今回は、会社員のSさん(33歳)からのご相談をライフパートナーの高畠 弘幸(たかはた ひろゆき)より紹介します。
この記事の著者
高畠 弘幸(たかはた ひろゆき)
東京海上日動あんしん生命保険 札幌支社 ゼネラルライフパートナー
2021年度 MDRT成績資格終身会員 AFP(日本FP協会認定FP)
ご家庭ごとに違う様々なお話を聞いた中で問題点を発見し、解決策として何が正しい保障の選択かをプロに聞きながら自分自身で決めていけるのが理想です。個人・法人問わず心で寄り添い、問題解決のお手伝いを続けております。セミナーでお話をする機会も多く、分かりやすい情報で楽しく盛り上がりながら、個別面談では真剣にお話をさせていただいております。
【今回のご相談者】
Sさん:33歳、会社員
家族構成:自分(会社員)、子ども1人(7歳)
世帯収入:約600万円(ボーナス含む額面)・手取り額約25万円/月
家賃:0円(自身の両親と同居)
生活費(食費、水道光熱費、通信費 等):15万円/月
貯蓄合計:約500万円
生命保険:加入済(月払保険料合計約6万円。内訳:終身年金、養老保険、学資保険 等)
数年前に離婚し、シングルマザーに。現在は自分の両親と同居しており、子育ての面でも収入面でも特に問題を感じていないが、将来については漠然とした不安がある。
【ご相談内容】
- 自分が病気等で働けなくなった場合を含めて、自分に万が一のことがあった場合のリスクについて教えてほしい。
- 教育費の準備と自身の老後の備えについてアドバイスしてほしい。
Sさんは数年前に離婚され、現在はお子さんと一緒にご自身の実家で両親と同居されています。
現在は十分な収入がありますが、自身に万が一のことがあった場合や、大きな病気等になって働けなくなった場合、収入が途絶えてしまうことが悩みの一つ。また、教育資金の準備や老後の備えについてもきちんと整理をしておきたいと考えています。
そんなSさんに私からアドバイスさせていただいたポイントをお伝えします。
【ポイント1】まずはリスクを把握。「万が一」の時の必要額を試算しよう
お子さんのいる方は皆さんそうだと思いますが、とくにシングルマザーの方は「子どものために自分が頑張らなければならない」と強く感じられている方が多く、問題を自分ひとりで抱え込んでしまいがちに思います。また、その一方でどちらかというと「自分に何かあった場合」のことをあまり深刻に考えていらっしゃらない傾向もあるように見受けられます。
両親が揃っていれば、万が一どちらかに何かがあった場合にはもう一方が頑張る、ということができますが、シングルマザーの場合はそうもいきません。(もちろんこれは、シングルファザーも同様です)
定期的な健康診断を受けて健康を維持するのはもちろんのこと、「万が一のこと(死亡)があった場合の備え(死亡保障)」と「病気等で働けなくなった場合の備え(就業不能時の保障)」について、それぞれの必要額を算出し、子どもが独立するまで経済面で苦労しないようあらかじめ準備をしておくと、親も子どもも安心して日々の生活を送ることができるでしょう。
なお、シングルマザーが亡くなった場合、お子さんは公的な遺族年金を受け取ることができます。考えたくないことかもしれませんが、万が一に備えて、具体的に年金をどれくらい受け取ることができるのかを確認することも大切です。ご自身が万が一の場合に、遺された子どもが具体的に年金をどれくらい受け取ることができるのかについてしっかり試算を行っておきましょう。
(Sさんの場合もしっかりと状況を聞いた上で、試算を行わせていただきました。後述をご覧ください)
【ポイント2】教育資金・老後資金の準備は、時間的余裕をもって行おう
続いて、シングルマザーが将来備えなければならない教育資金・老後資金の準備についてご一緒に考えていこうと思います。
当然ながら、両親が健在の家庭でも、ひとり親の家庭でも、子どもにかかる教育資金は変わりませんし、備えるべき老後資金の考え方も変わりません。しかし、稼ぐことができる人間が1人しかいないシングルマザーの場合は、必要額の試算の重要性は高くなります。慎重に長期的な計画を立てた方がよいでしょう。
(1)教育資金について考える時のポイント
Sさんのようなシングルマザーにとって優先度が高く、長期的に大きなお金がかかるのは子どもの「教育資金」です。特に、大学への進学を考えている場合は学費だけでなく、一人暮らしをするための費用もかかってくる可能性が高いと思われます。(大学までの学費の具体例に関してはコチラの記事を参照してください)
ただし、後述しますが、自分の老後資金を削って教育費を備えた結果、後々子どもに苦労をかける…という本末転倒なケースもあります。種類を選べば、無利子での奨学金を取得することも可能です。様々な制度を調査するなど、必要以上に無理をしなくて済むやり方を考えましょう。
(2)老後資金について考える時のポイント
