年金の支払い状況や保険料納付額などを確認できる「ねんきん定期便」。どんなタイミングで届くものなのか、把握していない人もじつは少なくないかもしれません。
 
この記事では、社会保険労務士の岡佳伸さん監修のもと、ねんきん定期便が届くタイミングについて解説します。届かない場合の原因や解決策も説明します。

※この記事は、2023年10月31日に公開した内容を最新情報に更新しています。

この記事の監修者

岡 佳伸(おか よしのぶ)

社会保険労務士、法人 岡佳伸事務所代表。大手人材派遣会社、自動車部品メーカーなどで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。各種講演会講師および記事執筆、TV出演などの実績多数。特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。

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ねんきん定期便が届くタイミングは年に1回

画像: 画像:iStock.com/ChristianChan

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ねんきん定期便は、毎年1度、誕生月(1日生まれの場合は、誕生月の前月)に日本年金機構から郵送されます。ただし、年齢によって内容が異なります。主な様式は「はがき」ですが、“節目の年齢”と定められている35歳・45歳・59歳の誕生月には「はがき」の代わりに「封書」が送られてきます。

〈表〉ねんきん定期便の種類と内容

対象者様式これまでの情報年金額の情報
①50歳未満はがき・直近1年間(直近13月)の年金の月別納付状況
・保険料納付額の累計
・年金加入期間の累計
これまでの加入実績に応じた年金額
②50歳以上老齢年金の種類と見込額
③年金受給者(※)
④35歳・45歳封書・全期間の年金の月別納付状況
・保険料納付額の累計
・年金加入期間の累計
これまでの加入実績に応じた年金額
⑤59歳老齢年金の種類と見込額
※年金受給年齢をすぎても仕事を続けている人、すなわち国民年金および厚生年金保険に加入し続けている人のみに送られる。
すでに年金を受け取っているという理由から、受給見込額が記載されていない。

また、2025年4月からは、新たに以下のような「事業主負担分」に関する内容が明記されるようになりました。

厚生年金保険料は、被保険者と事業主が折半して負担することとされています。「ねんきん定期便」ではご本人の納付実績として被保険者負担分の保険料納付額を記載しており、お手持ちの給与明細等に記載されている保険料額で確認ができます。このほか、事業主も同額を負担しています。

従来は本人が支払った保険料のみが記載されていたため、納付額と将来の年金額にギャップを感じる人もいましたが、今回の変更により、保険料が本人と事業主で折半されているという年金制度のしくみをより正しく理解できるようになりました。

ねんきん定期便は大きく分けて2パターン

ねんきん定期便とは、国の年金制度への理解を深めることを目的に発行されている通知書です1)。国民年金保険または厚生年金保険(※)の被保険者を対象として、毎年1度、誕生月に日本年金機構から郵送されます。ねんきん定期便には、はがきと封書の2パターンがあります。以下でその種類と内容について説明します。

※:以下、国民年金保険を「国民年金」、厚生年金保険を「厚生年金」と表記します。

毎年届くねんきん定期便

はがきで届くねんきん定期便には、「月別納付状況」「これまでの保険料納付額(累計額)」「これまでの年金加入期間」「通算の累計額を基にした年金額」などが記載されています。

〈図〉ねんきん定期便(はがき)のイメージ

画像1: 毎年届くねんきん定期便
画像2: 毎年届くねんきん定期便

日本年金機構のインターネットサービス「ねんきんネット」のID取得する際に使用するアクセスキー(17桁の番号)も記載されています。これを使って、ねんきんネットのユーザーIDを取得すれば、いつでもねんきんネットで必要な情報を確認することができます。

節目の年に届くねんきん定期便

“節目の年齢”と呼ばれる35歳・45歳・59歳の時に送付される「封書」も、基本的には「はがき」のねんきん定期便と同じ内容です。

〈図〉ねんきん定期便(封書)のイメージ

画像1: 節目の年に届くねんきん定期便

しかし、その書式は大きく異なります。「これまでの『年金加入履歴』」(下図)、「これまでの厚生年金保険における標準報酬月額などの月別状況」、「これまでの国民年金保険料の納付状況」という用紙が同封されているのです。

