今回は、住宅ローンの契約時に「団体信用保険(団信)」に加入することから、「生命保険はいらないのでは?」と考えていたMさん夫婦のお話。しかし、そこには多くの誤解があるようです。相談に乗ったライフパートナーの福田清文(ふくた きよふみ)が説明します。
今回、相談に答えたライフパートナー
福田 清文(ふくた きよふみ)
東京海上日動あんしん生命保険
東京第五支社 第2営業所 エキスパートライフパートナー
トータル・ライフ・コンサルタント(生命保険協会認定FP)
AFP(日本FP協会認定)
相続診断士(相続診断協会認定)
住宅ローンアドバイザー(住宅金融普及協会認定)
投資診断士(投資診断協会認定)
老後までを含めた人生の未来から逆算した保険の提案がモットーです。スポーツ界を引退後、“相続・不動産の分野”から今の仕事に移ったこともあり、未来や出口を見据えて、今取るべき保険やお金のプランをご提案します。保険に加入いただいて終わりではなく、最後にその保険を届けるまでが自分の役目だと思っています。
Mさん夫婦の悩み
Q.住宅ローンを組む際に団信に加入予定なのですが、生命保険にも加入する必要はあるのでしょうか?
●Mさん夫婦のプロフィール
基本情報 | 夫(32歳・会社員:メーカー営業) 妻(31歳・会社員:パートタイム) |
---|---|
家族構成 | 夫婦・子ども(0歳) |
世帯年収(内訳) ※手取り | 約583万円(夫480万円・妻103万円) |
住居 | 賃貸マンション(家賃12万円/月) |
預貯金 | 約100万円 |
近況 | 子どもが生まれ、住宅購入を検討中。ローンを組むと団信に加入するが、さらに生命保険にも入る必要があるのか迷っている。 |
「団信に入れば生命保険はいらない」と考える方は少なくありません。しかし、そこには大きな誤解があります。まずは団信がどんなものか、そのしくみや誤解しがちなポイントを説明します。
団信における「誤解しがちなポイント」とは?
住宅購入を検討する中で、ローンを組む時に利用できる団信の存在を知り、生命保険はいらないと考える人も少なくありません。しかし、団信で保障されることと、保障されないことをきちんと理解しておくべきです。
まずは団信がどんなものか、整理してみましょう。
そもそも、団信のしくみと保障内容とは?
団信とは、民間の金融機関で住宅ローンを借りた場合に加入する保険です。
金融機関によって幅はありますが、多くの場合、返済期間中に住宅ローン債務者が死亡または高度障害になった際、住宅ローンの返済が免除されます。
債務者はご主人であることがほとんどですが、ペアローンをはじめ債務者が複数いる場合は、どちらか死亡時にローン残高が50%免除されるなどの保障もあります。
民間の金融機関では、ローン契約時に団信加入を義務付けるのが一般的です。保険料は住宅ローンの金利に含まれており、月々の費用が別途発生することはありません。
団信の中には、三大疾病や五大疾病に罹患した場合にも保障される商品もあります。保障が手厚くなるほど、ローンの金利に上乗せされていくしくみが多いです。
団信で誤解しがちなポイントとは?
基本的な団信の保障は、あくまで住宅ローンの返済の免除です。一般的な生命保険のように、決まった金額が保障されるわけではありません。
債務者が亡くなると団信の適用によりローンの返済が免除されるのに加えて、国から遺族年金が支給されますが、それだけでは生活費まで穴埋めできないと考えた方がよいでしょう。
仮に債務者の年収が500万円、住宅ローン返済が年120万円(月10万円)とします。団信によりローンの返済(年120万円分)は免除されますが、残りの減収分(年380万円)はもちろん補填されません。遺族年金だけでこの減額分を補うのは難しいケースがほとんどです。
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また、債務者ではない夫婦どちらかが亡くなった場合、団信は適用されません。共働き世帯であれば、世帯年収が大きく減る可能性があります。このケースも想定しておくべきでしょう。
団信と民間保険はどのように切り分けて考えるべき?
