『お金のホント相談室』では、“生涯にわたる良きパートナー”として、現在の家計の状況やライフプランに応じて最適な提案を行っている東京海上日動あんしん生命保険のライフパートナーから、実際にあった提案事例をご紹介していきます。
今回は、3人目のお子さんが生まれたばかりのご夫婦(Eさん:35歳・妻:35歳)からのご相談をライフパートナーの白川太一より紹介します。
この記事の著者
白川 太一
東京海上日動あんしん生命保険
大阪第一支社所属 エキスパートライフパートナー
2020年度 MDRT成績資格会員 相続診断士
人生に必要なお金の知識を分かりやすくお伝えし、お金で困らないしくみづくりのお手伝いをさせて頂いております。
・個人のみなさま(ライフプラン、住宅ローン、資産運用、相続対策など)
・企業経営者のみなさま(事業保障、従業員様向けの福利厚生対策、企業研修セミナーなど)
【ご相談者】
Eさん:35歳、メーカー勤務
家族構成:妻(専業主婦)、子ども3人(6歳、4歳、0歳)
世帯収入:約580万円(手取り)
住宅ローン:12万円/月
生活費(食費含む):13万円/月
貯蓄合計:約500万円(全て現預金、貯金額5万円/月)
生命保険:3万円/月(医療保険、がん保険、6歳と4歳のお子さんのための学資保険:計2万円/月)
1年前に家を購入して、安定した暮らしをしているが、子どもが3人もいるので教育資金が目下の悩み。
【ご相談内容】
- 現在、6歳と4歳の子どもの教育資金として、児童手当をもとに月1万円の学資保険に加入している。今回生まれた子どもの教育資金の準備も始めようと考えているが、学資保険以外にも良い方法がないか、検討している。
- 学資保険とは別に毎月5万円を貯金しているが、貯金だけでは増やせないので投資を始めたほうが良いかとも考えており、その点も含めアドバイスが欲しい。
Eさん一家は、児童手当を原資にして、すでにお子さん2人のために学資保険にご加入されています。さらに住宅ローンを返済される中、毎月5万円を欠かさず貯金していらっしゃるとのこと。先々のことをしっかりとお考えになっていることがわかります!
今回、3人目のお子さんがお生まれになった機会にご相談をいただきましたので、教育資金の準備計画にさらに磨きをかけるアドバイスをさせていただきたいと思います!
【ポイント1】知っておきたい!教育費のトレンド
まず、お子さんの教育資金として、どれくらい準備するべきなのかを考えていきましょう。
近年、日本では少子化を食い止めようと、子育て世代をサポートする制度が次々と整えられていることはご存じでしょう。すでにEさんが受け取っておられる児童手当のような直接支援に加え、高等学校等就学支援金制度のように授業料を無償化、もしくは補助で支出を小さくしてくれる支援もあるのです。
私立中学や中高一貫校への受験を行う場合は別ですが、高校までの学校関連費に関してはこういった支援を活用していけば、毎月の家計でやりくりできる範囲になってくるかと思います。
しかし、大学の進学費用に関しては、なかなかそうはいきません。
文部科学省の直近の調査1)では、私大文系で入学金と4年間の授業料を合わせて約400万円がかかるというデータがあります。理系であればさらに費用は大きくなります。 また、大学は自宅以外からの進学になるケースも少なくありませんよね。その場合は住居費や生活費の仕送りも必要になります。
さらに大学の学費は年々上昇傾向にあることは押さえておきたい大切な事実です。私立大学の1年間の平均授業料2)は、平成7年では約73万円でしたが、平成27年は約87万円と、この20年間で約119%も上昇しています。
これは少子化により大学の受験者数の減少が顕著となって、私立大学の重要な財源のひとつである入試受験料が大きく減っているためという見方があります。
この先も少子化の流れが大きく変わるとは考えにくいことを考慮すると、少なくとも現在の水準よりは高めの目標を設定しておく必要があるでしょう。具体的には、私大文系・自宅通いを想定した場合、それぞれのお子さんが18歳になるまでに450万円ずつを貯めておくことを目安に考えてはいかがでしょうか。
すでに加入されている2人のお子さんの学資保険は、毎月1万円を払っているため、18歳で満期を迎えた時に受け取れる保険金は210万円強になりますが、約240万円が不足することになるのです。
大きな金額の差に驚かれていらっしゃるかもしれませんが、あせる必要はありません、Eさんご夫婦にはまだまだ十分に時間はあります!3人目のお子さんのことも含め、時間を味方につけて今のうちからしっかりと準備していきましょう。
【ポイント2】教育費の上手な準備方法とは?
