「グループホームってどんなところ?」「ほかの介護施設との違いは?」

初めての介護で家族をグループホームに入居させる可能性があるけれど、どんな施設か、きちんと理解しておらず、困っている人も少なくはないでしょう。この記事では、介護福祉士・小林隆雄さん監修のもと、介護初心者に向けて、入居条件や費用の相場からほかの施設との違いまで、グループホームについて徹底解説します。

※この記事では、民間施設は「入居」、公的施設は「入所」、両方をまとめて表現する場合には「入居」と表現しています。

この記事の監修者

小林隆雄(こばやしたかお)

東京海上日動ベターライフサービス株式会社ソリューション事業部課長。介護福祉士、キャリアコンサルタント。鉄鋼メーカーで物流・輸出業務に従事後、介護業界へ転向。介護サービス事業所で実務経験を積み、事業所の管理者、所長、エリアマネジャー、エリア人事・総務責任者などを歴任。東京海上日動ベターライフサービスへ入社後は、主に社内の介護職の教育や事業所の運営支援に携わる。現在は、介護の専門職およびキャリアコンサルタントの視点から、主に企業に対する仕事と介護の両立支援や介護人材の育成支援に取り組んでいる。これまで500回を超える講演活動のほか、介護中の家族を支える介護相談員としても活動中。

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グループホームとは? しくみを簡単に説明

画像1: 画像:iStock.com/kazumaseki

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グループホームとは、専門の職員から支援や介護を受けながら、認知症高齢者が共同生活を送る施設です1)2) 。定員数や施設基準は、介護保険法によって以下のように定められています。

・1ユニットあたり5人以上9人以下(最大3ユニット)
・居室は7.43㎡(和室4.5畳)以上で原則個室
・立地は住宅地など
・居間・食堂・居間・台所・浴室、消火設備、その他非常災害に際して必要な設備がある
・施設には介護従業者(日中は利用者3人につき1人〈常時換算〉、夜間はユニットごとに1人)、計画作成担当者、管理者が常勤

グループホームでは、買い物や調理、掃除といった家事などの役割をできる範囲で入居者も分担しながら、家庭的な雰囲気の中で生活をします。そのような生活の中で入居者自身が持っている力を発揮することで、できる限り身体機能を維持したり、認知症の進行や症状を抑えたりすることを目指します。

グループホームの入居条件は?

画像: 画像:iStock.com/PavelMuravev

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グループホームの入居条件は以下の4つです。

・医師により認知症の診断を受けている
・65歳以上の高齢者で要支援2以上の認定を受けている
・施設と同じ市区町村に住民票がある(法律上は「地域密着型サービス」に該当するため)
・集団生活に支障がない

65歳以上の高齢者で、認知症の診断と要支援2以上の認定を受けていることが前提です。ただし、40歳以上で初老期認知症(若年性認知症)の診断を受けていて、要支援2以上の人も入居が可能です。

また、グループホームは介護サービスの中で「地域密着型サービス」に位置付けられ、認知症高齢者が住み慣れた地域で生活を続けられるように支援することが目的のひとつです。そのため、入居する施設と同一地域内に住居と住民票があることが求められます

グループホームの退去要件は?

画像2: 画像:iStock.com/kazumaseki

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集団で共同生活を送ることが前提の施設のため、「暴力行為や自傷行為を繰り返す」「決められたルールが守れない」「介護度が高く、自立的な生活を送るのが難しい」「施設でできない医療行為が必要になる」といった場合は、退去を求められる可能性があります。

また、要支援2以上が入居条件のため、入居後に要支援1以下と判定された場合も、退去になります。もちろん、支払いができなくなった場合にも退去を求められます。

グループホームにかかる費用の相場は?

画像: 画像:iStock.com/kiddy0265

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グループホームにかかる費用には、「入居一時金(保証金)」と「月額費用」の2種類があります

入居一時金は施設により必要がないところもあれば、非常に高額なところもあります。退去時に返却してくれる場合もありますが、これも施設によります。⽼⼈ホーム検索サイト「みんなの介護」の調査3)によると、入居一時金は0~16万円が相場です

月額費用は大きくは「日常生活費」と「介護サービス費」に分かれます。金額は施設によって異なりますが、同調査によると、月額費用は9万6,000円~14万6,000円が相場です

日常生活費は以下の4項目などです。

・居住費
・食費
・水道光熱費
・管理費

理容・美容代やおむつ代などの流動費は日常生活費には含まれず、都度、支払うケースが多いかもしれません。その場合も施設によってあらかじめ金額は決まっていることがほとんどです。

介護サービス費は各種の介護サービスを受ける際に発生し、自己負担額は費用の1~3割です。金額は要介護度によりますが、月額2~3万円程度が一般的です。

ただし、専門的なケアや看取りなどの介護サービスが提供された場合に追加費用が発生することがあります。これをサービス加算といいます。その詳細は施設ごとに異なるので、入居前に確認しておきましょう。

グループホームで受けられるサービスは?

画像3: 画像:iStock.com/kazumaseki

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認知症の高齢者が可能な限り自立的な生活を送ることができるように、認知症介護の知識と技術を持つ専門職員が食事や排せつ、入浴など、日常生活のサポートや機能訓練などを行います

医療的なケアや看取り看護、常時の見守りなどは法律で義務付けられてはいないため、そうしたサービスを受けられるかは施設によって異なります。医療面のケアが気になる場合は、看護師を配置しているか、協力医療機関がどの程度のサービスを提供しているかなど、入居前に確認しましょう。

ほかの高齢者向け施設との違いは?