教育資金の次に必要になるのが、ご自身の「老後資金」です。ただし、ご夫婦の場合と少しだけ状況が異なります。シングルマザーの場合、子どもが独立すると必然的に一人暮らしになるからです。
この時、老後資金に紐付けて特に考えておきたいポイントは、「住居」と「介護」の2点です。
賃貸を選択する場合、継続的に支払い続ける蓄えや収入源が必要ですし、持ち家の場合でも、定期的に修繕が必要となり、大きなお金がかかります。また、ひとりでは広すぎる家の場合は、引越しを考えることになりますが、引越費用もかかります。
また、病気になった時に配偶者に身の回りの世話をお願いできない環境ですから、お子さんが遠方に住んでいる場合はお金を出してヘルパーなどを頼まなければなりません。
いずれにしても、基本的にひとりで費用を負担することになるため、早い段階で長期的な見通しをつけておくことが大切なのです。
Sさんへのアドバイス・ご提案内容
上記3つのポイントを基に、次のようなアドバイスとご提案を行ないました。
(1)「万が一」があった場合のSさん家の家計の試算
まずはSさん家の家計について、
①子どもが大学を卒業するまでSさんが健康でいた場合
②万が一(死亡)の場合
③病気やケガで働けなくなってしまった場合
で、収支にどのような変化があるのかを考えてみましょう。
●子供が大学を卒業するまでSさんが健康に暮らした場合
健康でいた場合、毎月の収入(手取り)は約25万円です。子どもの教育費のために学資保険などで1年間に36万円を貯めているということなので、このままのペースで貯金を続けることができれば子どもが大学を入学する頃(11年後)にはすでに貯まっている500万円と合わせると約900万円を準備することができます。
私立の中高に通うことになる場合には今のペースで貯金を続けることが難しくなる可能性がありますが、大学を卒業させるまでの費用は十分確保できると言えるでしょう。
すでに貯まっている500万円の一部をiDeCoや投資信託等で運用し、ご自身の老後に備えることを検討してみてもいいかもしれません。
●Sさんに万が一のこと(死亡)があった場合
一方、Sさんに万が一のことがあった場合です。子どもの生活費として現在の7割に相当する10万円程度を確保しておけば変わりない水準で生活していくことが可能になるでしょう。
Sさんの場合は会社員ですので、子どもは遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金も受け取れます。遺族基礎年金として支給される額は子一人の場合、年間約78万円(注1)(月換算すると約6.5万円)。遺族厚生年金の上乗せも考慮すると月額換算で10万円程度が遺族年金として子どもに支給されますので、18歳になるまでは今の生活レベルを維持することが可能になります。
(注1)死亡した者によって生計を維持されていた、
・18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子
・20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子に限られます。
しかし、それ以降は遺族年金の支給がなくなる上に、子どもが大学進学を希望する場合は支出も大きくなりますので、これに備えておくことが必要になります。
●Sさんがケガや病気で働けなくなった場合
最後に、就業中以外の大きな病気やケガで一定期間働けなくなってしまった場合です。Sさんは会社員ですから傷病手当金として現在の報酬の2/3(注2)に相当する約20万円を最長1年6カ月受け取ることができます。
(注2)支給開始日以前の継続した12ヵ月間の各月の標準月額を平均した額 ÷ 30日 × 2/3
しかし、変わらず生活費はかかる上に治療費も必要になるため、働けない期間は貯金を取り崩すしかなくなります。また、病気やケガの治療が長引き、働けない期間が1年6カ月を超えると傷病手当金の支給はなくなりますので、家計はかなりひっ迫した状態になってしまうでしょう。
〈表〉毎月の必要額と不足額
健康でいた場合 | 万が一のことがあった場合(死亡) | 病気やケガで働けなくなった場合 | |
---|---|---|---|
(a)月換算の収入 | 手取り給与 約25万円 | 遺族基礎年金+遺族厚生年金 約10万円(注1) | 傷病手当金 約20万円 (注2) |
(b)毎月必要な生活費 | 生活費+保険料 約21万円 | 生活費 約10万円 | 生活費+保険料+治療費 約30万円 |
(c)毎月の残額 | +約4万円 | ▲約5万円 | ▲10万円 |
(2)万が一の場合・働けなくなった場合への備えのご提案
上記の通り、健康で暮らしていれば、Sさんは教育資金も老後資金も比較的順調に備えることができます。しかし、万が一のことが起こった場合には、収入が不足するのは明らかです。
そこで、下記のような商品のご提案をいたしました。
〈表〉ご提案内容の概略①
商品 | 月々の保険料 | 保障内容 |
---|---|---|