まず、団信ですべてのリスクをカバーするのは難しいと考えてください。そのため、基本的には死亡保険、医療保険、就業不能保険、老後や教育資金を貯めるための保険など、それぞれの役割を担う保険は、別途必要です。
その上で、住宅ローンを組む時は、もしもの時に団信でどこまでカバーできるのか明確にし、足りない部分は保険でカバーするのが良いでしょう。
なお、特に重要なのが、基本の団信ではカバーされていない長期間働けない時の保障を充実させることです。
近年、医療技術や薬の進歩により、大病を患っても回復できるケースが増えています。しかしそれは、治療の長期化も起こりやすく、長期間働けないリスクが高まることになります。この点に対応した保険を用意しておくと安心でしょう。
団信のしくみやありがちな誤解がわかったところで、Mさん夫婦の家計状況を見ながら、実際にどんなアドバイスを行ったのか、紹介していきましょう。
Mさん夫婦の家計状況
項目 | 収入 | 支出 |
---|---|---|
夫の給与(手取り) | 400,000円 | - |
妻の給与(手取り) | 85,000円 | - |
住居費(賃貸料) | - | 120,000円 |
生活費(食費等) | - | 75,000円 |
交際費・雑費 | - | 10,000円 |
保険料 | - | 3,000円 |
小計 | 485,000円 | 208,000円 |
月々の収支 | +277,000円 | -円 |
●備考
- 2年ほど前に結婚し、0歳の子どもがいる。
- 実家から米などの食料を送ってもらっている。
- 残りはすべて住宅ローンのために貯金している。
- 夫婦の貯金は約100万円。
- 保険は妻が加入している3,000円ほどの共済保険のみ。
Mさん夫婦へのアドバイス&解決策は?
住宅ローンの検討中に団信の存在を知り、生命保険の必要性に疑問を持ったMさん夫婦。しかし、そこには大きな誤解があり、団信以外にも保険の検討が必要でした。
では、Mさん夫婦はどのような保険設計をすべきでしょうか。実際に行ったアドバイスをもとに説明していきます。
必要な保障額を試算し、団信への誤解を解く
まず、「団信のみで保障は十分なのではないか?」と考えていたMさん夫婦の誤解を解きました。ご主人が亡くなった場合、住宅ローンの返済は免除されるものの、ご主人の収入が無くなってしまうため、その減収分を補填する保険が必要です。もしもの場合のMさん夫婦の家計を試算してみました。
ご主人が亡くなると、年間480万円の収入(手取り)がなくなります。一方で、団信で年間120万円の住宅ローンの返済は免除。またMさん家族の場合、国からは年間100万円ほどの遺族年金が給付されます。これらを計算すると、単純計算で年間約260万円の減収になります。
ただし、ご主人がいない分、生活費は少なくなるため、必要資金は260万円の60%ほど、年156万円(月13万円)となると考えます。そのため、Mさん夫婦には月13万円を目安に生命保険等でカバーするようお伝えしました。
なお、お子さまが学校に通い出せば奥さまの収入を上げられる状況にあるとのこと。そこで、Mさんご夫婦と話し合った結果、最終的には、万が一のことがあった場合、死亡時にも就業不能時にも月10万円(年120万円)の保障が出る定期保険に加入することにされました。
〈図〉ご主人が亡くなった場合の必要保障額の試算
▼実際にMさん夫婦が選ばれた「定期保険」はこちら
万が一の時にかかる様々な必要資金にも備えた対応を
また、Mさん夫婦は共働きで、奥さまが亡くなった場合にも減収となります。そのため、奥さまも同様に死亡時も就業不能時も保障される定期保険に加入されることをご提案しました。
奥さまの収入は年間103万円なので、家計に与える影響は比較的少なく見えますが、奥さまが亡くなってしまったり、大病により動けなくなってしまったら、育児にはご主人が大きく関与することになります。そうすると、ご主人は働き方を変える必要があり、収入の維持が難しくなったり、働き方を維持するならシッターさんを雇ったりして出費が増える可能性があるためです。
