所得控除のひとつである医療費控除ですが、何が控除の対象となるか、きちんと理解していない人もいるのではないでしょうか。

この記事では、ファイナンシャルプランナー・荒木千秋さん監修のもと、インプラントが医療費控除の対象となるか、疑問に思う人に向けて解説します。さらに、年収別医療費控除額も紹介します。

この記事の監修者

荒木 千秋(あらき ちあき)

ファイナンシャルプランナー。荒木FP事務所代表。10年間の銀行勤務を経て独立。これからの女性が人生を楽しむためには「お金・投資」との付き合い方を変えなければならないと確信し、現在は、大学講師、セミナー、ウェブ執筆、個別相談等を行っている。 著書に『「不安なのにな〜んにもしてない」女子のお金入門』(講談社)がある。

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インプラントは医療費控除の対象になる?

画像: 画像:iStock.com/kumikomini

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失った歯をセラミックなどで作った人口の歯で補うインプラントは、機能改善・向上を目的とした治療であるため、医療費控除の対象になります。同じ歯の治療でも見た目を整えることを目的とした歯列矯正の場合は、医療費控除の対象になりません1)

歯列矯正の医療費控除について詳しく知りたい人は、以下の記事を併せてご覧ください。

【関連記事】歯列矯正は医療費控除の対象になる? よくある疑問にも回答適用される条件を解説

そもそも医療費控除とは?

医療費控除とは、1年間に支払った医療費が10万円(または年間所得の5%と比較して少ないほう)を超えた場合、確定申告をすることで、納めた所得税の一部が「還付金」として戻ってくる「所得控除」の制度です2)

国税庁によると、医療費控除の対象となるのは以下のような費用です。

〈表〉医療費控除の対象となる費用

  • 医師または歯科医師による診察・治療の料金
  • 治療・療養に必要な医薬品の購入代金
  • 病院や診療所、介護施設や助産所に収容される際の人件費
  • あん摩マッサージ指圧師、はり師やきゅう師、柔道整復師による治療のための施術の料金
  • 保健師、看護師または准看護師、特に依頼した人(※)による療養の料金
  • 助産師による分娩介助の料金
  • 介護保険などの制度で提供された施設・居宅サービスの自己負担額
  • 診療を受けるために必要な通院費や送迎費、入院時の部屋代や食事代、医療用器具購入費
  • 診療や治療を受けるために必要となる義手や義足、松葉杖や補聴器、義歯や眼鏡の購入代金

※:「特に依頼した人」とは、家政婦に付き添いを依頼した場合などが含まれます。

自分自身、または自分と生計が同じである配偶者や親族のために費用を支払った場合は、医療費控除の対象となります。診察・治療費や医薬品購入代金などはもちろん、通院費や医師などの送迎費も計上できます。

【関連記事】交通費は医療費控除の対象? 条件や申請方法を徹底解説

インプラントの費用の内訳と相場

画像: 画像:iStock.com/SeiyaTabuchi

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インプラントは公的医療保険適用外の自由診療になるため、国で金額を規定しておらず、治療にかかる金額は歯科医によります。インプラント治療専門サイト「インプラントネット」3)によると、インプラント費用の目安は1本あたり30万~50万円といいます。

〈表〉インプラント(1本あたり)の費用の目安

精密検査・診断料1万5,000~5万円
インプラント手術代10万~38万5,000円
上部構造(人工歯・被せ物)5万~20万円
術後の消毒・検診代1,500~1万円

治療費の相場は地域によっても異なり、首都圏・都市部は35万~55万円が目安です。また、このほか、治療期間中の仮歯代(5,000~2万円)や抜歯代(5,000~8,000円)などが発生する場合もあります。

支払いにデンタルローンやクレジットカードを利用した場合は?

