今回は、年齢差のあるご夫婦(妻Kさん:28歳・夫:42歳)からのご相談をライフパートナーの加藤茂俊より紹介します。
【この記事の著者】
加藤茂俊
東京海上日動あんしん生命保険
名古屋中央第一支社所属 ゼネラルライフパートナー
2020年度 MDRT成績資格会員
「自分がお客様の立場だったらどうするか」を常に考え、保険を含めたマネープランニングに関するアドバイスとご提案をさせていただいております。
【今回のご相談者】
Kさん:28歳、専業主婦
家族構成:夫(メーカー勤務)、子ども1人(1歳)
世帯収入:約800万円(手取り)
家賃:8万円/月
生活費(食費、車維持費、通信費 等):22万円/月
貯蓄合計:約400万円
生命保険:約5,000円/月(夫の共済)
現在は賃貸マンションにお住まいだが、子供の誕生を機に庭付きの一戸建ての購入を検討中。
【ご相談内容】
- 昨年子供が産まれたので、一戸建て住宅の購入を検討しているが、夫の年齢が40歳を超えているため、長期の住宅ローンを組むのには少し心配がある。
- 夫が共済の生命保険に加入しているが、保険全般を見直すためのアドバイスが欲しい。
Kさんが28歳、ご主人様が42歳という14歳差の“年の差夫婦”からのご相談です。
昨年第1子が生まれたことをきっかけに、「庭付きの戸建てを購入したい」と強く思われるようになったそうです。しかし、ご主人の年齢が40歳を過ぎているため、返済期間が長い住宅ローンを組んでも大丈夫なのか、非常に心配されていました。
また、生命保険もほとんど加入されていないので、住宅購入を前提に見直しを検討したいとのご希望もあります。
そんなKさんに私からアドバイスさせていただいたポイント2点をお伝えします。
【ポイント1】年の差夫婦の住宅ローンの組み方と返済方法
まず、Kさんの一番の心配ごとである住宅ローンの組み方について考えていきましょう。
多くの住宅ローンは最長で35年と設定されているため、Kさんのご主人の場合だと完済年齢は77歳までの範囲で設定できます。もちろん返済期間を長くするほど月々の返済額は抑えることができますが、ご主人が年金生活になってからも住宅ローンを支払い続けるのは大変なことでしょう。
一方で、65歳までに完済できるように住宅ローンを組むとなると、返済期間は23年。仮に4,500万円の物件購入に対して、4,300万円の住宅ローンを組んだ場合、ボーナス込みで年間の返済額は約216万円になります。現在、家賃支出が年間96万円ですから倍以上となり、かなり負担が増してしまいます。特にお子様の教育費がピークになる期間は、ローン返済が家計を圧迫することが予想されます。
そこでおすすめしたいのが、返済期間は最長の35年で組んでおき、できる限り繰り上げ返済を行うという方法です。最初から、返済期間を短く組んでしまうと、総支出におけるローン返済の割合が大きくなり、家計にゆとりがなくなるおそれがあり、お子様の教育資金や老後資金をしっかり準備できなくなってしまうのです。
住宅金融支援機構が行なった「2019年度 民間住宅ローンの貸出動向調査」によると、新規貸出における契約期間の単純平均は約27年ですが、実際に完済するまでの期間が単純平均で約16年となっています。
つまり、多くの方が「繰り上げ返済」を行っているのです。
特にお子様が小さく教育費の負担が低いうちは、できる限り余裕資金を貯金しておき、まとまったお金ができたら、都度繰り上げ返済をされるとよいと思います。住宅ローン減税制度(毎年の住宅ローン残高の1%を13年間、所得税から控除)による所得税の還付金やご主人の退職金も繰上げ返済の原資として考えるとよいでしょう。
ただし、「早く返済を終わらせたい」という気持ちから、あせって繰り上げ返済を行うと、手元資金に余裕がなくなりかねませんので、その点は注意してください。
【ポイント2】40代以降は疾病リスクが上昇…万が一に備えた保障を考えたい
今回、Kさんからは住宅ローンのほかに、保険全般の見直しのご相談もいただいています。40代のご主人の疾病リスクが高まることから、ご不安に感じられたのでしょう。
厚生労働省が発表した「平成29年 患者調査」によると、50代の心筋梗塞を含む虚血性心疾患や脳血管疾患は、40代の約2.5倍にも上ります。また、筋力も50代から大幅にダウンしていき、身体的な機能の低下は顕著になるでしょう。
Kさんのご主人は42歳です。これから住居を購入し、お子さんの教育費が増えていきます。さらに現在、Kさんが専業主婦であることも踏まえると、万が一に備えて、保険を厚くするのは適切と言えるでしょう。
具体的には、下記のような計算を行い、まずは必要な保障額を計算し、必要な保障額を明確にすることから始めましょう。
〈表〉必要保障額の計算
「家族に必要となるお金」―「入ってくるお金」=必要保障額(死亡保険で準備しておきたいお金)
