特に、専業主婦(主夫)の人は、収入がないだけに生命保険に加入する必要はないと考えている人も少なくないようです。しかし、これは本当でしょうか? この記事では、東京海上日動あんしん生命のライフパートナー・金刺丈晴が、専業主婦(主夫)に生命保険が不要なケースや、必要な場合に検討すべき生命保険の種類などについてお答えします。
この記事で回答した「保険のプロ」
金刺 丈晴(かねざし たけはる)
東京海上日動あんしん生命保険 エグゼクティブライフパートナー・ロイヤルメンバー。2023年度MDRT(COT)終身会員・生命保険協会認定ファイナンシャルプランナー・相続相談士。「保険を活用した老後資金形成」や「保険のセカンド・オピニオン」を得意とする保険業界歴14年のベテラン。ご相談に乗る時の信条は「本当のお客様本位」。
【Q1】専業主婦(主夫)も生命保険に加入すべき?
【A1】生命保険といっても「死亡保険」や「医療保険」など、その種類は多岐にわたります。また、ご家庭によってライフプランや価値観が異なるため、すべての専業主婦(主夫)が生命保険に加入すべき、とはいえません。
ただ、統計によれば、何らかの生命保険に加入している配偶者(専業主婦〈主夫〉含む)は80%以上に上り、病気やケガ、死亡時や老後に備えていることがわかります。特に「医療保険」や「がん保険」に加入する場合が多いです。
最終的な必要性の判断は、ライフプラン・価値観などに左右されますが、専業主婦(主夫)が病気やケガをしたり、死亡したりした場合に想定される「経済的な負担」は十分に考慮すべきでしょう。
【詳細解説】一般的に「専業主婦(主夫)に生命保険はいらない」といわれる場合、生命保険=死亡保険を指すことが多いです。なぜなら、専業主婦(主夫)は収入がないため、亡くなった場合の経済的な損失が少ないと考える人が多いからです。
しかし、後述するとおり、専業主婦(主夫)が亡くなられた場合、世帯収入は減少しないものの、家事・育児の負担が最終的に支出の増大につながるケースがあります。そのため、専業主婦(主夫)も死亡保険に加入したほうがいい家庭は多いでしょう。
ただし、これらはあくまでも一般論であり、ご家庭によってライフプランや価値観が異なるため、すべての専業主婦(主夫)が生命保険に加入すべき、とはいえません。
ここでは統計上の配偶者の保険加入状況と、保険加入すべきか否かを考えるための基本をご紹介します。
生命保険に加入している配偶者は約80%
生命保険文化センターが公表している「生命保険に関する全国実態調査」によれば、現在何らかの生命保険に加入していると回答した世帯主の配偶者は、80.3%となっています2)。ここでの配偶者は、収入がある人も含まれているため、専業主婦(主夫)だけの調査結果ではありませんが、意外と多い数値だと感じた人もいるでしょう。
なお、これは死亡保険や医療保険などすべての生命保険を含めた場合の割合です。そこで、加入している生命保険の種類に関する調査結果を見てみましょう。
2016年以降に何らかの生命保険に加入した(他契約からの切り替えを含む)という「直近加入契約者」の内訳を見ると、世帯主が59%に対し、配偶者は23.5%です。
また、加入した生命保険の種類を見ると、死亡保険の種類に含まれる「終身保険」または「定期保険」に加入した世帯主の割合は41.3%、配偶者は30.8%。なお「医療保険」または「がん保険」に加入した人の割合は、世帯主が34.8%、配偶者は46.8%となっています。
〈図〉加入契約(民保)の保険種類の割合(2021年度)
加入判断で重要なのは、「万が一の経済負担」の把握
もちろん、統計上、多くの配偶者が何らかの生命保険に加入していることがわかっても「自分が生命保険に加入すべきかどうか」の判断材料にはなりません。なぜなら、生命保険の必要性はライフプランによって異なるからです。
では、専業主婦(主夫)は、医療保険や死亡保険を含む生命保険が必要かどうかの判断を、どのようにすればいいのでしょうか。
まず把握しておきたいのが、専業主婦(主夫)が病気やケガをしたり、死亡したりした場合に想定される「経済的な負担」です。
【Q2】専業主婦(主夫)が入院・死亡した時の経済的負担はどれくらい?
