2024年からスタートした新NISAでは、旧NISAに比べて非課税保有限度額が1,800万円に増額され、非課税期間も無期限となりました。そのメリットを最大限活かすには、1,800万円を使い切ることがおすすめです。

この記事では、ファイナンシャルプランナー・佐々木裕平さんの監修のもと、1,800万円を最速で使い切る方法や使い切ったあとの運用益や選択肢について解説します。

※:この記事では便宜上、2023年までのNISAを「旧NISA」、2024年からの新制度を「新NISA」と呼びます。
シミュレーションの結果は、将来の運用成果を予測したものであり、保証するものではありません。

この記事の監修者

佐々木裕平(ささき ゆうへい)

ファイナンシャルプランナー。金融教育研究所代表。著書に『お金と僕らの物語』(GAKKEN)、『FPの先生!小学生の私でもわかるように、お金の増やし方教えてえや』(文響社)、『学校では教えない! お金を増やす授業」(ぱる出版)など多数。1級FP技能士。中立・公正な立場からの金融教育を行う。

ウェブサイト

ほったらかしで運用益が増える! 新NISAの非課税期間が無期限に!

画像: 画像:iStock.com/Dilok Klaisataporn

画像:iStock.com/Dilok Klaisataporn

2024年からスタートした新NISAでは、金融商品の買付金額の非課税保有限度額が1,800万円になりました。1,800万円を超えない限り、非課税での運用が生涯可能です1)

なお、この1,800万円の中には運用益は含まれません。たとえば、毎月5万円を年利3%で積み立てた場合、30年後に元本が非課税保有限度額の1,800万円になります。運用益は1,113万6,844円です。そのあと、元本は増やさず5年間放置して運用益が増えたとしても、元本が増えない限り課税されることはありません。

〈表〉新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠

つみたて投資枠成長投資枠
年間投資枠120万円240万円
非課税保有期間無期限
非課税保有限度額1,800万円(成長投資枠単体では1,200万円まで)
口座開設期間恒久化
投資対象商品金融庁の基準を満たした投資信託金融庁の基準を満たした投資信託、
国内外の上場株式やREIT(不動産投資信託)
対象年齢18歳以上
※:年間投資枠と非課税保有限度額は金融商品の取得金額(簿価)をもとに計算する。

運用資金に余裕がある場合、早めに非課税保有限度額を使い切ることで、運用益を複利効果で効率よく得ることができます。では、1,800万円を使い切るには、最短で何年かかり、積立額はいくら必要なのでしょうか。詳しく確認していきましょう。

なお、新NISAの口座の開設方法などについてもっと知りたい人は、以下の記事で詳しく解説しているので、併せてご覧ください。

【関連記事】新NISAをやらないほうがいい? 見落としがちなデメリットと対策を解説

最速5年! 新NISAの非課税保有限度額1,800万円を使い切るには?

画像: 画像:iStock.com/hachiware

画像:iStock.com/hachiware

毎月決まった金額を新NISAで運用した場合、非課税保有限度額の1,800万円を使い切るまでにかかる年数は以下のようになります。

〈表〉非課税保有限度額1,800万円を使い切るまでの達成年数

積立額
(月額)
年額達成年数
3万円36万円50年
5万円60万円30年
10万円120万円15年
20万円240万円7年6カ月
30万円360万円5年
※:複利を想定。税金・手数料は考慮しないものとする。

年間投資枠はつみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円であるため、両枠をフルに活用しても、年間の買付金額は最大360万円です。そのため、非課税保有限度額を使い切るには、最短で5年がかかります。また毎月の積立額は30万円が必要になります。

ただ、毎月30万円を新NISAにまわせるほど余裕のない人も多いはずです。その場合は運用期間を長めに考えて、無理のない範囲で新NISAを運用するようにしましょう。以下では、運用期間別の運用益をシミュレーションしますので、参考にしてみてください。

【投資期間別】非課税保有限度額1,800万円を使い切る場合の運用益をシミュレーション

画像: 画像:iStock.com/9dreamstudio

画像:iStock.com/9dreamstudio

非課税保有限度額を使い切ると、そのあとの運用益の伸びはどのように変化するのでしょうか? 5年、10年、20年、30年という期間での変化をシミュレーションしました。

どの選択肢が合理的であるかは開始時の年齢にもよるでしょう。シミュレーションでは25歳から始めた場合(年齢①)と40歳から始めた場合(年齢②)のその時点での年齢についても提示しているので併せて参考にしてください。