また、住宅を購入するなら忘れてはいけないのは、「団体信用生命保険」です。死亡保障や重大疾病リスクへの備えになってくれます。ローンを組むならば、必ずチェックするようにしましょう。
Kさんご夫婦へのご提案内容
上記、2つのポイントを踏まえて、Kさんへ提案したマネープランをご提示させていただきます。
(1)繰り上げ返済を効果的に利用した「住宅ローン計画」
【ポイント1】で示した通り、効率的に住宅ローンを組むポイントは、「長期で組んだ上で、繰り上げ返済をうまく利用すること」です。
Kさん家族の場合、まずは「35年ローン」を組むようにしましょう。その上で、ボーナスを軸としながら、繰り上げ返済を積極的に行えば、月々の家計への負担は抑えながら、実際には35年よりもはるかに短い期間で払い終えることができます。
具体的には、下記のようなローン計画を立てるアドバイスをいたしました。
〈表〉Kさん夫婦の住宅ローンの指針
- 住宅費用:4,200万円
- 利率:0.92%(10年固定・8疾病保障付住宅ローン)
- 返済期間:35年
- 月々の返済額:約8万円(現在の家賃と同様)
- 毎年のボーナス払(目標):30万円
あとは、5年毎に約100~200万円を繰り上げ返済を行うことができると、あとはご主人の退職金の一部を充てることで65歳で完済することができる計算です。
(2)保障額を明確にした「保険の見直し」
次に、適切な保険に見直すために、「必要保障額」を明らかにしていきました。
まず、「家族に必要となるお金」を現在の毎月の支出(30万円)と考えます。一方、「入ってくるお金」を考えた時、Kさんは専業主婦ですから、もしご主人が亡くなられたら、毎月の定期収入はゼロです。ただし、残されたご家族に月々15万円ほどの「遺族年金」が支払われます。また、住宅ローンの負担を心配されるかもしれませんが、ローンを組む際に、団体信用生命保険に入っておけば、残りのローンを肩代わりしてくれることになります。
そのため、下表のとおり「月々約7万円」が必要保障額となります。
〈図〉Kさんの場合の必要保障額の考え方
この月7万円の必要保障額を保障する「収入保障保険」を準備するのが必要最低限の備えということになりますが、これからお子様の教育費等が上がっていくことも考慮して、「月10万円」の保障を目安と考えるとよいでしょう。
(3)老後資金のプランニング
今回、ご相談にはありませんでしたが、もう1点、重要なアドバイスを挙げさせていただきます。それは老後資金の準備に関してです。
Kさんのご主人は42歳ですから、65歳の定年退職まであと23年です。その間、住宅ローンを支払いながら、お子様の教育資金も準備し…となると、老後資金の準備は優先順位が低くなってしまいがちです。
ご主人が65歳になった時に、Kさんはまだ51歳。お子様が独立し、住宅ローンも完済していたとしても、年金収入だけで30年以上も生きていく…というのは苦しいですよね。
したがって、ご主人がバリバリ働かれるであろう23年のうちに、ご夫婦の老後資金もしっかり準備しておく必要があります。すでにこつこつ安定的に積み立てをされているでしょうが、金利がゼロに近いのでほとんど資金は増えていかないというのが大きな課題です。
そこで考えたいのは、将来のインフレリスクに備えつつ、資金を増やす手立てです。選択肢としてはNISAやiDeCoなどの投資、もうひとつは変額保険です(投資に関しては、コチラの記事を参照)。
変額保険とは、万が一の保障をつけながら、保険料の一部を保険会社が運用する保険のことです。Kさん夫婦の場合、(2)で収入保障保険への加入をご提案しましたが、必要保障額の一部を変額保険で検討することも選択として考えられます。
ご家庭の状況・タイミング…、広い視点からマネープランを立てましょう
Kさん一家は、住宅購入に向けて堅実な生活を送っており、毎月の支出についても大きく見直すべき点はありませんでした。
しかし、ご主人様とKさん、お子さん、それぞれの年齢を考慮すると、今後短い期間でライフイベントが続くことになり、そのために綿密なマネープランを立てることが必要になっていました。今回、住宅購入のご検討をきっかけに保険の見直しを含めたご相談をいただきましたが、老後資金の準備についてはさほど真剣にお考えになったことがなく、このままではご主人が退職してから実際に必要な資金とのギャップに苦労する恐れがありました。
結果的には、住宅ローンの早期返済を視野に入れながら、ご夫婦の老後資金、お子様の教育資金の準備をそれぞれ考慮し、保険を含めたバランスよいマネープランが出来上がりました。
とはいえ、マネープラン作りは早ければ早いほど余裕をもって行うことができます。読者の皆さんの中にも少しでも不安や疑問をお持ちの方がいれば先送りせず早めに相談してみませんか。
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