【A2】万が一、病気やケガ、死亡によって専業主婦(主夫)が家事・育児ができなくなると、治療費以外にも大きな経済的負担が発生します。
たとえば、家事代行サービスを利用した場合、月2回の利用で2万円程度はかかりますし、子どもが幼ければ育児サービスを利用する必要もあります。
これに加え、入院した場合は差額ベッド代や交通費なども発生し、1回の入院で平均20万円が自己負担になるといわれます。もちろん、長期療養になれば、これらの出費が継続的にかかることになります。
【詳細解説】病気やケガにより入院した場合、あるいは死亡した場合に想定される3つの費用をご紹介します。
①治療費以外の入院費
大きな病気やケガをした場合の経済的な負担として、まず挙げられるのが入院費です。生命保険文化センターが公表している「令和4年度 生活保障に関する調査」によると、1回の入院費の自己負担額の平均は19万8,000円です3)。この平均額には、治療費・食事代・差額ベッド代に加え、交通費(お見舞いに来る家族の交通費も含む)や衣類・日用品代なども含まれています。
〈図〉入院時の自己負担費用
入院費の平均額は19万8,000円ですが、グラフを見ると20万円以上かかった人も、全体の3割弱いることがわかります。このように、公的医療保険だけで入院費をまかなうことは難しいのが現状です。
さらにこれは平均額ですから、病気の種類によっては、これ以上の費用がかかる場合もあります。入院費について、詳しく知りたい人は、以下の記事を併せて確認してみてください。
【関連記事】入院費はいくらかかる? 入院日数や傷病別の金額相場について、詳しくはコチラ
②専業主婦(主夫)の不在を補うための費用
専業主婦(主夫)が入院などで動けない状態になることで、家事や育児をする人が不在になります。親族などの援助を得られなければ、家事代行サービスなどを利用する必要があるでしょう。
参考までにご紹介すると、家事代行サービスを手掛ける「ベアーズ」の定期プラン料金を見ると、月2回の家事代行で2万3,614円〜となっています4)。
また、子どもが小さければ、ベビーシッターに依頼する機会も増えるでしょう。仮に1時間あたり2,200円だとすると、月8回(1日4時間)利用すれば、約7万400円の出費が発生します5)。
もちろん、専業主婦(主夫)が担っていた家事・育児を、稼ぎに出ている人が代行するという選択肢もあります。しかし、その場合はこれまでと同じように働くことが難しくなりますから、世帯収入の減少は避けられないでしょう。
③死亡した場合にかかる費用
万が一、亡くなってしまった場合には、葬儀にかかる費用が発生します。葬儀社検索サイト「いい葬儀」が公表している葬儀費用の平均額は基本料金が67万8,000円で、返礼品などを含めた総額が110万7,000円となっています6)。最近は、葬儀費用を節約する傾向ですが、基本料金程度の費用はかかると考えておいていいでしょう。
もちろん、専業主婦(主夫)が亡くなってしまった場合には、その後の家事や育児を担う人が不在になるわけですから、そのぶんの負担も生じます。特に、小さな子どもがいる家庭の場合は、子どもが社会人になるまでの期間の家事や育児にかかる労働力の対価についても、意識すべきでしょう。
参考資料
【Q3】専業主婦(主夫)が加入すべき生命保険は?