支払い方法は医療費控除の対象となるかどうかの判断には影響を与えません。ただし、デンタルローンやクレジットカードを支払いに利用した場合、医療費控除を申告するタイミングに注意が必要です。

デンタルローンやクレジットカードで治療費を支払う場合、信販会社が歯科医院に治療費の全額を一括で立替払いをし、患者は分割で信販会社の立替分を返済していきます。つまり治療費が医療費控除の対象となるのは、患者が信販会社に立替分を全額支払い終わった時ではなく、信販会社が歯科医院に立替分を支払ったタイミング=ローン契約が成立した年になります。

なお、デンタルローンやクレジットカードを利用した場合、患者の手元には歯科医院の領収書がないことが考えられます。医療費控除を受ける時の支出を証明する書類として、歯科ローンの契約書や信販会社の領収書を保存しましょう。また、ローンの利子は医療控除の対象とならない点に注意が必要です。

医療費控除で還付される金額の計算方法

画像: 画像:iStock.com/mapo

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医療費控除の還付金額の計算方法は以下の4ステップです。

【STEP1】1年間に支払った医療費を計算する
【STEP2】医療費控除対象額を計算する
【STEP3】所得税率を確認する
【STEP4】医療費控除対象額に所得税率をかける

まず1年間に支払った医療費を計算した上で、医療費控除対象額を計算します。

〈表〉医療費控除対象額の計算式

画像1: 医療費控除で還付される金額の計算方法

医療費から差し引かれる保険金や給付金には、民間の医療保険の入院給付金や手術給付金、公的な医療保険の高額療養費制度の払戻金、出産育児一時金などが含まれます。

いずれの場合も医療費控除対象額の上限は200万円ですが、所得税率は課税される所得金額に応じて変わり、総所得金額が200万円未満の人と、それ以上の人では計算方法が異なります。

医療費控除対象額が計算できたら、つぎに所得税率を確認しましょう。所得税率は課税される所得金額に応じて変わります。会社員や公務員の人は、源泉徴収票を見れば、課税される所得金額がわかります。「給与所得控除後の金額」から「所得控除の合計額」を差し引いた金額が課税所得金額です。

課税される所得金額がわかったら、以下の表に当てはめてみましょう。所得税率がわかります。

〈表〉所得税率表(平成27年度以降)

課税される所得金額税率控除額
1,000~194万9,000円5%0円
195万~329万9,000円10%9万7,500円
330万~694万9,000円20%42万7,500円
695万~899万9,000円23%63万6,000円
900万~ 1,799万9,000円33%153万6,000円
1,800万~3,999万9,000円40%279万6,000円
4,000万円 以上45%479万6,000円
※:1,000円未満の端数金額を切り捨てたあとの金額

医療費控除で戻ってくる金額は、「医療費控除対象額×所得税率」で計算できます。

〈図〉還付金の計算式

画像2: 医療費控除で還付される金額の計算方法

実際に還付される金額は、給与からの天引きなどによりすでに納めている税金額と、実際に納めなければならない税金額との差額です。源泉徴収税を納めていない個人事業主や自営業などの場合は、必ずしも還付金が受け取れるわけではないので、注意しましょう。

なお、医療費控除は所得割の一つであることから、医療費控除を申請することで住民税も減税されます。所得にかかる住民税の税率は10%なので、住民税の減税額は所得金額にかかわらず、一律で医療費控除対象額×10%になります

医療費控除の計算方法についてもっと詳しく知りたい人は、以下の記事を併せてご覧ください。

【関連記事】医療費控除でいくら戻る? 計算方法や還付金額のシミュレーションを紹介

【所得別】インプラントの医療費控除額

画像: 画像:iStock.com/Promo_Link

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続いて、以下の条件で所得金額別の医療費控除額を見てみましょう。

  • インプラントの治療費は30万円、40万円、50万円を計算
  • 医療保険などの給付金はなし
  • ほかの所得控除がないと仮定
  • ほかに医療費はなし

所得金額200万円以下~1,200万円の医療費控除対象額、所得税の還付金と住民税の減税額を紹介します。

①所得金額200万円以下

所得金額195万円未満と所得金額195万円以上では所得税率が異なるため、ここでは所得金額194万円の場合と所得金額200万円の場合を紹介します。

所得金額200万円未満の場合は、「医療費控除対象額=医療費の年間合計額-保険金などで補てんされた金額-(所得金額×5%)」で計算します。所得税の還付金は医療費控除対象額×5%で計算します。住民税の減税額は所得金額にかかわらず一律で、医療費控除対象額×10%です。

〈表〉所得金額194万円の場合

医療費医療費控除対象額所得税の還付金住民税の減税額
30万円20万3,000円1万150円2万300円
40万円30万3,000円1万5,150円3万300円
50万円40万3,000円2万150円4万300円