画像: 画像:iStock.com/AzmanL

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グループホームを含めて、主な高齢者向けの入居施設は以下の8種類です。

〈表〉高齢者向けの入居施設

画像: ※民間施設は、施設によって受け入れる要介護度は異なる

※民間施設は、施設によって受け入れる要介護度は異なる

グループホームとほかの施設の大きな違いは、グループホームは入居条件に認知症の診断が必要である点です。ほかの介護施設でも認知症高齢者に対応していますが、認知症が重度になった場合、継続した入居が難しくなる施設もあれば、入居自体ができない施設もあります。

ただし、認知症対応は施設の種類というよりも施設ごとの方針に左右されます。また、グループホームでも前述のように集団生活が難しい場合には退去になる可能性がある点を覚えておきましょう。

グループホーム以外の施設について知りたい人は、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。

【関連記事】老人ホームの入居費用は? 施設別の詳細はコチラ

グループホームに入居するメリットとデメリット

画像: 画像:iStock.com/takasuu

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グループホームに入居するメリットとデメリットとはなんでしょう。それぞれについて説明します。

グループホームに入居するメリット

・認知症高齢者が安心して住み慣れた地域で日常生活を送ることができる
・家庭的な環境で認知症緩和ケアを受けることができる
・家族の負担が軽減される
・個室でプライバシーを保つことができる

認知症高齢者のケアは家族にとって負担が大きく、在宅で介護をする場合、どうしても限界があります。グループホームに入居すれば、認知症ケアを受けることはもちろん、共同生活で自分の役割を得たり、ほかの入居者とコミュニケーションを取ったり、と専門の職員のサポートを受けながら日常生活を送ることができます

グループホームに入居するデメリット

・施設になじめず、認知症高齢者に心理的な負担がかかる可能性がある
・家庭で介護をするより費用がかかる
・集団生活ができなくなると、退去になる可能性がある
・住民票がある地域の施設にしか入れない

家族と暮らすよりも居住費の負担がある分、毎月の生活費が余分にかかります。選んだ施設と相性が悪かったり、共同生活自体になじめなかったりした場合、認知症高齢者にとって家族と暮らすよりも負担がかかる生活になるでしょう。また、集団生活が難しいほど状態が悪化すると、退去の可能性がある点にも留意が必要です

グループホームに入居するまでの流れ

画像4: 画像:iStock.com/kazumaseki

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グループホームへの入居の流れは以下の通りです。

①入居条件を満たすかを確認(認知症の診断・要介護度の判定)
②施設の希望条件とその優先順位を決める
③ケアマネジャーなどに相談しながら、希望に合う施設を3つほどに絞る
④候補の施設に問い合わせ・資料請求をする
⑤候補の施設を見学する
⑥入居の申し込みをする
⑦入居審査を経て、入居契約を結ぶ
⑧入居する

グループホームへの入居を考える時、認知症高齢者本人の希望を含め、居室の状態やサービス内容、予算など、“ゆずれない条件”を見極めるのが重要です。それを明らかにした上で、地域にあるグループホームをよく知るケアマネジャーに相談するのがおすすめです

人気のグループホームは入居待ちの可能性もあります。すぐに入居するつもりがなくても、余裕があるうちに近隣のグループホームについて調べておくのもいいかもしれません。

グループホームの選び方と注意点は?

画像: 画像:iStock.com/MicroStockHub

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まずはウェブサイトやパンフレットなどで、居室の様子、受けられるサービスや参加できるアクティビティ、医療体制や看取り介護などを見比べてみましょう。 “ゆずれない条件”は何かを決めた上で、認知症高齢者本人と家族の希望に合っているかを確認します。資料を読むだけではわからない点は、施設に直接尋ねる前にケアマネジャーに聞いたり、口コミをチェックしたりと情報収集をしてみましょう。

特に見学前に整理しておきたいのは、お金に関する疑問点です。退去時の入居一時金の償却率や償却期間、月額費用以外の流動費などは施設によって異なります。入居期間が長期になっても資金不足で退去せざるを得ないということがないように、資料だけで理解できない点は見学時にきちんと質問できるよう準備しておきましょう。

施設の見学では、居室や共有スペースが清潔でにおいが気にならないかといった点に加え、入居者に対する職員の接し方もよく観察しましょう。入居者への声のかけ方が指示的になっていないか、入居者が安心した表情をしているかなどが判断材料になります。

家族が「つらい」と感じたら、入居を考えよう

画像: 画像:iStock.com/imacoconut

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介護をしている家族が「介護がつらい」と感じる機会が増えてきたら、グループホームへの入居を考え始めるタイミングです。「施設に入れるのはかわいそう」という周囲の声や、「自宅にいたい」という本人の声も気になると思いますが、介護をする家族が限界を超えてしまうと、入院するほど体調を崩したり、高齢者への虐待が起きたりするケースもあります。

家族が無理をし過ぎている状態は、認知症高齢者にとっても決して過ごしやすい環境ではないはずです。グループホームへの入居に抵抗感がある場合には、まずは体験入居を試すことで、家族は息抜き、本人は相性を確かめてみるのがおすすめです

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