就業不能保障保険 | 約4,500円 | ・保険期間・払込期間65歳 ・月額給付金10万円 |
医療保険 | 約9,000円 | ・入院給付金日額1万円 |
がん保険 | 約3,000円 | ・診断給付金100万円 ・入院給付金日額1万円 |
もし、病気やケガで所定の状態となり働けなくなった場合、月々10万円の給付金が受け取れる「就業不能保障保険」をご用意しました。傷病手当金の支給は最長1年6か月となりますので働けない期間が長期化した場合のリスクは大きくなります。またお子さんが成長し、中学・高校に進学すれば生活費以外にもかかってくるお金が増えることを見込むと、これくらい準備しておくと安心です。
また、病気やケガで入院することになった場合の備えとして医療保険をご提案しました。掛け捨てタイプではなく、70歳時点で給付金等の受取りがなければそれまでに支払った保険料全額が戻ってくるタイプの商品です。
がんになった場合には、治療の長期化などによる経済的な負担も大きくなる可能性が高くなります。がんで入院した場合は医療保険とがん保険で合わせて入院給付金日額2万円となりますので全額自己負担となる差額ベッド代などへの対応もできるかもしれません。
(3)教育資金・老後資金への備えのご提案
万が一の事態がなくとも、教育資金と老後資金はそれぞれ備えておくことをおすすめしました。Sさんはお子さんに結婚式の心配をさせないように、というお考えもあったため、以下のようなご提案となりました。
〈表〉ご提案内容の概略②
商品 | 月々の保険料 | 保障内容 |
---|---|---|
終身保険① (教育資金として) | 約15,000円 | ・払込期間10年 ・保険金額350万円 |
終身保険② (結婚資金として) | 約10,000円 | ・払込期間15年 ・保険金額350万円 |
変額保険 (老後資金として) | 約10,000円 | ・保険金額800万円 |
教育資金・結婚資金として準備した終身保険は、それぞれお子さんの大学入学と、20代半ばになる時に保険料の払込が終了するよう設定しています。万が一の場合には保険金が出る一方、掛け捨ての保険ではないため解約返戻金が資金として戻ってくることになります。
また、老後資金として準備した変額保険は、特別勘定の運用実績によって満期保険金額や解約返戻金額が変動(増減)しますので、元本割れが発生することもありますが、反面、金融市場の変化に連動して「万が一の場合への備え」と「資産形成」が可能になる商品です。
(4)既存の保険の整理のご提案
なお、Sさんは元々月々6万円分の生命保険(終身年金・養老保険・学資保険・共済)に加入されていました。
これらのうち、目的と出口が明確になっていた学資保険(月々の保険料約10,000円)と終身年金(同約11,000円)を残し、他の契約は解約しました。(「払済」という保険料支払をストップして契約を一部残す方法があることもご説明した上でのご判断です)
その結果、上記の(2)(3)と合わせると、月々の保険料は今よりも1万円程度増えることになりましたが、死亡・就業不能・医療・がん・将来の各種資金(お子さんの教育や結婚・ご自身の老後)にしっかり備えることのできる保障内容になりました。
お金は用途別に3つのお財布に分け、保険は「出口」を意識しましょう!
【ポイント2】でも触れましたが、Sさんのようなシングルマザーに必要なのはまず「自分自身の保障」です。
念のため、自分が病気になったり、子どもより先に死んでしまったりすることも想定しましょう。もし子どもが遺されてしまってもせめて経済面での不自由をさせないように準備することが重要です。
そのためには、現在のお金を見える化し、「(すぐに)使うお金」「貯めるお金」「守るお金」の3つに分けておくとわかりやすくなります。
「使うお金」は日常の生活費、「貯めるお金」は何かあった場合の緊急資金として現金で置いておくお金、「守るお金」は保険料など自分を守るためのお金です。
Sさんは既に生命保険にいくつか加入していらっしゃいましたが、「貯蓄目的でなんとなく」加入したので、「いつ・いくら」もらえるかは漠然としていました。
今回、必要な保障を残して不要な保険は解約し、「子どもの大学入学時期に合わせて」「子どもの結婚する年齢に合わせて」「自分の老後資金として活用したい」といった形で、用途別に新たに加入すると、保険の出口(満期時期・解約時期等)が明確になりました。
シングルマザーと言っても、離婚・死別・未婚等様々ですし、親を頼れる・頼れない、経済的に余裕がある・切り詰めて生活している等、家庭ごとに事情が違いますが、全てのシングルマザーに共通していることは「子どもに対する深い愛」です。
子どものために教育資金等を準備することはもちろん重要ですが、「ご自身の保障が最終的にはお子さまを守ることに繋がる」ということを忘れてはいけません。そのためにも、一度お金の専門家に相談をすることをおすすめします。ご興味のある方は、無料相談をお試しください。
募集文書番号:20-KR13-K009