この記事では、学資保険への加入を検討中の人に向けて、ファイナンシャルプランナーのタケイ啓子さん監修のもと、学資保険と税金に関する正しい知識をお伝えします。
この記事の監修者
タケイ 啓子(タケイ ケイコ)
ファイナンシャルプランナー(AFP)。36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。
そもそも学資保険とは? しくみを簡単に説明
学資保険とは、子どもの教育資金を準備することを目的とした貯蓄型保険です。その多くは大学進学のタイミングに給付することを想定して販売されています。一般的に子どもの出生予定日以前から就学前に加入し、子どもが契約時に定めた年齢になると祝い金や満期保険金を受け取ることができます。
コツコツ自分で貯金するのは苦手…という人にとっては、確実に子どもの教育資金をつくることができるという点で安心でしょう。
学資保険は、契約者(親など)に万が一のことがあった場合、保険料の払い込みが免除になります。ただし、保険契約はそのまま継続され、学資金を受け取ることができるところが、学資保険の大きな特徴です。たとえ1年分しか保険料を支払っていなくても、契約者に万一のことがあれば、その後の保険料は免除され、子どもの年齢に応じた学資金が受け取れるのは、大きな安心です。
一方、子どもが成長するまで契約者が健在で、保険料を予定どおりすべて支払った場合、受け取れる学資金は保険料の100~108%前後といわれています。
契約者が支払った保険料の総額に対して受け取ることのできる「満期保険金 + 祝い金」の割合を、返戻率(へんれいりつ)といいます。一般的に返戻率が100%以上を超えるのが、学資保険の特徴のひとつです。ただし、複数の特約を付けると、返戻率は100%を下回る場合もあるので、注意が必要です。
保険料や加入のタイミングなどについて知りたい人は、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。
【関連記事】学資保険とは? 保険料や選び方などの詳細はコチラ
契約者と受取人の関係で税金が変わる
保険には、「契約者」「被保険者」「受取人」が存在します。契約者は、保険会社と契約を交わす人のこと。保険料の支払いを行う義務と、契約を変更する権利を持ちます。一方、被保険者は保険の対象となる人で、学資保険の場合は子どもを指します。
受取人は、学資保険の満期学資金を受け取る人のことです。契約者自身が受取人となるのが一般的ですが、配偶者や被保険者である子どもを受取人にする人もいます。また、祖父母が契約者となり、子どもや子どもの親が受取人となるパターンもあります。ただし、契約者と受取人が同一人物である場合と、違う場合では支払う税金の種類や金額が異なる点に注意が必要です。
契約者=受取人の場合の税金
契約者=受取人の場合、非課税枠に収まることが大半です。しかし、満期学資金を一括で受け取る場合や年金として祝い金を受け取る場合に所得税の対象になる可能性があります。
満期学資金を一括で受け取る場合
満期学資金の一括受け取りは、所得税の中でも「一時所得」に分類され、50万円までの特別控除があります。さらに、課税所得はその1/2です。
総収入金額(満期学資金)
-収入を得るために支出した金額(払い込んだ保険料の総額)
=一時所得の金額 1)
満期学資金と払い込んだ保険料の総額との差額が50万円を超えない限りは課税されることはありません。
ただし、特別控除は個別の所得ではなく、1年間の一時所得に対して適用されます。たとえば満期学資金を受け取った年にほかの一時所得があり、これが50万円を越える場合には、やはり課税される可能性があることを覚えておきましょう。
年金として祝い金を受け取る場合
祝い金などを年金として受け取る場合、所得税の中でも「雑所得」に分類されます。
総収入金額(1年分の祝い金)-必要経費=雑所得 2)
必要経費の算出方法は、総収入金額(1年分の祝い金の金額)×支払い保険料の総額÷祝い金の受取総額です。
たとえば【祝い金】100万円×【支払い保険料の総額】380万円÷【祝い金の受取総額】400万円=95万円が必要経費になります。総収入額が祝い金100万円のみである場合、【総収入額】100万円-【必要経費】95万円=5万円が雑所得になります。
一時所得と異なり、雑所得には特別控除はありません。祝い金が課税対象になる場合もありますが、給与所得者であれば、20万円以下の雑所得のみの確定申告は不要です。
契約者≠受取人の場合の税金
契約者と受取人が異なる場合、満期学資金や祝い金、解約返戻金などに贈与税が発生します。たとえば、祖父母などが契約者で、被保険者の子どもの両親が受取人といったケースがこれに当たります。贈与税の基礎控除は110万円以下のため、それ以上の金額を受け取るときには課税されます。
税率は直系尊属(父母や祖父母)から20歳以上の子どもや孫などに贈与の場合は、以下の「特例税率」3)を適用します。
〈表〉特例税率
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
それ以外の贈与では「一般税率」が適用されます。これは兄弟間や夫婦間、親から子どもへの贈与で子が未成年の場合、直系尊属以外の親族や他人から贈与を受けた場合などです。
なお、贈与税は、「1月1日から12月31日までの1年間に贈与によりもらった財産」に対して生じます。贈与税を計算するには、まず贈与の合計額から基礎控除110万円を差し引いた金額に税率を乗じて算出します。
参考資料
誰を契約者にするのが得策?
これまでご説明したように、契約者と受取人が同一の場合、金額や契約者/受取人の職業などにもよりますが、満期学資金や祝い金などの受取時に課税される可能性は低いといえます。
一方、契約者と受取人が異なる場合は、基本的に受け取りの際に課税されます。そのため、税金について考慮すると、契約者=受取人とするほうが得策です。
もしも離婚などをする場合、学資保険の受取人は変更可能です。ただし、契約者と受取人が同一でなくなると、やはり贈与税が発生します。子どもの養育に関して、話し合うことができる円満な離婚であるのなら、名義は変更しないままのほうが経済的な損は生じないでしょう。