【A3】生命保険への加入で得られるメリットは、病気やケガ、死亡といった、万が一の事態にともなう経済的な負担の軽減です。そのため、上述したような「不在に伴う支出」があるにせよ、潤沢な貯蓄がある家庭の場合、専業主婦(主夫)が生命保険に加入する必要はありません。
ただし、そこまでの貯蓄がある家庭は稀でしょうから、各種のリスクに合わせて生命保険の必要性は考えましょう。特に、健康診断を受ける機会が少ない専業主婦(主夫)の場合、「医療保険」「がん保険」の加入検討は行ったほうがいいでしょう。
【詳細解説】専業主婦(主夫)に起こる可能性がある万が一に対応できる生命保険として、おすすめする機会が多い商品をご紹介します。
①医療保険
健康診断を定期的に受けている会社員に対し、専業主婦(主夫)は健康診断を受けていない人が多い傾向があります。そのため、会社員の人と比べて大きな病気の予兆を見逃す可能性が高いと考えることもできます。
大きな病気で治療費がかさんだり、入院が長期にわたることで想定される経済的な負担を補うだけの貯えがなかったりする場合には、公的医療保険の範囲を超える負担を補う手段として、医療保険の加入を検討してもいいでしょう。
特に専業主婦の場合は、女性特有の病気に備える保障を追加できるタイプの医療保険がおすすめです。
②がん保険
がんになった場合には、公的医療保険の適用範囲外となる先進医療を受けることになる可能性が少なくありません。また、治療費や入院費以外の生活費もなにかとかさみます。専業主婦(主夫)が、がんになった場合には、家事や育児の労働力を補うための費用も発生するでしょう。
このように病気の中でも、がんは公的医療保険や社会保障制度だけではカバーできない経済的な負担をともなう可能性が高くなります。そのため、がん保険は多くの人におすすめの保険といえます。
③死亡保険
前述したように、専業主婦(主夫)の人が亡くなられた場合には、葬儀の費用はもちろん、子どもが社会人になるまでの期間の家事や育児にかかる労働力に相当する経済的な負担も考えなければなりません。そういった場合に備えるため、最低限の死亡保険への加入は検討してもいいでしょう。
④変額保険
十分な貯えがないご家庭の場合、まずは貯金を優先させることをおすすめしていますが、状況によっては投資と保障の両方の役割を果たす変額保険をおすすめすることもあります。目減りする可能性があるものの、長期であれば預金よりも大きなリターンが得られる可能性も高いからです。
変額保険は死亡保険の機能も併せ持つため、遺された家族のことを考えた場合にも有効な選択肢のひとつといえるでしょう。
【Q4】専業主婦(主夫)が生命保険に加入する時の月額保険料の目安は?
【A4】専業主婦(主夫)に限らず、生命保険に加入する時の月額保険料は、その人が描くライフプランによって決まります。
ファイナンシャルプランナー業界でよくいわれるのは、月収の2割以内ですが、必ずしもこれに当てはめる必要はないでしょう。
基本的に、保険料と保障の大きさは比例します。家計状況を見ながら、家族と相談して決定しましょう。
【詳細解説】ここでは、入院費を保障する医療保険を例に考えてみましょう。
たとえば、専業主婦(主夫)が入院した場合の自己負担額の平均は、先ほどご紹介した19万8,000円です。つまり、ライフプランの中で起こりうる万が一として入院を想定している場合には、20万円程度の貯金を用意しておくか、この金額を保障してくれる医療保険の加入を検討すればいいわけです。
ちなみに、30歳の専業主婦の場合、入院給付金日額1万円の医療保険(メディカルKit NEO)なら、月額3,000円程度からの保険料となります。生命保険文化センターが公表している「令和4年度 生活保障に関する調査」3)によれば、1回の入院日数の平均は17.7日なので、医療保険の保障でほぼまかなえる計算になります。
死亡保険など、ほかの生命保険の保険料について考える場合も同様で、最初に想定される万が一の事態で発生する経済的な負担を算出し、それに見合う保障が得られる保険料を検討するといいでしょう。
【Q5】専業主婦(主夫)に向けて、アドバイスを!
【A5】いろいろなお話をしましたが、最終的に生命保険が必要かどうか判断するのはご自身です。世の中の平均では8割の専業主婦(主夫)(配偶者)が生命保険に加入しているからといって、それを理由に加入するという考え方は、あまりおすすめできません。
生命保険の必要性を検討する時に大切なのは、ご自身や家族が描くライフプランに必要なお金について考えることです。その上で、想定される万が一に備える手段のひとつとして、生命保険について検討してみましょう。
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