また、ご夫婦が亡くなった場合、収入が減るだけでなくお葬式代などの突発的な支出も発生します。もちろん、これも団信ではカバーされていない領域です。遺族を困らせないためにも、お葬式代の準備として亡くなった際に一時金200万円が出る終身保険も提案しました。
▼実際にMさん夫婦が選ばれた「終身保険」はこちら
入院リスクに備え、団信の契約条件・医療保険を見直す
団信の保障内容は「亡くなった場合」が中心です。しかし、先ほど述べたように、近年は医療の進歩により最悪のケースを免れても、治療が長期化する場合が増えています。特にご主人は営業職であり、がんなどにかかると今までのように働けなくなる可能性が高いと言えます。
そこで、就業不能時や入院時のリスクをカバーするように、団信と生命保険を組み合わせた設計をしました。
団信では、ローン金利は0.2%ほど上乗せになりましたが、三大疾病への保障も追加。さらに入院に対する備えとして、医療保険にもご夫婦で加入いただきました。
〈表〉奨学金返済やリスクに備えて提案した保険商品の概要
商品 | 金額 | 保障内容 |
---|---|---|
団体信用保険(夫) | 住宅ローンに含む | ・死亡時のローン返済全額免除 ・三大疾病時のローン返済50%免除 |
定期保険(夫) | 約5,200円/月 | ・死亡、就業不能時月額10万円 |
定期保険(妻) | 約4,200円/月 | ・死亡、就業不能時月額10万円 |
終身保険(夫) | 約5,100円/月 | ・死亡時200万円 |
終身保険(妻) | 約4,700円/月 | ・死亡時200万円 |
医療保険・がん特約(夫) | 約6,500円/月 | ・入院5,000円/日 ・がん診断給付金100万円 |
医療保険・がん特約(妻) | 約7,000円/月 | ・入院5,000円/日 ・がん診断給付金100万円 |
総計 | 約32,700円/月 |
▼実際にMさん夫婦が選ばれた「医療保険」「がん特約」はこちら
教育資金は必要だが、学資保険の加入は保留
Mさん夫婦は学資保険を検討されていましたが、これから住宅ローンを組むことを考えると、学資保険でさらに毎月の固定費(保険料)を上乗せすることはデメリットになることも考えられることをお伝えしました。学資保険を貯めれば後々の教育資金は安心ですが、固定費の増加によりローンを減額したり、購入する住宅を妥協したりする可能性があったためです。
仮に児童手当をすべて貯金に回せば、お子さまが15歳時点で1人あたり198万円貯まります1)。足りない分は毎月の所得から補填しても構いません。Mさん夫婦の年齢であれば、お子さんが小学校に上がってからは奥さまの働く時間を延ばすこともできるかもしれません。そう考えると、住宅購入を妥協してまで学資保険に入る必要は少ないことを伝えました。
住宅ローンを組む際は、団信の内容をよく吟味して保険と組み合わせましょう
住宅を購入すべきか、賃貸にすべきか迷われる方は多くいらっしゃいます。購入に関しては、団信がつくことで住宅ローン契約が保険の機能も一部担うことを忘れてはいけません。この点は住宅購入のメリットです。
▼「賃貸vs.購入」で迷っている方の事例はこちら
ただし、保障される内容はあくまで住宅ローンの返済免除であり、適用される条件も債務者の死亡か高度障害などに限定されるのが一般的です。こういった性質を理解し、どこまでを団信でまかなえるのか、逆に足りない部分はどこなのかを考え、全体の保険設計を考えると良いでしょう。
私たちライフパートナーは、そういった決断をサポートするのが役目です。皆さんの状況を伺いながら、どんな解決策があるのか。お話を伺いながらベストの方法を一緒に探します。
募集文書番号:’21-KC01ーK001