新NISAのつみたて投資枠で投資信託を保有する場合、その分配金を受け取ることができます。しかし、受け取り方には「再投資型」と「受取型」の2つがあり、どちらがいいのか迷う人は多いでしょう。

この記事では、ファイナンシャルプランナー・佐々木裕平さんの監修のもと、「再投資型」と「受取型」のメリット・デメリットを説明し、自分のライフスタイルにあった受け取り方を選択できるように解説します。

※:この記事では便宜上、2023年までのNISAを「旧NISA」、2024年からの新制度を「新NISA」と呼びます。

この記事の監修者

佐々木裕平(ささき ゆうへい)

ファイナンシャルプランナー。金融教育研究所代表。著書に『お金と僕らの物語』(GAKKEN)、『FPの先生!小学生の私でもわかるように、お金の増やし方教えてえや』(文響社)、『学校では教えない! お金を増やす授業」(ぱる出版)など多数。1級FP技能士。中立・公正な立場からの金融教育を行う。

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新NISAのつみたて投資枠とは?

画像: 画像:iStock.com/itakayuki

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2024年からスタートした新NISAには、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があります1)。つみたて投資枠は旧NISAの「つみたてNISA」を引き継ぐもので、投資対象商品が長期・積立・分散投資に適しているとして金融庁の基準を満たした公募株式投資信託と一部のETF(上場投資信託)に限定されています。一方、成長投資枠の投資対象商品は、国内外の上場株式やETF、REIT(不動産投資信託)などの中から、幅広く選ぶことができます。また、年間投資額にも違いがあります。つみたて投資枠は120万円までなのに対し、成長投資枠は240万円まで投資が可能です。

【関連記事】成長投資枠について、詳しくはコチラ

新NISAのつみたて投資枠の分配金とは?

画像: 画像:iStock.com/baona

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前述のとおり、新NISAにはつみたて投資枠と成長投資枠があります。つみたて投資枠で運用する投資信託(※)の中には、運用利益や投資元本の一部を投資家に払い戻すことがあります。これを「分配金」といいます

※:「毎月1万円」など投資する金額を決めて、投資信託を購入していく投資方法のこと。

分配金には普通分配金と特別分配金の2種類がある

分配金には「普通分配金」と「特別分配金(元本払戻金)」の2種類があります。それぞれの違いは、以下になります。

〈表〉新NISAのつみたて投資枠の分配金の違い一覧2)

受け取れるお金種類概要課税の有無
分配金
(投資信託)
普通分配金投資信託の運用益から分配される非課税
特別分配金
(元本払戻金)
投資した元本自体の一部が分配金として返金される非課税

普通分配金は、投資信託の運用益から分配され、投資家の利益になります。利益は通常であれば課税対象になりますが、新NISAでは非課税となります。一方、特別分配金は、投資家が投資した元本自体が分配金として返金されるものです。ゆえに特別分配金は利益として扱われないため、課税口座での投資であっても税金はかかりません。

なお、分配金とよく似た「配当金」という言葉がありますが、両者はまったく異なるものになります。前述したように、分配金は投資信託から支払われるお金であるのに対して、配当金は投資信託ではなく企業から株主に支払われるお金です3)

ちなみに、つみたて投資枠では投資対象が投資信託のみのため配当金はありません

新NISAのつみたて投資枠では「毎月分配型」の投資信託は購入できない

投資信託の分配金には、「毎月分配型」「隔月分配型」「年2回決算型」などがあります。このうち「毎月分配型」の商品は金融庁の基準から外れるため、つみたて投資枠では購入することができません4)。理由は、つみたて投資枠は長期的な積立投資を行う場合、分配金の還元を多くしてしまうと、純資産総額(※)が減少し、複利効果が期待できなくなる可能性があるからです。

※:ファンド(投資信託)が保有する資産額から、コストを差し引いたもの。

分配金の「再投資型」と「受取型」の違いは?

画像: 画像:iStock.com/metamorworks

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投資信託の分配金は、「再投資型」を選択している場合は自動的に再投資されます。また「受取型」を選択している場合は指定口座に振り込まれます

ただし、分配金によってその年の成長投資枠の上限(240万円)を超える場合は、課税口座(特定・一般口座)で再投資されるのが一般的です。つみたて投資枠で上限額(120万円)をオーバーした場合、金融機関によっては成長投資枠、課税口座の優先順位で再投資されることもあります。また、金融機関によっては、上限額を超えると積立設定が解除され、買付が停止する場合もあります。NISA口座を開設する前に確認しておきましょう。

分配金の「再投資型」と「受取型」のメリット・デメリット

画像: 画像:iStock.com/78image

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分配金を再投資する場合と受け取る場合、それぞれにどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

