巻

画像: パパ、お財布がピンチの巻

-ある日の朝-

「ちょっと、まだご飯食べてるの?もう家を出る時間よ」

「もぐもぐごっくん、食べ終わった! 歯磨きしてくる」

「ねぇね、まってぇ〜」

「もう〜食器洗わないと私も仕事に行けないんだから。ねえパパ、なんとか言ってよ、って、パパ?」

「はあ〜……」

「何よ、財布握ってため息なんてついちゃって」

「今日、部下たちに昼飯おごるって約束しちゃったんだけど、手持ちがないことに気づいてさ……」

「え〜っ? なんでないのよ。ちゃんとお小遣い、月3万円渡してるでしょ」

「い、いやぁ、いろいろあってさ」

「何なに? パパってお小遣い、月3万円ももらってるの? ずる〜い! 私なんて月500円なのに〜!」

「ずる〜い! ぼくもおこづかい、ほし〜い!」

「大人はお金がかかるんだよ……」

「あ〜もう! なんでこんな朝の忙しい時間に〜! こうなったら、今日の夜、緊急家族会議よ!!」

「お金の話をタブー視する時代は終わり。家族みんなで目的達成のためのマネー会議を」

解説:横山光昭(ファイナンシャルプランナー)

マネ子さんのお家では、パパがいくらお小遣いをもらっているかお子さんたちは知らなかったようですね……(笑)。たしかに私が子どもの頃も、家族でお金の話をすることはタブー視されていました。親にも「そんなことは気にするな!」と言われて終わり。しかし、今思うのは、そうしてお金の話を避けてきた結果、お金へのありがたみが薄れていたように思います。お金のことを話さないことによって、無駄になってしまったことも多いのではないかということです。

そもそも家計は、誰かのお金でなく、家族全員に関わるお金です。家族の限られたお金をどうするのか、メンバー全員で把握するのが自然であり、家族の目標達成のためには必要なことだと言えるでしょう。ただ、ほとんどの家庭でお金について家族で話す習慣がないから、どうやって把握しあえばいいのかわからない人が多い。そこで、マネ子さんが提案した「家族マネー会議」です。

マネー会議は、暗い話やガチガチの話をするものではありません。きっかけは簡単に、身近な話題から話し始めてもらって大丈夫です。例えば、「この冬休みにどこかへ行きたいね」という家族旅行の話であれば、どこへ行って、予算はどのくらいで……と、「家族のお楽しみで有効にお金を使うにはどうすればいいだろう」ということについて議論するのでもいいのです。家計簿があるなら実際の数字を見ながら相談するのもいいですが、特に何かを用意する必要もなく、「家族でお金の話をしよう」とラフに臨んでください。

1つ認識として注意していただきたいのは、先ほども触れた通り、このマネー会議は、目的達成のためのお金の使い方を話し合う場であるということです。

実際に家族でマネー会議を実施してみたという人の中に、「会議を開いたら子どもが回転寿司で食べなくなった」という方がいました。このように「お金がないから何かを抑える」「節約をする」ということではなく、「いかにお金の使い方の工夫をするか」を家族で話し合っていくための時間です。そのためマネ子さん家の場合は、「どうすればパパが3万円で有意義にお小遣いを使えるか」ということを考えていくのがいいのではないでしょうか。家族でお金の話を前向きにしていくことこそがマネー会議なので、お子さんも含めて、意義を履き違えることなく進めていきましょう。

また、マネー会議は家族にとって貴重なコミュニケーションの時間でもあります。マネ子さん家のように朝は忙しいご家庭が多いと思いますので、家族が全員集まりやすい夕食後などに時間を設けるのがおすすめです。

さらに、「自分はこの目的のためにこれだけのお金が必要」といった主張の場を重ねていくことで、子どもにとってはプレゼン能力も養われるはずです。

家族マネー会議を通して、「お金について話すのはいやらしい」という感覚のハードルを取っ払い、オープンに、家族全員で有意義にお金を使っていけるようになりましょう。

マネー会議に特別なものは必要なし

-その日の夕食後-

「……こうして話し合いの場を設けてみたけど、何から話せばいいのかわからないわね」

画像: マネー会議に特別なものは必要なし

「パパ、結局今日のお昼代はどうしたの?」

「来月のお小遣いを前借りしました」

「まえがり?」

「そう。来月の分を少し早いけど渡したの」

「だ、大丈夫、来月は節約するから」

「ふ〜ん。ねえママ、パパのお小遣いは、どうして3万円なの?」

「えっ、それは……なんでだっけ?」

「多分、なんとなく。家計的にも僕的にもそれで大丈夫かなって」

「でも足りないのよね?」

「ぐぐ……」

「確かに、ちゃんと考えてなかったわ。いい機会だから、確認してみましょう」

横山さんのワンポイントコメント

まずはパパのお小遣いの内訳を確認するというのは、素晴らしいことですね。このように金額ではなく使い道からみんなで確認することも、マネー会議では大事なポイントです。

お金の使い方をみんなで確認しよう!