〈表〉所得金額200万円の場合

医療費医療費控除対象額所得税の還付金住民税の減税額
30万円20万円2万円2万円
40万円30万円3万円3万円
50万円40万円4万円4万円

②所得金額300万円

所得税の還付金は医療費控除対象額×10%で計算します。

〈表〉所得金額300万円の場合

医療費医療費控除対象額所得税の還付金住民税の減税額
30万円20万円2万円2万円
40万円30万円3万円3万円
50万円40万円4万円4万円

③所得金額400万円

所得税の還付金は医療費控除対象額×20%で計算します。

〈表〉所得金額400万円の場合

医療費医療費控除対象額所得税の還付金住民税の減税額
30万円20万円4万円2万円
40万円30万円6万円3万円
50万円40万円8万円4万円

④所得金額500万円

所得税の還付金は医療費控除対象額×20%で計算します。

〈表〉所得金額500万円の場合

医療費医療費控除対象額所得税の還付金住民税の減税額
30万円20万円4万円2万円
40万円30万円6万円3万円
50万円40万円8万円4万円

⑤所得金額600万円

所得税の還付金は医療費控除対象額×20%で計算します。

〈表〉所得金額600万円の場合

医療費医療費控除対象額所得税の還付金住民税の減税額
30万円20万円4万円2万円
40万円30万円6万円3万円
50万円40万円8万円4万円

⑥所得金額700万円

所得税の還付金は医療費控除対象額×23%で計算します。

〈表〉所得金額700万円の場合

医療費医療費控除対象額所得税の還付金住民税の減税額
30万円20万円4万6,000円2万円
40万円30万円6万9,000円3万円
50万円40万円9万2,000円4万円

⑦所得金額800万円

所得税の還付金は医療費控除対象額×23%で計算します。

〈表〉所得金額800万円の場合

医療費医療費控除対象額所得税の還付金住民税の減税額
30万円20万円4万6,000円2万円
40万円30万円6万9,000円3万円
50万円40万円9万2,000円4万円

⑧所得金額900万円

所得税の還付金は医療費控除対象額×33%で計算します。

〈表〉所得金額900万円の場合

医療費医療費控除対象額所得税の還付金住民税の減税額
30万円20万円6万6,000円2万円
40万円30万円9万9,000円3万円
50万円40万円13万2,000円4万円

⑨所得金額1,000万円

所得税の還付金は医療費控除対象額×33%で計算します。

〈表〉所得金額1,000万円の場合

医療費医療費控除対象額所得税の還付金住民税の減税額
30万円20万円6万6,000円2万円
40万円30万円9万9,000円3万円
50万円40万円13万2,000円4万円

⑩所得金額1,100万円

所得税の還付金は医療費控除対象額×33%で計算します。

〈表〉所得金額1,100万円の場合

医療費医療費控除対象額所得税の還付金住民税の減税額
30万円20万円6万6,000円2万円
40万円30万円9万9,000円3万円
50万円40万円13万2,000円4万円

⑪所得金額1,200万円

所得税の還付金は医療費控除対象額×33%で計算します。

〈表〉所得金額1,200万円の場合

医療費医療費控除対象額所得税の還付金住民税の減税額
30万円20万円6万6,000円2万円
40万円30万円9万9,000円3万円
50万円40万円13万2,000円4万円

医療費控除を申告する流れ

画像: 画像:iStock.com/YusukeIde

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医療費控除の手続きをするためには、確定申告が必要になります。

【STEP1】確定申告に必要な書類を準備する
【STEP2】確定申告書、医療費控除の明細書を作成する
【STEP3】書類ができたら、税務署に提出する
【STEP4】口座への入金を確認する

それぞれのステップについては、以下の記事で詳しく説明しているので、併せてご覧ください。

【関連記事】医療費控除の申請手順は? 明細書の書き方も説明

インプラントをしたら、医療費控除を申告しよう

画像: 画像:iStock.com/scyther5

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インプラント治療の相場は30万~50万円で、お金がかかります。ただし、医療費控除の対象であるため、申告をすれば還付金が戻り、住民税も減額されます。インプラント治療を受けた際には忘れずに領収書をもらい、しっかり申告しましょう。

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