では次に、時間を味方につけた教育費の上手な準備方法について考えていきましょう。
(1)学資保険
まずは学資保険についてです。学資保険は、教育資金を貯めるための代表的な手段です。毎月確実に貯めることができるので、安心感がありますね。また、契約者(親)に万が一のことが起こった時にも、死亡保険金や育英年金を受け取ることができ、子どもの学費を確保することができるというのは保険にしかないメリットですので、この点は上手に活用するべきだと思います。
しかし、換金性が低いのはデメリットです。仮に18年間の契約だった場合、18年間は原則引き出すことができません。もしも、学資保険の契約後にお金が必要になって保険料を払えなくなり、途中解約をすれば元本割れする可能性が高くなります。
また、加入時の予定利率で固定されており、将来の受取額は決まっています。先にお伝えしたように、先々教育費が上昇していった場合にはこれだけに頼っていると対応しきれない場合も考えられます。
(2)つみたてNISA(投資)
このような学資保険のデメリットをカバーする方法としては、「つみたてNISA」がおすすめです。
つみたてNISAとは、小額からの長期・積立・分散投資を支援するための投資初心者でも利用しやすい制度です。
年間40万円までの投資枠で、運用で得た収益が非課税になりますので、とても効果的な資産形成の手段となります。利用対象は20歳以上で1人1口座となりますのでお子さんの名前で利用することはできませんが、Eさんもしくは奥様のご名義でこの手段を用いるというのが一案です。
“投資”というと不確実なイメージをもたれるかもしれません。たしかにこれから2~3年先といった近い将来のライフイベントの資金作りには元本割れの危険性もあり不向きです。
しかし、Eさんご夫婦の場合、まだ十分に時間があります。10年、20年といった「長期」で、様々な国や資産に「分散」して投資することで、元本割れのリスクは軽減することが可能です(長期・分散投資の効果については、コチラの記事をご覧ください)。教育費が年々上昇傾向にあることを考えると、むしろ固定金利商品だけで準備しておくのもリスクになるという考え方もできます。
(3)貯金
また、換金性の観点から、現金による貯金も外さない方がいいでしょう。超低金利の今、利息は期待できませんが、流動性の高さは何を差し置いても一番です。
したがって、お子さんの教育費を効率よく準備するには、どれかひとつに頼らず、「学資保険」「つみたてNISA(投資)」「貯金」をバランスよく活用することがポイントです。
Eさんへのご提案内容
Eさんへは、上記2つのポイントを基にアドバイスを行ないました。
1)目標金額までいくら足りないかを計算する
Eさんは、大学進学の資金は準備したいと考えていますが、中学受験志向はありません。そのため、先ほど提示した「18歳までにそれぞれ450万円を貯める」ことを目標と定めました。
そこで、まずは現在の学資保険だけでのマネープランだと、いくら資金が足りなくなるかを把握していきました。ポイントは、子どもそれぞれで準備計画を作ってあげることです。下記が、その計算式となります。
〈表〉教育資金の不足分の計算
子ども | 計算式 | 現在の不足分 | 現在のマネープランでの 18歳時点の不足分 |
---|---|---|---|
長子(6歳) | 450万円-72万円 (6年間の学資保険分) | 378万円 | 240万円 |
次子(4歳) | 450万円-48万円 (4年間の学資保険分) | 402万円 | 240万円 |
三子(0歳) | (学資保険・未加入) | 450万円 | 450万円 |
前述通り、学資保険だけだと240万円分が足りなくなるため、長子は14年間で240万円、次子は16年間で240万円を追加で確保する必要があることがわかります。
2)不足分を「投資」と「貯蓄」で補う計画を立てる
次に、効率性と万が一の保障を考えて、「学資保険」「投資」「貯蓄」のバランスをとりながら、不足分を補う計画を立てていきます。
Eさんは、中学卒業まで支給される児童手当を原資に、毎月1万円の学資保険に入っています。家計に負担をかけることなく、貯めていくことが可能ですので、3人目のお子さんについてもこの方針を変える必要はないでしょう。
あとは、残りの不足分を「投資」と「貯金」にどのように割り振っていくかを考えます。住宅購入後にもかかわらず、Eさんの貯金は500万円あります。急に現金が必要になった時でも十分対応できる金額ですので、そこまで「貯金」に割く必要はありません。そのため、今後は「投資」の割合を増やしていくことをおすすめしました。
具体的には、下記のような計画を提案いたしました。
〈表〉教育資金への割り振り
子ども | 教育資金の準備の内容 |
---|---|
長子 (6歳) | 1)学資保険:1万円/月 2)つみたてNISA:1万円/月(※) 3)貯金:4,500円/月 |
次子 (4歳) | 1)学資保険:1万円/月 2)つみたてNISA:1万円/月(※) 3)貯金:2,500円/月 |
三子 (0歳) | 1)学資保険:1万円/月 2)つみたてNISA:1万円/月(※) 3)貯金:1,000円/月 |
これまでEさんは、月5万円の貯金をしていましたが、その38,000円分を「投資」と「教育用の貯金」に回すことを提案しています。具体的には、毎月計3万円分(1人あたり1万円)を「つみたてNISA」に、8,000円を不足分に応じて3人に割り振って貯金としてストックをするようにしています。
毎月のお金の割り振りを変更するだけですが、これだけでバランスの良い教育資金の準備になっていきます。
将来必要な資金を予想して、早めにマネープランを立てよう
Eさんは、毎月貯金をしていますし、すでに学資保険も利用しており、決して杜撰な準備をしていたわけではありません。しかし、教育資金のトレンドを認識できていないと、受験の直前になって、実際に必要な資金とのギャップに苦労する恐れがありました。
また、都市部ではとくに中学受験への意識が高まっています。中学受験に臨む場合には、より短い期間で多くの資金を準備しなければいけないため、できるだけ早期にマネープランを立て始める必要があるでしょう。
お子さんの将来を考えると、教育資金の不足で人生の選択肢を狭めてしまうのは避けたいところです。とはいえ、ない袖は振れない、というのもまた事実なのです。そんな事態にならないために、教育資金の計画は早め早めに立て始めることをおすすめいたします。時間を味方につけることができれば、無理のない計画を立てることができるはずです。
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