〈図〉ねんきん定期便(封書)のイメージ

画像2: 節目の年に届くねんきん定期便

「はがき」のねんきん定期便では、「月別納付状況」の情報が直近1年分だけしか載っていませんが、「封書」では、「これまでのすべての実績」を知ることができます。

ねんきん定期便の見方を知りたい人は、以下の記事で詳しく説明しているので、併せてご覧ください。

【関連記事】【図版・用語解説あり】ねんきん定期便の見方ガイド。詳しくはコチラ

ねんきん定期便が届かない5つの原因と解決策

画像: 画像:iStock.com/marchmeena29

画像:iStock.com/marchmeena29

ねんきん定期便が届かない場合、以下の5つが原因として考えられます。

  • 海外に住んでいる
  • 住所や氏名の変更届を提出していない
  • 会社が住所変更手続きをしていない
  • 住民票に記載している住所とは別の住所に住んでいる
  • 役場や年金事務所の手続きミス

続いて、これらの原因に対する解決策を解説します。

海外に住んでいる場合

ねんきん定期便の送付先は原則、国内の住所です。そのため、海外に住んでいる場合は、ねんきん定期便は送付されません。ただし、郵送を希望する場合は、「ねんきん定期便お申込み」のウェブサイトから申し込むこともできます2)

国内に住んでいる場合

国内に住んでいるのに、ねんきん定期便が届かない場合は、正しい住所を日本年金機構が知らない可能性があります。役場や年金事務所、会社の手続きミスの場合もありますが、転居などで住所が変わった場合でも、マイナンバーと基礎年金番号が結びついていれば、日本年金機構にマイナンバーが収録されるため、原則、住所変更に関する届出は不要です3)

ただし、日本年金機構にマイナンバーが未収録の場合や住民票の住所と違う場所に住んでいる場合などは、年金事務所または年金相談センターに住所変更届を提出する必要があります4)。もしもマイナンバーが未収録の場合は、「個人番号登録変更届」を提出する必要があります。厚生年金の場合には、会社がその手続きを行います。日本年金機構にマイナンバーが収録済みかどうかは、ねんきんネットか年金事務所で確認することができます5)

〈コラム〉複数のねんきん定期便が届く場合

公的年金制度では、1996年12月まで、加入する年金制度ごとに異なる番号で年金記録を管理していました。1997年1月から加入する年金制度にかかわらず、1人ひとつの番号とする基礎年金番号制度が始まりました。ただし、1996年12月までに就職や転職をして、年金制度を移り変わっている場合、複数の基礎年金番号を持っている可能性があります6)

番号が異なる複数のねんきん定期便が届く場合には、複数の基礎年金番号が統合されていない可能性があります。年金事務所に相談しましょう7)

ねんきん定期便が届かない時の問い合わせ先は?

画像: 画像:iStock.com/MicroStockHub

画像:iStock.com/MicroStockHub

ねんきん定期便が届かない場合は、「ねんきん定期便・ねんきんネット専用番号」か、お近くの年金事務所に問い合わせましょう8)

なお、2025年7月からは日本年金機構のウェブサイトで「チャットボット」による案内サービスも始まっています。簡単な質問であれば24時間いつでも回答を得られるため、気になることがあれば活用してみましょう。

ねんきん定期便がない場合の年金額の確認方法

通常、年金額を確認するには、ねんきん定期便に記載された見込額を参照するか、「ねんきんネット」にログインする必要があります。ねんきんネットにログインするためには、前述したようにねんきん定期便に記載されている「アクセスキー(17桁の番号)」が必要です。

では、手元にねんきん定期便が届いていない場合は、どのように確認すればよいのでしょうか。

アクセスキーが手元にない時は、日本年金機構に申し込むことで、ユーザーIDをハガキで郵送してもらうことができます。この際、基礎年金番号の入力やパスワードの設定が必要になります。

ハガキが届いたら、記載されているユーザーIDと、申し込み時に設定したパスワードで、ねんきんネットログインからログインが可能です。

年に1度はねんきん定期便をチェックしよう

画像: 画像:iStock.com/MTStockStudio

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毎年、誕生月に届くねんきん定期便には、直近1年間の「月別納付状況」や「これまでの年金加入期間」が記載されています。こうした項目に「もれ」や「誤り」がないかを確認し、ある場合には早めに年金事務所に問い合わせましょう。ねんきん定期便が届かない場合も早めの対処がおすすめです。

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