【シミュレーション】5年で1,800万円を使い切った場合

最短5年で非課税保有限度額の1,800万円を使い切るには、月額30万円で積立投資をする必要があります。

〈表〉月額30万円で積立投資をした場合(年利3%)

期間年齢①年齢②投資元本運用益最終積立金額
開始時25歳40歳
3年目28歳43歳1,080万円48万6,168円1,128万6,168円
5年目30歳45歳1,800万円139万4,014円1,939万4,014円
非課税保有限度額1,800万円を使い切ったあと
10年目35歳50歳1,800万円452万3,750円2,252万3,750円
20年目45歳60歳1,800万円1,239万2,502円3,039万2,502円
30年目55歳70歳1,800万円2,301万230円4,101万230円
40年目65歳80歳1,800万円3,733万7,299円5,533万7,299円
※:非課税保有限度額を使い切ったあとの最終積立金額は1万円以下を四捨五入して計算。
※:複利を想定。税金・手数料は考慮しないものとする。

老後の生活に入り、新NISAで運用している資産を現金化するのは、65〜70歳と仮定します。25歳から始めた場合、65歳までに最終積立金額は5,533万7,299円に到達するという試算結果になりました。一方、40歳から始めた場合には、70歳で現金化しても到達するのは4,101万230円です。

【シミュレーション】10年で1,800万円を使い切った場合

月額15万円を積立投資した場合は非課税保有限度額の1,800万円を使い切るのに10年間かかります。

〈表〉月額15万円で積立投資をした場合(年利3%)

期間年齢①年齢②投資元本運用益最終積立金額
開始時25歳40歳
3年目28歳43歳540万円24万3,084円564万3,084円
5年目30歳45歳900万円69万7,007円969万7,007円
10年目35歳50歳1,800万円296万1,213円2,096万1,213円
非課税保有限度額1,800万円を使い切ったあと
20年目45歳60歳1,800万円1,028万2,451円2,828万2,451円
30年目55歳70歳1,800万円2,016万3,025円3,816万3,025円
40年目65歳80歳1,800万円3,349万5,413円5,149万5,413円
※:非課税保有限度額を使い切ったあとの最終積立金額は1万円以下を四捨五入して計算。
※:複利を想定。税金・手数料は考慮しないものとする。

25歳から始めて、65歳で現金化した場合、最終積立金額は5,149万5,413円に到達する試算結果になりました。一方、40歳から始める場合は、70歳で現金化すると、3,816万3,025円という結果でした。

【シミュレーション】20年で1,800万円を使い切った場合

月額7万5,000円を積立投資した場合は非課税保有限度額の1,800万円を使い切るのに20年間かかります。

〈表〉月額7万5,000円で積立投資をした場合(年利3%)

期間年齢①年齢②投資元本運用益最終積立金額
開始時25歳40歳
5年目30歳45歳450万円34万8,503円484万8,503円
10年目35歳50歳900万円148万606円1,048万606円
20年目45歳60歳1,800万円662万2,650円2,462万2,650円
非課税保有限度額1,800万円を使い切ったあと
30年目55歳70歳1,800万円1,522万1,085円3,322万1,085円
40年目65歳80歳1,800万円2,682万6,988円4,482万6,988円
※:非課税保有限度額を使い切ったあとの最終積立金額は1万円以下を四捨五入して計算。
※:複利を想定。税金・手数料は考慮しないものとする。

25歳から始めた場合、65歳で現金化すると、試算結果は4,482万6,988円でした。一方、40歳から始めた場合、70歳で現金化すると3,322万1,085円という結果でした。

【シミュレーション】30年で1,800万円を使い切った場合

月額5万円を積立投資した場合は非課税保有限度額の1,800万円を使い切るのに30年間かかります。

〈表〉月額5万円で積立投資をした場合(年利3%)

期間年齢①年齢②投資元本運用益最終積立金額
開始時25歳40歳
10年目35歳50歳600万円98万7,071円698万7,071円
20年目45歳60歳1,200万円441万5,100円1,641万5,100円
30年目55歳70歳1,800万円1,113万6,844円2,913万6,844円
非課税保有限度額1,800万円を使い切ったあと
40年目65歳80歳1,800万円2,130万6,669円3,930万6,669円
50年目75歳90歳1,800万円3,503万8,594円5,303万8,594円
※:非課税保有限度額を使い切ったあとの最終積立金額は1万円以下を四捨五入して計算。
※:複利を想定。税金・手数料は考慮しないものとする。