「えっと……、ランチ代が平日1日300円から1,000円くらいだから15,000円、週に1回は飲みに行って3,000円かかるから12,000円、あと月に1回草サッカーとその打ち上げで5,000円かな?」

画像: お金の使い方をみんなで確認しよう!

「……あれ? 3万円超えてない?」

「超えてるわね」

「そこは、飲み会を減らしたり、ランチをコンビニのおにぎり1個だけにしたりして、なんとか」

「サッカーやめたらいいんじゃない?」

「ガーン! そ、それだけは……!」

「そうね。私もそこまでしたいと思わないわ」

「マネ子ちゃん……」

「これを見たら、確かに足りないなって私も思ったもん」

マネ子さん家族が導き出した解決策は……?

「ちなみにママはランチ代ってどうしてるの?」

「私? 私は残り物をお弁当にして職場で食べてるから、自分のお小遣いから出してない……ハッ!」

「でもお友達とランチ行く時はお小遣いから出してるのよね?」

「そう、ね」

画像41: 家族マネー会議#1 パパに月3万円は多い?少ない? マネ子さん家の「お小遣い」会議

「だったらパパも、部下におごったりするのは自分のお小遣いから出すとして、普段の昼食は家のお金から出してあげたらいいんじゃない?」

「……!!」

「確かにね、今コンビニおにぎり1個で済ます時もあるって聞いて、おにぎりくらい家から持っていけばいいのにって思ったのよね」

「でもマネ子ちゃん、僕の分までお弁当作るの大変じゃない?」

「なんで私が作る前提なの!? 自分で作って、私の分も作ってくれてもいいのよ?」

「う……、そうでした。しかしミミちゃん、よく気づいたね」

「だって……私のお小遣いも、足りないもの!!」

「そこにつながるのね」

「自分の部屋に飾るかわいい雑貨を買いたくても、月500円じゃ全然足りない!」

「それはそうかもね、雑貨って結構な値段するし」

「待って。いつも『お小遣いもっとちょうだい』って言うだけで、理由を話してくれなかったじゃない」

「だって、ママいつも忙しそうで、じっくり話す時間ないし」

「……! そうね、そうだったわ。そういう理由なら、私も考えるし、パパとムウタの意見も聞いてみましょう」

横山さんのワンポイントコメント

パパの趣味を削るのではなく、家族でお小遣い自体の妥当性を見直すというのは、まさにマネー会議を行ったからこそ導き出された結果です。お小遣いを使う目的を確認したうえで使い方や金額を話し合ったマネ子さん家は、これから全員が納得してお金を使っていくことができるでしょう。

家族でお金のことを話すと、コミュニケーションにもなる!

画像: 家族でお金のことを話すと、コミュニケーションにもなる!

「おお!『家族マネー会議』って感じだね」

「うん。これからはこういう時間、定期的にとりましょうね」

「は〜い! ボクはゲームがほしいで〜す!」

「それ言ったら私だって、家族で海外旅行したい! ま、そういうのも追々、話していきましょう!」

本日の家族マネー会議 議事録

  • マネー会議の内容は何気ない話題でOK
  • お金を使う目的を家族みんなで確認しよう
  • お互いの事情も把握しよう
  • 家族で話し合ってアイデアを取り入れよう

さて、次回はマネ子さん家でどんなマネー会議が繰り広げられるのでしょうか?(#2へ続く……)

この記事の著者

うだひろえ

漫画家・イラストレーター。エッセイやルポを描(書)く2児の母。著書に『大学4年間の経営学がマンガでザッと学べる』『とにかく書き出し解決術!』(KADOKAWA)『誰も教えてくれないお金の話』(サンクチュアリ出版)等。ゼクシィbabyみんなの体験記/レタスクラブニュース/mymo/三井住友TAM/PLASMAでも連載。小3息子、小1娘、FPの夫との4人家族。
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この記事の監修者

横山光昭(よこやまみつあき)

家族マネー会議の提唱者。赤字家計、なかなか貯蓄ができない家計を中心にサポートし、相談件数は2.3万人を突破。2009年の『年収200万円からの貯金生活宣言』、2016年の『はじめての人のための3000円投資生活』を代表作とし、著作累計は144冊になる。
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