〈表〉「再投資型」と「受取型」のメリット・デメリット

メリットデメリット
再投資型複利効果を得ることができる分配金の金額によっては課税口座での再投資になる可能性がある
受取型定期的な現金収入を得ることができる特別分配金で元本を切り崩す危険がある

再投資型のメリットは複利効果を得ることができる点です。ただし、前述のように、分配金の金額によっては、その年の投資上限額を超えてしまい、課税口座での再投資になる可能性があります。

一方、受取型のメリットは現金収入を得ることができることです。しかし、元本を切り崩す特別分配金が出た場合、投資信託の基準価額を減らすことになり、投資効率が低下することにつながります。

分配金の「再投資型」と「受取型」はどっちを選べばいい?

画像: 画像:iStock.com/takasuu

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再投資型と受取型のメリット・デメリットを把握したところで、気になるのは「どっちを選べばいいのか?」ということです。結論からいうと、長期的に資産形成を考えている人は再投資型、定期的に収入を得たい人は受取型になります。以下では、その理由を説明していきます。

「再投資型」は長期運用をしたい人におすすめ

分配金の「再投資型」がおすすめなのは、複利効果を得られるというメリットから、長期運用をしたいと考えている人です。具体的には、十分な時間がある若い人や現役世代は、現金収入を得るよりも、長期運用を優先するほうがいいでしょう。また、預貯金に余裕がある人も再投資型を選ぶのが賢明です。理由は、急な出費に対応できるだけの預貯金があれば、余裕資金を投資にまわしたほうがいいからです。

「受取型」は定期的な収入を得たい人におすすめ

分配金の「受取型」がおすすめなのは、長期での資産運用よりも定期的な現金収入を得たい人です。具体的には、退職間近の人や退職した人など、資産運用にかける時間や定期的な現金収入がない人は受取型が向いています。

新NISAの分配金に関するよくある質問

画像: 画像:iStock.com/atakan

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最後に新NISAの分配金に関するよくある質問に回答します。

Q1.分配金の「再投資型」と「受取型」は途中で変更できる?

分配金の「再投資型」と「受取型」はもちろん途中で変更することができます。金融機関にもよりますが、ウェブサイト上などで申し込むことで何度でも変更することができます。複数の投資信託を保有している場合は個別に設定することも可能です。

Q2.新NISAの分配金に課税されることがあるって本当?

新NISAで得られる分配金は原則、非課税です。つみたて投資枠の場合は、非課税保有限度額として1,800万円まで非課税で投資することができます。

ただし、ETFの分配金は受け取り方法を誤ると課税されることもあります。分配金の受け取り方法はいくつか種類がありますが、非課税で受け取るためには「株式数比例配分方式」に設定する必要があります5)。「配当金領収証方式」や「登録配当金受領口座方式」などを選択していると、課税されてしまうので注意が必要です。

〈表〉受け取り方法別の分配金の課税の有無

受け取り方式受け取り方法課税の有無
株式数比例配分方式証券会社の取引口座で受け取る方法非課税
配当金領収証方式ゆうちょ銀行・郵便局に「配当金領収証」を提出して受け取る方法課税
・登録配当金受領口座方式
・個別銘柄指定方式
指定の銀行口座で受け取る方法課税

また、新NISA口座で株式数比例配分方式を選択していても、外国株式・ETFの分配金などは現地で源泉徴収される可能性があります。この現地課税分は外国税控除の対象外です。

Q3.つみたて投資枠で年間上限額を超えたら再投資できない?

前述のように、分配金によってその年の投資上限額を超える場合は、課税口座(特定・一般口座)で再投資されるのが一般的です。ただし、金融機関によっては、成長投資枠、課税口座の優先順位で再投資されることもあります。NISA口座を開設する前に確認しておきましょう。

Q4.新NISAの分配金はいつ受け取れる?

保有している投資信託の種類によります。投資信託の分配金には、「毎月分配型」「隔月分配型」「年2回決算型」などがあります。ただし、前述のように、このうち「毎月分配型」の商品は金融庁の基準から外れるため、NISA口座では購入することができません。現金収入を求めて受取型を選択する人は注意しましょう。

分配金の受け取り方はライフプランに合わせて選択しよう

画像: 画像:iStock.com/Seiya Tabuchi

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若い人や現役世代など、これから長期運用をする時間があり、老後資金などのお金を貯める必要がある人は、複利効果を得ることができる「再分配型」を選ぶのがおすすめです。ただし、すでに退職して現金収入がない人や分配金をローンの返済に充てたい人、ほかにも資産運用をしていて余裕がある人などは、「受取型」を選択するのもよいかもしれません。ライフプランやほかの資産運用を考慮して、自分に合った方法を選択しましょう。

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