25歳から始めた場合にはそのあと、10年ほどほったらかしにする余裕があります。65歳で現金化すると3,930万6,669円が手元に入ります。一方、40歳から始めた場合には、非課税保有限度額を使い切ったタイミングで70歳を迎えることになります。70歳で現金化した場合、手元に入るのは2,913万6,844円です。

短い期間で非課税保有限度額を使い切ったほうが、運用益は大きくなる

65〜70歳で老後の生活をスタートさせると考えると、20代から投資を始めても運用期間は最大40年前後でしょう。

〈表〉運用40年目の試算結果

積立額非課税保有限度額1,800万円を
使い切った期間
運用益最終積立金額
月額30万円5年3,733万7,299円5,533万7,299円
月額15万円10年3,349万5,413円5,149万5,413円
月額7万5,000円20年2,682万6,988円4,482万6,988円
月額5万円30年2,130万6,669円3,930万6,669円

上の表を見ると、短い期間で非課税保有限度額の1,800万円を使い切ったほうが効率よく運用益を得られることがわかります。そのあと、ほったらかしにする期間が長ければ長いほど、さらに雪だるま式に複利効果を得ることができる可能性があります。

非課税保有限度額1,800万円を使い切ったあとはどうする?

画像: 画像:iStock.com/metamorworks

画像:iStock.com/metamorworks

新NISAの非課税保有限度額の1,800万円を使い切ったあと、ほったらかしにする以外の選択肢としてはつぎの3つが考えられます。

①課税口座で投資を続ける
②新NISAで購入した金融商品を売却し、投資枠を再利用する
③結婚している場合は、配偶者に口座を開設してもらう

毎月の生活資金に余裕があれば、①を選ぶのも一手です。ただし、20.315%の税金が課税される点を留意しましょう。

また、運用益の伸長があまり期待できない金融商品を保有している場合には、②を選ぶのもよいでしょう。②を行うと、その元本分(買付金額)の非課税保有額が復活します。ただし、再利用できるようになるのは翌年なので、売却のタイミングに悩む可能性があります。

新NISAの投資をさらに増額したいのであれば、③も選択肢として考えられます。とはいえ、別の口座での別の投資となるので、現在所有しているNISA口座と同様の利益が出るとは限りません。また、独身の場合や運用資金に余裕がない場合には選べない選択肢でもあります。

新NISAを使った積立投資では、途中で積立を止めたり、むやみに積立額や金融商品を変更したりせずに、放置することがおすすめです。金融庁の報告書によると、分散投資した場合、運用期間が5年以内のケースでは収益にバラつきがあります2)。一方、20年間ほったらかしにすると、運用成績が得に収まりやすくなるといいます。

ただし、短期間で1,800万円を使い切るということは、買い付けた期間の株価水準に賭けるということになります。また、「そのあとプラスのリターンが続く」という仮定を前提としていることを留意する必要があります。

新NISAの非課税保有限度額は早めに使い切って、ほったらかすのが一番

画像: 画像:iStock.com/west

画像:iStock.com/west

最短で非課税保有限度額を使い切ると、元本に対する複利効果を最大限に得ることができると考えられます。とはいえ、運用資金に余裕がない場合には、選ぶことができない選択肢でもあります。家計に無理のない範囲でコツコツ投資を続けても複利効果を得ることはできます。ただし、その場合にはなるべく長期間で運用をすることを念頭に、新NISAを早めに始めるのがおすすめです。

【関連記事】新NISAは何歳から始めるのがいい?利益を年代別でシミュレーション

将来のために資産形成やライフプランを見直したい…と思ったら、「お金のプロ」に相談してみませんか?

家計のやりくりや貯蓄など、自分1人ではどのように計画を立てたらいいか、わからないことが多いですよね。そんな時には、詳しい人にアドバイスをもらうこともおすすめです。

東京海上日動あんしん生命が提供している「お金のプロ」とのマッチングサイトでは、あなたの性別や年齢、住んでいるエリア、相談したい事項を選択することで、あなたにぴったりの「お金のプロ」を選んで、無料で相談が可能です。

対面だけでなく、オンラインでの相談も行っているので、ぜひ以下をクリックして詳しい情報をご覧ください。

This article is a sponsored article by
''.